《T.T.S.》File.5 Worthless Road Movie Prologue

人間は自由を求める生きだという。

何のしがらみもなく、何かに従うこともない、自らの意志でのみ指針を決定出來る。

そんな自由を本能的にし、それを得ることにこそ幸福があるという。

だが、もしその人間が、何の規律もなく、何の後ろ盾もなく、何をすればいいのかも分からない者だとしたら、どうだろうか。

果たして、その人は幸福なのだろうか?

否。そんな人間にとっての自由は、もはや劇薬であり、それを押し付けられる行為は、暴力に他ならないだろう。

とどのつまり、幸福は個々人のでしか測れないものであり、自由は幸福の1カテゴリーでしかない。

しかしながら、そんなことは今更言及するまでもなく、みんな気づいている事実だ。

ただ、自覚なき自由の狂信者たちによって歪められた、自由至福主義とでもいうべき幸福論に嫌気が差して來た者たちもなくない。

そう、我々・・のように。

合衆國が消え、コミュニティの集合となった北アメリカ大陸の舊米國領を橫斷する北アメリカ大陸橫斷鉄道は、閑散としていた。

乗客は、我々を含めても4組だけ。6つ連なるコンパートメントの、実に2つは無人だ。

取る気もなかったが、先んじて両サイドの席は別のグループに抑えられていたため、一部屋分飛ばして別室を確保した。

自然と、もう一組もそういうきをしたのだろう。

隣り合わの形になった彼らの気配が、時折れ聞こえてくる。

殊更聞こえてくるのが、話し聲だ。

窓を開けているのであろう、進行方向側に位置する彼らの會話は、もはや筒抜けだった。

「またかかって來やがった」

テノールな男の沈んだ聲がする。

それを勵ますようにソプラノのの聲が答えた。

「またアモロウナグ?」

「ったくよ、この5分で20回は掛けて來てんぞアイツ」

ウンザリした口調で愚癡る男に、別のの聲がし掠れたアルトで応じる。

されたもんじゃねえか多重いじあるけどよ」

それに答えたのは、意外にも男の聲ではなくソプラノのの聲だった。

「重いなんてもんじゃないのよ……私が何回殺さそうになったことか……」

「浮気だと思われたんか。でもしょうがなくねえか?実際そうだったとしたら、アタシだって男殺すぜ」

「私は即切るからそこまではしないかな」

「その辺淡白そうだもんな、アンタ」

「私を切って來たヤツを繋ぎ直す道理がないからね。さっさと切る方が楽よ」

「そんなもんかね」

「関心のなくなったものとはさっさと距離を取った方が楽よ。他に集中したいことがあるなら特にね」

「……ふーん」

「何?」

「いや、それって逆にアツい時期のプレイめっちゃ激しいタイプじゃん、と思って」

「ちょっ!何でいきなりそんな!」

何やら深い話になりそうなので、盜み聞きはここまでにしておこう。

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