６

歪な街並だった。

どの建も、年代も建築様式もチグハグな増築で奇妙に膨らんでいる。時折見かける新築の建は、どれも直方や立方で、AIがランダムにデザインするプロダクションマッピングに彩られていた。

上空にはMRで投影された広告アドのクジラや龍が泳ぎ回り、結婚相談所の広告だろう幻影のが通りを闊歩してのある生活を説いて回っている。

「イカれてんな」

「まったくだ。一どこからこんな數を調達したんだろうね？」

プラチナブロンドの幻影の差し出す半明な白い手を掻き消して愚癡った源に、背中側の景を眺めていたギルバートが答えた。

出掛けにCTU北米大陸セントラルタイム部隊からくすねて來た雙眼鏡を覗き込む彼の手には、アセンズでも評判の店のホットドックが握られている。

豪華なランチをいただいた源とは違い、飲まず食わずのままジッと彼を待っていたギルバートは腹ペコだった。マスクを上にずらしては一口齧る彼の食事時間は、どうしたって長くなる。偵察がてらアセンズの街に先回りして、ランチタイムと灑落込むにはうってつけだった。

鈴蝶の指示通り総知覚報告メモリーレポートをリアルタイムで彼とホセに送り続けながら、源はギルバートの視線の先に目を向ける。

郊外は目茶苦茶だった。

空を覆う無數のドローン。

その數、概算でも50機。

地上のアンドロイドたちも多い。

見える範囲に配置されただけでも、概算で30。

敵の拠點の反対側も含めれば、なくとも倍はいると見積もっていいだろう。

それに――

「源、気づいたかい？あのコンテナ」

「あぁ、ありゃヒドルストン工業のロゴだな」

ヒドルストン工業。

國家という形態を捨てたアメリカで、數多くのコミュニティに自衛、自警のための武を格安で提供する企業だ。彼らの主力とする商品は、垂直離著陸機ティルトローター。

「コンテナの數からすりゃ、こっち面だけでも４機はあるな」

「だね。しかしコンテナを遮蔽として散りばめるとは、中々効率のいい陣の構え方だね」

どうやら、P.T.T.S.の認識より、事態は悪化しているようだ。

「源、どの戦法で行く？」

「……結晶クリスタル」

「そうだね。それでいいと思う」

「敵地にさえりゃ、まぁ後はどぉとでもなんだろ」

「うん。それでいいと思う。Pあ.Tの.T練.S中.が邪魔さえしなければね」

「……念のため言っとくぞ。味方側傷つけた時點でテメェは矯正戻りだ。いぃな」

「……心得た。訂正するよ。うまく連攜を取って行く」

目の前には機械の軍勢。

相棒バディは危険人。

不安材料ばかり堆積していく狀況には慣れっこだが、それにしても心的ストレスが鰻上りだ。

『まぁ、《いざとなったら逃げていい》ってMasterには言われてっから、なんかあっても即退卻すりゃいぃか』

鈴蝶の示した妥協策をに、源は改めて敵勢を睨み返す。廃語に迫る人影に気づくこともなく。