《T.T.S.》FileNo.1 Welcome to T.T.S. Chapter1-3-2
「ご用件は如何なもんで?」
腫れ上がった患部をりながら見上げる源に、絵は腕を指示した。
「WIT起させて」
「はぁ?……紫姫音起しちまうぞ?」
「仕方ないじゃない、こっちにはリハみたいな音聲しかっていないの。そっちにっているのがどうだか確認しなきゃだし……」
「……面倒臭ぇなぁ、あの主將カピタン」
新リーダーに対する評価をアッサリ覆し、源は手首にある腕型のデバイス、通稱WITのスイッチに手をばす。
一応念の為石橋を叩いて渡る神で前もって手を止め、絵に確認。
「ほ、本當に起すんの?」
「う、うん。いいよ、大丈夫」
冷靜沈著さを取り戻しつつある様なので、源はスイッチを押した。
來たるべきけたたましい罵詈雑言に備え、神的耐ショック姿勢を……。
「……あれ?」
予想した罵聲が來ない……どころか、姿さえ見せない。
拍子抜けして源を見ると、彼も彼で慌てていた。
「ん?あれ?紫姫音?……おぉい、紫姫音さぁん?」
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「……なあに?」
ようやく聞こえて來た聲は、これまた隨分不機嫌そうに響いた。
ちょっとおっかないので、自然と絵は構える。
「んだよ起してんならさっさと反応しろ」
「しらない。絵となかよくしてればいいじゃん」
「何でもいぃから、早く本指令のデータ開け」
「ヤダ!」
「はぁ?お前俺の亜生インターフェイスFIAIだろ。仕事しろ」
「しらない!源なんて絵とよろしくやってればいいんだ!」
「アホな事言ってねぇで早く開け。俺はユーザーだぞ」
「しらない!」
どうにもご機嫌斜めな現音聲のみの彼の名は紫姫音。
腕狀になった報端末の総合インターフェイスであり、機械らしさを捨てた生に近い反応を返す新型のインターフェイスである。
AI型の総合インターフェイスは2170年代では一般的であり、さして珍しいものではない。
だが、紫姫音が通常規格かと言うと、それは違う。
彼は人間の脳を機械的に忠実に再現した新型のAI。
亜生型総界面人工知能。
通稱、亜生インターフェイスFIAI。
元來介護や教育の現場での利用が主として作された為、可らしくデザインされた外見が多い亜生インターフェイスFIAIは、外見年齢が起経過時間、つまりユーザーとの共有時間に反映される。
それ故こうして臍を曲げてしまう事もあるのだが、そこはインターフェイス。
ユーザーからの指示は絶対であり、刃向った場合にはユーザーがペナルティーを科すシステムがある。
強制的に外部出力が為されて実化した紫姫音に、源は薄い笑顔で告げた。
「……処罰信號パニッシュメントシグナルTickle」
「ひゃぇ!?うっひゃ!うっひゃひゃひゃひゃ、うひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!!」
「どぉだ?止めてしけりゃさっさと本指令のデータを出せ」
「ひゃひゃひゃっはぇ…イヤ、うっひゃひゃ……イヤ…だぁ…うひゃ!うっひゃひゃ……」
「ほぉ、まだ言うか、だがは正直みたいだなぁ……いぃだろぉ嬢ちゃん。そんなにしけりゃくれてやるよ。追加信號……Strong」
「いひぃ!いやぁ、いやぁめぇ…て…うっひゃ!!うっひゃひゃひゃひゃひゃ…ゲホッ!ゴホッゴホ…はぇ!?ひゃひゃひゃひゃひゃ!!!!」
「おぉおぉ愉快な事んなってんなぁ、どぉだ?開く気になったかぁ?」
「……片付いたら教えて……」
気なをくすぐり、あまつさえ悶える姿を楽しそうに笑って見ている人男という通報必至の景を前に、そっと絵は距離を取るのだった。
〈先程は馬鹿が失禮しました。I.T.C.紙園エリです。本件はOperation Code:G-3842。
違法時間跳躍者クロック・スミスは川村マリヤ、カラカス國立科學大學卒の25歳です。
長173.2cm、重52.3kg。
AIのデザイナンやプログラミング等の技職をしており、代表作は上海人工智能社製GS5628-Henry、及び同社のHSシリーズ。
両製品共にい年型のAIですが、これが本人の嗜好かは不明です。予斷ですが、10年前に緋雅嵯紫音を中心に進められた亜生インターフェイスFIAI開発プロジェクトにも攜わっています。
SEとしての腕は確かな様ですね。
目ぼしい報は今の所以上ですが、武や武の使用、及び習得経歴は一切不明ですので、充分に注意して下さい。
なお、ターゲットの出現予知座標は視覚挿されるAR拡張現実をご參照下さい。
確保後はポイントPRDG-28でダイヤル776にコールを、時間超越電波圏は予め確保しておきます。
ではストレートフラッシュ両名の息災と功、厳正なる時の改変阻止を祈ります。以上〉
ジャズシンガーにはうってつけのハスキーなの聲が、二人の聴覚野に流れ込んだ。
直後、法隆寺近辺の地理報や対象出現位置のARデータ、日のり時刻等の気象報がインストールされ、視界をコーティング。対象出現までのカウントダウンが出現した。
報は揃った。「狀況開始」と行きたいが、取り敢えずストレートフラッシュは打ち合わせの為に顔を見合わせる。
「いい合に毒舌ね、エリちゃん。ノッてる」
「もぉ主將カピタンに敷ぃたんかよ、まだ就任して一週間だぞ、流石だな裏主將カピタン」
「それ、本人が聞いたら何されるか分かったものじゃないわよ……さて、どっちやる?」
「ん~じゃ、今回は確保の方で行こぉかねぇ」
「あら、珍しくヤル気?」
「誰かさんに労働意を燃やせとか言われたんでなぁ」
あらそう、と絵は源の手首を指示して付け加える。
「ついでに遵法神にも目覚めてしんだけど、無理な相談?」
すっかり沈黙した紫姫音は、処罰信號の効果でグッタリしていた。
こうして疲労まで知、蓄積するのが亜生インターフェイスFIAIの技革新をじさせる部分だが、あの場面を終えた後では救われない。
しかしながら、そんなハイテク極まりないを19世紀に持って來る無神経さに、絵は改めて呆れた。
ちなみに彼のWITのOSは作戦開始前にAI化以前の型に換裝している。
「本日の相談窓口は付をしゅーりょーしましたぁ」
今一度、秋空に鈍音が響いた。
妹と兄、ぷらすあるふぁ
目の前には白と黒のしましま。空の方に頭をあげると赤い背景に“立ち止まっている”人が描かれた機械があります。 あたしは今お兄ちゃんと信號待ちです。 「ねぇ、あーにぃ」 ふと気になることがあってお兄ちゃんに尋ねます。お兄ちゃんは少し面倒臭そうに眠たそうな顔を此方に向け 「ん? どうした妹よ」 と、あたしに話しかけます。 「どうして車がきてないのに、赤信號だと止まらないといけないの?」 先ほどから車が通らないしましまを見ながらあたしは頭を捻ります。 「世間體の為だな」 お兄ちゃんは迷わずそう答えました。 「じゃああーにぃ、誰もみていなかったらわたっていいの?」 あたしはもう一度お兄ちゃんに問いかけます。お兄ちゃんは右手を顎の下にもって行って考えます。 「何故赤信號で止まらないといけないのか、ただ誰かのつくったルールに縛られているだけじゃないか、しっかり考えた上で渡っていいと思えばわたればいい」 ……お兄ちゃんは偶に難しい事を言います。そうしている間に信號が青に変わりました。歩き出そうとするお兄ちゃんを引き止めて尋ねます。 「青信號で止まったりはしないの?」 「しないな」 お兄ちゃんは直ぐに答えてくれました。 「どうして?」 「偉い人が青信號の時は渡っていいって言ってたからな」 「そっかー」 いつの間にか信號は赤に戻っていました。 こんな感じのショートストーリー集。 冬童話2013に出していたものをそのまま流用してます。 2016年3月14日 完結 自身Facebookにも投稿します。が、恐らく向こうは二年遅れとかになります。 ストリエさんでも投稿してみます。
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