《VRゲームでもはかしたくない。》第2章7幕 冥界<underworld>
大聲をあげちょっとすっきりしたところに他のプレイヤーも帰ってきます。
「おっ。チェリーみたぜー」
「やめて。ジュンヤだって映ってたじゃん」
「まぁな。ていうか録畫されてるとはおもわなかったな」
「映畫のプロモーションビデオみたいだーっていま大人気っすね。第二次生産の専用端末もすぐ売り切れちゃう勢いっすね」
「かもなー」
「そういえばジュンヤに手紙っす」
そういってハリリンが手紙を取り出し、ジュンヤに渡します。
さっきニュース見てるときに一瞬だけ來た忍者みたいな人から預かったのかな?
手紙を読み終え、ビリビリに破り捨てたジュンヤが言います。
「みんな、聞いてくれ」
みんな作業や雑談をやめジュンヤのほうを見ます。
「連合から命令が下った。一度撤退し、ホームタウンに帰れとのことだ。ここの警備には連合のNPCがあたるようだ。なにかあったら所屬國からまた命令が出ると思う。いったん解散だ。おつかれ」
ジュンヤの言葉を聞いて、≪テレポート≫で帰るもの、あるいて部屋を出るものが出始めます。
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「なんでいったん解散なのかな?」
「追跡にてこずってるんっすよ。大まかな場所がわかっても確信がないと大部隊を員するのはこわいんすよ」
「ふーん」
私にはよくわからないですけど。
「チェリー。ちょっといいかなー?」
先ほどまで空気にじっていたステイシーが話しかけてきます。
「どうしたの?」
「ちょっと修行……っていうか裝備整えに冥界におりないかいー?」
「なるほどね。いいよー」
「わるい。聞いちまった。それ俺もいっていいか?」
ジュンヤも乗ってきます。
「たすかるー。〔神話級モンスター〕だと単獨は厳しいからねー」
「まぁお目にかかれるとは思えないけどな。すぐいくか?」
「いやー。一回ホームに帰って準備してくるよー。POTも心もとないしー」
「賛」
「じゃぁそうすっか」
改めてパーティーを組み直し、転移で『花の都 ヴァンヘイデン』に帰ります。
「なんかまだ半日くらいしか経ってないのにやけに懐かしくじるな」
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「わかる」
「じゃぁ僕はお先にー」
ステイシーを見送り、ジュンヤもギルドに行くといったので別れました。
TPが減っているのでスライド移もできず、仕方なく徒歩でホームへ向かいます。
「ただいまー」
扉を開け、現実の家より何倍も過ごした本當の家の匂いを嗅ぎ、心が落ち著きます。
「おかえりー」
「おかえり。埃臭い。風呂って」
ハンナとカンナが迎えてくれました。
こうしてこの子たちと話すのもほんとに久々な気がしますね。
「わかった。最近調子はどう?」
「もう慣れてきて暇な時間に勉強とかしてるよー!」
「なまくらが居なくて楽だった」
「カンナ!」
「ツーン」
毒舌娘……。かわいいから許そう。
「そっか。何かあったら教えてね。あっそうだ。もうししたら冥界に下りるからアイテム出しておいてくれる?」
「りょうかい! お部屋に屆ける?」
「いや、地下に置いておいてくれればいいよ」
懐かしいエレベーターに乗り、浴場を目指します。
まだ時間的には他の従業員の娘がっていてもおかしくはないですね。
案の定いだメイド服が一著置いてありました。
…………。サイズからして……フランかポテトですね。
私も裝備を一括で外し、ヒタヒタと歩きながら扉を開けます。
あぁ……。この熱気だけでも気持ちいい。
扉をくぐり、右手側に進みを洗います。
お風呂椅子を鏡の下からずるずると引っ張りだし、よいしょと聲をだしつつ座ります。最近自然とこの聲が出るようになりました。斷じて歳ではないです。疲れているだけです。
シャワーの蛇口をキュッとひねり、お湯を全に浴びます。
その時後ろから聲がかけられます。
「お背中お流しします」
この聲はポテトですね。置いてあるメイド服ののサイズから予想は付いていたので揺せずに答えます。
「おねがいね」
「はい。かしこまりました」
ごしごしと背中を洗ってもらっている間にあったことを話します。
「……ということがあってね」
「存じております。『ギャンドウェルン』……なくなってしまったのですね……」
凄く寂しそうな聲ですね。
「何かあった?」
「いえ。『ギャンドウェルン』には生家がありまして、友人もそれなりに住んでいたのでちょっと」
私はそれを聞き、クルッとおをらせ、ポテトのほうを向きます。
おおう……でかい……。じゃなかった。
「大丈夫。絶対に取り戻して見せるから」
また一つ、私に負けられない理由ができました。
「チェリー……。ありがとうございます」
し照れ臭くなり、二つの山をしっかり目に焼き付けまた背中を向けます。
「では続き、しますね」
「おねがいね。調薬のほうはどう?」
「そうですね。グランドTPPOTの生に功しました」
おお! すごい! グランドポーションは功率低いですし、レシピがあってもなかなか作れないんですよ!
「すごい!」
「いえいえ。チェリーほどではないです。……。TP空っぽですね。使ってみますか?」
泡まみれの手でインベントリからグランドTPポーションを取り出し渡してくれます。
一息に飲み干し、回復量を確認します。
私のTPは最大値が19000なのでグランドポーションでしたら半分の10000ほど回復するはずです。
スーっとを通るハッカのような爽快があり、TPが回復していきます。
回復量はおよそ10000なので製品としてちゃんと売りに出せるポーションでした。
「10000前後回復したよ。ちゃんとグランドポーションだね」
「がんばったかいがありました。ではお店に納品しておきますね」
「ありがと」
そうしている間に背中が洗い終わったので、ポテトと一緒に湯船につかります。
「ふあああぁ」
足先からゆっくりつかり、肩までが湯に飲みまこれたあと、私の口から聲がれます。
「気持ちいいですよね。私もなんだかんだ毎日お風呂にはいってしまって」
「磨きのためだからセーフ。ただ髪洗ったりするのがし億劫でるのめんどくさくなっちゃくんだよね」
「チェリーは髪ながいですからね。タイミングが合えば洗ってさしあげますので」
「ありがとー」
そしてちらっとポテトのほうを見、湯に浮かぶ浮きを堪能しているとステイシーからチャットがります。
『準備完了ー。チェリーホームの地下集合でいいかなー?』
『いいよー。今お風呂ってるからし待って。あっあと冥界り用のアイテムはうちの従業員の娘からけ取っておいて』
『りょーかいー。ジュンヤにもつたえておくねー』
『よろしくー』
「ふぅ……。そろそろあがって冥界に行かなきゃ」
「いつもお疲れ様です。ポーションお渡ししますので使ってください」
「じゃぁ代金は倉庫から持って行ってね」
「わかりました」
ザバッっと湯船から全を出し、に著いた水滴は払落し、ペタペタと所へ向かって歩きます。
一通りもふき、裝備をに著けます。
VR化してから冥界は初めてなのでしワクワクしています。
エレベータで地下まで降り、すでに到著していたステイシーと合流します。
「おまたせー」
「へーきー。POT結構買ったから補充するように店員さんに言っておいたよー」
「ありがとう」
しステイシーと話していると、カツカツという階段を降りる音が聞こえてきます。
「またせたな」
そういうジュンヤの恰好を見るといつも肩に乗せている槍が見當たりません。
「【聖槍】は?」
「あぁ。CT中でいま使えないんだ。代わりに【神】あっから大丈夫」
【神】を取り出し裝備していました。
【神 トリシューラ】……。滅茶苦茶いい武なのに【聖槍】の方を使ってるんですよね。
「準備はできたか?」
「大丈夫」
「僕も大丈夫だよ」
「チェリー移アイテムは?」
「あっ【稱號】の効果で必要ないの」
「便利な【稱號】だな。っし行くぞ」
「「おー」」
冥界に下りると、酸素が減ったような息苦しさを覚えます。
「まじかよ……」
そうつぶやくジュンヤの聲が聞こえます。
「どうかした?」
「お前気付かねぇのか?」
「なにが?」
「上見てみろ」
そう言われ上を見ます。
空間にゆがみが生じ、そこから空気がどんどん吸い込まれていきます。
「つまり、超低圧下のIDになってるわけだ」
「時間制限もついてるねー」
ステイシーが言った通り、ステータス畫面に活限界時間の記載がありました。
現時點で01:59:44となっているので恐らくは2時間程しか活できないようです。
超えたらデスペナでしょうね。
「それだけじゃねぇ。このデバフの數を見ろ」
≪酸欠≫、≪低重力≫、≪低溫≫、……數えだしたらキリがないほどのデバフでした。
「攻略不能IDとなっているとしか言えねぇ」
そうジュンヤが言うとステイシーが反論します。
「いやー。攻略不能ではないよー。ただ〔神話級〕と遭遇したらデスペナは覚悟しないとだね」
何かあったら地上に帰ればいいし、と付け足し、笑っています。
こなだステイシーが修行で來たのって冥界だったのかもしれませんね。魔法系にはうってつけの修行場所ですし。
「っと話してる時間ももったいねぇ。早速行こう」
「そうだね」
「僕のカンが正しければ……ここから10分くらい行ったところに多分神殿があるよー」
なんでそんなことわかるんだろう。
「結構冥界に來てるからねー」
心の聲に返事されてしまいました。そんなに顔に出やすいタイプじゃないと思うんだけど。
「まぁいってみるか。〔神話級〕だって俺たちならなんとかなるんじゃね?」
「どうだろう。でもまぁ見てからでも逃げれるしね」
「そういうこった。行くぞー」
といいスタスタとジュンヤが歩いて行ってしまいます。
私達も後に続き、自らに課した修行をこなしつつ進みます。
10分ほど歩き、VRでは初めて見る厳かな神殿を視界に捉えます。
「ステイシーの言う通りだったな」
「他にも2か所くらい気配じるんだけどねー。ここが一番やばそうだったからここにしたー」
「なんでやばそうなところに行きたがるの!?」
「そりゃー修行だよー。チェリーの」
「へっ? 私の?」
「だと思ったぜ。ステイシーお前気付いてたのか」
「いつもパーティー組んでるからねー。とりあえずはチェリーの修行がてら〔神話級〕倒そうかー」
なんの話なのか全くわからないまま會話が終わってしまい、し疎外を覚えつつも神殿に向かいます。
神殿の口まで到著し、名前を確認します。
『セイロン島 羅剎魔王城』
と書かれています。
やばそうな匂いがプンプンしてきますね。
「さぁ行くか」
ジュンヤが心の準備をする時間すら與えず扉を槍で押し開けます。
「心の準備が……」
しばかりの抵抗と、ジュンヤに抗議しますがとあってもらえず、ステイシーにおを押され、扉をくぐりました。
『我ノ財ヲスルカ?』
「いえ。別に財とか興味ないので。お邪魔しました」
そう言い、お辭儀して出ていこうとしますが右手をジュンヤにつかまれ、引き留められてしまいました。
「はなせ!」
「まーまーチェリー落ち著いてー」
ステイシーがなだめますがその程度で私は止まりません。
「かえる!」
「かえさない」
「やだああああああ! 絶対やばいもん!」
「お前……児退行してんぞ……」
「チェリー。その歳」「なんか言ったか?」
「ううん何でもないー」
『……。話ハ済ンダカ?』
ごめんなさい。神様クラスに飽きれられてしまった……。
『我ノ財ヲスルカ?』
あっ。そこからなんですね。
「頂くぞ!」
ジュンヤがそう言い放つと空間が割れたのかと思うほど大きな聲が響きます。
『ハーッハッハッハ。良カロウ。』
そうして姿を現します。
〔羅剎の王 ラーヴァナ〕……。
十もの頭部を持ち、二十に及ぶ腕、山のような巨。
見ただけで勝ち目薄なのがわかりますね。
『ヌゥ? 小サイナ。コレデハ戦エヌ』
そう言い放ち、月明かりのようなをにまといます。
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『コレナラ良カロウ?』
巨をよく見ると大きさが四分の一くらいになってました。
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8 53異世界で、英雄譚をはじめましょう。
――これは、異世界で語られることとなるもっとも新しい英雄譚だ。 ひょんなことから異世界にトリップした主人公は、ラドーム學院でメアリーとルーシー、二人の少年少女に出會う。メタモルフォーズとの戦闘を契機に、自らに課せられた「勇者」たる使命を知ることとなる。 そして彼らは世界を救うために、旅に出る。 それは、この世界で語られることとなるもっとも新しい英雄譚の始まりになるとは、まだ誰も知らないのだった。 ■エブリスタ・作者サイト(http://site.knkawaraya.net/異世界英雄譚/)でも連載しています。 本作はサイエンス・ファンタジー(SF)です。
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