《【ダークネスソウル・オンライン】 ~追放された銀髪のために『極振り』で頑張ってたら、たったの3日で『魔王』にり上がっちゃいました。なので1週間で世界征服します~》5:トラウマスイッチ

「グゲェ! グゲェ!」

アリスさんと共に窟を進んでいると、ほどなくしてそいつは現れた。

でっぷりとした腹を膨らませた、棒を持った強面の人型──オークである。

「出たわね……アラタくん、武を構えて」

そう言うやアリスさんは、己が手のに自の武を顕現させた。先端に青い水晶の付いた、彼長分くらいはありそうな長杖である。うーん、ご立派!

それに習って、俺も背中から大剣を引き抜いたのだが──その刀を目にした瞬間、ちょっとだけ頬がひくついた。

「な、なぁアリスさん……俺の大剣、なんかボロボロに錆びてるんだけど……!」

「……初期裝備なんてそんなもんよ。最初にもらえる武なんて、おもちゃのステッキとか豆鉄砲とかそんなじだし。

──それよりもアラタくん、敵が來たわよっ!」

ってうおお!? 前を見たら、オークの野郎がドスンドスンと足音を立てながら突進してきていた。スピード自は大したことないが、巨であるがゆえに質量が半端ない! うわぁ、完全に目がイっちゃってるんですけどぉ!? お腹がブルンブルン揺れてるんですけどぉ!?

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「リアルだからって竦すくまないで、アラタくん! アイツはきが遅いから、『鬼人族』の敏捷ステータスなら十分に攻撃を避けられるはずよ!」

「そ、そうは言われても──ってうわぁ!?」

咄嗟に下げた頭の上を、橫薙ぎに払われた棒が駆け抜けていった。そうしてどうにか避けれたことに安堵するのも束の間、オークの野郎はふっとい足で俺のことを蹴り飛ばしてきたのである。

「いっだぁ!?」

「アラタくん!?」

することもままならず、思い切り壁に叩き付けられてしまう。視界の端っこにある“HPゲージ”が、一気に七割以上も削れてしまったのが見て取れた。ってめっちゃ減ってるぅ!?

予想以上のダメージをけて焦っている俺に、アリスさんが急いで駆け寄ってきた。

「大丈夫? アイツはきが遅くても、攻撃だけならレベル10相當の威力があるから……」

「アリスさん……それ先に言ってしかったんだが……」

まぁ、明らかにパワータイプだというのは見た目からしてわかってたんだけどな。

にしてもなるほど……スピードだけなら、普段・・の俺でもどうにか出來るくらいなんだな。それなら──

「ちょっと待ってねアラタくん。私、【回復呪文】のスキルを取ってるから、いま治して……」

「いや大丈夫だよアリスさん。まあちょっと見てなって」

俺はどうにか立ち上がると、のしのしと迫るオークに対して大剣を正眼に構えた。

そして両足に力を込めると──

「──せあっッ!」

そのまま一気に地を蹴って、一瞬にしてヤツの元へと刃を付き立てた。

俺のきにオークは全く反応出來なかったようで、果たして俺の大剣はヤツの板を突き破り、勢いのままに背中へと貫通。防も反撃も出來ないままに、ヤツのガラスのようにして霧散したのだった。

──よし、この世界に訪れてから初めてもぎ取った勝利である。

俺はアリスさんのほうを振り向いて、ビっと親指を立ててみせた。

「どうよアリスさん! これがHP30%以下の時に発するスキル、【反逆の意志】の力だぜっ!」

俺の言葉に、ぽかんとしていたアリスさんが手をポンと叩いて得心した。

「なるほど……たしかHPが低下してるとき、筋力と敏捷が2倍になるパッシブスキルだったわね。やるじゃないアラタくん! すごいすごいっ!」

あぁ~アリスさんに褒められて脳みそ溶けそうになるんじゃぁ~! あ、レベル上がった!

──數多くのオンラインゲームと同じように、この【ダークネスソウル・オンライン】にもスキルというものが存在している。

最初にキャラを作った時に1つ選べて、レベルが10、20、30と上がるたびにさらにスキル枠が増えていくそうだ。ステータスの高さはもちろん大事だが、スキル選びも戦闘を進めて行く上で重要というわけだな。

「ありがとうアリスさん。まあ結構やり込んでそうなアリスさんからしたら、雑魚を一匹倒したくらいで調子に乗るなってじかもしれないけどな」

「そんなことないわよ! スキル選びも適切だし、なによりもさっきのきは本當によかったわ!

ほら、今ってるこのってリアルのとは違うわけだから、最初のはバランスを崩して転んじゃったりすることが多いのよ。特に、余裕のなくなる戦闘中なんかではね」

あー、確かに【始まりの街】に降り立った時は、ただ歩くだけでも何となく違和があったりしたものだ。だけどその點についてはもう大丈夫。何故なら……

「いやー、やっぱりあの験が良い訓練になったんじゃないかなぁ! ほら、街から出たらいきなり聖騎士の集団に襲い掛かられて、10分以上も逃げ回ることになった経験が──」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……! 私があまりにも不甲斐ないせいで、初心者プレイヤーのキミにまで迷をかけることになっちゃってごめんない……! ボッコボコに負けまくって、聖騎士たちに調子こかせちゃってごめんなさいぃ……!」

「ってえぇ!?」

突然その場にうずくまり、顔を押さえて謝り始めてしまったアリスさん。っていやいやいや!? 今のは別に嫌味とかそういうわけじゃないからね!? ちょっとアリスさん聞いてるぅー!?

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