《【お試し版】ウルフマンの刀使い〜オレ流サムライ道〜》一章08
今日はよく真上を取られる日だな。
オレの真上には太を覆い隠すようにしてグリーンフロッグが陣取り、その重量ごと両手足を広げての渾の一撃を狙っていた。
それはまさに暴走狀態とも呼べる行であり、オレが回避を功するたびに、グリーンフロッグにダメージがると言う回避ゲームに切り替わっていた。
しかし相手は暴走狀態。ST関係なしにジャンプしてはオレに狙いを定めるのに余念がない。
足を切り落とそうにも、あのブニブニとしたを貫通させるには相當骨が折れる。
それに、足の裏にじる泥濘み……
回避に専念しているうちに、気づけばオレは泥濘みの深い場所に追いやられていた。
この狀況はたまたまだろう。なにせグリーンフロッグも周りが見えていない狀態だ。
オレにのみ狙いを定めてボディプレスに躍起になっている。そんな計算ができる頭を持っているなら、もっと苦戦をしているところだ。
あのジャンプをなんとかしないと……そうは思ってもオレにはそれを切り抜ける策がない。
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今のオレには早さを生かした斬撃を打ち出すことができない。
あの飛ぶ斬撃を捻り出すには、スキルの足し算が必要だ。
しかし持っている奴だけだと全く足りない。その為にもバックアタックと抜刀が必要であるが……
そんな事をさせてもらえる余裕はどこにも無かった。
なんと言ってもグリーンフロッグの溜めモーションから飛び上がるまでの速度が異様に速く、あとは両手足を広げるのみだったが、格差からオレは逃げるのに必死だった。
逃げ切った先で真上が暗くなる恐怖ときたら、ほんとヤバいぞ?
次にき出すまでにあの重量が迫ってくるスリルなんてそうそう味わえるもんじゃない。だから、ぶっちゃっけ足切ってやろうとかそんな気も、余裕もなくなっていた。
「だぁあああらっしゃぁああ!」
間一髪。ギリギリのタイミングで隙間から転がり出る。
もうSTも無いし、立ち上がる気力もなかった。
次飛ばれたら死ぬな、所詮オレもここまでか。死ぬ覚悟を決めて、よろよろと立ち上がるが……
あれ?  おーい。
グリーンフロッグは自分の重に押しつぶされて、そのまま立ち上がる事なく、の粒子に包まれていた。
ビビらせやがって、最終的に自じゃねーか。
でも……ま、勝ったから良いか。
心の中でガッツポーズを決め、力したに湧き上がる高揚。
來た來た、レベルアップだ。
LVが2から3に上がり、力、筋力、敏捷が3から6へと上昇した。
しかしあれだな、レベルが上がったからって都合よくHP、やMPにSTが全回復するような事はないらしい。
ほんとクソだな、このゲーム。
ちょっと休んでSTを30%まで回復させてから、行しようと考えていたところ……
「おいおいおいおい……冗談だろ?」
ドシン、ドシンとカラフルな合いのカエルがオレ目掛けて飛び跳ねて來ていた。數にして五匹。それも先ほど相手取ったグリーンフロッグより若干デカイのも混じっている。
流石にこの狀況で継戦する気力は全くない。特に同時に敵に回してうまく立ち回れるかどうか……ぶっちゃけ一匹を相手するだけでいっぱいいっぱいだった。だのに五匹を相手にして立ち回る事を要求してくるこのエリアの異常に恐れをなして、一目散に逃げ出した。
ああいうのはもっと軽くこなしてから相手取るもんだろ。だからこれは戦略的撤退である!自分に言い聞かせるようにして全力で逃げだしていた。
「ぶはーー、はーー、はーー、しんどっ」
長い溜息を吐きながら、鞘を杖代わりにしてよろよろと立ち上がる。
どうやらあのカエル供はエリアを越えてまで追いかけては來ないようだった。
オレがこのゲームで唯一謝した瞬間だった。
「エリア2に比べれば、エリア1は天國……ってな」
なんと言っても足場が固定されているし、油斷さえしなければそうそう死ぬ事はない。
「いや、油斷すれば死ぬ時點で相當ヤベーか」
いつのまにかこの世界に染まり切っていた自分に驚き、そして力した。
力ついでにグゥと腹が鳴る。
「そういや……メシ食ってなかったか。今日は逃げ回って疲れたからな。自分へのご褒にホーンラビットでも食べようかな」
その時だ、エリア1に見慣れぬ人影があった。
まぁゲームだし普通人いるよな。過疎すぎてあんまり見かけなかっただけなのでびっくりしたけど、うん。
もうすっかり自分のマイホーム気分だったからな。
遠くから見た想だけを伝える。
ぶっちゃけ関わり合いになるつもりはないからな。オレは一人でもなんとか出來る、いやしてみせる。そう思いながらマイルームに紛れ込んだ誰かさんをジッと凝視した。
全的にはずんぐりむっくりとしていた。獣人……的特徴的から鳥人(バーディアン)だろうか?
袖のり切れたシャツからさらけ出した細腕の先には手羽先……いや、大きな翼になっていた。まさに飛ぶ為に進化したという事か。
髪は薄茶で、肩から大きなバッグを掛けている。顔はよく見えない。手には解用のナイフを持ち、ホワイトラビットに狙いをつけて、を屈めてにじり寄っていた。
PCかNPCかは分からない。
見るからにきは素人だ。
こういう仕事は全然したことがないのは丸わかりで、もしかしたらオレと同じ初心者じゃないか?  と淡い希を抱いた。
たった一人で、ホワイトラビットに薄して、剝ぎ取りをするのだろう。
しかしだ、そのバーディアンを遠くから見つめる視線がある。オレじゃないぞ?  もっと剣呑な気配を纏った。言うなれば殺気を纏った気配とでもいうべきか。素人ほどそういうのに疎いためか、あれだけ接近されてもまるで気づいた様子がなかった。
しずつだが灰の皮の……石に擬態したそいつが、近づいている。
だが助ける気はなかった。つきまとわれても面倒だ。
正直自分だけで一杯というのもある。
それにあいつ、鈍臭そうだし。
嫌い……と言うか苦手なタイプだ。
あとは普通に橫毆りはネチケット違反だしな。
このゲームにそんな常識がカケラでも殘っているとも思わなかったが、オレは見て見ぬ振りをすることに決めた。
「オレは助けるわけじゃない……あれはメシ、あれはメシ」
念じるように唸って、オレは行を開始した。
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