《【ダークネスソウル・オンライン】 ~追放された銀髪のために『極振り』で頑張ってたら、たったの3日で『魔王』にり上がっちゃいました。なので1週間で世界征服します~》11:畫投稿①

──その日投稿された畫は、全世界を震撼させた。

タイトル名は≪百人斬り≫。もはや知らない者はいないと言われてるほどの超ヒットVRゲーム、【ダークネスソウル・オンライン】のプレイ畫である。

ただの実況プレイ畫ならば何百萬とあった。ただのネタプレイ畫ならば何千萬とあった。

だがしかし──件くだんの≪百人斬り≫の畫には、誰かを笑わせようとするようなおふざけ的要素は一切含まれてはいなかった。

徹頭徹尾、戦闘! 戦闘! 戦闘ッ!

そこにはリアルでは決して拝めない、全力の命のやり取りがあった。生としての闘爭本能をどうしようもなく刺激させる、本気の殺し合いがその畫には映し込まれていた。

ボロボロの大剣を手にした≪黒髪の鬼人≫が數えきれないほどの騎士たちに挑み、その盡ことごとくを斬滅させていくというダークファンタジーのごとき容である。

最後には人だと思わしき≪黒銀の姫君≫を助け出すため、邪悪なる騎士と一騎打ちをしてこれを討ち取るという締めくくりは、もはや一本の映畫作品といっても過言ではなかった。

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この畫に対して、ゲームをプレイしている視聴者の一人はこうコメントする。

『──これ、そういうお芝居だよな? まさかガチのバトル畫じゃないよな……? いやだって、初期裝備で百人も相手に無雙するとかありえねぇだろッ!? てか最新の裝備でも無理だわッ!』

また別のゲームプレイ済み視聴者は、

『──わぁい! この悪役騎士のお姉さん、金髪ボインでムチムチだー……ってコイツ、オレのケツに剣突っ込んで逝かせやがったジャンヌダルクじゃねぇかッ!?

あーこりゃヤラセなわけねぇわ。だってこいつ格クッッッソ悪いもん! 一応【暁の神】の部隊長らしいし、やられ役なんて絶対に引きけねぇって! つーかザマァァァアア! クソ運営垢BANはよッ!』

その他にも、

『なんだこの鬼人族のきっ!? 攻撃全部避けてるんだけど……!』

『このゲームって誰でもこんな風に戦えるの?』『←無理無理』

『こいつら俺のことをボコりやがった初心者狩り集団じゃねーか!』

『筋力極振りカウンターってなに!?』

『……このお兄さん、常に敵兵団が固まってるところにあえて突っ込んでいって弓兵や呪文使いをけん制してるんですけど。いざとなったら迷いなく敵兵を壁にしてるんですけど、怖いんですけど……!』

『……アレ、よく考えたら百人斬ってなくね?』

──などなど、プレイヤーから未プレイ者までありとあらゆる人々から関心の聲が寄せられ、≪百人斬り≫の畫は投稿から一日で5000萬回もの再生回數を叩き出すことになったのだった。

中でも一番多かったのが、『この鬼人族は何者なんだ』というコメントなのだが──────うん、誰も知るわけないよね!

だって俺、そんときゲーム始めて3時間くらいだったから……!

◆ ◇ ◆

「う、うわぁ……どうしようアリス、なんかまた再生數がびてんだけど……!」

「ふふっ、アラタくんのカッコいいところをたくさんの人に見てもらえて良かったじゃない。私も嬉しいわ」

──騎士たちとの死闘から一日後。【始まりの街】の噴水広場にて、俺とアリスは例の畫を一緒に見ていた。あ、ちなみに投稿者は俺である。

流石にジャンヌダルクに騎乗位で眼孔ファックされたあとモブ騎士たちに袋にされる辺りは痛々し過ぎたので、騎士6人の首を刎はねてからジャンヌダルクを真っ二つにするまでの映像をセレクションしておいた。

(うーん……スマートフォンみたいにメニューウィンドウから他のサイトにアクセス出來るのは便利な機能だと思うんだが、世界観的にどうなんだろうか……?)

……攻略サイトを開きながらモンスターに挑んでいく戦士たちとかファンタジーぶち壊しなんだが。

まあそれはともかく、アリスには本當に謝してもしたりないくらいだ。

なんと彼、昨日の死闘をゲーム実況撮影機能でこっそりと録畫していたのだ。魔人種たちを勇気付けるために騎士連中を全滅させた事実を広めようと思っていたので、まさに渡りに船だった。

そのデータを渡してもらって、編集したのちネットに流したらコレこの通りの結果になったというわけだ。

「いやー助かったよアリス。間違いなくこの畫は魔人種逆転のきっかけになるだろうぜ。【暁の神】の連中も、最強のイメージに泥を塗られて今ごろ焦ってるだろうなぁ。全部アリスのおかげだよ」

「もう、何を言ってるの? 頭のおかしいジャンヌダルクたちを相手にアラタくんが頑張ってくれたからこその結果じゃない。

……ともかくこれで、『覇道』の第一歩目は功ってことでいいのよね?」

「ああ、百點満點の大功だ!」

予想外の畫の大ウケに、俺とアリスは顔を合わせて笑い合った。

今の狀況から魔人種が逆転するには、まずは騎士共の勢いを削ぎ落さねばならないだろう。逆に魔人種にはめた怒りを発させるための火種を與え、行に移してもらう必要があった。

その點でいえば、今回の畫ヒットは間違いなく両陣営に大きな変化をもたらしてくれることだろう。

……というか、ヒットしすぎて広告収益がマジでやばい。

映像提供者はアリスなんだから半分以上は渡さないとだな。後で送金方法について相談しよう。

「ふふっ……畫の真偽を問う聲も多いけれど、それ以上に『初心者狩りどもザマァみろ!』ってコメントが山ほど來てるわね。きっとその人たちが拡散してくれたんでしょうね。

あと……≪百人斬り≫ってタイトルなのに百人斬ってない件についても話題になってるんだけど……」

「ああ、ツッコミどころがあったほうがバズりやすいからな。掲示板やSNSで誰かが紹介してくれた時にも、それに対して『百人斬り(百人斬ったとは言ってない)』って定型ネタレスやリプが大量についてくれるから、一般人にも興味を持ってもらいやすいんだよ。

ゲームのガチバトルなんて本來は閉じコンでしか流行らない容だしさ」

「バズり……閉じコン……? ……ごめんなさい、私にはちょっとわからない世界だわ」

ああうん、アリスさんは綺麗なままでいてくれ……。

まぁその辺のことはあくまでも小細工に過ぎない。やっぱり畫が大ヒットしたのは、聖騎士共が初心者狩りをやりまくった結果の因果応報というところが大きい。

特にジャンヌダルク率いる集団はDQNグループとして有名らしかったので、アイツのことを嫌っているプレイヤーたちを丸っとファンに出來たわけだ。

というわけであの頭のおかしいクソにも謝を……しなくていいな、うん。今度襲ってきたらまた屈服させてやろう。

(そのためにも、まずは裝備を整えないとなぁ)

俺は腰かけていた噴水の縁ふちから立ち上がると、さっきから周囲より飛んでくる「アレ、もしかして例の鬼畜剣士じゃね……?」って呟きをスルーしつつアリスに聲をかけた(ていうか誰が鬼畜だ)。

「んじゃあアリス、そろそろ移しようぜ。……それと、今回のことは本當にナイスだと思ってるよ。いきなり麻痺矢で撃たれまくって行不能にされたっていうのに、よく冷靜に撮影しようって思ったな」

「だからこそよ。何かと過激なこのゲームだけど、流石に酷すぎる言はBAN対象に出來るもの。証拠映像を殘しておくのに越したことはないわ。

それに……前の職場でちょっと、婚・期・に・焦・っ・て・る・・上・司・さ・ん・が・イ・ジ・ワ・ル・を・し・て・き・て・ね・。それ以來、リアルでもゲームでもそういうところだけはしっかりするようにしてるのよ」

そう言って、チラリチラリと何故かこちらを見つめてくるアリスパイセン。かわいい。

ふーんなるほどなぁ。いじわる上司がいて、それからは録畫を…………って、うんッ!?

「も、もしかしてアリスさん────俺がおっぱい食べちゃった時の映像も殘してたりするのかッ!?」

「って殘してないわよ!? もう、そうじゃなくて……うぅう、アラタくんのばかーっ! ていうか思い出させないでよぉっ!」

そうぶや、顔を真っ赤にして走って行ってしまうアリスさん。

ってあのぉ、これから知り合いの『鍛冶屋』さんに會わせてくれるんじゃ……!?

「ま、待ってくれよアリスパイセンっ!」

とりあえずは謝るためにも彼のことを追いかけようとしたのだが……その必要はなかった。

「もうっ! アラタくんってばなんで気付かないの──ってふぎゃあッ!?」

……踏みつぶされた貓のような悲鳴を上げて、アリスさんが盛大にこけたのである。

うわぁ痛そう……アバターをるのが下手って言ってたもんなぁ。とりあえずフォローしておくか。

「アリスパイセン──転んだ姿も可いよッ!」

「うううううううううっ!」

唸(うな)り出してしまった。うーん可いッ!

…………相変わらず以外は12才そこらにしか見えないなぁ。

まぁとりあえず、鍛冶屋に行くのは『有紗アリサ』を起こしてからにしよう。

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