《VRゲームでもはかしたくない。》第3章4幕 最上階<top floor>
疲れたに鞭を打ち、立ち上がりステイシーの跡を追い、階段を登ります。
「もー! まってよー!」
「下の階も行かなきゃいけないんだからー、ゆっくりしてる時間ないよー」
それはそうですけど……。
久々の苦戦で疲れてるんですよ……。
あれ以上のモンスターが出るかもしれないってだけできたくなくなりますね。
文句を言いつつも追いつき、ともに3階層目へとやってきます。
先ほどまでの雰囲気から一変し、教會のような雰囲気が漂い始めます。
「ねぇ。もしかしてこれって【稱號】獲得のために魔導士が作った、覚醒ダンジョンなんじゃ?」
ふと湧き出た疑問をステイシーにぶつけます。
「ご明察ー。ここの最下部で僕はある【稱號】を手にれたんだー。恐らく最上部にはそれと対をす【稱號】があるはずだよー」
「わかってたなら最初から教えてよ」
「ネタバレはつまんないでしょー?」
「そうだけど……」
しステイシーに上手くのせられちゃったなと後悔しますが、もう手遅れですね。
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3階層では數のモンスターがわらわらと集まってくることはなく、高理耐、高魔法耐の敵にちらほらと遭遇しました。
先ほどの苦戦のおかげで、活路は見えていたので窒息させることにより比較的楽に無力化していきます。
そして階段を守護する〔神剣の調 カラド〕という〔ユニークモンスター〕と対峙します。
人型ではなく、剣そのものが自らの意思を持ち襲ってくるタイプでしたので窒息作戦は使えませんでしたが、高レベルの耐は持っていなかったようなので、數発の絶級闇屬魔法だけで方を付けることができました。
「意外とあっけなかった」
「2階層のアレは相が最悪だっただけだよー」
「そうなのかな?」
「たぶんー?」
「ステイシーだったらどう戦ってた?」
「んー? 難しい質問だねー。僕なら多分落下ダメージを狙ったかなー?」
「落下ダメージで?」
「うん。鎧の中を転移させるのも考えたんだけど、そういう対策もたくさんしてありそうだったからー。僕は重力作魔法も扱えるからねー。それで上に浮かせて何倍かの重力でドーンってしたらたおせるかなーってねー」
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「なるほど」
やはり先達の意見は參考になります。
重力系の魔法を私まだ習得してないのでできませんが、習得したらいずれやってみたいですね。
そういう會話をしながら4階まで上ります。
「うんー。やっぱり地下と一緒だー」
ステイシーがそう言うので私も辺りを見回してみます。
先ほどまでの階層では長い廊下があり、いくつかの扉と部屋があるというじでしたが、この階には広間しかありません。
ということは……。
「連戦……」
自然と口かられた呟きにステイシーが返事をします。
「そうだねー。さすがに3階層目ほど楽な相手ではないと思うからがんばってー」
「2階層目のモンスターより楽ならいいけど……」
私がそう言うと部屋中に聲が響きます。
『汝が新たな勇者足り得るか、我にしかと見せてみよ』
はい? 勇者? 聞いてないんですけど?
「いえ。違いますが?」
『…………。ま……まぁよかろう。汝の全てを持って我に証明せよ』
あれ? 拒否権がない。
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ちらっとステイシーを見ると顔を背け、肩をプルプルと小刻みに揺らしています。
あとで絶対奢らせてやる……。
『≪ミラージュ≫』
いきなり敵のスキル宣言が起こりました。
姿が見えていないので注意深く周りを観察します。
すると広場の奧の方に、豪華絢爛な裝飾が施された椅子があり、そちらに座っている一つの影が見えます。
のように見えますね。
いつでも全力の魔法が放てるように。
いつでも全力で離ができるように。
最大限の安全策をとりつつ接近します。
『そんなに張しなくても大丈夫ですよ』
かすかに聞き覚えのある聲ですね。
「そうですか。いきなり攻撃でもされるのかと思いました」
『私そんな卑怯者に見える? ステイシー?』
はぇ? なんでステイシーの名前を?
さらに距離を詰めると敵の姿を認識することができました。
カラーリングが多変更されてはいますが、ロング丈のメイド服を著用し、髪をハーフアップにした眼鏡っ子が立っています。長は173cmといったところでしょうか。
數多くの雙丘を見て來た私の目と脳がおおよそのサイズも確認します。
「あの……」
『なんでしょうか?』
「なんで私の恰好してるんですか?」
『そういう試練だからです』
「あ、はい」
つまり、自分と戦えってことですか。
『いつでも大丈夫ですよ』
そう言って偽の私が椅子から立ち上がり、普段の私と同じ姿勢をとります。
やりにくいですね。非常に。
「ではお言葉に甘えますね。行きます。≪ライトニング≫」
手始めに軽めの魔法攻撃で牽制を仕掛けます。
『≪アース・シールド≫』
土屬の魔法で障壁を形され防がれます。
「≪シャドウ・スピア≫」
『≪ホーリー・シールド≫』
貫通力重視で闇屬魔法を放ちますがこちらも複數枚の屬魔法の障壁で打ち消されます。
なるほど。劣化コピーとかそういうわけではなく、完璧にオリジナルわたしと同一というわけですね。
かつてエルマが〔ミラーリング・スライム〕を倒した時に、自分と契約している魔を使役して勝ったそうです。
つまり、能力をコピーされても真似されないものが何か一つあれば決定打になりうるということです。
何かないか……。
頭の全てで考えつつ、無意識に障壁を形し、攻撃魔法を発します。
【稱號】の特殊な効果までもコピーされていると考えて間違いないですね。
となると、【稱號】以外で何か探さないと……。
武……。いや、ステータスをほぼ完璧にコピーする相手にとって武の模倣はさほど難しいことではないはずです。
制作魔法……。これもコピーされていると考えるべきでしょう。
なら……。
一つしかありませんね。
今ここで魔法を完させる。
それも偽者が見てすぐに真似できないでないといけません。
うーん……。
新しい形態を考えるのが一番手っ取り早いのですが、思いつく限り、もう制作してしまっているので、すでに出涸らしなんですよね。
ミライム……分……。
分か……。
よく考えてみると【暗殺者】狀態ではないとき、魔法で剣をつくって近接戦闘していましたが、その際に、遠距離から魔法が飛んでくることに恐怖を覚えたことがありましたね。
ならばやってみましょうか。
自分がもう一人いるイメージは先ほどから目の前で私の姿をしている敵のおかげで摑めています。
ならばそれをこちらの魔法でなんとか再現できれば……。
「≪シャドウ≫」
最も簡易的な闇魔法を発し、自分の目の前に浮かべます。
「≪フォームチェンジ≫」
イメージと相違ないように魔法をね、模型を作るイメージで作します。
ムンバに掘ってもらった私の像。
目の前に立つ、もう一人の自分。
それだけを頭に浮かべます。
數瞬で完した私の分を≪ドール≫と定義し、【稱號】に記憶させます。
そして再び発します。
「≪シャドウ・ドール≫」
黒い瘴気が一ヶ所に集まり、私にそっくりな分が形されました。
一発で功ですね。
『この局面で新魔法の完ですか。流石は私オリジナルですね』
そう偽者が言います。
『ですが、ただ真似るだけでは面白味に欠けますね。ではこちらもためしてみましょうか≪シャドウ≫』
偽者が先ほどの私と同じように、魔法の制作を始めます。
『≪フォームチェンジ≫』
そして次の瞬間には手に銃剣が握られています。
『これなら近接も遠距離も同時に対処できますね』
うそでしょ……。
ここまで完璧なコピーとなると、どっちがオリジナルわたしなのかわからなくなってきます。
あっ々崩壊しそう。思考停止!
今偽者が作った魔法が私の【魔法制作】にも追加されていることが分かりました。
ということは私もあの銃剣が使えるわけですね。
もちろん向こうは分が使えます。
條件は五分五分のままですね。
ならやることは一つです。
私は裝備を転換し、【暗殺者】セットを裝備します。
『ずいぶん思い切りましたね。分ではなく、本が【暗殺者】になるとは』
「たぶん、これが一番確実なので」
『では第二ラウンドと行きましょうか。≪シャドウ・ドール≫』
そう偽者が言い、分を召喚します。
その隙に、≪スライド移≫を発させ、一瞬で距離を詰めます。
「この分と魔導士狀態の欠點を教えてあげる。それは速度」
そう私は偽者の耳元で呟き右手に持った短刀【ナイトファング】を一閃します。
暗殺者と魔導士のAGIの差はたかが5です。
ですがその5の差が勝敗を分けます。
銃剣を首元に構えるのを視認した私は首から腰に目標を変え、斬りつけます。
「ッシ!」
その後普段の私なら即後ろに向いて攻撃してくるはずなのでその背後を取るべくきます。
そしてこのタイミングで作りだされた偽者の分が裝備の転換を完了します。
でも遅い。
こちらの方が一手先にいてるんですから當然です。
私が作った分が銃剣と化した魔法を握り、偽者の分へ攻撃を放ちます。
AGIの差は微小ですが、この攻撃は回避されるでしょう。ならば回避したところを私オリジナルの本が攻撃すればいいだけです。
腰を一閃し、振り向いた偽者の本の背後で再び腰から肩にかけて左手の短剣【ペインボルト】を一閃し、開いた右手の短刀を偽者の分の方へ走らせます。
私オリジナルの分が放った魔法の弾丸が偽者の分の肩を掠め、私の短刀が頭部から腹部まで斬り裂きます。
そして分が消えるのを見た後こちらに再び振り返る偽者の顔を短剣で一突きします。
『流石ですね。やはり本オリジナルを超えることはできないですね』
「いえ。私オリジナルに匹敵する強さでした。制作された魔法も素晴らしいものでした。今後使用させていただきます」
『よかったです。ではこれで。【稱號】とともに貴の記憶に殘ることにします』
「はい。ありがとうございました」
そうして、私を最も理解していた敵は消滅しました。
『見事。汝の強さ、その一端、垣間見させてもらった。汝は【勇者】足り得る』
「あ、はい」
『椅子まで來てはもらえぬか?』
「わかりました」
そう返事をし、椅子の近くまで歩いていきます。
『謝する。その椅子に座り、念じよ』
念じる? 何を念じればいいのかわかりませんが、とりあえず、座ってみます。
『【稱號】を選択してください。』
はい? なんですかこの畫面は。
【稱號】を選択? 聞いたことないですよこんなの。
えぇっと……。
【勇者】、【召喚勇者】、【魔導勇者】、【守護勇者】、【突勇者】、【勇者】など様々な【勇者】系の稱號が並んでいました。
一部文字が灰になり、前提【稱號】未獲得とかで選択できないものなどもありましたが、魔法系の種類はあまり多くないようなので私は【魔導勇者】を選択します。
『【稱號】は【魔導勇者】でよろしいですか?』
はい、とかかれたボタンをクリックします。
『【稱號】【魔導勇者】を獲得しました。』
【魔導勇者】
魔法系スキルのダメージに20%のボーナス。
≪絶級無屬魔法≫
≪絶級屬魔法≫
絶級魔法が2個ついている破格の【稱號】を手にれました。
「ステイシーが言ってた、必要なものってこれ?」
「そうだよー【勇者】系の【稱號】はあって困らないからー」
「まぁあって困らないけど、そこまで必要じゃない気もする。絶級2個はおいしいけど」
「絶級の無屬魔法に重力作魔法があるんだー。それがチェリーのお目當てになるかなー? 使い方次第で移が楽になるよー」
なんと! それは魅力的ですね。
「それはありがたい!」
「さぁ次は僕の用事を済ませる番だよー。地下の階層にいこー」
「わかった」
座り心地の良い椅子から立ち上がり、今度は最下層に下るべく、階段へ向かって歩き出しました。
to be continued...
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元E級冒険者のエクス19才。 才能の全てを【効果時間延長】に特化した異才の魔導師は、14才から冒険者になり5年間。真面目に頑張った。 しかしながら、少年は魔導師としては早熟だったが、人生経験は未熟だった。 お人好しの彼は周りの大人達にいいように搾取されていき、年中無休で奴隷のようにこき使われながら、馬鹿にされる日々を過ごす羽目に。 ついに過労で倒れてしまい玄関先で目を覚ましたある日。涙が止まらなくなり、ようやく自分の心と向き合う。 こんな仕事、辭めてやるっ! 初級魔法しか使えないエクスは、便利な奴隷くらいにしか思われていなかったが、エクスの異常に長持ちする初級魔法の効果が一つまた一つと切れてくるにつれ、だんだんと事態が深刻になっていく。 エクスの代わりなど誰もいなかったと慌てふためいた時には、もう遅い。 脅してきても、すがりついてきても、ニッコリ笑って全部お斷り。 僕はもう、ぜーったい働きません!
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