《VRゲームでもはかしたくない。》第1章14幕 人工<artificiality>
3人仲良く≪泥酔≫になり各々が宿の部屋に帰ります。
帰りの日程がまだ決まっていないということで私達も當分『巖塩都市 ファイサル』に滯在することになりました。
何度か來たことはあったのですが、素材の買い付けや販売、クエストで來た限りだったのでいい機會ですね。
≪泥酔≫が治るまで部屋で休み、治ったら観に行こうと思いベッドにりましたが、疲れていたこともありすぐに夢の世界へと落ちて行ってしまいました。
「チェリー。チェリー起きて」
夢の中で私を呼ぶ聲がします。
この聲はエルマ?
「あと5分……。いや。あと2時間は寢かせてほしいな」
「起きろー!」
ペシペシと肩を叩かれ起こされます。
夢じゃなくて現実だったみたいですね。
「おはようエルマ」
「おはよう。今何時だと思う?」
「朝の7時くらい?」
「夜の7時だよ」
「はい?」
視界の端に表示されている時間を確認してエルマが噓をついていないことを確認します。
「うかつだった。18時間も寢ちゃうなんて」
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々警報が出てますね。空腹とかトイレとか。
「ごめんお腹空いたからちょっとリアルでごはん食べて、トイレに行ってくるよ」
「いってらっしゃい!」
現実に戻りトイレを済ませご飯を食べます。
最近自調理機の食事も飽きてきましたね。
気が向いたら料理でもしますか。
気が向いたらですけど。
歯を磨いてログインしようかなと思ったのですが何処からか汗の臭いがしてきたので、服の洗濯ついでに自分の洗濯もすることにします。
服をぎ、洗濯機に放り込み、お風呂場にきました。
向こうと比べると狹くて不便なじがしてきます。
一応向こうで髪は洗ったのでお風呂につかり汗を流すだけにしておきます。
十數分つかり、の芯まで溫まったあと予備のもこもこしたワンピースを著用します。
こういうもこもこの服を著れば拭かなくていいって田舎のばぁちゃんがいってた。
ログインし宿屋に戻ります。
「エルマおまたせー……っていないじゃん」
とりあえず戻ったことをパーティーチャットで伝えます。
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『ただいま』
『おかえりー』
『おかえり!』
エルマいるじゃん。
『みんなどこにいるの?』
『僕は戦利品の売卻にー』
『あたしはベッドだよ』
『私も売卻しなきゃ。エルマは寢るの?』
『のんのん! よく部屋を見渡してごらん?』
『誰の?』
『チェリーの!』
ん? と思いつつも部屋を見渡してみます。
あっベッドが人型にもっこり盛り上がってますね。
「ここかー!」
「だーい正解ー!」
「気付かなかったら置いていくとこだった」
「おいて行かれなくてよかった」
「私達も売卻いこっか」
「あたしはもう売卻すませたよ!」
さすがエルマ。行が早い。
「そっか。私は売卻した後に案所にいってくるね」
「クエスト?」
「まぁ暇だしね。あとはうちのお店の従業員探しに」
「目的は従業員か!」
「ばれたか」
「いっておいで。おねぇさんはここで寢てるから」
「自分部屋あるでしょ?」
「……。スースー」
…………。
ほっときましょう。
宿を出て案所まで定番のスライド移で向かってると焼き鳥の匂いがしてきます。
こっちのはまだ何も食べていなかったのでついでに食べていこうと思い、匂いのもとへ一目散です。
若いの「おいしいよー! やすいよー!」という聲にふと懐かしさをじます。
やっぱりあのおっちゃんの屋臺だったみたいですね。
「お久しぶりです。といっても數日しか経っていませんが」
「おう! あんときの嬢ちゃんじぇねぇか! ここであうたぁ奇遇だな!」
「とりあえず15本ください。『マスティア』で食材探しはよかったんですか?」
「行ったんですがねぇ見つからなかったんですわ」
「そうなんですか? 実は私も焼くとおいしいっていう食材見つけたんですよ」
「ほーう? そりゃ興味あるってもんですわ」
「これなんですけど……」
殘りない〔マッスルガーゴイルの筋〕を取り出します。
「へぇーこれがねぇ。見たじそうであんま旨くなさそうなもんですがねぇ……」
「生のまま食べてた知人が焼くとおいしいって言ってたんですよ」
「これを生でねぇ……。ちーっと焼いてみるか」
「興味あるんでお願いします」
「でもどうして『ファイサル』に?」
「いえねぇ。うちの店たれしかないんですわ。そんで味い塩があるなら塩もだせるかとおもったんですわ」
なるほど。ここ『巖塩都市』ですもんね。
「なるほど。おいしい塩ありましたか?」
「うまいっちゃうまいんだがちーっと足りないんですわ。こうパンチがねぇっていうか」
「なるほど。今度おいしい塩見つけたらまたお店探してお伝えしますね」
「悪いねぇ! そんときゃサービスさせてもらいますわ。っととりあえず焼き鳥15本お待ち! 3000金ですわ」
「こないだは1本ありがとうございました」
「……気にすんな。お嬢ちゃんまだわけぇんだ。わけぇ子には頑張ってもらわんと」
お、おう。
「こっちのなんたらの筋ってやつももうすぐ焼きあがるから待ってな」
「はい」
「味はどうする? たれにすっか? 塩も一応だせますが味の保証はできないですわ」
「では1本づつでおねがいします」
「あいよー!」
おっちゃんの味見のためにか4本焼かれていた〔マッスルガーゴイルの筋〕をけ取ります。
「ではいただきます」
「おう、俺もちーっと味見だ」
パクッと口にれると、筋のどこにため込んであったのかわからない謎の脂としめのから噛むほどにあふれてくるが口の中を満たします。
こ……これは……旨い!
「おっちゃん!! これめっちゃおいしい!」
「お、おう……お嬢ちゃん俺もびっくりですわ……。はめだが部分的にとろけるような舌ざわり……これは強いて言うなら……」
「「牛スジ!」」
「お、お嬢ちゃんわけぇのに牛スジの良さがわかるたー恐れったなぁ」
「結構好きなんです。牛スジ」
「あんなもんがこんなうまいものになるたーなぁ。お嬢ちゃんこれどこで手にれたんだ?」
「えーっと……『マスティア』の料理屋さん?ですね。たしか……『ポンドバーグ』でしたかね」
「ありがとうなお嬢ちゃん! もっかい行ってきますわ。おい、トマトもう一度『マスティア』いくぞ!」
「はい! 大將!」
「お嬢ちゃん急で悪いがこれで失禮しますわ。また會ったらよろしくな!」
「はい。では」
『マスティア』とは逆の方向に走り出すおっちゃんを見送り、買った焼き鳥を食べます。
おいしい……。
エルマとステイシーに分けるつもりで買った焼き鳥が全部なくなるころ案所に著きました。
まずは職場募集の方でも見てみましょうか。
さーっと眺めていると【魔職人】のものがありました。
『職場募集』
『俺様がつくった魔を使いこなせる奴のとこ、もしくは俺様が作った魔を超えるものを持つ奴』
『4番街『アンチドーテ』まで來い』
うわー……。
でもこういう職人さんってほんといいもの作ったりするんですよね。
ちょっと興味があるので行ってみましょうか。
『アンチドーテ』という店を探しに4番街まで來たのですが見當たりません。
誰か通れば聞けるのですがほとんど人通りもありませんね。
シャッターが全部しまってる商店街のような雰囲気がある4番街をふらふらと移していると曲がり角で酒瓶を持って、座り込んでいる老人を見つけました。
心配なので話しかけてみます。
「あの……? 大丈夫ですか?」
「……ンガッ」
「大丈夫ですか?」
「……。お、おう……大丈夫だ…大丈夫……」
「……。風邪ひきますよ?」
「なんだってぇー? そりゃーいかんのぉー帰るかーヒック」
おおう……。漫畫以外で初めてヒックって聞いた……。
「家わかりますか?」
「家……? なんだぁー?」
あーもうほんと酔っ払いキツイ……。
「お! う! ち!」
「おもち?」
…………。
「風邪ひかないように早めに帰ってくださいね。では」
無視することにしました。
老人が倒れている所から路地をし行ったところに一つ燈りのともっているお店があるようです。
何かあったらご老人を保護してもらえるように一言言っておきますか。
古く、錆びた扉を開け、中にります。
「ごめんください」
「……。あいよ」
「この店をでたところでご老人が酔っぱらっていたのですが、もしよろしければ保護をお願いできませんか?」
「……。そいつはこんなナリしてなかったか?」
絵のようなものを描いて見せてくれました。
「そうですね」
「……。ならほっといて大丈夫だ。じきにかえってくる」
「えっ? どういうことですか?」
「……。俺様の師匠だ」
「ん?」
「……。なんだ?」
良く見渡してみると鍛冶場にし近いけれど布を裁斷したりする機械があったりしました。
つまりここは魔工房です。
「失禮ですがお店の名前をおききしてもよろしいですか?」
「……。あぁ『アンチドーテ』だ」
やった! なぜか著いた!
「えっと案所で職場募集の張り紙をみたのですが」
「……。それで?」
「えーっと……。よかったら作品を見せてもらえないですか?」
「……勝手にしろ。そこの棚にある」
「ありがとうございます」
棚に歩いていき魔を見させてもらいます。
どれも高いレベルの裝備効果が付いており、スキルもなかなかいいですね。
でも値札がないですね。
「あの……」
「……? なんだ?」
「値札がないのですが」
「値札はない。俺様が売るときに決める」
「なるほど」
一通り見させてもらってわかったのですがここの魔の全てが【上級魔職人】の手によるものでしょう。
「これはすべてあなたが制作したのですか?」
「……。すべてではない。一部俺様と同じ弟子や師匠が作っている」
「なるほど」
腕はかなりよさそうですね。
ちょっとコミュニケーション取りにくいですけど。
「……。おい、職場募集の見て來たんだろ?」
「そうですが?」
「……。お前の裝備見せてみろ」
「えっ……? あっはい。どうぞ」
外したリングとブレスレットを置きます。
「……。製作品じゃねぇな。しかし、かなりの業だな」
まぁ一応【神】ですしね。
「……。制作でこれに匹敵するものはあるか?」
「いえ。今手元にはないです」
「……。持ってこい」
「えっ?」
「……。持ってこい」
「あっはい。あっ持ってる人ここに呼んでもいいですか?」
「……。かまわん」
『ステイシーいる?』
『いるよー』
『ちょっと來てほしいんだけど』
『うんー? どこにー?』
『『アンチドーテ』っていう魔工房』
『チェリーの座標に≪テレポート≫するねー』
『ありがとう』
「やーやー。おまたせー」
「ステイシー來てくれてありがとう」
「いいよー。それでなにかなー?」
「こちらの職人さんに【再誕神】をみせてあげてほしいの」
「お安い用さー」
手に持っていた杖をぽいっと機の上に置きました。
「……。【再誕神】か。これの制作者は誰だ?」
「めのまえにいるじゃないー」
「……。どういうことだ」
「このがそれを作ったんだよー」
「……。それは本當か?」
「え、えぇ……まぁ一応」
「……。なぜ俺様の工房にきた? これほどのものが作れるならてめぇでやったらどうだ?」
「一理あるー」
おい。
「他にもいろいろやっていましてちょっと時間が足りない……んですよね」
「……。ほう?」
「素材集めたりとかしますし……」
「……。てめぇこれ使えるか?」
ひょいっとブックを投げ渡してきます。
【テウルギア】……?
「……。裏手がしくらいなら魔法をぶっ放しても大丈夫なようになってる。使ってみろ」
「あっはい。わかりました」
裏手まで移します。
ステイシーと魔職人の人もついてきました。
「……。なんでもいい。スキルが発できるかやってみろ」
やってみろっていわれても……これスキル何もついてないんですけど……。
「……。スキルが書いてないんですけど」
「……。そうか。≪ヘノーシス≫と言え」
「……? ≪ヘノーシス≫」
…………。
何も起きませんね。
「……。やはりか。もういい返せ。使えるようになったと思ったらまた來な」
「えっ? ちょっと狀況が読めない」
「……。帰れ」
「じゃぁ僕はかえるよー。チェリーまたあしたー」
「うん。また明日ね」
仕方ないので私も帰ることにします。
店を抜け路地に出ると先ほどの老人が立っていました。
「ヒック……。お前さんあの魔使えなかったんじゃろ……」
「なぜそれを?」
「あいつはいつもああやっての、使えない魔を渡して試してるのさ……」
「つまりどういうことですか?」
「自分が作った【人工神】を目覚めさせる奴がいるかどうかの……」
「【人工神】?」
「文字通りじゃよ。【神】を人の手で作り出そうとしてるのさ」
「できるものなんですか?」
「わしにゃーわからん。あいつはできると信じとる。それだけじゃよ」
「【人工神】か……」
「ひっひ。気になるかの?」
「気になりますね」
「ならもう一度【神】を持つときと同じようにもってみたらどうかの……?」
「わかりました。では出直してきます」
「ぬう? 今行かんのかの?」
「追い出されてしまったので」
「そういうことか。ならわしについてこい」
「わかりました」
そうしてご老人をつれ再び『アンチドーテ』にります。
「……。俺様は帰れといったぞ?」
「あなたの……あなたの作った【神】に命を吹き込むためにもう一度來ました」
「……。くそじじい話しやがったのか」
「ほっほ。よいではないか」
「……。何度やったって無駄だ」
「もう一度だけやらせてください」
「……。好きにしろ」
再び【テウルギア】をけ取りました。
普段【神】を使うとき微塵も意識したことはなかったのですが、今回は意識して持ってみます。
お前は【神】です。
複數の【神】を持ってきた私が保証します。
【神】の【神】たる所以、みせなさい。
心の中で呪文のように唱えると、手に持った【テウルギア】がドクンっと脈したようにじました。
MPを注ぎ込みます。
ドクン……ドクン……と次第に早くなる鼓のように脈打っています。
さらにMPを注ぎます。
すると【テウルギア】が私の手を離れて浮きはじめました。
次の瞬間まばゆいを放ち、床にポトリとおちました。
私はそれを拾い上げます。
【人工神 テウールギアー】
裝備効果:MND+50
INT+50
武固有スキル:≪ヘノーシス≫
「できました。魂を、宿しました」
「……。そうか」
「私の店で【魔職人】をやっていただけませんか?」
「……。師匠世話になった。俺様はこいつと一緒に行く」
「いいのか?」
「……。他に弟子もいるんだそいつらに継がせろ。俺様は出ていくと決めた」
「ひっひ。そうかい。元気でやれよ」
「……。あぁ。じゃあなくそじじい」
「……。店はどこだ?」
「『花の都 ヴァンヘイデン』にある『セーラムツー』です」
「……。くそじじい。あと2日だけおいてくれ。準備する」
遠いですもんね……。
本店と分店の場所を描いた地図を渡し、困ったら本店のフランに相談するように言い、私は店を後にしました。
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