《T.T.S.》FileNo.1 Welcome to T.T.S. Chapter4-4
4
「派手な目晦ましもあったものね」
「あぁ……してやられた」
浮かない表のバディと共に梁を退け、顔にこびり付いた埃を払った源は立ち上がる。
腹を潰す様に圧し掛かっていたそれは、ゴキブリやネズミの糞や死骸と夥しい數の綿埃を撒き散らし、ボロ家屋の中を地獄絵図に変えていた。
室を拒否したマリヤを手錠で拘束した絵さえも、正直長居はしたくない。
「……っ!っくっそ!」
埃塗れのを払う源が歯を食い縛りながらく。
フィジカルスキャンで軽く走査しただけでも、赤字表記レッドシグナルの重篤損壊箇所がスクロールを埋め盡くす程満創痍な彼だが、のんびりしてもいられなかった。
「エリから通信は?」
「あったわ。そしてビンゴよ、2149年12月24日。中華栄民國が公表をひた隠しにしていた大禍流出日時とピッタリ合致する。間違いなく、奴はそこにいる」
「程な、お前の読みは最悪の正鵠をた訳だ」
つい今し方、ギルバートはここを発った。
その際の目晦ましとして、彼は梁を踵で落として行った訳だが、その目的は、紛れもない。
タイムマシンに乗る為だ。
では、何故ここでタイムマシンなのか?
その目的をストレートフラッシュは知っていた。
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唯一的明星軍團イーパッケージが奪ったウイルス兵を橫取りする事だ。
2058年。
中華人民共和國國で、共産政権中最大規模の暴が発した。
切っ掛けは、埋まらない所得格差と改善されない生活環境に業を煮やした低所得者層や地方市民が、華僑の力を借りて起こした小さな暴だった。
中國政府は鎮靜化の、陸軍と空軍に出を要請。
しかし、これを一部の空軍部隊が無視した所から、話が拗れ出す。
軍規違反を犯した部隊への判決が下る日、陸軍の一部部隊が裁判所を襲撃したのだ。
ここまででも十分に複雑な事態にも関わらず、頭痛の種は更に芽吹く。
裁判所襲撃と時を同じくして、別の陸軍部隊と一部海軍部隊が、共産黨本部を占拠したのだ。
中國政府は、非常事態宣言を発令し同盟諸國に応援を要請。
だが、これに呼応する國はなかった。
暴を支援した華僑が、裏で外的手回しをしていたのだ。
「衰退が無視出來ない中國経済より、我々生え抜きの華僑が展開する経済にシフトした方がいい。中華人民共和國は敵も多い國だ、同盟國でいる事でメリットが生まれる時代は終わった。それならば、我々が目指す新しい國家に賭けた方がいい」
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期待と不安の天秤を話とデータで引っ繰り返し、彼等は中國共産黨を孤立させる事に功していた。
しかしながら、この騒は妙な形で収まりを見せる。
一連の騒全てを裏で指揮していた人民解放軍陸軍、楊林大佐が、共産政権の存続希を表明。
同時に、「祖國消失はまぬし、國の在り方に優劣もない。我々は別の可能を求めての建國を目指したまでである。故に、我々が求めるのはただ一つ。獨立の権利のみである」として、中華人民共和國を半分に割ったのだ。
無論、牽制も忘れない。
「ここまでの譲歩には勿論理由がある。我々は核兵に変わる新たな兵を開発した。當然傾國の威力を持つだ。もし我々を軽んずる行為、及び意に反する行為を人民政府や諸外國が取った場合、我々はこれを用いて軍事を行使する」
こうして、中華人民共和國の傍らに全く別の自治形態を持つ國が生まれた。
その名は、中華栄民國。
初期の暴こそ死者が出たものの、犠牲者のない獨立をした事により、世界中が中華栄民國を高く評価した。
その影響は経済面でも如実に表れ、建國から五年を待たずして中華栄民國は母國の経済を圧倒。
あっと言う間にGDPで世界第三位を捥ぎ取った。
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しかしそうなると、人々の関心は別の問いへとシフトして行く。
核と並ぶ程の脅威とは、一何か?と言う問いに。
その正を突き止めようと、世界各地の団、組織が様々なアプローチを試みるが、結果として分かった事は二つだけだった。
即ち、その兵が國際法に違反する細菌兵であろうという事。
そしてもう一つが、それを中華栄民國政府は“大禍”と呼んでいる事だった。
「まさか本當に大禍狙いとはね……」
「どぉした?予想が當たったんだ、もっと喜べばいいじゃねぇか」
そう、絵はこの展開を予想していた。
有島高尾の記憶野から出した報と照らし合わせ、彼等が時間跳躍した場所を割り出し、同時に現地の警察組織に周辺全てのインフラに設置された監視カメラの映像を提供して貰う。
ギルバートと思しき人影を只管探す地道な追尾と懸命な継ぎ接ぎの結果、遂に彼は中華栄民國の舊軍本部に佇む怨敵の姿を捉えた。
源から聞いた報とギルバートに接した際のプロファイリング、手したばかりの映像証拠、揃いも揃った材料から、彼はある結論を導き出した。
“帷子ギルバートは存在理由レーゾンデートルに疑問を持っており、その事で世界を憎んでいる”
當初は、まるで思春期の子供の様な犯行機だと思った。
だが、神も仏もいないこの世界で、それでも神と追い駆けっこをする事を運命付けられたギルバートを、笑う気にはなれなかった。
それは勿論、バディに対してもだ。
気楽に絵をからかった源の口元はい。
當然だ。
彼はこれから、単で正不明のウイルスをドンパチ奪い合っている中にを投じなければならないのだから。
「Neuemenschheitherstellungplanで免疫は強化されているのよね?」
「あぁ、フィトンチッドで時代遅れの花癥になる位だ」
「その中に大禍のデータは?」
「ってる訳ねぇだろ、サンプルは核で消滅、データは隠蔽中だぞ」
アッサリ且つキッパリと、表も変えずに言ってのけた相棒バディを、絵は注意深く観察した。
座っているのに僅かに傾いた姿勢と、呼吸音に混じるの気配。
出著しい箇所にろうとセロファンを剝がす手は薬指がいておらず、全から噴き出す汗で患部に埃がこびりつたままだ。
「……ねぇ、やっぱり私が」
「駄目だ」
堪らず発した提案は、言い終える事も許されずに卻下された。
聞く耳も持たない意思表示に背中を向けた源に、食い下がる。
「アンタはもう武じゃない」
沈黙で表す拒否の姿勢が、絵の心を寂寥に突き落とす。
「アンタは私の相棒バディなの。人間なのよ。T.T.S.のNo.2で、ストレートフラッシュの片手間ワンサイドゲーマーとして違法時間跳躍者クロック・スミスに恐れられる立派な人間なの。どうしてそれが分からないの?」
“本作戦に於いて、基本的に正岡絵は後処理に當たる事。もし狀況が2149年まで進行した場合も、正岡絵は事後処理の為1893年に待機。時間跳躍者及び帷子ギルバート確保はいかなはじめ源のみとする”
到著時報告ランディングレポートが告げた余りにも殘酷な指示に、當初は困した。
何故なら、絵はギルバート追跡と平行して、彼の攻略法をも獨自に編み出していたからだ。
ただ、その方法には、どうしても絵のWITが必要だった。
“5m以、時間は同時刻に”
その條件が、崩れ去ってしまう。
然るべき時に源と打ち合わせが出來ればよかったのだが、ギルバートの足跡追求と攻略法考案だけで手一杯だった。
いっそ今言ってしまえばいいとも考えたが、待ちけるギルバートがどんな迎撃手段を採るか分からない以上、淺薄は厳だ。
狀況は、世界の分水嶺に差し掛かっているのだから。
ただ、嫌な予は拭えなかった。
ギルバートの懐く疑問を、源もまた懐いた筈だ。
戦爭の為に造られた彼兵は、平靜の世では無用の長でしかないのだから。
ならば、源の選択は、一どこに流れ著き、終著するのか?
それを考えると、絵は怖くて堪らなくなる。
止めたいのにがない。
急騰するジレンマで頭が可笑しくなりそうだった。
「ちょっと何~?外まで響いて來たんだけど」
だから、不意に加わったの言葉に返す言葉が見つからなかった。
出來る限り足元を見ない様にしているのか、一見壁に向かって話し掛ける様にして、梁でぶち抜かれた部屋を渡るマリヤ。
転ぶ事請け合いの歩き方に案の定すっ転び、絶している。
「あ!」
「あぁあ、馬鹿だなあの。ちゃんと面倒見とけよ」
自力で起き上がる事も出來ずにのた打ち回るマリヤに大慌てで駆け寄る絵へそう投げ掛けて、源は立ち上がる。
丁度、背後でタイミングよく、TLJ-4300SH-吽の來訪を告げる雑音がした。
マリヤを助け起こすのに手こずっていた絵の頭は、フル回転ですべき行いを選定する。
どうすれば策を伝えられるか、彼の思いはどうすれば伝わるのか、そして、源に存在理由を與えるのに最も有効な事は何か。
かくして。
「じゃ、ちょっくら行って來「源!」……あ?」
には到底及ばない音速の制止を追って、放線が疾駆する。
「ちょおま、結構なドSっぷりだな……っておい!WIT俺に渡してどうすん「勝って!」……へ?」
ギリギリキャッチした反で再出した部分を押さえる源に、畳み掛ける。
「勝って私達を迎えに來て!ここで待っているから!絶対に生きて戻って!勝手に終わらせようとしたらこの時代に生きながら恨み続けるからね!」
源も、そしてマリヤでさえも、ポカンとした顔で絵を見ていた。
まあ、それも致し方ない。
T.T.S.のWITには、時空を隔てて通信出來る機能が備わっている。
それを預けるのは、自らを申し出る事に等しい。
そんな馬鹿は、まずいない。
ただ、愚行は時に場を和ませる効果を持つ。
今回もそうだった。
実際、源の肩が僅かに震えている。
「……らしくねぇ事しやがって、傷開いたらどぉすんだ馬鹿」
くっくっと暫く俯いていた彼は、そのまま両手のWITに絵のそれを加える。
幾分和らいだ目元で笑い、源はもう一人の相棒に指示を飛ばす。
「紫姫音、同期頼んだ」
「わかった」
「んじゃまぁ、改めて言うのもなんだが、行って來らぁ」
ひらひらと手を振った源が扉を閉める瞬間、絵は最後の一言を投げた。
大事な最後のピースを、たった一言で埋める。
「GOD bless you」
剎那、源の目が驚きに瞠り、絵は意思が伝わった事を確信する。
時を超える為の雑音が聴覚を支配する中、絵は笑った。
【書籍化&コミカライズ】勇者パーティーを追放された俺だが、俺から巣立ってくれたようで嬉しい。……なので大聖女、お前に追って來られては困るのだが?
【コミック第2巻、ノベル第5巻が2022/9/7同日に発売されます! コミックはくりもとぴんこ先生にガンガンONLINEで連載頂いてます! 小説のイラストは柴乃櫂人先生にご擔當頂いております! 小説・コミックともども宜しくー(o*。_。)oペコッ】 【無料試し読みだけでもどうぞ~】/ アリアケ・ミハマは全スキルが使用できるが、逆にそのことで勇者パーティーから『ユニーク・スキル非所持の無能』と侮蔑され、ついに追放されてしまう。 仕方なく田舎暮らしでもしようとするアリアケだったが、実は彼の≪全スキルが使用できるということ自體がユニーク・スキル≫であり、神により選ばれた≪真の賢者≫である証であった。 そうとは知らず愚かにも追放した勇者一行は、これまで楽勝だった低階層ダンジョンすら攻略できなくなり、王國で徐々に居場所を失い破滅して行く。 一方のアリアケは街をモンスターから救ったり、死にかけのドラゴンを助けて惚れられてしまったりと、いつの間にか種族を問わず人々から≪英雄≫と言われる存在になっていく。 これは目立ちたくない、英雄になどなりたくない男が、殘念ながら追いかけて來た大聖女や、拾ったドラゴン娘たちとスローライフ・ハーレム・無雙をしながら、なんだかんだで英雄になってしまう物語。 ※勇者パーティーが沒落していくのはだいたい第12話あたりからです。 ※カクヨム様でも連載しております。
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8 61Lv.1なのにLv.MAXよりステ値が高いのはなんでですか? 〜転移特典のスキルがどれも神引き過ぎた件〜
全校集會で體育館に集まっていた人間達が全員異世界に召喚された!? おいおい冗談はよしてくれよ、俺はまだ、未消化のアニメや未受け取りのグッズを元の世界に殘してきてるんだ! え、魔王を全て倒したら元の世界に返してやる? いいよ、とっととやってやるよ! ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 學校関係者全員が勇者召喚されたとある高校。 〜元の世界に殘してきた、あなたの大切な物の數だけ、代わりにチートスキルを付與します〜 神のその言葉通りに全員が、それぞれ本當に大切な所持品の數だけチート能力をもらうことになる。 全員がだいたい平均2〜4くらいしか付與出來なかったのだが、重度のコレクション癖のある速水映士だけは1000ものスキルを付與できることになっていて!? しかも最初に極運を引いたことで、後に付與されたスキルが超再生、超成長、更には全屬性特攻etc,etc……というあからさまに強そうな能力たち! 元の世界ではただのヲタクソ野郎である彼がこの世界では英雄! しかし、彼は英雄の座には興味を一切示さず!? 「魔王なんてサクッと全員倒してやる。俺には、さっさと地球に戻って未消化のアニメを消化するっていう使命が殘ってるからな!」 ギャグ要素強めな情緒不安定ヲタクソ野郎×チート能力の組み合わせによる、俺TUEEEE系異世界ファンタジー! ※小説家になろうにも投稿しています 《幕間》噓つきは○○の始まり、まで改稿済み 2018/3/16 1章完結 2018/6/7 2章完結 2018/6/7 「いや、タイトル詐欺じゃねぇか」と指摘を受けたため改題 第63部分より3章スタート 第2章まで完結済み 2月3日より、小説家になろうにて日刊ランキングに載せていただきました! 現在作者都合と病弱性により更新遅れ気味です。 《番外》は一定のテーマが當てられてます。以下テーマ。 2018バレンタイン→初めてのチョコ作りをするシルティス 2018ホワイトデー→理想の兄妹の図が出來上がるエイシルコンビ 2018エイプリルフール→策士な王女様と騙された勝気少女 ◇◇◇ ご不明な點がございましたらコメントかTwitterのDMにどうぞ 7/9 追記 公開しようと予約した一括投稿のうち最終話のみ、予約ではなく後悔にしてしまっていたので削除しました。 全體的な更新はまだ先になります。
8 156これが純粋種である人間の力………ってこんなの僕のぞんでないよぉ(泣
普通を愛している普通の少年が、普通に事故に遭い普通に死んだ。 その普通っぷりを気に入った異世界の神様が、少年を自分の世界に転生させてくれるという。 その異世界は、ゲームのような世界だと聞かされ、少年は喜ぶ。 転生する種族と、両親の種族を聞かれた少年は、普通に種族に人間を選ぶ。 両親も當然人間にしたのだが、その事実はその世界では普通じゃなかった!! 普通に産まれたいと願ったはずなのに、與えられたのは純粋種としての他と隔絶した能力。 それでも少年は、その世界で普通に生きようとする。 少年の普通が、その世界では異常だと気付かずに……… ギルクラとかのアニメ最終回を見て、テンションがあがってしまい、おもわず投稿。 學校などが忙しく、現在不定期更新中 なお、この作品は、イノベイターとはまったく関係ありません。
8 122友だちといじめられっ子
ある日から突然、少女はクラスメイトから無視をされるようになった。やがて教室に行かなくなって、學校に行かなくなって⋯⋯。 またある日、先生に言われて保健室に通うようになり、教室に行くのだが、影で言われていたのは「なんであいつまた學校に來てんの」。少女は偶然それを聞いてしまい、また保健室登校に逆戻り⋯⋯。 またまたある日、保健室に登校していた少女の元に、友人が謝りに。また教室に行くようになるも、クラスメイトに反省の意図は無かった⋯⋯。 遂には少女は自殺してしまい⋯⋯⋯⋯。 (言葉なんかじゃ、簡単にいじめは無くならない。特に先生が無理に言い聞かせるのは逆効果だとおもいます。正解なんて自分にも良く分かりませんが。) ※バトルや戀愛も無いので退屈かもしれませんが、異世界物の合間にでも読んで見て下さい。 (完結済~全7話)
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