《【お試し版】ウルフマンの刀使い〜オレ流サムライ道〜》一章01

「これも結局ダメだったか。理想とはまだ遠いな」

行きつけのゲームショップの店長からオススメされて買ったゲームだったが、正直「どんな人の夢をも葉える」なんてれ込みに対し、プレイしてじ取ったのは期待はずれとイメージの現化の限界だけ。

結局はスタイルが合わなくてログインするのも遠ざかっていった。

基本無料だから初めて見たものの、課金アイテムのインフレが過剰で結局は途中から課金ゲーかと溜息吐息。

PCからアンインストールして、に襲われたままベッドに寢転がり、天井を見上げて右手をばす。

き頃に抱いた夢は、現実では実現不可能な馬鹿げた夢だった。

–––サムライになりたい!

父親の影響で時代劇にのめり込み、いつしかサムライになるんだって剣道道場にも通って有段者にもなった。

だけど、それを葉える環境は整ってはいなかった。

そんな時に実現したのが五験が出來るフルダイブ型VRゲームと言うものに出會った。

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ここでなら、今もめる思いが葉うのではないかと考える。

馬鹿げた夢だという事はわかっている!

だけど、それがもし葉うというのなら、是非やって見たい、そう願っていた。

しかし現実とは思い通りにいかないものである。

待てども待てどもサムライ験ゲームは発表されず、オレは中學三年生になっていた。

そこで同じクラスで歴史マニアという共通の趣味を持つ立橋幸雄ことユッキーに一緒にゲームで遊ばないかとわれた。

それがオレが初めて遊んだゲーム『Fantasy War』。

通稱FRはいろんな種族の住まう世界で人間として過ごし、時には戦爭を仕掛けたり仕掛けられたりするというFPSスタイルのゲームだった。

オレはそのゲームの報を見て難を示したが、ユッキー曰く隠し球があるのだとか。

それがジョブツリーであり、その先にあるサムライ、ニンジャの文字だった。

ユッキーは常日頃からオレがサムライになりたがっているのを知っているし、本人は切実にニンジャになりたがっている。そういう共通點があるからこそ、堅なオレなんかと友達でいてくれた。

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そして一緒に遊ぼうとも。

結果的に言えば割と長く持った方だった。目的のジョブはツリーの最後の方にあったのでそれまでは遊べた。

だが、いざそのジョブになって見たものの、思っていたものと違う。それだけの理由ですぐにやる気が失せてしまった。

取り殘されたユッキーは寂しがっていたが、すぐに後を追ってきた。

やはり彼も想像していたものと違っていたらしい。

そんな訳で現実不可能な夢を見て今日も可能に臨み続ける事數年。

オレは高校二年生になり、今もまだき日に見た夢を忘れきれないまま通算10度目の夢の現化を果たせぬまま新たな可能を模索する旅に出ているという訳だ。

の進歩は目覚ましいものの、後一歩理想に追いつかない。それがとても面映ゆい。

そこで再び助言を貰うべく、テーブルの上から端末を取り出すとすぐさま音聲通信を立ち上げた。

宛先は親友であるユッキー。この手の悩みを相談できる相手は彼以外適任がいないからな。

「––もしもしタカか?どうした、こんな時間に」

「ふむ、実はモチベーションが暗礁に乗り上げてな。何か良い救出作戦があればと連絡をれた次第だ」

ユッキーは端末越しに深い溜息を吐いた後、呆れたような聲を告げる。

「またか……今回の『SKK』は結構ハマってたよな?  何が気にらない?  お前の待ちんでいたサムライも完備でウハウハだったろう?  今度一緒に迷宮探索しようぜって約束してたじゃんか」

「済まない。いつも迷ばかりかけて」

「そう思っているんなら今度何か奢ってくれよ」

「……善処しよう。それで、何かいい報はあるか?」

「お前、しは自分で調べようとか思わないのか?」

「言ったろう?  オレの端末は両親に監視されてるって」

「はいはい、タカくんは金持ちのお坊ちゃんですもんねー」

「その言い方はよせ。我が家は一般家庭よりは裕福ではあるが、毎日遊び歩くほどの無駄な金などないぞ?  小遣いだって一般家庭と同程度しかもらっていないのだからな」

「その一般家庭代表の俺から言わせて貰えば十分な金額だってんだよ」

でも、まぁ……とユッキーは言葉をつなげ、面白そうなのならあるぜ?

そう言って紹介してくれたゲームが

Imagination《イマジネーション》βraveブレイブという聞いたこともないタイトルだった。

あとで両親に閲覧記録から何か咎められないかと恐れつつも、その作品タイトルを検索にかけると4件だけヒットした。

たった4件だ。あまり有名ではないのだろうか?

ユッキーの報ではそれなりに遊べるという話だ。

しかし、そこに記されていた報は酷評だけが並べられていた。

聞いた話ではゲーム難易度が高すぎてやってられなくて辭める人が続出と聞くが……どうにもシステム周りにも問題がありそうだった。

でも、名作ばかり遊びすぎてたまには違う趣旨のゲームもやりたいと思っていたところである。

遊んでいたゲームも先ほどアンインストールしたばかり。

これも何かの思し召しか。

そう思うことにして翌日、行きつけのゲームショップから特売で投げ売りされているところを救出し、店長さんから「それだけはやめとけ」というありがたい言葉をいただいて家路に著いた。

早速箱から取り出してインストール。

ユッキーにも買ったことを伝え、それじゃあお晝にゲームの中で會おうぜと約束を取り付けた。

だが、オレはゲームにログインした早々、このゲームの難易度をどこかで甘く見ていた。

所詮見掛け倒しだろうと、心のどこかで信じ込んでいたのだ。

なけなしの活資金で一振りの刀を買いつけ、裝いも新たにいっちょ冒険にでも出かけるか、と言ったところで思わぬハプニングに巻き込まれた。

「うっぉおおおおおおおっ!!」

背後からウサギの群れを纏わりつかせ、オレは全力で草原を走っていた。

やばい!スタミナが切れる!

視界の左端のSTゲージがオレンジからレッドに変わる。

それに合わせてオレの全力ダッシュは勢いを弱め、背後から鈍い音を立ててオレの腹から複數の角が生えた。

あまり多いとは言えないHPゲージは余さず吹き飛び、オレは膝から崩れ落ちるようにしてその場に倒れた。

目が覚めた時に視界には知らない天井が映し出されていた。気づけばベッドに寢転がされており、周りには似たような格好で寢ているものも多くいる。

し話を聞くと、ここは外で死んだ魂が集められる場所なんだとか。

つまりはキルされた後のリスポーン地點という事か。

それじゃあ長居しているのも悪いなと思い、退室しようとするもドアは開かなかった。

親切なプレイヤーからの報によれば、ここから退室するには復活してから30分後という規制があるのだとか。

時間が來るまでし暇だったので報を集めた。けれど掲示板から拾える報と大差なく、あまり実りのいい報を集めることはできなかった。

外に出た時に神父様からお布施をしてくれないかと頼まれる。どうやらここは教會の中の施設であるようだった。

選択肢がなく、斷ることはできないようだ。

仕方がないので頷くと、活資金は一気に半減した。そして外へと通じる扉が開かれる。

もしかしたらここは金を徴収するところなのかもしれないな。金をけ取った神父はいい笑顔で見送ってくれた。

ユッキーとの待ち合わせ場所は町の中央にある噴水がトレードマークの公園だが、時間までまだ幾ばくかの余裕がある。

STはかなければ回復するらしく、教會で休んできたからしっかりと回復していた。

代わりと言ってはなんだがENが30%を切っている。それと同時にぐぅという音が腹のあたりから鳴った。

そうか、このゲームは空腹度まで実裝されていたか。

舌打ちをし、だいぶ減ってしまった活資金と売店で売っている食料の料金を見比べて、妥協して果実を購

資金はとうとう10Zにまで落ち込んでいた。

金がない、金がない、金がない。

なまじお金がない狀態になったことが普段からないためか、ここまで頻拍することにはそうそう無い。普通ここまで一気にお金が減ることなんてないからだ。

散財した一番の原因はわかっている。

それは刀だ。

オレがこの世界でサムライをやるために購した刀が一番の金食い蟲だった。

資金の実に九割を持っていかれ、能は武のジャンルの中でも相當に攻撃力が低い部類である。

更に追い討ちで判明したことだが、オレの選んだ種族は武を裝備するよりも素手の方が強いことが分かった。

つまり刀は完全に無駄な買い

そして選んだスキルも武で攻撃する前提であるため完全に死にスキルになっていた。なんてこった。

運良く攻撃が當たっても、種族特の武裝備時ダメージ半減の効果により、カスダメージしか與えられず、ヘイトだけは取るという窮地を生み出したのだ。

その結果がさっきの悲劇だ。

もう武を買い直そうにも資金不足でどうにもならないし、このまま行こう。

タイトルが想像力と勇気だからな。

どんなに組み合わせが最高のスキルを選ぼうとも、注意を怠れば待ちけているのは平等な死である。

なんせオレが何もできずに死んだフィールドは序盤も序盤の草原フィールドエリア1だからな。

ほんと意味わからん。

リベンジするべく草原に赴くと、そこは膝上までびた草が太をいっぱいに浴びてサラサラと風に靡いている。

ぱっと見Mobの姿は見當たらない。

それもその筈ここのMobはを隠す。

どこぞのゲームみたいに無防備で寢転がっていないのだ。本當に悪質だと思う。このゲームは序盤からPCを篩にかけて來る。

そして上手いこと見つけても、それが罠であると知るのは腹から角が生えてから。

つまり死んでからこのゲームが始まるのだ。別名:初心者殺しの草原とは誰が言ったかそれで通じるくらいには笑い話になっている。

誰もが通る道なのだ。

新規がこの草原に訪れて無事に生き殘った確率は0%。

ただの一人も生かして返さず、PCやNPCのを啜って異常進化したユニークがエリアに跋扈しているのがこの草原の慘狀だった。

せめてユッキーと合流するまでに一匹だけでも仕留めておきたい。

もはや意地であった。

結局あれからオレは活資金が1Zになるまで教會に通い続け、待ち合わせ場所のベンチで黃昏ているところでユッキーと合流し、散々バカにされた挙句、指をさされて笑われたのは言うまでもないだろう。

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