《【お試し版】ウルフマンの刀使い〜オレ流サムライ道〜》一章05
さて、再びこの地に戻って來たわけだが。今回はバッチリ下準備をして來たぞ。
前回はあんまりにもお末だったからな。まさかウサギを弱らせてからトドメをささないで食らいつくと『捕食』できるとは思わなかった。
仕れた報によればそれでENはなんとかなるらしい。
さてと、早速腹ごしらえから始めるか。このゲームはどんなにログアウト前に満腹にしようが、ログイン時はENが40%まで落ち込むと言うクソ仕様がある。
前回は闇影がいたからなんとかなったが、今回は居ない。なんの約束も取り付けてないし、始めたばかりのゲームで頼られる兄貴分として活躍していることだろう。袂を別った、というか自分から勝手にやめておいて都合が悪くなったからとこっちに呼び込むのはなるべくしない方がいいだろう。ただでさえ迷かけてるしな、これくらいソロで乗り切って、次に會うときまでに驚かせるぐらい長してやろう。
だから今日はオレ一人で、なんとかしなくちゃいけないのだ。
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目標はすぐ見つかった。だけどすぐに飛び出さない。冷靜に、慎重に、罠にかかって完敗した慘めな自分を思い出して堪えた。
まずは近衛役のホーンラビットを探す。闇影もあれを放っておくのは々と厄介だと言っていたからな。時間をかけずに刈り取る。大丈夫だ、リズムはがまだ覚えている。
よしよし、案の定居るな。
ホワイトラビットにいつでも駆けつけれる格好だ。陣形はBタイプ。目視できる範囲で遊ばせて、自分が殿を務める。
いいぞ、背後から強襲しやすい格好だ。
今回の目的は素材集めではない。
だから殺しきる必要はない。
……でも、殺さないと安全に食事ができないのなら、やっぱり殺すしかないか。
頭の中で瞬時に判斷し、刀に手をかけ、ホーンラビットに狙いを済ませて……
刀を鞘ごとぶん投げた。
どうもオレは々と勘違いしていたらしい。刀を納刀すれば裝備解除だなんて思っていたが、鞘をぶら下げていれば、それも裝備狀態だと気づかなかった。
だから今回は鞘ごと投げた。
途端に全に力が漲り、オレは投げた刀を追い抜く勢いで駆け出す。
が軽い……これが、本來のポテンシャルなのか?
直撃すれば軽くないダメージを直したホーンラビットは警戒狀態から即座に反応、回避行をとった。
しかし數ある行パターンは既に割れている。その場でをかがめるか、その場から消えるようにして走り出すかの二択。そしてその個は後者を選ぶ。
予測通り。
既に先回りしていたオレは、通せんぼをしながら泡食ったホーンラビットの立派な角を握り込み、を翻して一本背負い。そこまでの大きさが無いからそのまま振り抜く。もちろん<払>で加速させて。
地面にを強打したホーンラビットは直ぐにきできないようだった。
チャンス!
そこへ丁度よく遅れて飛んできた刀を右手一本でけ止め、鞘が遅れて刀に接、右腕に衝撃を與えながらるように後方へ弾かれる。
ここだ!
このタイミングで刀を引き抜く。
ホーンラビットはまだ気絶中で背後はガラ空きだ。
刀使いには抜刀というものがある。
それは鞘をり付ける程の速度で抜き打ち、剣筋の見えない一撃を繰り出すことで「不意打ち+會心率上昇」を付與することが出來る。
狀況はオレに味方してくれていた。
奇しくもバックアタックの格好。そこへ抜刀+スキルを全部乗せで振り抜く!
キ゛イ゛ン゛ッ!
しかしそれは想像の斜め上の威力を発揮した。まるで空気の壁を切り裂くような鈍い音を発しながらホーンラビットのを縦に両斷し、そのまま數メートル先の大地をもえぐった。威力がデカすぎる。
「え……?」
想定外の破壊力に自分でも驚く。
だが呆けている場合じゃない。
護衛役を失ったと直したホワイトラビットは耳をピンと立てて直立すると、示し合わせたように、三方向に散った。
くそ、闇影がいる時は楽な陣形かと思ったが、これはホーンラビットが囮になる方の陣形だったか!
待て、逃げるな!
「メシィイイイイイ!」
無我夢中だった。
いつもの調子で鞘ごと投げて、見事にヒット!  一匹を気絶させて捕まえる事に功する。
良かった。他の二匹には逃げられてしまったが、これだけでも確保できて本當に良かった。ENは殘り32%。まだ余裕があるうちに食べてしまおうか。
しかし、どうやって?
まだ暖かい、生きている、気絶しているだけのホワイトラビットをどうやって食べるんだ?
殺しちゃうとの粒子になっちゃうから、この狀態で食べるのがベストなんだよな?
悩んでいる間にENが30%を切る。
ぐるぐるとお腹が鳴り始め、頭がくらくらとする。確かにこんな狀況じゃあ、潛伏行なんて出來るはずがない。
それに、集中力も散漫になってきている気がする。腹、へったなぁ……
目の前には暫定食料。
ジッと見てたらなんだか味しそうにじ始めてきたぞ?  今までは忌避があったけど、これはアレかな?  そんなこと言ってられないぞって格変調システムが働きかけてくれてるのかもしれない。
いけるか?  もう行くしかないのか?
えーい、いったれ!
ガブリ!
「…………」
そこからはよく覚えてない。
ただ夢中で目の前のものを食料として認識、咀嚼して飲み込む作業が続く。
數分ほどその作業を続けると、ひと抱えほどあるホワイトラビットは腕の中から消えていた。の粒子になった反応はない。食べた、食べてしまった。
いつしか空腹の音は消えていた。
ENゲージは50%になっていた。
たった一匹で街で買うと同じ回復度。
馬鹿げている。これは街で食事を取るのが馬鹿げていると思わせるシステムだ。
口許を手の甲で拭い、まだ食べたい。
が起き上がる。
空腹は治まったが、全然満足できない。
食べたい、もっと食べたい。
それだけを考えて行する。
不思議と作業とじていた皮集めよりも気持ちが高揚する。
食への執著は人種を問わず、と言うことか。
幸いにしてこれはゲームだ。倒しすぎて絶滅に追い込むと言うことはない。
オレはの赴くままに食事のための狩りを行なった。
結果として、一度の食事で2匹摂取すれば満腹になることがわかった。
1匹で20%回復すると思っていたが、1匹あたりの回復上限が50%までなだけで、10%を切った狀態で食べても50%まで回復した。
そして続けざまに食べることで一度に100%まで持っていけることを今日一日をかけて実する。
EN100%は凄いぞ。いつもよりに力がみなぎるような、他のゲームでバフスキルをかけられているような狀態がお手軽にじ取れるんだ。
だが重複するタイミングはシビアだ。
多分2分もない。
一匹食べてから狩りにいくと大して回復しなかったことから目の前に二匹分用意しなければ50%までしか回復しないのではないかと言う結論に至った。
いつしかオレは捕食行為について何の疑問も持たなくなり、獲を食料として認識していた。
ますます人と一緒に暮らせないことを悟りながらも、まるで反省した様子もないままに今日もウサギたちを追いかけ回した。
どうもこの種族は野生化前提である気がしたからだ。あいにくとお仲間には未だ遭遇していない。ただでさえログイン人數がないゲーム。
街にはあんなにたくさんいたのに、草原マップにはほとんど人がいなかった。
そういえばここは序盤のマップだったな。そのことを思い出してエリアを切り替える事にした。きっと先のエリアに行けば誰かしらいるだろうと言う考えからだ。
この時オレは気楽に考えていた。
次のエリアが、一筋縄ではいかない生たちが跋扈する世界だとも知らずに……
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