《【お試し版】ウルフマンの刀使い〜オレ流サムライ道〜》一章02
ユッキーと合流後、お互いの報を換した。
ユッキーは種族がネコの獣人で、背はオレよりもし小さい。本人的には小回りが利いていいのだと言うが、リアルの長も高校生男子にしては小さい方なのであまり変わらないなと言うと、脛を蹴飛ばされた。
「痛いな、何も蹴ることは無いだろう」
「マサムネ殿が人の気にしていることを突くからでござるよ」
マサムネはオレのキャラネだ。
獨眼竜のファンだからな。他のゲームでもこれで通している。
「闇影だって、オレの事を散々笑ったじゃないか」
「それはお主があまりにも無謀だからでござるよ」
ユッキー、もとい闇影は今日もバリバリのござる口調だった。
本人的には普通に話したいのだが、どうも種族的な問題でいつも以上に強めにロールプレイをしているのだとか。
理由を聞くと、語尾がニャンになるそうだ。想像しただけで笑ってしまい、その後脛を何回も蹴られた。
冒険をするにも先立つものがいる。
特にこの世界のMobはPCに厳しい事で有名だった。
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ソロで討伐するのは推奨されておらず、同じレベル帯でならフルパーティで挑んで丁度いい難易度だという。
そういう事は事前に言っておいてしい。そう思ったが、勝手に行した挙句、懲りずに何回も死に戻ったオレも悪いか。
まさかここまで酷い差があるとは思わなかったからな。その思い込みに足元をすくわれたのが今のオレである。
この世界では基本的にクエストの処理以外で金を手にれる方法がないのだと闇影は言う。
道理で死に狂いで討伐しても素材しか落とさないわけだ。
普通に考えて當たり前なんだよな。
敵対MobがPCにとってしか利用価値がないゲームマネーを手元に置いておく筈がないんだ。それが他のゲームでは當たり前だったから完全にすっぽ抜けていた。それが洗禮とでもいうべきか、このゲームが流行らない理由であるようにじた。
いつもなら慎重に慎重を重ねて行するのがオレの心だが、どうにもオレの選んだ種族は恐れ知らずな上に豬突猛進らしかった。ある程度を抑制することもできるが、獲を前にした時はもう止まらない。
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自業自得ではあるが腑に落ちない點もいっぱいある。しかしその話は端っこに置いとこう。
話を戻そう。
キルされると資金は減らないが、高確率でバッグのアイテムをその場にドロップする。それはレア素材であればあるほど高確率で當選する。
そのせいで討伐アイテムが手元になく、かつ教會経由で街に帰ると手持ちの半分をお布施として徴収される。なんとも世知辛い現実が待っていた。
ステータスが減するようなデスペナは無い。
ただ教會に強制で30分拘束される挙句、所持金の半分を持っていかれるぐらいだ。ある意味軽いとさえ言える。
だからこのゲームで死ぬと言う事はそこまでリスクがあることでは無い
ただし一文無しコース待ったなしではあるが……
そこで貧乏人が小金を稼ぐ為に採用されたのがこのクエストボードだ。
PCを含むならず者達はここで仕事を請け負って、功報酬をけ取るのだ。
実にゲーム的でいい。
しかしだ、このならず者たちが寄せ集められた街のトップが管理している組合がホワイトな企業であるはずがなく、クエストを達しても素材の品質が悪いとあたり前にピンハネしてくる。
そのおかげでこの街には腕の悪いならず者が多く、チンピラやゴロツキが支配していた。
このゲームでは人の頭の上に名前もカーソルもない。
ある意味では不便だが、この配慮のおで沒は他のゲームでは味わえないものとなっている。
そういう意味ではこのゲームはいつでもいける異世界と言って差し支えないだろう。難易度はハードすぎて一般人だったら死にたくなる現実しか待ってない。
でも死ねない特典付きだ。嫌になるな。
さて、何度も言うがこの世界は弱強食でり立っている。強いものが奪い、弱いものはこの場所を去る。そういう構造が出來上がっていた。その為か弱者をカモるために今日もどこかで強者が待ち伏せしているのだ。
まったく、ここは世紀末の荒廃した世界かっつーの。
ある意味では平等で、現実よりもだいぶ過酷。
だからこそやりがいがあるのだが、多くのプレイヤーの要とは大きく外れたためにここへログインするプレイヤーはない……
筈なのだが、どういう訳か人通りも多く、ログイン數がないとは思えないぐらいにクエストボード前は活気に満ち溢れ、賑わっていた。
つまりPCに限らずNPCも働かなければ食っていけないのだ。世知辛さがにしみるぜ。
「では適當に見繕ってくるでござるよ」
「頼むな」
闇影はるように人垣をって歩き、素人でも集めやすい採取クエストをいくつか選択してそれを組合に持って行くとスタンプカードのような紙切れを手渡し、そこに印鑑を押してもらっていた。
「なぁ、そのカードってなんだ?」
「ん?  これは組合カードでござるよ。マサムネ殿はまだ購していないでござるか?  持っておくと々と便利でござる」
「へぇ、いいことを聞いた。購と言ったな。いくらかかるんだ?」
「これが結構厳しい値段でござってな。所持金の1/4を持っていかれるのでござるよ」
「それって低くてもいいのか?  今手持ちが寂しくてな」
なんせ手持ちは1Z。
つい先ほど教會では神父から苦蟲を噛み潰したような顔で出口まで案されたからな。1Z以下は半減されないようだった。
「別に低くても良いでござるが……よくは思われないでござろうな。この世界では信用取引が基本でござる。初期投資をケチれば後でどんなに優秀な績を収めようと、落ち込んだ信用を取り戻すのは難儀でござろうなぁ」
「それってまずくないか?」
「実に不味いでござるよ。ここにはここの生活があり、報というのはどこでどう広まっているかはわからないものでござる。あまり良くないが溜まると種族全であいつは悪い奴だと思われるでござる」
「それって死にすぎて教會にお布施が払えなくなっても溜まるか?」
「そうでござろう。もしマサムネ殿がお金を取る仕事を生業とした時に、手持ちがないからっていう理由で支払いが免除になったらどう思うでござるか?  もちろんサービスだけは一丁前にけていって」
「ぐむっ……それはムカつくな」
「つまりそのがたまりすぎると良くない方向に流れて行くのでござる。というか結構死に戻りしたのでござるか?  マサムネ殿ともあろう方が?」
「うるさいぞ。なぜかこの種族は慎重に待つということができないようだ。オレとしたことが選択を失敗してしまったらしい。どうすればいいと思う?」
「どうせ見た目のカッコよさだけで決めたのでござろう?  うくくく」
「そうだよ、悪いか?  狼かっこいいだろう?」
オレは種族選択でヒットアンドアウェイスタイルの『ウルフ』を選択していた。
このゲームではLV上昇で上がるステータスが種族ごとに違う。
別に極振りは嫌いではないが、一番長値が理想的だったから選んだわけだが、そこに大きな落としがあったわけだ。
それがこのゲーム特有の格変調システム。
その種族になりきるためのサポートが、唯一の利點を殺しに來ていた。
まさか獲を見つけるとヨダレを垂らして飛びかかってしまいたくなるに支配されるとは。
そのおかげで背後を無防備で曬し、ホーンラビットに命を刈り取られること十數回。我ながらバカじゃないかと思う。
気をとりなおして、リベンジマッチだ!
獲を捕捉して逸る気持ちを抑えきれないオレに、闇影が待ったをかける。
「なんだよ闇影、今がチャンスだろう?」
あんな無防備を曬しているホワイトラビット。周囲に何も居ない狀況で、千載一遇のチャンスだ。
だというのに闇影は首を橫に振ってある一點を指さした。
「その種族の格変調は相當厄介でござるなぁ。あの冷靜沈著なマサムネ殿が見る影もござらん。
そこをよく見るでござる。ホワイトラビットは一匹でなく周囲に全部で三匹。そこの他にし離れた場所のあそことあそこにもう一匹。そして三匹以上はお目付役としてホーンラビットが隠れているでござるよ。気づいいておったか?」
そう言って指をさした場所には確かに他2のホワイトラビットが潛み、最後に示した地點にはこの場所にそぐわない大きめな石があった。
よくよく見ればそれは石に擬態した灰のウサギであることがわかる。
オレが殺意を抑えるとそのウサギは警戒を解き、ひょこりと頭を上げた。
その額には人ひとりを貫通させることに長けた立派なツノが生えていた。
「アレが、ホーンラビットか。実を見るのは初めてだ」
張からかが乾く。
いつも不意打ちでワンキルさせられてきた原因だ。憎くないわけがない。ログに殘された死因、そうか……アイツが!
全にザワザワとしたが沸き立つ。
腰にさした刀に手をかけ、尋常ならない程の殺気を周囲に散らす。
それを諌めるようにして、闇影の手刀がオレの額を叩いた。湧き上がる殺気が霧散され、求不満で悶える。
「何すんだよ」
「また悪いが出ていたでござるよ?  どれだけ煮え湯を飲まされているのでござるか。もうすこし堪えてくれなきゃ倒せる獲も逃してしまうでござるよ?」
……また、飲み込まれていたのか?
一瞬だけ闇影に謝して、すぐに狀況を再確認。先程出した殺気により、ホーンラビットは再度警戒態勢にってしまった。
「すまん、堪え切れないんだ。また暴れ出しそうになったら頼むぞ」
「もうすこし自制はできぬでござるか?  このままでは野良パーティにも拾ってもらえぬでござるよ?」
「…………善処する」
「そこはマサムネ殿に期待するしかないでござるか」
「それよりもだ、何かプランはあるのか?」
ここで様子を伺っているだけと言うのはとても歯がゆい。すこしづつ距離が離れていく対象に、オレはなからず焦りをじていた。
「先にホーンラビットを牽制。ホワイトラビットの確保は後から、がウサギ狩りの常套手段でござるな」
「任せられるか?」
「どちらを?」
「そりゃもちろん……」
ホーンラビットの方を……続きを言いかけた時、闇影の顔がムカつくような、ニンマリとしたものに変わった。
オレはこの顔を知っている。
弱みを握ったと確信した時の顔である。
そしてオレがコイツを頼ると言う事は、貸しを作る以上に、いちいち笑い話としてしつこく掘り起こしては蒸し返すのをよく知っていた。
だからそこから先の言葉を飲み込んで、口を噤んだ。
「……ッ、角つきはオレがやる。闇影、援護を頼むぞ!」
「さっすがマサムネ殿。そう言ってくれると思って準備は萬端でござるよ!」
闇影は楽しそうに笑い、オレの後に続いた。
こうなったら自棄だ、オレの本気を見せてやる!
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