《BioGraphyOnline》第八十三章 燈篭流し

ネクロニアの民家にて鍋をかき混ぜ

テーブルに座る二人の人影に料理を振る舞う

「さてどうしたものか」

俺の神探しの旅はいきなり行き詰まってしまった

頭を抱える俺に同調するようにリッチーも頭を悩ます

「ンー?なんでハーデウス様がいないんだろウ?」

そんな俺達を愉快そうに見るヴァンプが得意げに語る

「ワハハハハ!いないのはハーデウスだけではないぞ?我が見て來た限り神霊種・・・一定以上の力を持った者の姿を見なかった」

高笑いをあげるヴァンプは「しかし」と前置きをいれる

「一定以上の力を持つ者の召喚は可能であるようだぞ?」

グランが神を召喚した時の事を思い出す

「つまり神様も召喚できるって事か?」

「いかにも!」

口角を吊り上げるヴァンプ

「でも神様の召喚って・・・どうやるんだよ・・・」

「神霊種の召喚なんて必要な儀式の道があれば結構簡単なんだヨ」

リッチーがスープを啜りながら笑顔を向けてくる

儀式の道・・・か・・・

「そういえば海の街は神々に対しての信仰心が高かったな」

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「海の街・・・オクトリアの事かな?」

「確かそんな名前だったような気がするな!」

ヴァンプもスープを啜りながら指を俺に向けてくる

「信仰心が高い街というのは総じて神に執著しておるものだ!何か持っているに違いないぞ」

「なるほど・・・けどオクトリアまでどうやっていこう」

改めてマップを開くがオクトリアも例にれず真っ黒だ

サービス開始したばかりの現狀誰も行ったこと無さそうだし、飛んでいくとなると何日徹夜になるかわからない

頭を悩ませているとリッチーが黒い塊に手を突っ込んで笑みを浮かべる

「じゃあボクの船を貸してあげるヨ!」

そう言ってリッチーが取り出したのは數人乗れるかどうかのボロボロの船

「ありがたいけど・・・これ浮かぶのか?」

「もちろんサ!大船に乗ったつもりでいるといいヨ!」

大船は大船でもタイタニック號とかじゃないよな?

リッチーの笑顔に押されてとりあえずアイテムストレージにしまう

ボロボロなせいか重量がさほどなく重量制限ペナルティにも引っかからないようだ

「でも良いのか?リッチーにメリットがあるとは思えないけど」

「頭が固いナー!そんなのその時の気分でいいのサ!」

それでも不満顔の俺を見てヴァンプが高笑いをあげる

「ワハハハハ!ならばハーデウス復活の為の必要経費としてけ取れば良いだろう!」

「ナイスアイデア!それならボクにもメリットがあるヨ!」

「そういう事なら・・・」

俺はありがたく船をいただく事にした

「後は旅の途中の食事と水であるな!」

「食べなきゃ死ぬなんテ人間は不便だよネ!」

そう言いながらスープを飲もうとするリッチーからスープを取り上げる

「死霊は良いよな!こんな味しい料理食べなくても良いんだから!」

「ごめんっテ!悪気は無いんだヨ!」

取り上げられた料理を必死に奪い返すリッチー

悪気が無い分余計にタチが悪いんだよ

「とりあえず水分に関しては々と考えがある・・・食事に関してもアイテムストレージいっぱいにれてるから多分足りると思う」

「じゃあ今すぐ出発だネ!」

「え?うんまぁそうだけど・・・まず海辺まで行かないと・・・」

俺の言葉を最後まで聞く前に椅子から降りて手招きするリッチー

俺は料理キットを手早く片付けてリッチーの後ろをついていく

しばらく街の中を歩くと大きな湖が見えてくる

「この湖をくだったらちょうどヌレー河川に出るんダ!」

なるほどなぁ・・・あれ?

「でもこれって逆にヌレー河川をのぼっていったらネクロニアにつくって事だよな?なんで今まで見つからなかったんだ?」

それによく見ると湖には川となる部分が見當たらない

俺の質問にリッチーが悪戯っ子のような笑みを浮かべて燈篭を取り出す

中には霊魂がっているのか薄いピンクを浴びている

リッチーの意図が読めない俺はアイテムストレージから船を取り出すと湖に浮かべ

「さぁさぁ冒険者!騙されたと思って行ってごらン?」

リッチーに押されるように船に乗り込む

とりあえず沈沒はしないようだが・・・

「それで?これからどうするんだ?」

湖の上でゆらゆら揺れる船に乗りながらリッチーを見下ろす

船の下にはいつのまにか大量の燈篭が浮かんでいるのが見える

「準備は良いかイ?」

リッチーの弾けんばかりの笑みに思わず頷く

それを確認したリッチーが指をパチンと鳴らす

ガタン!という音がしたと思うと船が宙を浮かぶ

「空飛ぶ船!?」

RPGのラストアイテムじゃないか!?

気味に船底をよく見ると

燈篭が一緒に浮かんでひとりでに空の彼方へ流れていく

「とある國では燈篭流しっていう文化があるらしくてネ!それを真似て作った魔法なんダ!」

驚愕の表を浮かべる俺を見てリッチーが楽しそうに笑う

「たまには悪戯も良いもんだネ!」

「ワハハハハ!あの冒険者の驚いた顔!正に悪戯功といった所であるな!」

「アハハ!悪戯大功!だネ!」

リッチーが再び指を鳴らすと船が見えない川に流されていく

「じゃあネ!見知らぬ冒険者!良い旅を!君が帰ってくる日をまっているヨ!」

「ワハハハハ!さらばだ冒険者!また會う日まで」

幻想的な景に魂が抜かれたように呆然と立ち盡くす俺

二人の別れの挨拶を聞きながらオクトリアを目指して無限の大海原に・・・

「おっそい!この速度じゃオクトリアまで何年かかるんだよ!?」

行くことはなかった

現在俺は丸一日かけてグラフ樹海からグラフ海域まで到達していた

徒歩でも半日かからない距離を・・・である

「これ空飛んで休む時は船のほうが良いかなぁ・・・」

ただしあれは何日かかるかわからないうえにが痛くなるからなぁ

「そうだ!」

いつぞやのように幽霊船の背後の木を活

ちょうど良い合に削っていくと風霊を塗っていく

「これに霊を付與すれば・・・!」

途端に水飛沫をあげて全速前進する幽霊船

計畫通り・・・!

杖作の応用で作ったモーターボートである

「お次は・・・」

船の下に置いておいたバケツを確認する

バケツに被せてある濡れマスクを外すと量だが水が溜まっている

功!あとはこれを!」

水の中に手を突っ込んで不純な霊を摘出していくとお目當ての品が完する

「綺麗な水の出來上がりっと!」

海や大気中から水を作るのも考えたが

これが一番飲料水に近い出來だったのである

「そして最後は!」

杖を取り出すと上空目掛けてカマイタチを飛ばす

ボトリという音と共に空を飛んでいた鳥が落ちてくる

これでいざという時の食料問題も問題ないだろう

「あとは何日かかるかだよなぁ・・・」

慣れないモーターボートの作に手こずりながら大海原の旅が始まるのであった

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