３

クリスマスイブ。

宗教意識の薄い日本では、相変わらず本番のクリスマスを凌ぐ人気を持つこの日に仕事をれられるのは、罰ゲームに等しい。

そして不思議なことに、この罰ゲームをける者たちは自然と集まる運命にあった。

「はい、ストレートフラァッシュ」

「……絵たん絶対イカサマしてるっしょ？」

「何言ってるの、ジェーンちゃんなんかまだいい方よ。私なんてまた無役ブタよ」

「マダム、これやっぱ間違いなく絵たんと姫で不正に役買ってるって」

それなりに広いT.T.S.の醫務室を、４人のが占拠していた。ベッドを寄せ合い、足を延ばしてテキサスホールデンに興じる彼たちもまた、クリスマスイブに任務待機を命じられた悲しみの徒だ。

「負け惜しみにしても人聞きの悪いこと言うわね……っと、どうやら來たみたいね」

あらぬ疑いを掛けられた正岡絵の言葉に、発言元のジェーン・紗琥耶・アークは眉を顰める。

「またそうやって興味を逸らせてイカサマですか」

「いや疑い過ぎだから」

T.T.S.No.1とNo.3の平和的な會話を前に、彼たちのフィジカルヘルスを一手に擔うマダム・オースティンは耳をそばだてる。

「……ちっきしょう」

扉の向こうを通り過ぎた呟きに、マダムは肩を竦めた。

「絵ちゃんの言う通り、源ちゃん來たみたい……って、アギーがいない」

No.4アグネス・リーの姿がいつの間にか消えていた。無造作に置かれた彼の手札は、ロイヤルストレートフラッシュだった。

「ちっくしょう、勝ち逃げされた。源アイツがいると分かるとすぐイッちゃうんだから」

「もういないんだし、しょうがないでしょ。３人でもう一戦いこっか」

「んふっ♪何か今の言い方やらしい」

「コラ、下品よジェーンちゃん。絵ちゃん、私が配るわ」

枕の上に纏められたトランプの束を取ったマダムが、手際よく山を切っていくのを脇に、紗琥耶はポツリと呟く。

「で？何で源アイツ呼び出されたの？」

その言葉に、そっとマダムと絵はアイコンタクトした。

紗琥耶を対象に発せられた箝口令は、上手く機能している。そのことを確かめ合っていた。

彼には悪い癖が多い。その一つに、「新人試食」がある。男ともにお相手出來る彼は、ニューフェイスがるたびに的にも暴力的にもその存在に強い興味を抱いてしまうのだ。

しかしながら、今回のニューカマーはこれまでとはが違う。強さにおいては源を圧倒、ともすれば紗琥耶すら凌駕しうる破格の戦闘力を持ち、的趣向こそ不明だが、関心は常に源に注いでいる。そんな新人、紗琥耶が興しないはずがない。

「さあね、どうせまた何かやらかしたんじゃない？」

だからこそ、絵は臆面もなくウソを吐いた。

心理學に明るいアグネスは一発で見抜いただろうが、幸い彼は重要な役割を擔った関係者だ。

「そんな事言ったらかわいそうよ。休日返上で來てくれてるんだし、し労って來てあげたら？」

「姫が行ってるし、めんどくさいからアタシはいいわ」

勧められれば斷る紗琥耶の天邪鬼な一面を突いたマダムの言葉アシストに、心絵は稱賛を送る。

同時に、顔を合わせられない相棒バディに願う。

「何にせよ……上手くやってよ、源」