《終末語》第11話「祝福の月」

・ひと通り話したひさぎの表は暗かった。春人はひさぎの表を見て口を開いた。

「ひさぎ達の仲間は多分無事だ。」

「…?何でわかるの?」

「カン…と言ったら噓になるな。多分、ある程度逃げたやつらに連中は興味なかったと思うんだ。あいつら、コレを探してたからな。」

春人はそう言いながらひさぎが座っているベットの下からワクチンのっている黒いボックスを取り出して中を見せた。

「何これ?」

「ゾンビウイルスのワクチン。降って來たの正さ。」

「本當に!?」

「うん、本當。この廃墟にまだあるぜ。」

「…そんな凄いものだったんだ…」

春人はボックスを見つめているひさぎを橫で見ていた。

(本當に…2年経っていても綺麗だな…)

ゾンビ化の影響で髪は白くなっているが春人の知っているひさぎの顔だった。

(…今なら、いいかな…?)

春人はまだボックスを眺めているひさぎを橫目で見ながらゆっくりと彼の腰に腕を回そうとしてー

「お、いたいた。よっ!探したぞ。」

びっくりするぐらいいいタイミングで病室にヤクがって來た。

「…誰?」

「彼さんは初めましてか。俺は春人の友人だ。それはそうとみんながお前ら2人を探してたぞ。」

「?何かあったか。」

「それはナイショさ。まぁ、行くぞ。みんな待ってるぜ。」

そう言ったヤクの後ろをひさぎと2人で追いかけながら、春人はひさぎを抱きしめられなかったのを心がっかりするのだった。

・「…ふぅ。まったく…みんな飲み過ぎだ…俺まで飲み過ぎちまった…」

春人はタウンの屋上のベンチに腰かけて夜風に當たりながら1人ぼやいていた。ひさぎと再會してからしばらくしてヤクに呼ばれ、ひさぎと病室を出てヤクに付いて行った先ではタウンで生活していたゾンビ達がタウンの中央ホールで酒や料理を囲んで大規模なパーティーを開いていた。何事かとヤクにたずねてみると、

「お前とお前の彼さんの再會を祝ってみんなで大宴會をしてるんだとさ。で、主役がいないと盛り上がらないだろ?だから俺が呼びに行かされたってわけ。」

という事だった。そのあとは春人とひさぎがって來た事によってパーティーはさらに盛り上がり、酔い潰れてヤクザやひさぎそして他のゾンビ達が寢靜まるまでパーティーが続いた。春人がこうして屋上に上がってきた頃には空はすっかり暗くなっていた。

「俺やひさぎも20歳はたちは超えてるけど…いくら何でも飲ませ過ぎだろ。ウプッ…あー頭痛い…。」

「何1人でたそがれてんのよ。」

「…あ、ひさぎ。」

春人はだいぶ酔っていて気づかなかったが、いつの間にかさっきまで酔い潰れて寢ていたひさぎが自分の橫で座っていた。

「…お前も風に當たりに來たのか?」

「まぁそれもあるけど、違うの。アンタに會いに來たのよ。」

「…俺に?」

「當たり前でしょ?だって2年間アンタに會ってなかった分、アンタともっといたいもん。」

「ーッ!!!」

その一言を聞いて春人は顔が真っ赤になった。よく見るとひさぎも顔を真っ赤にしている。

「…こんな俺で良ければ。」

「私の彼氏の適任はアンタしかいないわよ…2年間分、しっかり付き合ってよ。」

「もちろん。まぁ、とりあえず…」

春人は夜の空で輝く満月を見て、それからひさぎを見たあと

「ようこそ、今の俺の今の家に。んでもって、おかえり。ひさぎ。」

「そこは、私がおかえりでしょ。もう…。まぁ、こちらこそ、ただいま。春人。」

そう言った後、2人は互いを抱きしめ會った。いつまでも。夜空の月はそんな2人を祝福するかのように輝いていた。

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