《T.T.S.》File.5 Worthless Road Movie Chapter2-1

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は所在なさげに部屋の隅にこまっていた。冷たいコンクリートの上に育座りをし、顔も出來る限り見せまいと腕の中に沈めている。

それでも、は抵抗の意思は捨てていないようで、僅かに覗く視線に怯えはなく、確かな敵意と警戒が乗っていた。

Sample 13は、そんな紫姫音の元に葡萄パンを千切って渡す。

「これ、食べれるモデルでしょう?食べなよ」

「いらない。いまコンセントにつなげてるから」

「……そう。ちなみに自家発電由來だから外部の電線にアクセスは出來ないよ」

ビクッと分かりやすい揺を示した紫姫音が、それでも裁を取り繕おうと視線を泳がせ、居住いを正し、何でもないことのように上った聲で嘯く。

「そ、そうなんだ、しらなかった」

余りにも子供らしい、イタズラを隠すような素振りだが、やっていることは中々に抜け目ない。

電線経由で外にアクセスするなど、無線送電が當たり前の時代にはロストテクニックに近いやり方だが、施設の年季のりようをみてアプローチをかけたのだろう。

だが、生憎と電源環境は施設の水素発電機によって完全に閉鎖的な供給システムが組まれている。

電波も有線接続も外部から絶たれた、絶縁のような箱の中にあって、電子生命とも言える紫姫音は無力だ。

それをようやく理解したのか、電子は不本意そうに葡萄パンに齧りついた。

その様子をシゲシゲと見守りつつ、Sample 13は自の寢床たるコンクリートに直敷された寢袋の上で、リラックスした勢になる。

しかしながら、彼が紫姫音を見る時、紫姫音もまた、彼を見ていた。

『……うん、やっぱりそうだ』

敵意が皆無であると、自分は有害ではないのだと、そう行で嘯いて、同時に紫姫音に興味があることを、言外に伝える。

それはさながら、食事中に紫姫音の口元を仏頂面で拭う時の源に似ていて、どこか源を思い出させた。

まあ、彼に比べれば幾分か素直な反応な分、Sample 13のの素直さが滲み出てはいるが。

その眼差しに、紫姫音は彼らの中に流れる兄妹のじた。

「なあに?」

どうにも話しかけて來ないので、痺れを切らせた紫姫音は自らSample 13に話を振った。

再び勢を変え、今度は胡座をかいた源の妹は、前傾姿勢で紫姫音の顔を覗き込む。

「貴、幾つ?」

「……わかんない」

噓ではなかった。

源と出會ったあの日に初期化された狀態で目覚めた紫姫音に、自がいつ生まれたかの記憶がないのだ。

記録ログを辿ろうにも、初期化以前のメモリには上級権限によるロックがかかっていて、メモリが存在することさえアウトプット出來ないようになっている。

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