《T.T.S.》FileNo.4 『Sample 13』 Chapter 5-4

傭兵に味方はいない。

そんなことは互いに承知の上だった。

仕事をけて現地に赴き、初めて顔を合わせる相手を信用する者はいない。無人ロボット同士の量合戦No one deadが戦爭の基本公式となり、平穏が約束された人間社會からあぶれた十把一絡げの殺戮者たち。そんな連中を信じる方がどうかしているというわけだ。

もしそれらに頼らざるを得なくなったとしたら、よほどの事態と言えるだろう。

「おい!置いて行くな!アタシを助けろよ!なあ!」

助けを乞う聲を振り切るように、武裝集団は撤退していく。

「なんだありゃ、なにが起こったらあんな」

「うるせえ!死にたくねえなら走りな!」

口々に々なことをびながら遠ざかるチームの背中を絶的な気持ちで見送りながら、捕らわれた兵士は背中に座るに話し掛ける。

「な、なあお嬢ちゃん。アタシも逃がしてくれよ。もうアタシたちはこの仕事からは手を引くからさ、ね?頼むよ」

の背中にちょこんと鎮座まします菫のワンピースのは顎に指を當てて頭を捻る。

ペンキをぶちまけたような白いと赤い瞳。白兎を人間化したようなそのか弱い見た目の中に、どこか不気味な迫力を湛えて、は苦笑した。

「ご謙遜なさらないでオバ様。貴方のような方々はみな死に場所を求めて彷徨っていらっしゃるんでしょう?ああ、でも、そうね……申しわけありませんわ。貴様の仰る通り、今ここでそのお命を摘むことは出來かねます。なにせ私」

そうして、は傭兵の前にガチャガチャと山のような數の弾倉を落とす。どの弾倉もフルで裝填されたまま、撃鉄が下りるのを待ち侘びたままだ。

「今貴様の襟や袖で四肢を縛るこのナイフたちも、こちらの弾倉(オモチャ)も、すべてお返しの上でお引き取り願おうと思っておりましたから」

「あり、がとよ。お嬢ちゃんの優しさに……アタシは謝しなきゃいけないね」

あどけないが放つ、丁寧で低調な軽侮に、それでも傭兵は頷くことしか出來ない。

當然だ。

あんな経験をしてしまえば、誰だって戦意を失う。

暗闇から菫のワンピースが浮かび上がった時には、すでに弾倉を抜かれ、ナイフを奪われていた。榴弾グレネードを摑んだ手は知らぬ間に石を握り絞め、それを放っても真下にポトリと落ちるばかり。

破れかぶれの白兵戦に挑もうとすれば、今現在の狀況に早変わりだ。

神汚染はなく、視覚報への介も確認されない。

ただただ見せつけられるの製品スペックの前に、心が折れるのはあっという間だった。

「ありがとうオバ様。でもそんなこと仰らないで。今回はお父様のご指示があったから出來ないだけなの。もしオバ様がおみとあらば、いつだって貴様のお命を摘ませていただきます」

「へ、へえそうかい」

「ですからオバ様。次にお顔を合わせる時までに、どうお亡くなりになりたいか、決めておいて下さいね」

「……わかった。わかったよ」

「ああ、殘念です。私、そろそろおいとまさせていただきます。オバ様。私、初めてお會い出來た人間が貴のような方で、とても良かったわ」

「そうかい」

「ええ、愚鈍なくせに意味不明な高慢さを持った、とても模範的な人間だったわ」

「……そうかい」

「はい♪それでは、失禮しますね」

背中の質量が音もなく消える。

まるで憑依していた悪霊が過ぎ去ったようで、しばらくは震えが止まらなかった。

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