《T.T.S.》FileNo.4 『Sample 13』 Chapter 5-6

自らの掌に、ジッとこちらを凝視する生首がいる。そんな非現実的な狀況に瞠目しながらも、問いかける。

「なにがどぉなってる」

視覚報だけでも十分に異様だが、をかけておかしいのは報だった。頭蓋骨の軽さにの重さが加わり、乾いた石膏のようだった手りが、新鮮なの弾力に変わり、ほんのり殘ったの溫かさが腕を伝って來る。

「立映像ホロじゃねぇ、視覚野に侵さはいられてるわけでもねぇ」

「そうだ。これはそんなモノではない」

「……AIかよ」

「正確にはFIAIだ。人間の脳を回路で完全再現した」

「……つまりシオンの人格を完全コピーしたのがお前ってことか?」

「そうだ。君の隣にいる紫姫音と同じようにな」

シオンのコピーの言葉をけて傍らを見ると、AIは白晝夢を見るようにトロンとした目つきで虛空を眺め、口を半開きにして固まっていた。

つい先ほどまでの溌溂さを失ったの様子に、さすがの源も理解が追いつかない。

「おぃ、どぉした?」

「彼は今大規模なアップデートの最中だ。話を続けるぞ」

「あ、あぁ」

シオンの訶不思議な技に圧倒されっぱなしだが、驚きは続く。

「紫姫音にはキミの妹の人格をコピーしてある」

「は?」

「聞こえなかったか?キミには妹がいる。その人格のコピーこそが彼、紫姫音だ」

唐突な宣告に頭が追いつかないが、世紀の発明家は源の理解を待ってはくれなかった。

「彼はキミと同じくパトリックに作られた。キミがボクのメッセージを見て彼の下を去った後に作られたキミたちの後継モデルさ」

ジットリとした冷や汗が、砂漠の熱で蒸れる。

震える手を握り絞めて黙らせ、源は歯を食い縛った。

「それを紫姫音本人は」

「知らない。當然な」

親の風上にも置けない無責任なその言葉に、源の腹は煮え滾る。

本人を前にしたら絶対に言ってやろうと何度も思ったことを、コピーの人格を前に言葉にした。

「……クソ野郎」

「自覚はある。自省もしている。だが手段は選べなかった。かつて善人だった頃のパトリックに賭けるしかなかったんだ」

「そりゃ殘念だったな。目論見は見事に外れて野郎はイカレて、俺はこのザマだ」

「キミに辛い思いをさせ続けていることは申し訳なく思っている。だがキミたちを死なせるわけにもいかなかった」

「冗談じゃねぇ、こんな生もんになっちまった俺たちが生きてていぃわけねぇだろぉが」

「ならば人間らしく生にしがみついて紫姫音と共に本の私を毆りに來い。死ぬのはそれからでも出來る」

「逃げ回ってるヤツが好き勝手言ってんじゃねぇよ」

「追っ手を撒くための面倒なんだ。理解してくれ」

「出來るかバカ野郎」

余りに勝手で自己中心的なシオンのコピーの態度が頭に來て、源は生首を放り投げる。カサッと乾いた音を立てて砂地に転がった生首にも、想が盡きた。

未だ呆然自失とした様子の紫姫音を擔ぎ上げ、源は足早にエアーズ・ロックに背を向けて歩き出す。

「おい待て、どこへ行く」

「テメェのいねぇところだよ!」

「待て!まだ伝えていないことが」

「知るか!テメェの勝手はもぁ沢山だ!これ以上付き合ってられっか!」

自分をマッドサイエンティストに預けた非な父親に背を向け、著も何もない、ただが繋がっているというだけの呪いのような関係に中指を立てながら、源は距離を離す。

      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください