《【お試し版】ウルフマンの刀使い〜オレ流サムライ道〜》一章12
ガデスの工房を出た後、リネアが組合に行くと言うのでついて行くことにした。
どうせ鞘が治るまで暇だし、抜きのまま持ち歩くのも危ないだろうと刀もリネアに預けてある。ついでに耐久度の回復も頼み、本格的にやることを失って暇だった。
組合に著くと、リネアは早速仕れたばかりのモコモコ皮を査定してもらい、ズシリと中が詰まった布袋をけ取っていた。
オレがあのとき失敗しなければ闇影もあそこまで落膽しなかったのだろうか?
いや、リネアの言い分じゃ、どのみち種族的に無理だろうと暗い考えを振り払う。
「おまたせーマサムネさんも報告あるなら行ってきて良かったのに」
「報告も何も、オレは組合カードを持ち合わせていないからな」
「え!  今までよく生きてこれましたね。お金を稼がないと消耗品も買い足せないでしょう?」
リネアは大変驚いたような顔をしていたが、オレの草原での生活を話すと何故かかわいそうな人に向けるような目で見られた。
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そこで彼の中でどんな結論が出たのか、突拍子もないことを言ってきた。
「そうだ!  これを機にマサムネさんも登録しちゃいましょうよ!  うんうん、それがいいですよ」
一人勝手に納得して暴走しだすリネアにチョップをれて黙らせる。
頭部を両手で押さえつけながら恨みがましげな視線を投げかけてくるリネアに対し、オレは呆れたように肩をすくめた。
「待て待て。勝手に暴走するな」
「いきなり毆りつけるなんてひどいです!」
「そんなに強くはしていないはずだぞ?」
「マサムネさん、LVは?」
「3だな」
「そうですか。あたしは2です」
「そうなのか」
「そうなんです!  ところで知ってますか?  この世界ではLVが一つ違うだけで大人と子供ぐらいの差があると言うことを!」
「つまり?」
「すっごく痛かったです。コブできちゃうかも」
両目を泣き腫らしながら訴えてくるリネアにオレはただ困するしかない。
「おいおい、組合で堂々と泣かせるとはどんな外道だおめー」
その言い爭いを癡のもつれと見たのか、変な人が絡んできた。
「部外者は引っ込んでいろ。これはオレと彼の問題だ」
「おうおう兄ちゃん言ってくれるね?  実際彼は泣いているわけだが?  何か言うことはないのかい?」
ガラの悪いやつだ。
オレは鼻を鳴らし、仕方がなく「済まなかった」とリネアに謝罪した。
リネアは仕方ないとばかりに「いいですよ、でもこれからは気をつけてくださいね?  これでもか弱いんですから」、と返してくれた。
その返事の容については言い返したいことがいくつかあるが、また変なのに絡まれても困るので黙っておいた。
これで場は収まったのだが……
颯爽と助けにった男は、実は自分こそが邪魔者であるとわかるや否や顔を真っ赤にして怒鳴りはじめた。
「そう言うこっちゃねーーんだよっ!」
ガチギレである。
どうやらオレを追い払った後にリネアにつけ込む下心があったらしい。
目を見ればわかるぞ?
鼻息を荒くして喚き散らす姿は思ったことがうまくいかなくて切れる子供と同じものだった。
やめとけ、この子見た目のかわいさの割に結構腹黒いところあるぞ?
そして惚れたが最後、利用されるだけ利用されてポイ、だ。
殺伐とした環境にオアシス求めたいんなら他にゲームに言ったほうがいいぞ、マジで。
そう言い含めたのだが聞く耳を持たず、しまいにはこんなことを言い出した。
「勝負だ!  決闘を言い渡す!」
どうやら引き返せないところまで無意識に追い込んでしまったのだろう。
オレはリアルでもそう言うことが多々あった。學校では闇影……もといユッキーが間にってくれるが、都合よくインしてくれるわけでもない。
ここは自力で切り抜けるしかないか。
「待ってくれ。今オレは武を修理に出している。そんな狀態でLVが上の相手と戦うのはフェアじゃない」
「逃げる気か?」
「そうじゃない、オレは素手だ。だからあんたも素手で相手してもらいたいとそう言った」
「獣人相手に組手で挑むだって?  バカ言うな。そんな噓誰が信じるって言うんだ!  そう言ってオレを一方的にボコボコにするつもりだろう?  騙されんぞ!」
何故そうなるのだろうか?
オレは眉を潛め、リネアに尋ねる。
「そんなに獣人で武持ちって珍しいのか?」
「居なくはないけど、マサムネさんみたいな戦いする人は全く居ないね」
「ふむ」
そう言うことか。
確かに武を裝備すると力が抜けたような覚に陥るもんな。
仕方がないので格闘の引き出しを増やす方向にするか。
どうにも向こうは一向に引き下がってくれる様子はないらしい。
「分かった。そちらの言い分を飲む。それで?  決闘と言うからには勝敗を決める約束事があるんだろう?」
「話がはえーじゃねーか。俺様が勝ったらそのねーちゃんを置いてけ」
「だ、そうだぞリネア。別にオレはリネアをここに置いていこうが全く構わないがどうする?」
「なんでそこで了承するかなー。あたし商品になった覚えないんだけど?」
「だ、そうだ。それで?」
「他に決めることなんてねぇだろ。俺様がお前をぶっ飛ばしてねーちゃんを侍らすそれで終わりだ」
男は下卑た笑みを浮かべて吐き捨てた。
組合前では遠巻きにヤジを飛ばすものが複數いるが、誰も場に割ってってくるものはいないらしい。
その上賭け事まで始まってしまった。
オッズは向こうが9でオレが1。
それなりに顔が知れているらしい。
相手にとって不足なし。オレはエントリーに承諾して、特殊フィールドに足を運んだ。
街はいつになく活気に満ちて、道行く人達は賭け事に熱中していった。
っていうかリネアもそれに參加していた。もちろんオレにベットを張ってくれたようだった。
自分の行く末がかかっているのに呑気なものだと思いながら、オレは思考を切り替えて男と対峙した。
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