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～2168年9月9日AM8:14 アリススプリングス～

固まったままかない紫姫音のを、ジャッカルの親子がシゲシゲと嗅ぎ回っていた。子供のジャッカルが細い指を齧っては首を傾げている。

炎天下の中で棒立ちで固まるの姿に、ジャッカルでさえ興味を抱いているようだが、見た目に反していに混しているようだ。

「散れ散れ、野犬ども」

人間の持つ餌に興味はあれど、人間そのものに対する警戒を殘す彼らは、源の手で払う仕草に一旦離れはするものの、一定の距離を保ってなおも興味深そうに源と紫姫音を観察し続けている。

「おい、帰るぞガキ」

紫姫音の小さな頭をコツンとノックして彼の直を解いて、源は先導するようにエアーズロックから遠ざかった。

「おはなししたの？シオンと」

「したよ。終わったから帰んだ。さっさとついて來い」

そうは言ったものの、一向に著いて來ないに違和を覚えて、源は振り返る。

案の定、機械は一歩もかず、その場で項垂れていた。灼熱の太にジリジリと焼かれながら、影になった顔は寂しそうに地を見つめている。

「かえるって、どこに？」

「……そぉだな。とりあえず拠點は作らねぇとな」

「いっしょにツレってってくれるの？」

「そぉだ。だからとっととこっちに來い。行くぞ」

パアッと空と同じような晴れた笑顔を浮かべて、紫姫音が駆け寄ってくる。

シオンの言葉を思い出しながら、源は心の中で溜息を吐く。

『しばらくはコイツと組んでかねぇとな』

紫姫音の正を知った今、源は彼の近くを離れるわけには行かなくなった。

TLJ-4300SHのNtCSTNavigation to cross the Space Time。世界の命運を握るタイムマシンの起ソフトを伴って、源のセカンドライフはスタートした。

～2176年12月24日AM3:25 薔薇乃～

どこまでも続く薄暗く長いコンクリートの廊下を歩きながら、ホセ・セサール・チャベスは上階からの報告をける。

「回復早えな。相変わらずT.T.S.お前らの技力どうなってんだよ」

「どぉもこぉもねぇよ。いつも通り挫傷も裂傷もナノで一発だ」

突然目の前に現れた源の姿に、もはや驚きはなかった。つい數時間前まで臥床必須の瀕死狀態だったはずなのに、ギャグ漫畫か何かのようにアッサリと回復して目の前にいる。

「上は片付けたんだな？」

「まぁな。でも殺してもいねぇし壊してもいねぇよ」

「義理立てか？」

「いや。恩の押し売りだ」

フッと思わず口元が緩む。

源のこういう所を、ホセは気にり出していた。

「押しつけられたら仕方がねえ。買ってやるよ。好きなもん持ってけ」

「最初からそのつもりだ……でもな」

直後、ホセの視界がグルリと周り、胃の腑がフワリと浮いた。今日２度目の落下の覚は、僅かな怒りを孕んでいた。

背中に強い衝撃をけて息を詰まらせていると、ブーツだけで視界を支配した源が上から告げた。

「まぁ便宜上な、こんくらいはしとくぞ」

『クソ野郎が！』

ゲホゲホと止まらない咳の中で怨嗟を練っているに、源の姿はどこにもいなくなっていた。

數時間前まで決死の戦いをしたの最深部に、再び源は立っていた。ナノマシンで傷を癒やし、殘留する痛覚にも麻酔を効かせてはいるものの、圧倒的な実力差で打ちのめされた神の方が、震いするほどの恐怖を覚えている。

「……忌々しぃ場所に置いてくれたな」

「そんなにヤベエ相手だったのか？」

思わぬ質問を投げかけられて、源は周囲を見渡した。警戒は怠らずにいたはずだが、一どこに潛んでいるのか、皆目見當がつかない。

聲がエリカ・リグスビーのものなのはわかるのだが、その姿を検めることが出來なかった。

豪快な振る舞いを見せていた彼の意外な一面に、源は舌を巻く。

「お前、思ったより大分出來るヤツなんだな」

「用なもんだろ？」

その返答で、いよいよ源は音源に気づいた。

だだっ広いドーム空間の片隅に、小さなコンテナがあった。エリカの聲はそこから響いている。FPSゲームの設置武のように卓上照明に照らされた２つの武は、源にとっては思い出深いだった。

１つは帷子ギルベルトも使っていた軍用ウォーターカッター兵恵まぬ雨レイン・ウィッチ・イズ・ノット・ギヴン。

そしてもう一つ。

「ホセアイツ好きだなぁ電磁銃レールガン」

「昔からそうなんか、アイツ」

一糸纏わぬ姿のエリカは、対電磁狙撃銃アンチマテリアルレールスナイパーライフルの銃を鈍くらせながら呆れたようにく。

「その銃、借りていぃんだな？」

「あぁ。ホセの許可は下りてる」

「で？何でなんだ？お前」

「ちょいと構造が複雑な銃でな。説明すんのに々見せなきゃなんないんだ。サカって襲うなよ？」

「ピクリとも反応しねぇよ」

気の置けない雰囲気で軽口を叩きながら、対電磁狙撃銃アンチマテリアルレールスナイパーライフルの講習は始まる。２人とも真剣な面持ちで真面目に報共有を図ってはいるが、側から見れば中々に刺激的な景だった。

特に。部屋のり口で學迷彩カメレオンを纏って眺めていた絵には。

『……え？いや、え？何？何のプレイ中？』