《【お試し版】ウルフマンの刀使い〜オレ流サムライ道〜》一章10

「鞘?  そうそう壊れるものじゃ……何これ!?!」

リネアは何気なく放っておいた鞘を言われるがままに取り上げると、あまりにも原型を留めていない狀態に、目を白黒とさせて悲鳴をあげた。

「何をしたらこうなるの?」

「戦闘面でもし頑張って貰ったんだが、元に戻るだろうか?」

「ここまでとなると一から作り直したほうがいいよ」

「そうか……」

と、言うわけでその道のプロと呼ばれるガデスという刀鍛冶の所へ頼みに來ていた。なんでもリネアの知り合いだと言うことで、ちょうど今暇してるからと二つ返事で了承をもらう。

そこでオレの手持ちがまるでないことと、リネアの恩人と言うこと、タダでなんでも作ってあげると言った手前、鞘を直してしいと申し出た所まで話した。

「マサムネ、あんたのことはこっちの嬢ちゃんから聞いたぞ。隨分腕が立つそうじゃないか。今日は頼りにしてるぜ?」

「そんな、オレはまだこのゲームを始めたばかりの駆け出しですよ?  それに彼曰く、常識もないようですし……」

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リネアの方をチラリと見ると、

「えー、謙遜しなくてもいいのに。マサムネさんは十分強いし凄いよ?」

と、返ってくる。

謙遜どころか本音だけどな。

なぜかこの人にとって、オレと言う存在は面白い人材らしい。

ガデスは種族選択でドワーフを選んだPCで、ガッチリしたに腰蓑、なぜか上半という奇妙な出で立ちの男だった。

肩に擔いだハンマーはオレが直撃を食らえばひとたまりもない大きさを誇り、それを片手で軽々擔いで持ち上げてみせる筋力から相當のLVの高さをじさせる。いや、種族によってステータスに差が出ると言っていたから補正の差か?

よくわからんが、近接戦闘を仕掛けたら手痛い目にあいそうなオーラを醸し出している仁だ。出來るだけ敵に回したくはないな。

オレ達が連れ立って今向かっている場所は草原のエリア1。

ただし獲はMobではなく石のオブジェクト。ここで採掘を仕掛けるというのだ。

オレの役目はただの護衛だ。

だがホワイトラビットを狙わない限りホーンラビットはちょっかいを出してこないので、完全に暇なのだ。

「暇してるならその腕前を見せてくれてもいいんだぞ?」

「いいのか?」

「Mobに目もくれずに石と睨めっこする手合いはMobから見ても変人認定されるらしくてな。こっちにはちょっかい出してこないからお前の戦い方とやらを見せてもらおうか。あんな壊れ方はどうやって生まれるのか、その理由と、改良方向の見込みがしい」

なるほど、一理ある。

職人手ずから作ってくれると言うのだ。

刀を頼めば高くつくが、オレの手持ちは安だ。さらにその鞘とくれば耐久度だけは一丁前。ヤイバを納めて著可能の遊びを設ければ完である。

その上で皮系統もよく使うと言うことだ。柄を編みこむのに使うため、品質が高ければ高いほどいいのだそうで、今回はリネアにもついて來て貰っていた。

今回はパーティを組んでドロップを分散、數を多く持ち帰るのが目的だ。

オレがトドメを刺してもいいことは何もないので、そういうのはパーティメンバーに任せることにした。

「よーし、じゃあ俺はここで仕事してるからよ、お前らは皮頼むな?」

「ああ、それぐらいお安い用だ」

「言うねぇ、功報酬次第ではつけてやる。せいぜい気張れよ」

「オレはやれる事をするだけだ」

「いってらー」

ガデスとリネアに見送られながら、早速オレは行を開始した。今回は人に見られている形だから、しだけ張するな。変に思わなければいいが……

いつも通りに四足歩行。からの鞘ごと刀をぶん投げて気絶させ、刀を裝備しないように鞘にはれず、<払>で弾かせるように刀から分離させると、そのまま勢いよく刀を振り下ろした。

一・刀・両・斷・!

やばい、即死させてしまったか。

もう一回だ。

真上から落下してくる鞘を刀で用にけ止めて納刀。そのまま鞘を咥えて四足歩行。

からの飛び蹴りでホーンラビットに不意打ち+<払>を付與した掌打で臓に直接ダメージを與える。

今度はし殘ったな。よし!

刀の鞘でホーンラビットを引っ掛けて、擔ぐようにしてリネアの元に戻った。

「どうした、リネア?  変な顔して」

しかしリネアは変な顔で固まっていた。念の為聲をかけてから、注文された品を地面に置く。

早く処理してくれないとホーンラビットが気絶から復帰してしまうから心配で仕方ない。ガデスもいるから大事にはならないと思うが……

「さぁ、やってくれ。オレは次の獲を取ってくるから。失敗してもいいように多めに持ってくるな」

言うだけ言って、オレはその場を後にした。

「……なんだアレは?  嬢ちゃん、あいつ本當に初心者か?  ソロであんなにも生き生きと戦うやつなんて初めて見たぞ?」

すぐそばで採掘作業をしていたガデスが目をまん丸くして驚きの聲を上げた。

よく見れ顔には所々冷や汗が流れ落ちていた。それはフィールドによる熱量だけではないだろう。

「うん、本人はそう言ってたよ。知ってて當たり前のことも知らなかったし、選択スキルも教えて貰ったけど、あんなきできるような構じゃないって」

リネアも同である。どんな風に組み込めば、スキルをああも巧みに扱えるのか、リネアは考える事もできない。

たちは一般的に単品で扱うか、二つくっつけて扱う知識しか持ち得ていなかった。

「ふーん、訳は?」

「斬・刀・払」

「そりゃまた……なんとも攻撃的な」

ガデスは苦笑した。

リネアも同じように乾いた笑いを浮かべ、ホーンラビットのモコモコを高品質で手する。

ガデスはアイテム欄を確認するなり顎をしゃくりあげるようにして口笛を吹いた。

「嬢ちゃん、腕は落ちてないようだな。むしろ上がったか?」

「どうかな?  なくともマサムネさんほど狀態のいい素材を持ち込んでくれる人は見たことないよ。あたしは何にも変わってない。だからね、この人材を逃す手はないって無理矢理フレンド組んじゃった」

「なるほどな。じゃあこっちはあいつの仕事に見合うだけのものを仕立ててならにゃ。あんな使い方は流石に想定していないからな。アレじゃあボロボロになるわけだ」

「そうだね。あたしの腕じゃ彼のお眼鏡にかなわなかったから、親方、頼むね?」

「おう、任しとけ。得意分野だ」

そんな會話が裏にされているとも知らず、オレは攻撃パターンを模索していた。

ソロでいた時は倒す事に必死だったけど、パーティ戦では瀕死にさせる事も大事なのだと知った。だから攻撃手段の引き出しを増やすのに著目した。

まず、斬るのはダメだ。殺しきるには最適だが、傷が付くほど素材としての価値が落ちることから、弾戦がベストだろう。鞘で毆りつける分には構わないようだな。有効打になるのを取り上げて仕留めてみる。

真正面からの取っ組み合い+貓だまし+背後を取ってからの<払>掌打。

これは打撃に敏捷を使わないパターンだ。STの消費はなくて済むが、いかんせん、ダメージの減り合が心許ない。ホーンラビット相手だと直後に反撃を食らう。これは無しだな。

だが……角を摑んで足払い。そのまま地面に叩きつけて気絶を狙う……よし、いいじだ。

ふむ、相手が突進のモーションにると數秒直が発生するみたいだ。

走り出したら止まらない。それこそ目標めがけて一直線。

その隙をついて投げ飛ばすのも組み込めばいいじに減らせそうだ。

そいつを抱えてリネアの元に戻ると、いい笑顔で出迎えてくれた。どうやら高品質を手にれたようだ。頬がし緩んでいた。

流れにしてそれを10回ほど繰り返して、その日の素材集めは終了した。

なんでもアイテム欄がいっぱいになってしまったそうだ。確かに、網フィルターにもカバンがいっぱいになったアイコンが付與されていた。それは背負い袋がはち切れんばかりに膨らんでいる絵だった。

午前中の死闘を潛り抜けた直後だったせいか、酷くあっさりと終わった気がするが、それはオレだけで、ここから先はガデスの仕事だ。

オレは街に帰るなり、ガデスの工房にお邪魔すると、そのままアイテムを取り出してその場に出した。

しかし、

「おい、マサムネ!  それはどこで手にれた!?  言え!」

なぜか凄い形相でガデスに詰め寄られた。解せぬ。

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