このままじゃあ蛍が危ない！！

「蛍から離れろ！！」

健はすぐさま燐の目の前に立つ。

「今蛍と話してるだろ。邪魔すんなよ」

「いや、邪魔させて貰う。蛍…」

「健お兄ちゃん…？」

「走れ」

「え？…」

「早く走れ！！」

そう大聲でぶと、蛍は急いで立ち上がり、その場から逃げる。

そうだ。蛍…お前は逃げろ。お前さえ生き殘れば後はどうにでもなる。

「くそ！！」

燐が蛍を追いかけようと走り出そうと足をかした瞬間、健は刀を突き付ける。

「なんのつもりだ？」

「行かせないぞ」

「せっかくの命を無駄にするつもりか？」

「どうせこの傷じゃあどの道助からない。なら後先ある者にこの命を捧げる」

「そうかよ…」

燐は刀を構える。

「あの構えは…豹零（ひょうれい）の構えか！？」

人斬りの為に作られた構え。危険の為、地下に封印した筈。それを一何処で手にれたのか。

「そうだよ。やっぱり人を斬るのに一番適してるからな」

「貴様はもう人の心すら無くなったか」

「そんなもん最初からある訳ねえだろ。全部演技だよ。赤ん坊の頃から今日までな」

「なるほどな。會った時からお前の笑顔にはし違和があったが、全部演技とわな。驚いたよ」

「そうかよ」

そう言うと、燐は深呼吸をする。そして、

「最後に言い殘す事は？」 

「地獄で待っているぞ月野燐」

「じゃあ先に逝ってろ！！」

刀を突き付け、燐は健に斬りかかる。

あのスピードではもう避ける事は不可能。

せめて一撃でも！

「月野流剣三ノ型流星！！」

燐のスピードを捉える事ができ、尚且つ一撃を與えられる技。

「クッ！？」

それは見事、燐の脇腹に當たる。

よし、當たった！！

と同時に健の意識が急に無くなる。

あれ？何故だ？攻撃はくらってない筈…

そのまま健は床に倒れる。

「…一撃與えただけでも尊敬するよ。あんたは私と出會わなければ多分、もっと強くなっていただろう」

♪

「はぁ…はぁ…はぁ…！！」

道場を出てから蛍はずっと走っていた。

健の言われたとうりに出來るだけ道場から離れる。

お願い、健お兄ちゃん…無事でいて！

そんな事を願いながら走っていると、近くの草むらからガサガサと音が鳴る。

「もしかして…健お兄ちゃん！？」

一瞬そんな希を持つが、それはまた一瞬で絶へと変わる。

「殘念。私だよ蛍」

「燐お姉ちゃん…」

ここに燐お姉ちゃんがいるって事は健お兄ちゃんはもう…

蛍の頬に涙が溢れる。その涙を見るなり燐は、

「あ、今のあんたに興味ないから」

「え…」

さっきまで自分の命を狙っていた相手から急にそんな事を言われ、腑抜けた聲を出す。

「けど、無傷で返す訳にも行かない…てな訳でとりあえず斬られてくれない？」

「何言ってるのか分からないよ！！ちゃんと説明してよ！！燐お姉ちゃん！！」

「うん、じゃあ腹でいいか」

燐はそう言うと蛍の腹を刺す。

「ガハッ！？」

蛍は急いで刀を抜き、その場から離れる。

痛い！！痛い！！痛い！！！何で、何で私なの！？何でこんな痛い思いをしなきゃいけないの！？

蛍の心が一瞬で絶から憎悪へと変わる。

「逃げないで」

燐は後ろから蛍を刺す。刺した勢いで蛍は倒れる。

「これで刺しやすくなった」

倒れた所でまた燐は蛍を刺す。何度も。

「痛い…痛いよぉ…辭めてよ、お姉ちゃん…」

蛍はそう燐に何度もぶが、その聲は燐には屆かなかった。

すると、燐は急に刀で刺すのを辭める。

「これぐらいやれば充分かな？」

刀を鞘にしまい、燐は蛍の首筋をる。

「うん、息はしてる。意識も多あるわね。會話は出來るかしら？蛍〜私が憎い？」

「…にく…い…よ…」

「そっか。じゃあ良いや」

燐は立ち上がり、一言蛍に告げる。

「蛍…貴方は私と同じ、には逆らえない。そう、絶対にね」

そのまま燐はその場から去って行く。

「ま……って…」

そう言って蛍の意識は消えていった。