《T.T.S.》FileNo.4 『Sample 13』 Chapter 6-6

~2176年12月23日PM11:24 薔薇乃

創痍のT.T.S.が擔架で運ばれていく様を見て、ホセ・セサール・チャペスは絶句する。

エリカ・リグスビーと共にギリギリで最終機工兵ノーライフキングを打倒できた彼だが、その際にから手が出るほどしかったT.T.S.の支援がなぜ來なかったのかを理解していた。

自分達より遙かに強い存在が、自分達よりも重になって運ばれていく。

加えて、コンクリートで固められた地下施設がどこもかしこもやヒビだらけなのに、小口徑の弾丸が數えるほどしか落ちていない事態に、ホセはゾッとした。

でコンクリートをぶち壊せる連中が満創痍になるほど戦って、なお及ばなかった敵とは、一何者だろうか。

それに、この広大な地下施設を建設し、その警備として最終機工兵ノーライフキングを始めとする數多くのドローン兵を用意出來る資金力にも驚きを隠せない。

ホセは考えずにはいられない。

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、薔薇乃棘エスピナス・デ・ロサスとはどんな組織なのか。その背後に、どんな後ろ盾を持っているのか。何より、どこまで巨大な組織なのか。

やっていることの規模が大きすぎるほどに大きいのに、組織の実態が余りにも不明で不可視過ぎる。

それ故に、ホセの頭の中で薔薇乃棘エスピナス・デ・ロサスという敵がどんどん強大な存在になっていた。

『勝てるのか?こんな連中に……』

突撃銃や拳銃、手榴弾やナイフなどの裝備品が、急にチャチなオモチャのようにじられる。

『電磁銃を片手で止める連中と、俺たちは戦えるのか?』

何十キロも先まで続く暗いコンクリートの地下回廊。その向こうで蠢く何かに対して、今の自分達は余りに無力で、無防備で、無覚悟だ。

如何ともし難いもどかしさに臍を噛む思いで項垂れていると、大聲で自を呼ぶエリカの聲に気づいた。

「どうした?何かあったのか?」

「ああ、正岡が意識を取り戻したんだが、なんだか用があるみたいでよ」

「俺にか?」

首肯するエリカの顔を訝しげにみる一方で、ホセは思いつく。

そういえば、人外を相手に立ち向かったがいるではないか、と。

「了解。ここは頼んだ」

「頼まれた……なあ、ホセ」

「ん?」

「あんま考え過ぎんなよ。アタシらはアタシらでやってくしかねぇんだからな」

「……わかってるよ」

お節介な仲間にほんのしだけプレッシャーを肩代わりしてもらい、ホセは思わず自嘲した。

『もう揺を隠せよ俺……』

こんなたらくを許容してもらえていることに謝しつつも、その優しさに浸りきってはいけない。

せめて何かためになる助言を貰おう。

その決意を強めて、ホセは絵の元に向かった。

ストレッチャーに乗せられた彼の姿を認め、歩み寄ろうとしたその時、絵の落ち著いた聲がそのきを止める。

《ホセ、その辺りで止まって聞いて》

「は?どういうことだ?」

《今そっちに専用キーを送るから、そこで止まって》

《……わかった》

ホセの首肯と同時に、彼の視界にあるヴァーチャルロビーのURLとそこにるための時限式の専用キーが送られてきた。

Alternative専用のロビーに通されたホセは、そこで待っていたT.T.S.Mater甘鈴蝶の姿に驚く。

《な……》

《なんで?って質問はなしでお願いできるかな。狀況はすぐにでも分かるから、取り敢えず今は私の頼みを聞いてしいんだ》

《頼み、ですか?》

《うん。今送ったリストの品を用意して、置いておいてしいの》

《どこに?》

《そこの薔薇乃でお願いしたい。彼ならどんなに警備が厳しかろうともそこに侵出來るだろうからね》

《……言ってくれれば警備の解除くらいしますよ》

《いや、それじゃダメなんだ。君たちにはあくまでP.T.T.S.としての職務を真っ當してもらいたい。その上で、いかなはじめ源の襲撃をけて簒奪された、という裁を整えてもらいたいんだよ》

それは、紛れもなく源に悪役を演じさせ、汚名を著せる行為に他ならない。

個人的なとしては、決してホセは源を快く思っていなかった。かつて自の計畫を破綻させ、戦いだらけの今の生活に追い込んだヤツを相手に、いいを抱けるはずもない。

だが、今日だけは、本作戦を経た今は、違う。

臥床を余儀なくされるほどの挫傷や裂傷を負いながらも作戦を功させ、大事な部下の命を救ってくれた男に恩を仇で返すような行為は、素直に承服出來るものではなかった。

《終わったこととは言え、仮にも本作戦の要になった人間を悪役にしろと?いかなはじめの野郎が何をしでかしたのか知らねえが、そんなことまでしてアンタは》

《そうだ。私はどんな手を使ったってT.T.S.組織を護る》

噛みつくような鈴蝶の迫力に、ホセは息を呑む。

T.T.S.Masterはその態度を取り繕うこともなく、出來るだけを治めた端的な言い方で指示を続けた。

《とにかく、リストの品の用意をお願い。今私たちが出來るのはこれくらいしかないから》

《……わかりました。それはやっておきます》

《ありがとう。疲れているところすまないね。まだしばらく混は続くと思うけど、一緒に乗り越えていきましょう》

納得も理解も碌に出來なかったが、ホセはロビーから追い出される。

押しつけられたリストを検めると、彼は思わず溜息をついた。

「……何でバレてんだよ」

そのリストには、たった2つだけ備品が載っていた。

1つは恵まぬ雨レイン・ウィッチ・イズ・ノット・ギヴン。軍用のウォーターカッター兵

そしてもう1つ。

ホセたちP.T.T.S.CTU北米大陸セントラルタイム部隊の隠し球たる対電磁狙撃銃アンチマテリアルレールスナイパーライフルも記載されていた。

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