《【ダークネスソウル・オンライン】 ~追放された銀髪のために『極振り』で頑張ってたら、たったの3日で『魔王』にり上がっちゃいました。なので1週間で世界征服します~》7:殺意の覚醒

「アっ……アリスーーーーーーーーーーーーッ!?」

が、の奧から迸ほとばしった。

わけが分からない、わけが分からない。ついさっきまで楽しく二人で冒険し、仲睦まじく笑い合っていたゴシックドレスのが……どうして今、矢衾やぶすまとなって倒れ伏しているというのだ?

俺の頭はパニック寸前だった。そうして指先を震わせながら、の海に沈んだアリスに手をばさんとした──その時である。

「──ギャハハハハハッ! ごめんなさいねぇ鬼のお兄さん!? 楽しいデートをぶち壊しにしちゃってさぁ!」

嘲笑を含んだの聲が、俺の背後より投げ掛けられた。

さらにはそれに追従し、複數人の忍び笑いが二人だけだった世界に響き渡っていく。

俺は緩慢に後ろを振り向き──そして絶句した。

そこには、かな肢をバトルドレスによって包んだ金髪のを筆頭として……何・十・人・もの『聖騎士』たちが立ち並んでいたのだから。

「なっ……お前らは……!?」

弓矢を構えた部隊がいた。剣を攜えた部隊がいた。槍を手にした部隊がいた。

──まさに騎士団である。皆一様に銀の甲冑でをよろっている様は、そうとしか言いようがなかった。

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ただし……彼らの瞳に宿っているのは騎士道神の輝きなどではなく、嘲あざけりに満ちた下劣なだったが。

「あーあー可哀想に……」「≪麻痺矢≫と≪封の矢≫を山ほど食らっちまったなぁ! その嬢ちゃん、もう詠唱も何も出來ねぇぞ?」「殘った鬼の野郎のほうは……なんだ、初期裝備じゃねえかよ。殺し甲斐がねぇぜ」

耳障りな聲で、口々に好き勝手なことを言う騎士の者たち。彼らの言に対して湧き上がるのは、怒りよりもまず困だった。

「なんで……どうしてここに騎士おまえたちがいるんだよ……!」

と恐怖で思わず聲が上った。アリスとの冒険で忘れかけていたゲーム開始時のトラウマが、脳裏に再び蘇っていく。

ああ、本當になんでこの場所に騎士たちがいるんだ。ここは、彼にとってのの場所じゃなかったのか?

そんな俺の疑問に答えたのは、リーダーだと思わしき金髪碧眼の騎士であった。

「いやねぇ、アタシもビックリしてるわけよ。『初心者狩り』の帰りにたまたま新ダンジョンを見つけたもんだから、喜び勇んでってみたら奧から戦闘音が聞こえるじゃん?

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チッ、お手付きかよって思いながらも、奧まで來てみたらこうして……ねぇ?」

そう言っては、青き瞳を食獣のようにギラつかせ、倒れ伏したアリスのことを睨んだ。

そして、言い放つ。

「──本當に驚きだわぁ。連戦連敗の責任を押し付けられて追い出された、カブトムシよりも弱い“元ギルドマスター”さんがいるなんてねぇ……!」

「何……!?」

アリスが、例のギルドマスターだって……!?

俺は振り向き、伏したままかない彼のことを見た。

(そうか……だからあんなに、魔人種軽視の風について気に病んでいたのか……)

俺みたいな初心者のサポートを行っているのも、きっと罪滅ぼしの一環だったのだろう。立場を考えれば、これまでのアリスの言には納得がいった。

だが、しかし。

「……だとしても、アリス一人で気負うことじゃないだろうがよ。それに魔人種ギルドの連中は、アンタみたいな優しい人に責任全部おっかぶせて、捨てるようにして放り出したっていうのかよ……!」

苦い不快へと走る。ギルドの者たちは、彼を追い出してそれで騎士たちに勝てるとでも思ったのか? 魔人種軽視の風が収まるとでも?

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……答えは否だろうがよ。こうして今、騎士たちに嘲あざけりの視線を向けられている狀況がそれを証明している。

「ああ……クソっ」

果たしてアリスは、笑顔の裏でどれだけの痛みを抱えていたのだろうか。

俺はかないままの彼を背に庇いながら、騎士の集団へと懇願した。

「──頼む。俺のことならどうにでも殺してくれ。何度だって殺してくれてかまわない。だからどうか……この子のことは見逃してやってくれないか? この通りだ……」

そう言って俺は、ヤツらに対して深々と頭を下げた。

はぁ……気分転換で始めたゲームだってのに、なにやってんだろうな俺は。リアルは冴えない元社畜で、そんでゲームでも頭下げてるとか笑モノだろ。

馬鹿なことをやっているという自覚はあるが──だけど、それでも、

「この子は……アリスはとっくに傷付いてんだよ! だからもう放っておいてくれないか!? 俺でよければ何でもするからよぉ!」

心からの誠意を込めて、騎士の者たちへと訴えかけた。

アリスはNPCでもなければモンスターでもない、リアルにの通った人間だ。たとえゲームでは『魔人種』とかいう存在だろうが、げられれば傷付く心をもっている。

そしてヤツらも、それくらいはわかっているはずだ。

「頼む……頼む……!」

ゆえに俺は、騎士たちの人だけを信じて改めて頭を下げたのだが──しかし。

返ってきたのは、右目を抉えぐる指での一撃だった。

「ギッ──ガアアアアアアアアアッ!?」

「あははははっ! 何もぶことないでしょう!? 痛みに対してはセイフティがかかってんだから、鈍痛くらいしかじないでしょうが!

──まっ、眼球ぶっ潰されて眼孔の奧に指を突っ込まれてるっていう不快はどうしようもなく堪たまらないでしょうけどねぇ!」

気づけば目の前には、ニヤニヤと嗤う金髪の騎士がいた。ヤツは俺の右目に指を差しれたまま、下卑た調子で言い放つ──!

「傷付いてるから放っておいてくれだぁ!? アハハハハッ! バァァァカッ! だ・か・ら・こ・そ・嬲なぶり甲斐があるんだろうがよッ!」

「はぁっ……!?」

このはいったい、何を言ってるんだ……!

半分だけとなった視界に映るの言い分が、まるで全然わからなかった。だからこそ、嬲り甲斐があるって……、

「こっ、これはあくまでゲームだろうがよ!? 俺たちは別に本気で憎み合ってるわけじゃないんだっ! だから、だから見逃してやったって、」

「──ゲームだからこそイイんだろうがよッ! ボロッカスの相手に好き勝手に暴力振るっても、どうせ犯罪にはならねぇんだからよぉ!

たとえばこうして……目の中グチュグチュかき回したりしてもなぁあああああ!!!」

「ひっ──ぐぎぃいいいいいいいい!?」

瞬間、頭の中でが弾けた。

が指をかすたびに白いがまばゆく輝き點滅し、が勝手にガクガクと揺れる。

さらには俺のことを押し倒すや、腰にまたがって指を激しく出しれし始めたのである──ッ!

「あぎぃいいッ!? ガッ!? がッぐッ!?」

「アハハハハハハハッ! やべぇえええええ! スッゲェ興するぅううううう!!!

ほらほらほらほらお兄さぁんッ! にズップリっちゃってるわよぉ!? ズタボロにされて転がってるロリ彼の橫で、別のに殺ヤられて逝イっちゃえェッ!

神ボッキリ折れちゃって──このジャンヌダルク様に跪ひざまずきなぁあああ!」

眼孔に突っ込んだ塗れの指ごと、騎士は──ジャンヌダルクは俺の上で何度も何度も腰を上下させ始めた。

らに頬を紅させた様はひどく下劣で、脳で弾ける不快も相まって吐き気すらも催もよおすものだった。

どうにか彼を引き剝がそうと、ブルブルと揺れる大きなや白い太ふとももに指を食い込ませて引っ張るものの、ステータス差からかまったくビクともしやしない。

「アァンっ!? お兄さんもその気になっちゃったァッ!? いいわよいいわよママになってあげるわぁッ! アタシ、好きなタイミングで排卵できるから!!!」

なんだこいつ!? なんだこいつ!!?

聲と俺の絶、そしてジュブジュブという水を掻きまわす音だけがに木霊こだまし続ける。

(も、もう耐えられない! もう限界だ終わらせてくれッ! ……だっていうのになんで俺のHPは、まだ3割しか減ってないんだ……!?)

そうして困する俺に、ジャンヌダルクはとろけた笑顔で饒舌に語る。

「ハァ、ハァ……! ヒヒヒッ……逝イきたくても逝けないことに戸ってるようねぇ、お兄さん。現実だったら致命傷もいいところだってのにね?

まっ──そこらへんはゲームってわけよ。たとえば筋力ステータスを死ぬほど上げまくったとして、それでハイタッチで相手の片腕ぶっ飛ばせるようになっちゃったらスキンシップも出來やしないでしょう?

そんなわけで、プレイヤーによる徒手空拳のダメージは最低限のモノになっちゃうみたいね」

はそこで言葉を切り──そして凄絶に笑みを深めた。

「だぁかぁらぁぁあ……! お兄さんの眼孔や耳のをぶっ壊れるまで穿ほじくりまくろうが、ダメージがほとんどない“ただの指突しとつ”として扱われちゃうってわけよぉ!!!

それにこのゲームは、殘念なことに臓は再現されていないッ! つまりは逆に、へそのに指をぶっ刺して中をグチュグチュかき回そうが、アバターへ・の・ダメージは最・低・限ッ! 不快とショックでテメェの神が滅茶苦茶になろうが、死んで逃げるこたァ出來ないんだよォ!」

「っ……!」

下卑た哄笑が響き渡る。

ああ、なんだよこの……頭おかしいんじゃねえのか!? 見た目だけなら騎士、あるいは姫騎士といったところだが、中はそこらのケダモノ以下だ。完全に神が腐ってやがる……!

「んじゃぁお兄さん……続き、シましょっかぁ?」

猥に、そして下劣に微笑むクソ。控えている騎士たちも腹を抱えて笑うばかりで、俺が苦しめられる姿を楽しんでいる様子であった。

俺を助けようとする者は、ここには誰も居やしなかった。

(畜生……こんなクソゲー、やっぱりやるんじゃなかった……!)

今さら後悔しようが遅い。クソの片手が俺の左目に添えられて、ゆっくりとゆっくりと親指を押し込んでくる。

そうしてついに、俺の目玉が眼窩がんかの奧へと落とされんとした──その剎那、

「ゃ……やめな、さい……!」

弱々しくも確かな聲が、俺の隣から凜と響いた。

それと同時にクソも片手を離し、聲の主を睨みつける。

ああ──この地獄において俺の味方となってくれる者が、ただ一人だけいるじゃないか。

「ア……アリス……ッ!」

「うん、こんなことに巻き込んじゃってごめんね……アラタくん」

を矢に抜かれていながらも、銀髪のは──アリスは俺に優しく微笑む。

脂汗を流していることから、無理して笑顔を作っているのがわかった。いつかの時と同じように、俺を安心させようとしているのだろう。

震えるで、彼は言う。

「……落ち著いて、『音聲力オーダー、ログアウト選択』と唱えなさい。そうしたらキミの神はちゃんと現実に帰れるはずよ」

そ、そうか……最初からそうすればよかったじゃないか……!

これはあくまでもゲームなんだから、ログアウトすれば済む話だ……。

アリスの助言に、クソは忌々しそうに舌打ちをする。

「チッ、テメェ余計なこと言ってんじゃねえよメスガキッ! パニック狀態の初心者を嬲んのが楽しいのによぉ。

クソっ……久々にイけそうな相手だったってのに、ホント殘念だわぁ……排卵して損した」

そんな自分勝手なことを言いながら、クソは俺の右目から指を引き抜いて立ち上がった。

(はぁ、これでようやく解放される……)

そう思い、を弛緩させた──その時である。

「ごめんなさいねぇお兄さん──このジャンヌ様には信念があんのよ!

一度目を付けた男は絶対に屈服させて、二度とアタシのことを忘れなくさせるっていう拘こだわりがねぇ──ッ!」

言うやクソは俺の首を摑むと、數十人の騎士どものところへぶん投げたのだ……!

「なァッ!?」

突然のことにも取れず、無様に騎士たちの足元に転がってしまう。

何をどうするつもりなのかと困する俺に、ジャンヌダルクは指に付著した俺のをチロチロと舐め取りながら、凄絶な笑みで言い放った。

「ふふっ……鬼のお兄さん、アタシからも一つ教えておいてあげるわぁ。

ログアウト処理が完了するまではねぇ……約一分間の時間が必要になるのよ。だからその間ぁ──」

──お兄さんのことを、徹底的に苦しめてあげるわぁ……!

がそう言った瞬間、騎士の一人が俺のみぞおちを踏みつけた。

「がはぁッ!?」

それにあえぐのも束の間、俺の顔面を他の騎士が蹴り飛ばし、さらには全を踏みつけにしてくる。

「アッ、アラタくんっ!?」

アリスのぶ聲が聞こえるが、もはや彼の姿は見えない。

今や俺は騎士たちに囲まれ、蟲ケラのように全を踏みにじられていた。

そのたびに不快と衝撃が走り、俺の神を滅茶苦茶にかきしていく……!

「可哀想だなぁお前さん、ウチのジャンヌ姐さんに目を付けられちまうなんてよぉ!」「畫でも撮って曬してやろうぜぇ!」「オォラ! 何とか言ってみろよザコが!」

……罵倒、嘲笑、侮蔑に愉悅。口々に好き勝手なことを言いながら、俺のことを嬲り楽しむ騎士たちを見て思った。

なんだこれ、と。

──殘りHP、50%。

「アハハハハハっ! アンタたちぃ、間違ってもあっさりと殺すんじゃないわよぉ!? ログアウトが完了する寸前で死ぬようにしなさい!

特に首とはあんまり傷付けちゃダメよ? このゲーム、グロ規制からか臓は再現されてないくせに、首が取れたり心臓のあたりを貫かれると一撃死する仕様になってるからねぇ」

ジャンヌダルクの不快な聲が、俺の耳朶を震わし汚した。

ああ、アリスとの楽しかった冒険が何だかひどく懐かしくじる。

──殘りHP、40%。

「アラタくん……ごめんね、ごめんね……っ! 全部、私のせいで……!」

暗く沈んでいく俺の心に、アリスの泣き聲が虛しく響いた。

いやいや……だからアリスのせいじゃないって。アンタとの冒険は、本當に本當に楽しかったよ。短い間だったけど、アリスとの思い出は俺の寶だ。

──殘りHP、35%。

……いよいよ終わりも近づいてきて、俺はどうでもいいことを思った。

確かこのゲームだと、死ねば所持金のいくらかと、経験値の半分を損失することになるんだったか。

(所持金はいいや……どうせ大して持ってなかったし)

でも、経験値はし困る。

これはアリスとの冒険で稼いだものだ。ほんのしの間だったけど、二人で協力してモンスターを倒して、そうして手にれた冒険の象徴だった。大切な思い出の結晶だった。

それを──こんな奴らに奪われるのか?

俺とアリスを徹底的に見下して、人間扱いすらしていないカスみたいな連中に?

聖騎士というだけで、勝ち組というだけで、淺ましく驕おごり高ぶった者たちに俺はこのまま殺されるのか。

「はっ……ははは……」

そう気づいた瞬間、自然と口から笑いが零こぼれた。ボロボロになった右手を挙げて、顔を覆ったが止まらない。

「はははっ! ははははは!」

おかしくっておかしくって、馬鹿らしくて堪らなかった。

自分の無様がとても笑える。笑う俺を見てキョトンとしている騎士どもがまた笑える。

ああ、こんな奴らにやられちまうのか。こんな連中にアリスとの冒険を臺無しにされるのか? はははははっ!

「な、なんだコイツ……」「頭おかしくなっちまったのか……?」「なんか気味わりぃよ……もう殺しちまおうぜ」

本當に本當に、笑えてしまって仕方がない。

「ははははは! ははははははははははッ!!!」

本當に本當に、本當に本當に本當に本當に本當に……ッ!

──殘りHP、30%。

【反逆の意思】、発

「──ゴチャゴチャうるせぇんだよ、塵屑ごみくず共が……ッ!」

そうして俺は、ひとまず周囲の6人ほどを祭りにしたのだった。

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