《極寒の地で拠點作り》気に食わない

「……同盟のギルドが二つ陥落したんだ」

「えっ、か、陥落ですか……?」

団長の言葉に周囲がザワつき始める。當然の反応だろう。

だって突然ってきた報が『敵らしき影を見つけた』でも『攻撃をけた』でも無く、『ギルドホームが敵の手に落ちた』と結果だけの様な文面で送られてきたんだ。絶句するしかない。

「団長……詳しく……」

「あ、ああ……奪われたのはこっちに戻ってきた団長達の所だ。殘したメンバーからはいつの間にか、とのことらしい。幾らか引き連れてきたとはいえ、その殘した団員達も相當數居る筈なんだがな……」

いつの間にか、そういう口振りをするということは誰も気づかなかったということだろうか。だがそんなこと有り得るのか?

「いつの間にって、殘ってた人達に直接気づかれなくても罠とかありますよね。一切発しなかったんですか?」

「それは聞かなきゃわからないが、そういうことなんじゃないか? まあそんなこと、俺だって変なこと言ってるってわかってるんだ」

団長がそう言う通り、外部から勝手にってきた人間、要するに侵者で罠に一つもかからないというのはおかしな話だ。元々攻略法やらがあるなら納得出來るが、各個のギルドホームで罠の配置は勿論バラバラだし、仕掛けてあるその種類もツリーやそのレベルによって変わってくるからそんなものは存在しない。

まあ、短期間に何度も攻めれられて尚且つ配置変更しても罠の位置が如何にもな場所だったらという例外があるから一概に無いとも言えないな。

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尤も、そんなギルドホームであったなら大ギルドを形・維持することは元より不可能だっただろうが。

それはさておき、私の記憶が正しければここ最近でその二つのギルドがギルドホーム部まで侵されたことは無かった。なら、今度の侵者達は初見である筈だ。

さっきも挙げた通り、そう簡単に攻略させてくれそうな罠の置き方はしていない。それに、生半可な効力の罠など置いていないだろう。対策なんて出來る訳が無い。

というかそもそも前提條件として奴らはギルドホームに當然誰にも気づかれずる必要がある。それは勿論、り口の扉を開ける時もだ。だから、見張りに気づかれてしまう魔法系はアウトだ。

となればあとは変スキル系になるのだが、高度なになっていくと容姿だけでなく服裝も見た目を変えることが出來るようになるらしい。

そこまで行けば何かを真似るようであれば模様まで寫せるというのだから、エンブレムをそのまま服に著けているタイプを採用しているギルドであればり口を素通り出來るという訳だ。それもステータス欄を調べられてバレない限りというものだが、大ギルドのメンバー全員をしっかり覚えてる人間なんてそうそう居ないだろうからそこは通り抜けられるだろう。

どちらの方法を採ったにせよ、外部の人間で敵側の存在だからこのままでは罠がかない理由にはならないが。

ただ、今挙げてきた障壁を全て崩させるがあるとすれば……、

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通者……有り得ると思う……」

言えば裏切り者だ。

ギルドによってまちまちだが罠に関してはある程度上層の人間が管理をすることになっている。まさかそこの団長がそういうのだとはないと思うけど違うとも言いきれない。その辺りの者だったとしても何度か顔を合わせている筈だ。

「く、クアイっ! それは……」

団長はそういった所をじてか言ってはいけない、と私を制してこようとする。

「思う所……あると思うけど……こればかりは留意しておかないと……」

「っ……わかってる、わかってるんだが……」

この人は良い人、良い人過ぎるんだ。自らのギルドのメンバーへは勿論、同盟ギルドの団長全員やそれぞれのある程度の上層部までにも信頼を置いている。誰にでも快く接して仲良くなった相手には積極的に付き合っていく、そんな格は団長の良い所ではあるが良くない所でもある。

団長は外部に信頼を持ち過ぎている。そしてその想いは人一倍強い。そんな要因から、例えば今の様に同盟に裏切り者が居るかもしれないという疑念に、信じたくないという気持ちとそれを持つことへの罪悪が彼を押し潰そうとしている。

こういう時、私は何も出來ない。生憎、私はめだの包容力だとかいうのは専門外だ。そんなものだからおろおろするでもないけど、どうしたらいいのかわからなくなってしまう。

そんな時だった。

「なーにやってるのよ。ほら、元気出しなさい」

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黒々とした雲に覆われた空に突如が差し込んだのは。

「シェーカさん!」

ユズがその名前を呼ぶ。

黙りこくっていた団長の肩に手を掛けてめるは我らが副団長であり、団長の妻その人だった。

「シェーカ……」

「ええ、私もまあまあ驚いたわよ。貴方のことだからそれで落ち込んでいるんでしょう?」

なんと、やはり流石と言うべきか副団長にはお見通しの様だ。

「大丈夫よ。まだちゃんと狀況把握出來ていないなら、裏切りかどうかなんてわからないじゃない。それに貴方も団長なんだからそんな調子じゃ駄目よ?」

「ああ、わ、悪い……」

「さ、団長、やるべきことをやらないと」

「……おう、ありがとうな」

団長はし照れくさそうに謝の意を伝える。

やっぱり副団長は凄いと思う。あの狀態の団長を一瞬で元に戻させたんだ。まあ、団長も副団長が近くに居て安心するからっていうのもあるんだろうな。そう考えると改めて、副団長が団長の隣に一番相応しい人だとじる。

「……よし、ここに居る奴らだけでいい。聞いてくれ!」

すると、団長は改まってこの場の全員に向けて話を切り出した。

「これからのことについて話そうと思うがその前に一つ言わせてくれ。正直今回はしてやられたと思ってる。だがこれで負けたとは思っていない。ついさっき、恥ずかしい所を見せてしまったが俺は改めて戦い続けることを誓おうと思う」

団長の話を誰もが黙って真剣に聞いているのを見遣ると、団長は更に続ける。

「俺はまだ彼らを信じているし疑うつもりはない。そこで、これからの予定だ。今俺達がすべきことは報収集、二つのギルドホームの詳しい狀況を調べるんだ」

的には?」

「ああ、早速出向いて……と言いたい所だが……」

「だが?」

早速行するのかと思いきや、否定に回る様に言葉を詰まらせた。

「一度それなりの規模の戦闘を行ってしまったし、これで刺激を與えて同等以上の戦闘が始まったら皆が持たないだろ?」

「私は……行ける……」

「ダメだ。クアイ個人は行けても群れとして見ればもっと変わってくる。というかお前もだいぶいただろうよ」

お前は寧ろ休め、と団長は言う。

そんな、私は本當にまだまだやれるというのに。

「それになぁ、その大規模な戦闘が立て続けに起こされるとポーションとかの問題になってくるんだよ。幾ら沢山貯蓄してあって生産スピードもまあまああるっつっても、デスペナルティ分含めて使用量がとんでもないから下手したら消費スピードがそれを上回るかもしれない。その狀態で消耗戦に持ち込まれたらまず、施設の多いあちらに軍配が上がるな」

「なるほど……じゃあ、かない……」

「それでいい。ま、日がだいぶ傾いてきたってのもあるかな」

団長は手をかざして空を見上げる。

現在時刻は二時を回ったくらいで、冬の日の太は西日をし始めていた。だが、それがいったいなんだと言うのだろう。

「皆まだ晝食べてないだろ? それにほら、これからおっぱじめたら確実に夜まで掛かる。こっちも何事にも変えられないくらい大事だがリアルの用事だって外せる訳じゃないからな」

「んぇっ? 私ですか?」

不意に団長がハープの方を見遣ってそう言うと素っ頓狂な聲を出してハープは確認した。

「ハープちゃんってか、君達四人だな。晝はまだしも、夜居なかったら何か親さんに言われるんじゃないか?」

「あーまあ、そうですね。夜ご飯の時とかお風呂の順番とか」

「私ん家は一人っ子だしお父さん先っちゃうし、特に順番は無いかな。だから夜食べたらまた來れると思います」

「他の二人は尚更だが、どちらにせよそんな夜遅くまでは悪いからな。ま、気遣い抜きにしても親さんに何か言われるんじゃたまったモンじゃないしな」

と、団長はそんな面でも気にしている様だ。

そんなじで、防衛線を通常より大きく張ったまま私達は一旦ギルドホームに戻り、晝食を取るために代でログアウトする。

この後はこれからどうするかの會議で的な時間は決まっていないが、どうも落ち著いていられない。

そんな訳でパパッと済ませられる冷凍食品にしておいて、家事とかやることやったらすぐに再ログインする。

それから一時間程。主要メンバー全員が戻り、今後についてのミーティングが始まった。私は一団員に過ぎないが、副団長がサラと一緒に外に出てる時とかに普段から代わりに団長を補佐したりこういう話し合いに參加している私はごく自然にここに居るのだった。

「さて、明日のことだが、一度現地でコンタクトを取ってみたいと思う」

「どうして態々? チャットで済ませればいい話じゃないですか」

と早速、援軍に來ていた団長が団長に意見する。

「監視されてるかもしれないだろ? それに奴ら、抜かりは無いだろうから上層部の皆は人質として拘束されて紅蓮連盟の牢獄用ギルドホームに連行されてると思う。そうなれば彼らとしかフレンド登録していない俺は連絡手段が無いんだ」

さっきの陥落報告は間接的に送られてきただったからけ取れた訳で、団長はあの後直接聞いてみたらしいが返事は來なかったという。恐らくその時點で既に捕まってしまっていたのだろう。

「わかりました。でも誰が行くんです?」

「俺が代表として行こう…………って本當は言う所なんだろうがここを開けるのはな」

何故だか今日は団長が言葉をよく詰まらせる様な気がするが、まあそれも仕方ないことだろう。そんな団長に私は口を開く。

「団長……大丈夫……ここは私達が守るから……」

「だが、敵の姿も象的過ぎてわからないんだ。疑う訳じゃないが何処かでリークされてるかもしれない。何かあってからじゃ遅いから俺はここに殘るかな」

どうやら団長は、彼ら侵略されたギルドが団長含めた上層部が殘っていたにもかかわらず侵を許し、挙句奪われたことに警戒しているらしい。

「代わりと言ってはなんだが、ウチの外役兼報屋を連れて行かせよう。奴なら手際良く出來るだろうからな」

「それって……あいつ……?」

我らがギルドの報通と言えば奴一人しか居ないだろう。だがどうにも、奴の集める報の中にはプライベートなものもってくるからなかなか好を持てる相手じゃない。

「そうだ。……おい、そこに居るんだろ? ってきていいぞ」

「あ、バレてましたか」

団長が突然、ドアに向かって話しかけたかと思ったらひょっこりと件のそいつが現れた。

「盜み聞き……趣味悪い……」

「そんなこと言わないでくださいよ。偶然通りがかっただけ……って、あれ。君達は……」

「あっ、えっ? カイトさんですか!?」

早速、やはりこいつはいけ好かない奴だとじた所で、メンバーがないので初めと変わらず四人全員で參加した和みの館の面々がそいつに反応する。いや、ケイだけは三人に合わせているだけなじだから違うな。

しかし、何故知っているんだ? この男はそんな公に姿を見せる人間でないというのに。

「久しぶり、あの時は助けてくれてありがとう。改めてお禮するよ」

「ああ、そういえば顔見知りだったな」

話を聞くにどうやら、以前ユズ達が二人組の男に襲われていたカイトを助けたことがあるらしかった。だがまあ、それも本當に襲われていたのかどうかもこいつに限っては信じきれないな。報収集の為には味方さえも平然と欺く奴だ。

ユズ達が事前にそこを通ることを知っていて関わりを持つ為だったと言われてもこいつのことだ、有り得る。

「意外だね。まさか団長、この子達を取り込んだのかい」

「こちらこそ、まさかだ。ウチは不侵略をモットーにしているのを忘れたか? ユズちゃん達には協力してもらってるだけだ」

「あ、そうでしたか。いやぁ、普段顔出さないので狀況把握出來ていなくてすみませんね」

よく言う。本當はわかっていた癖に。

ついさっきも言ったようにこいつは報屋、何処から仕れたかもわからないくらいエグい報持ってる癖に自分のギルドの様子を理解していないなんて有り得ない。

「で、だ。カイトは俺の代わりとして彼らのギルドホームで襲撃時の詳しい狀況とか、お前の持ってるのと合わせて調べてきてほしい。それで何らかの答えが出るようであればその場で判斷して行してくれても構わん」

「っ、団長! それは……!」

この男に勝手を許すということだ。そんなこと、こいつに関しては特に、どうして許可してしまうのか。

「大丈夫だ。カイトは格こそアレだが、破茶滅茶やる様な男じゃない。なくとも自ら俺達を破滅に追い込む様なことはしない筈さ」

「ありがとうございます、っと」

こういうことは言うものじゃないが、こんな奴を信用する団長にも問題があると思う。まったく、他の人間も何か言ってやってほしいな。

「それでブラスト、誰に隨行させるのかしら」

「ああ、そうだな。とりあえずお前とユズちゃんとハープちゃんは決まりな。何かあった時に撹したりして逃げられそうだからな」

「二人共、流石ですね!」

まあ安直だ。ユズとハープはセットでより活かせるし、防力は二人共頼りないってレベルじゃない程らかいが敵勢をすという點では単騎で充分な程だ。逃げるという點でもハープは勿論のこと、し展開に時間はかかる様だが例のアレがあるユズもとても輝いている。

副団長は魔法を基とした戦法で相手をわしながら相手の力を削っていくスタイルだ。私の中では最も相手にしたくない人間の一人で、彼は撹のプロと言ってもいい。

さて、この作戦は敵にバレてはいけない故に必然的に人數となる。殘りのメンバーから選抜するとなれば、向かいの毒魔法使いの団長だろうか、はたまた防力を得る為にまた別の団長が連れてきた大楯使いを選ぶだろうか。

どちらにせよ、私はここで襲撃の警戒を――――ん、団長、なんでこっちを見て……?

「おう、クアイ。察し通りだ」

「は?」

「いやだから、お前もメンバーで、そのお前で締め切りだってことだよ」

「なんで……私なの……?」

よりにもよってこいつが護衛対象とは……。

ああ、因みに今護衛と言ったのは、別にこいつが特段弱いからとかそういう訳じゃない。ただ何度も言う様にこいつはかなりプライベートな報を取り扱っている。それ故に外に出れば常に多くのギルドの捕縛対象となり得る。

だったら普段どうやって報収集してるのか知りたい所だが、本人は勿論、カイトを取り巻く報部の人間もそれを明かそうとしない。にも明かさない様な奴らだから嫌われるのだというのに、それを改善しないのだから尚更だ。

今回のも団長はそのを知ってか知らずか私達を隨行員に付けた。敢えて、というのも有り得るがそれならそれで考えあってのだろう。団長だって、こいつになくとも好をもってはいないからそこは大丈夫な筈だ。

そして団長は私の問いに答える。

「いやさ、三人共すのは得意かもしれないが基本一対一のスタイルだろ? 何かあった時にそれだけじゃ心配だし、大勢相手でもやっていけるクアイを選んだんだよ」

「だからって……なんで私が……」

「そう言わないでくれよ。な、頼む!」

そう言った時、団長の目が微かに鋭くなった気がした。やはり何か察しろということなのか。そうなれば仕方ない、乗らない訳にはいかなくなった。

「わかった……しょうがない……」

「助かる。じゃあ、さっきも言ったがこれで締め切るぞ。今回は俺達だけで行くから各団長は戻っても構わない」

「妙にばっかの構だからどうしたもんかと思っていたら、そういうことだったのか。ありがとう、ブラストさん」

「ああ、構わないよ」

どんな事があるとも知れず、厚意とけ取った彼は団長に謝している。

そうして彼らが兵を纏めて各々のギルドホームに戻っていくのを見送る。

ああ、もう日が山に隠れてるな。もうすぐ辺りも暗くなるだろう。今日はやったことと言えばそんなに無かったが割と疲れた。早くリアルに戻って疲れを癒したい所だが私達にはもう一仕事ある。

再び部屋に戻ると改めて、ユズとハープ、副団長、カイト、そして私の選抜されたメンバーと団長だけの會議が始まった。主に明日の行についてで、まったく不本意ながら大まかな目標とルートはカイトに任せることとなった。そこからは別にトラブルも無ければ面白みも何ともない白けた話し合いが進められていった。

私がやたらとこう嫌味ったらしく言うのも、例えばこのルートで大丈夫なのか、コンタクトを取る相手は本當にそこに居るのかなどと質問すれば、『そういう報だから』と片付ける何処かの誰かのせいだ。私は悪くない。

こうしてその後も、順調に進められてしまったつまらない會議という名の確認作業は無事に穏便に平和的に終わった。ああ、終わったとも。

なんだか今日は疲れたな……って、もう何度も言ってるな、私。

そうだな、もう今日は事務作業をしこなしたらログアウトしてしまおうか。あぁ、だがそれにしてもモヤモヤするな。今日はゆっくり風呂に浸かってもう寢てしまうか。そんなことを考えつつ、私はギルドホームの自室のドアを開くのだった。

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