《VRゲームでもかしたくない。》第1章17幕 修行<training>

休息という名の睡眠を取り、珍しく午前中に目を覚ました時、ふとした違和に気付きます。

最初は雷屬魔法のアンチスペルだったのになぜ2度目の時はスキルがすべて封じられていたのでしょうか?

考えても答えは出ないのでログインして他の人にも話してみようと思います。

『おはよう』

『チェリーおはよ!』

『おはよう』

ジュンヤがいるみたいですね。

『そういえばさっきふとおもったんだけど、なんで全部のスキルが使えなかったんだろうね』

『さぁな。その辺はハリリンが調べるっていってたぜ』

『そっか』

『話かえてもいいか?』

『ん? いいよ』

『お前らお姫さんの護衛できたんだろ?』

『そうだよ』

『お姫さんは何か巻き込まれないのか?』

しまったその可能を全く考えていませんでした。

ダーロンにチャットしてみましょうか。

『ダローンさん』

『なんだ?』

『姫様は大丈夫ですか?』

『大丈夫も何もまだ公務すらしてないからな。向こうの外が忙しいといってな』

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『そうですか。何かあったら知らせてください』

『わかった』

『今のところ何かに巻き込まれてはいないみたい。外が忙しいとかで公務ができてないって』

『キナくせぇな』

『そのへんもハリリンに調べさせよっか』

『伝えとく』

『よろしく』

『あたしはちょっと修行に行ってくるよ!』

『がんばってね』

『がんばれ』

エルマとステイシーはどこか行ってしまい、ござる丸は音信不通ですね。

山ごもりかな?

私は鍛えるつもりがないので、あまり関係ありませんが。

とりあえず宿屋から出てもやることがなさそうなので、せっかくですしいろいろ考えてみましょうか。

魔法系を使うときに基本は高威力の魔法さえ発できてしまえば敵はほぼ無力化できます。

しかし、今回のような高威力の魔法が使えない場面ですとこちらが無力化してしまいますね。

外部に影響を出さず、高威力の魔法を撃ててばいいのですが……。

ん?

外部に影響を出さない?

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バリア……。

ドーム……。

一つ思いついたことがあるので試してみようと思います。

宿屋をでて郊外のちょっとモンスターが湧く地點まで來てみました。

では早速試してみましょうか。

「≪シャドウ・シールド≫」

1匹のモンスターを6枚のシールドで囲んでみます。

そして座標を指定し、発する類の魔法を使ってみます。

「≪ダーク・ボルテックス≫」

パキっと音を立てシールドが割れてしまいました。

普通に失敗ですね。思いっきりれてますし。

ということは逆の屬の魔法でやってみればいいですかね?

「≪ホーリー・シールド≫」

再びモンスターをシールドで囲みます。

「≪ダーク・ボルテックス≫」

おっ!

今度はシールドが割れないですね。

『【稱號】【魔法創造者】【魔法制作】を獲得しました。』

新しい【稱號】が手にりましたね。

【魔法創造者】は特に効果のないお飾り【稱號】ですね。

【魔法制作】は複數の魔法を組み合わせて新しい魔法を制作、保存ができるみたいですね。便利なので裝備しておきましょう。

シールドを複數枚出して正方形に固める魔法を【キューブ】と定義し、保存します。

「≪ホーリー・キューブ≫」

おお。シールド6枚に比べてコストも軽く、形も綺麗ですね。

「≪ダーク・ボルテックス≫」

強度も高くなっていますね。

これはなかなか便利です。

ついでにシールドを灣曲させ円形に囲う【ドーム】というシェイプを制作しておきます。

しばらくドームシェイプとキューブシェイプを利用してモンスターを狩り、に馴染ませておきました。

ちょうどお腹も減ってきたので切り上げて帰ろうとした頃にダーロンからチャットがきました。

『相談があるんだがいいか?』

『今からごはん食べに行くのでそこで話しましょう』

『わかった。どこにいけばいい?』

んー。こないだエルマ達とめっちゃ飲んだお店でいいかなと思いそこを伝えます。

『『呑み処 大なり小なり』に向かう予定です』

『わかった』

では私も向かうことにしますか。

スライド移しながら他に制作できそうな魔法はないかなーと考えますがいまは出てこなかったので保留にしておきます。

あとでエルマとかステイシーに意見でも聞こうかな。

「いらっしゃいませー。開いてる席にどうぞ」

「ありがとうございます」

そういって店をぐるりと見まわしてもダーロンの姿はありませんでした。

ダーロンが來た時に見つけやすいように口からよく見える席に陣取ります。

一杯だけならいいかな?

「すいません。注文いいですか?」

「はい。承ります」

「……。瓶ビールとモツ煮、枝豆お願いします」

「かしこまりました。々お待ちください」

この世界、お酒に関係するものやけに充実してるんですよね。

制作者がお酒好きなんですかね?

あと麻雀も。

「お待たせしました。お先に瓶ビールと枝豆ですね」

「ありがとうございます」

「もつ煮もう々お待ちください」

「はい」

瓶ビールの栓は抜かれた狀態でよく冷えたグラスと一緒に出てきます。

…………。この世界にも『飲食店営業許可 』的なものあるんでしょうか。

年金があるくらいだしあってもおかしくないんですよね。

それはそうといただきます。

グラスになみなみと注ぎ、ゴクゴクとで味わいます。

「ップッハー」

リアルでこんな時間から飲んでたらアレですけどまぁゲームですし、ニートですからね。

このくらいの贅沢は許していただきましょう。

枝豆に手をばすと、その枝豆の向こう側にダーロンが立っていました。

「こんにちはダーロンさん」

「よう。晝間から飲んでるのか?」

「ええ。見たら飲みたくなっちゃって」

「飲みすぎるなよ」

「大丈夫です。ビールは3本までって決めてるので」

「それは結構飲んでるほうだぞ」

「ま?」

「?」

「いえ。ところで相談ってなんでしょうか」

「あぁ。姫殿下のことなんだが……」

「お待たせしました。もつ煮です」

「ありがとうございます」

「……。さっき公務ができていないといったな」

「はい。聞きました」

「呼びつけておいて外が忙しいと言って顔を出さないのは何かおかしいと思わんか?」

言われてみればそうですね。

普通呼びつけるんだとすれば手が空いてるときに呼びますよね。

「おかしいと私も思います」

「そこでお前に調査を依頼したい。俺個人として」

「私諜報は向いていないので適任を紹介しますよ」

「それでもいい。ここに呼べるか?」

「聞いてみます」

『ハリリン』

『びっくりしたっす。どうしたっすか?』

『ハリリンに依頼したいって人がいるんだけど』

『わかったっす。とりあえず話聞きにいくっす』

『まってるね』

「ここに來るそうです」

「そうか。じゃぁ待ってる間俺も飯食うか」

「おすすめはもつ煮ですよ」

「じゃぁもつ煮を貰おうか」

數分してもつ煮と2本目のビールが到著します。

はふはふとダーロンがもつ煮を食べているとハリリンがやってきます。

「チェリーお待たせっすー」

「ありがとうハリリン。こちらダーロンさん。ハリリンに諜報の依頼をしたいって」

「騎士団団長のダーロンさんっすか。詳しく聞かせてほしいっす」

「あ? ああ……。この國の現狀についての調査を依頼したい。漠然としててすまない」

「いいっすよ。いま摑んでる報だけでも聞くっすか?」

「いくらだ?」

「そうっすね。瓶ビール1本でいいっすよ」

「わかった。追加でビール1本頼む」

「あっ私もビール追加で」

「ビール2本ですね。かしこまりました。々お待ちください」

「さてどっからはなすっすか?」

「最初から全部頼む」

「了解っす。まず外の話っすね」

「ほう?」

……。気になりますね。

「外が忙しい理由は領主の不在によるものっす」

「領主が不在? どういうことだ?」

「詳しくはわからないっす。おそらく別の都市に行ってるか、何者かに消されたっす」

「領主が消されただと!?」

「しっー! 聲がおっきいっすよ!」

「すまない」

「昨日俺たちのパーティーが巖塩鉱山の中で謎の人と戦ったっす。そいつが〔の誓い〕を持ってる可能があるっす」

「なんだと?」

「あくまで可能っす」

「にわかには信じられんな」

「俺も信じられないっす。実際に確認してないのでまだ何とも言えないっすけどね」

「つまり外はその処理に追われてると?」

「外だけじゃないっす。宰相やらみんな全部っす」

「ありえん」

「そこで裏でつながってるであろう組織に行きついたっす」

おっ!

「『レイグ』とかいう組織なんすけど、かなりエグイ組織っす」

「というと?」

「まずはシマの完全管理のために邪魔者は全部消してるっす。外の人でも関係ないっす。他にも人売買や危ない代を売買してるっすね」

「ほう……」

「そしてその組織の息のかかった者達が國家運営の中樞に深くり込んでるっす」

恐らくはここの外とかがそうっすね、と付け足しながら運ばれてきたビールをのみ、ダーロンのもつ煮をつまんでいます。

「今から言うことに驚かないでほしいっす。極で姫様の暗殺計畫が立ってるっす」

「なっ……」

「まじか」

「まじっす。『ヴァンヘイデン』の中樞に簡単にり込めない腹いせってとこっすかね」

「そうか」

「なるほど……」

「他の大型國家でもそうっすね。王様や王子、王全部暗殺計畫があるっす」

ちょっと話がでかくなりすぎてもうついていきたくない。

「すぐにということはなさそうっす。まだ戦力増強中ってとこっすね。でも報酬に目がくらんで手を貸す外の人達もそこそこいるっすから油斷はマジできないっす」

「俺から國王陛下と姫殿下に報告してもいいか?」

「いいっす。場合によってはジロー閣下やマーガレット猊下のお力も借りたほうがいいっす」

そんなやばい案件!?

『ヴァンヘイデン』における聖職者の頂點であるマーガレット猊下や軍事の頂點であるジロー閣下にまで話が拡大してる……。

「わかった。俺は一度帰國する。その間、姫殿下の護衛をお前に任せてよいか?」

斷れない雰囲気作らないでほしい。

「はい……」

あっそうだ。

「姫様も連れて帰ったらどうです?魔法で送りますよ?」

「……。その手があったか」

「そもそも最初からここまで飛ばせる人に依頼すればよかったんですよ」

「ここまで飛ばせるほど高位の士はいないと決めつけていた」

「戻ってくるときは西通りで骨董屋的なものをやってるレディンという子供を訪ねてください。彼ならここまで送れます」

「わかった。謝する。姫殿下をお連れするからしばらく待っていてくれ」

「チェリー。ついでに俺も送ってほしいとこがあるんすけどいいっすか?」

「どこ?」

「『マスティア』っす」

「なんで?」

「諜報っす。あそこは軍事に強いっすからね」

「わかった。≪ワープ・ゲート≫」

「たすかるっす。何かわかったら連絡するっす」

「お願いね」

私の返事を聞くとすぐにゲートをくぐっていきました。

3本目のビールを飲み切り、ワインを注文し飲んでいるとダーロンとお姫様がやってきました。

「お主……。晝間から酌とはいい分だな」

「お褒めにあずかり栄に存じます」

と席を立って一禮します。

「褒めておらんぞ」

「では姫殿下參りましょう」

「うむ。転移は初めてじゃ!」わくわく

「じゃぁいきますね。≪ワープ・ゲート≫」

「おお! これが転移魔法か!」

「左様でございます。足もとにお気をつけくださいませ」

あーちょっと私酔ってるかもしれないですね。

「うむ! また會おう」

「何かあったら連絡する」

「お願いします」

姫様とダーロンを見送ったあと昨日組み直しておいたパーティーメンバーのエルマとステイシーに伝えておきます。

『というわけで姫様とダーロンは一旦帰りました』

『了解だよー。修行中だから戻ってきたらまたおしえてー』

『わかった! 修行ひと段落したらまた連絡するね!』

『じゃぁまたね』

みんなやる気がすごいですね。

私は修行する気になれませんよ。

ちょっと飲みすぎたみたいなので宿に帰ってベッドに潛ろうかなと考え、伝票を見て気づきます。

ダーロン金払わないで消えた……。

to be continued...

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