《T.T.S.》FileNo.4 『Sample 13』 Last Chapter-3

世界は転換期を迎えた。

タイムマシンのが剝がれ出し、それを巡る策謀がき出す。

甘鈴蝶は考える。

いかなはじめ源を相手取った裁判は、世論をT.T.S.を謗る流れに向かわせることだろう。

だが、いかなる毀譽褒貶に曬されようと、T.T.S.は使命を果たさねばならない。裁判にも慎重に対応しつつ、通常業務もこなすのは至難の業だが、やるしかないだろう。

帷子ギルバートを新たなメンバーとして迎えた今、T.T.S.の戦力大きく増強された。この力をいかにして制するかが、今後の課題だ。

いかなはじめ源はき出す。

紫姫音という掛け替えのない相棒を奪われた彼に、もはや逡巡はない。新たな仲間のエリカ・リグスビーも、タフで負けん気の強い頼もしいヤツだ。

T.T.S.という枷も外れ、久方ぶりの自由を得た彼は、もはや手段を選ぶこともしないだろう。

正岡絵は危懼する。

いかなはじめ源を中心に、急激に世界がき出した。

仲間になって戻って來た帷子ギルバート。

判明した2人の妹、Sample 13と紫姫音。

遂に現れた源やギルバート、Sample 13の生みの親、ジョセフ・クラーク。

そして、1人のの主張を拠に、彼を公の場に引き摺り出そうする勢力の活発化。

多くのキャストが、一斉に彼の前に現れ、彼を振り回し、彼を利用しようとしている。

このままでは大切な相棒バディが非日常に呑まれてどこかに行ってしまいそうな、フッと消えてしまいそうな、二度と會えないような気がして、T.T.S.という日常との鎹にならなければならない。

そんな危機だけが彼に渦巻いていた。

Sample 13は潛思する。

ダラスの夜は、彼に多くのものを與えた。

失敗作と稱された兄たちと出會い。

初めて自分を追い詰めた凡人との遭遇。

とりわけ、彼の手の中にいる、もう1人の自分。

紫姫音という電子との出會いは、奇妙な喜びをに植え付けた。

誰もが、ifの自分を思い浮かべたことはあるだろうが、それが目の前に現れた経験は誰にもないだろう。

気味の悪さと好奇と期待と悅びが綯いぜになった、ハンバーグの種のような未知の

だが、生憎とはそのハンバーグの種をどう加工すればいいのかが分からない。

ゆえに潛思する。

お父様にバレないように、あの夜の記憶が失われないように。

そうして、Sample 13は夢を見る。

いつか、いつの日か。

すべてのしがらみを斷って、誰も彼を知らず、彼の方も誰も知らない場所に行って、紫姫音と々なことを話したい。

そんな、仄かな夢を抱いて、は僅かな笑顔を浮かべる。

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