《極寒の地で拠點作り》合流

「ふッ、『ジャイアントキリング』」

「――っ!?」

容赦無くスイングした大槌は目の前の男へ襲いかかり、クリーンヒットする。そいつはそのまま吹き飛ばされて近くの木に思い切りぶつかった。しかし、その衝撃にぐも息絶えることは無い。

「は、クソ……流石にしぶとい……」

協力したりして何人か殺ったが、心做しか一撃一撃が鈍くなってきている様な気がする。やはりこいつら、防力が上がっている? 數が減れば減るほど上がるのだとしたらそれはそれはタチが悪い。

だが嫌なのはそれだけじゃない。薄々じていたがこいつら、何処かおかしい。

範囲がどうとか関係無く、中心に留まっている奴含めこの群れは私達のギルドホームへ向かってくるだろう。だから私はその針路上に居るのだが、連中はいったい何を考えているのか、こちらが劣勢の癖に積極的に攻め込んでこようとはしてこないのだ。

死んで復活するまでと戻ってくるまでの時間はギルドホームの近い私達が圧倒的に短く、そのサイクルをその戦力で上回り攻略せんとしないのは何か別の目的でもあるのだろうか。若しくはただ単に手勢の數で負けるのを恐れているのか、或いは……。

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「いや、今は……目の前の敵を倒すのみ……」

最終的な判斷は我らが団長がすることだ。その団長がひたすらに敵を切り倒していくのだから私はそれに従うまで。

大丈夫だ、このまま耐えていればいつかは中心が姿を現す。その機會を逃さなければいいだけの話。

そう考えつつ、私は目の前の男を今度こそ塵に還すのだった。

「クアイさん!」

一息吐いてすぐ、すぐそこから聞いた聲が私の名前を響かせた。ひょこっと姿を現したのは、一瞬モンスターだかに見えるくらい闇のオーラ漂わせる外套にを包んだ、ユズだ。

「あっ、クアイさんだ!」

「癡……」

となるともう一人、と思った所で現れたそのの名はハープ。たった今、うっかり口をらせてしまったが格好は全くその通り。年がら年中寒暖も気にせずサイズの合わないコートを著て腹と元を常に出させている変態だ。

……とそんな冗談はよしとして真面目な話だと、ざっくり言えば団長の同志、AGI値四桁代生粋の化だ。冗談とは言ったがこちらもある種の変態なので、結局の所そのレッテルからは逃れられないのだ。

「どうですか、そちらの狀況は」

「良いとは……言えない……」

まだ殺ったのも二人。普段のペースならこんなものではない。それを許さないのはあの異様なさだ。

「やっぱり皆そうかぁ」

「そういうお前らは……どうなんだ……」

「んーユズ、何人キルしたっけ」

「何人? ちょっと待って、えーっと……」

するとユズはなんと指を折り始めた。そんなに倒したのかと一瞬驚いたが、し考えてみれば納得行くものだった。化の友達は化とでも言うべきか、こっちも相當だからな。恐怖という言葉に遮られて目立つことは無いが、唯一の第七魔法の使い手でそして何よりSTR値が頭三つ分くらい抜けているのだ。

「六人? そう、六人だよ!」

「ふっ……流石……」

このさの中でペースを落とさずそれだけの數を稼げるのはやはりこの二人のせる技なのだろう。

「それでどうします? やっぱり一人一人で戦うよりある程度固まっていた方が良いような気がするんですけど」

「賛……どうやら奴ら……防力上がってるから……」

「あ、確かに手応えし悪くなってたかも」

「まあ私は元より弱點突きもVIT値高過ぎて出來ないし、協力するなら1ダメージでも通ればこっちのだし」

二人も攻撃が通りにくくなった覚はあったらしかった。尤もユズに至っては手応えが々悪くなった程度というので、やはり違うなとじる。

「恐らく奴ら……數が減れば減るほど……個々のVIT値上昇の倍率が上がっているのだろう……」

的にはどのくらいまで?」

「わからない……この部隊がここまで戦闘するのは……これが初めてだろうからな……」

私は防力が上がっているらしいことに憶測を立てるが、私自この部隊と闘うのは初めてだ。そもそも今言った通り、それほど表立って行したことがない連中だ。當然その報は知れず、倍率範囲が何処までか構人數さえもわからないから最大倍率も予想出來ない。なくとも今は三倍から三・五倍程度に上がったんじゃないかとじている。

「ただ、これだけの能力……元から三倍ともなれば……三桁は居ない筈……」

「私達が六人、他の人達が合わせてそれ以上倒してるとしてそれで倍率の段階が一つだけ上がって元の人數がそんなに居ないならそこまで酷い倍率にはならないかな?」

「それほど數を刻まなければ多分そうだと思うけど、全的に見ればし上がるだけでもキツいよね」

まあポジティブに考えれば、段階を一つ上げさせたということは著実に數を減らしている、そして倍率が上がったということは一旦範囲をませたことになるから親玉の位置を特定しやすくなったと言える。

「何にせよ……結局私達が……親玉を見つけ出して……殺すことに変わりはない……」

「それなんですけど、これだけ闘ってて見つからないのっておかしいですよね?」

「周りと同じ様な格好してたとしても防力無いからどうしようもないだろうし普通の狀態では居ないだろうしね」

「うーん、じゃあ何処に……」

となれば中心のそいつが殘りやるべきことはただ一つ。

「何処かに……隠れているのか……」

そういう理由ならば、この集団がギルドホームに向かって進むスピードが遅いのも納得出來る。

「ちゃんと隠れるなら魔法の系統かな?」

「あっ、じゃあ私だね!」

一つ、ハープが予想を立てるとユズがいきいきとした聲で任せてと言い出した。

「大丈夫なのか……?」

そんなじのユズに私はつい、不安に思ってしまった。悪い前例がある程の友人関係は築いたつもりはないが、なんとなくとんでもない技でも使うのではないかと心配になったのだ。

魔法なら私の魔法で殆どどうにかしちゃうので大丈夫ですっ!」

「と、言っているが……?」

「張り切ってるんですよ。何せ魔法のカウンター、ちゃんとしたのユズ一人ですから」

ああなっちゃもう止められませんよ、とハープは笑う。まあ拮抗狀態に相手に得意な面で決定的な一打を與えられるならこんなになっても仕方ないのかもしれない。

「わかった……任せる……だが、どうするんだ……?」

「この集団の中心っぽい辺りで隠れていそうな所で暗転するんです!」

「は……?」

ユズは要するに、虱潰しをしようと言うのだ。確かに範囲は狹まったとはいえそれは漠然としているし、広くないとはまだ言い難い。それ故に、あれだけ自信満々だったのは何か隠れている者に効果的な手段でもあるからだと思っていたんだが。

それに心配事はまだある。

「暗転とは……あの技のことだろう? ……他の団員が混する……」

「まあ、そこは……よろしくお願いします?」

「はぁ……クソ……」

結局私頼みか。

私は若干申し訳なさげな笑いのユズを目に愚癡りながら私達のギルドのチャットを開いて、『突然目の前が真っ暗になっても冷靜でいるように』という趣旨のメッセージを送った。

この文面を正しく理解出來る人間はそう多くないだろうが、どうせ巻き込まれればすぐにわかることだ。そういった質問が來たらそういうことだ、と締めておこう。

「しっかり……伝えておいた……」

「ありがとうございます!」

「構わない……これが決定打になるかもしれないから……」

私はあとは任せた、と伝える。

仮にそうだとしたら驚きを通り越して笑わずにはいられないかもしれないが、もしかしたら忍者宜しくカモフラージュ用の布を被ってそこらに隠れているとか無くもないかもしれない。まあ、そうだとしても取るに足らない問題だろう。

そうして私達三人は敵のリーダーを探しに、連中が集している中心らしき方向へ歩を進めていった。

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