《VRゲームでもかしたくない。》第3章9幕 連弾<piano duet >

「マオ、なら全ての、NPCを、連れ出せる、わ」

「どういうこと?」

「プレイヤーに、効果は、ないけれど、【傾國人】にそういう、スキルが、あるの」

「でも待って!」

エルマが口を挿みます。

「それでもチェリーが魔法で國を消滅させたら重罪判定は変わらなくない?」

「エルマの言う通りかな。NPCとか関係なく重罪判定になるとは思う。でもできるだけ、被害は減らしたい。マオが無関係な全NPCを作して、國外に逃がせるのであればそれもありかなって」

『チェリー待つっす』

そのタイミングでハリリンから通信がります。

『聞いてたの?』

『通信機オンになったままだったっすから。それよりもいまのチェリーの作戦は後々まずいことになるっす』

『じゃぁどうすればいいの?』

しの苛立ちが隠し切れず、言葉が強くなってしまいます。

『『ファイサル』で今戦が起こってるっす。新國王派と舊國王派の間っす』

『いま悪さをしでかしているのは新國王派だよね?』

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『そのとおりっす。前國王はプレイヤーにもそこそこ人気のある人だったっすから、前國王派のほうが有利なんす。それで権力を得るために他國の王位継承権を持つ人の暗殺計畫を実行してるっす』

『それがどう権力につながるの?』

『他國を圧倒できる軍事力と指揮力の誇示になるっす』

『なるほど』

戦に乗じて、新國王派を消せばいいっす』

『方法は?』

『決めあぐねてるとこっす。チェリーを使いたいんっすけど、護衛のほうが大事っすから。特に新國王派のつよいプレイヤーは暗殺に駆り出されてるっすから。とりあえず今は何もしないでほしいっす』

『わかった』

「ごめん。ハリリンから通信がって。無茶しちゃダメだってさ。おとなしくしてろって」

ハリリンとの通信を終え、みんなに説明します。

「そっかー。とりあえず何もすることがないのは退屈だよね」

「私はお話してるだけでも楽しいよ!」

「マオも、お話だけで、十分よ」

「何かしたいのに何もできないのがこんなにじれったいなんて思わなかった」

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退屈なのはいいことですが、何かできることがあるのに、何もしてはいけないというのは思った以上にしんどいですね。

々と必要なの買い出しをエルマにお願いし、私達は仮の宿探しを始めます。

『セーラム』はもうしばらく近寄らないほうがいいと思うので。

「この街からは出ないほうがいいよね?」

「うん。ラビの言う通りだね。この街で宿を探さないと」

「マオ、この街、あんまり、知らないから、まかせるわ」

「あと3、4人部屋が理想かな?」

「そうだねー! 固まってたほうが安全だし」

「うん」

そう返事はしたものの先ほどの手合いみたいな相手だと固まってもあまり意味をなさないのは怖いところですね。

広範囲の攻撃も怖いです。

殘った3人で宿の希を出し合っていると、買い出しに行ったエルマが帰ってきます。

「おまたせー」

「おかえり」

「おかえり、なさい」

「おかえり!」

「そこそこいい宿あったんだけど結構高かったよー」

「お金は大丈夫」

「一応4人で泊まれるか確認してきたんだけど、10日間くらいだったら大丈夫そうだったよ」

まぁ10日も滯在することはないので大丈夫でしょう。

「じゃぁそこでいいかな?」

私がそう確認を取ると、ラビと貓姫の同意が得られたので、すぐに向かうことにします。

「エルマ座標は?」

「えっとね」

エルマから座標を聞き、≪ワープ・ゲート≫を発します。

「≪ワープ・ゲート≫」

宿の口前に転移してきた私達はすぐさまホテルにチェックインし、部屋にります。

「尾行は?」

「買い出しの時からなし」

「わかった」

こういうのし憧れていました。

スパイ映畫の見過ぎですよね。

実際こういう経験をしてみると、憧れのままのほうがよかったという思いが強く、もう勘弁してほしいという気持ちでいっぱいですが。

部屋の部は、リアルの高級ホテルと比べても、豪華で一人一泊20萬金の価値はあるといったところでしょうか。

従業員もみな≪気配作≫、≪看破≫等の侵者に対するスキルを持っている者のようです。

ある程度は安心して過ごせますね。

思考の海から帰って來ると、フカフカのベッドでピョンピョン跳ねるエルマと一緒になって飛ぶラビ、それを微笑んで見つめる貓姫の姿が見えます。

こうしてみると、家族みたいですよね。

全員子ですけど。

たぶん、家族として考えるなら、私が長貓姫が二、ラビが三、エルマが四ですね。母親と父親はいませんが。

「すげー! めっちゃ飛ぶ!」

「エルマさん! 天井に頭ゴッチンするよ!」

「気を、つけるのよ」

前言撤回。

貓姫は母親です。

「そういえばエルマ頼んでいたものは?」

「おっと! そうだった!」

エルマはピョーンとベッドから飛び降り、インベントリを作して買ったものを取り出します。

「認識阻害、変裝、偽裝、……全部あるね」

エルマには≪認識阻害≫、≪変裝≫、≪偽裝≫のスキルがついたアクセサリー等の買い出しをお願いしていました。

無事人數分あるようですね。

「じゃぁこれをみんな裝備して」

みんなに1セットずつ配ります。

「普段の自分とは全く違う姿を想像してね。≪発≫」

「「「≪発≫」」」

部屋全が包み込み、そのが壁の鋭角に吸い込まれ消えると、そこにはいつもの姿ではない4人が居ました。

エルマは高長でロングヘアーのスレンダー人。

貓姫は低長でショートカットの活発そうなの子。

ラビはその辺で飲んだくれてそうなおじさん。

私は、モデルと浮名を流してそうなイケメン演奏家風の男

好みがばれただけですね。これは失敗だったかもしれません。

とりあえずラビのおじさんが凄いインパクトで腹筋が8つに割れそうです。

「一応偽名も決めておきましょうか」

 おお、聲まで別ですね。

私からイケメンの聲がします。

「じゃぁ私はエリンって呼んでもらおうかな?」

「ならマオはアイミでいいわ!」

流石演技力お化け。別人ですよ、マオ。

「わしは……アルコにするかの」

ラビもなかなか堂にってますね。

私も口調を変えた方がいいですね。

「俺の偽名は……チェリッシュにでもしておくか。どうよ?」

「いいと思う」

「かっこいいよ!」

「思ったよりにあってるのー」

あ、ありがとうございます。ちょっと照れますね。

「俺たちはこれから家族ってことにするがいいか?」

「かまわないよ」

「異議ナーシ!」

「ええぞい」

細かな設定を決め、誰にも見せないお遊戯會が始まります。

このホテルのフロントは無人化されており、チェックイン時にスタッフと顔を合わせていないので、元がばれる心配は減りました。

「あとは、なるべく普段の友人と接はしないようにしないとな」

あれ。私結構イケメンっぽい演技できてる?

「小道しいな」

私はそうみんなに告げます。

「俺が離れるのはまずいから……エリン行ってきてくれるか?」

「いいよ」

「俺にはなんでもいいから楽をくれ」

「わしにはビールをもらえんか?」

「アイミはぬいぐるみ!」

あっ。演技中でも自分のことは自分の名前で呼ぶんですね。可い。

「じゃぁとりあえずいってくるね」

そうしてエルマを見送り、お遊戯會の続きをします。

「そういえば俺、最近楽弾いてないな」

そう二人に話しかけます。

「アイミはピアノ弾けるよ!」

おお、マオのピアノ今度聞いてみたいですね。できれば一緒に連弾とかもしたいですね。

「わしは……ヴァイオリンを々かじってたぞい」

「えっ? アルコじいヴァイオリン弾けるのか?」

素直にこれには驚きましたが、一國の姫君ですから當然かもしれませんね。

「そういえばエリンの奴もなんかしら楽弾けた気がするな」

設定に音楽一家という至極どうでもいい報を付け加え、エルマの帰りを待ちます。

「おまたせ」

「おかえり。何買ってきたんだ?」

「チェリッシュにピアノと持ち運べるようにヴァイオリンを買ってきた」

おお! いいチョイスですね!

「朗報だ。アルコじいがヴァイオリン、アイミがピアノ弾ける」

「へぇ。なかなかいいね。実は自分用にフルート買ってきたんだ。こりゃもう一度行って買ってきた方がよさそうだね」

「お願いできるか?」

「お安い用だよ」

再び出ていくエルマを見送り、せっかくですからマオと連弾でもしてみようと思います。

「アイミ。連弾何が弾ける?」

「うーんと! ブラームスのハンガリー舞曲は基本全部できるよ! あとはチャイコフスキーの≪眠れる森の≫からワルツとか」

おお! 素晴らしいです。

「ちょっと一曲どうだ?」

「いいね!」

「アルコじいにはわからないかもしれないけどそこは許してくれ」

「きにするでない。外の音楽も興味あったわい」

ラビの演技が馴染み過ぎて怖いですね。どこでこんなおじさん見かけたんだろう。

「じゃぁワルツから行こうか」

そう言って椅子に座り、二人で奏で始めます。

私個人としては數年ぶりのピアノでしたが、が覚えているようでスムーズにることができました。

ピアノも指が疲れるのであまりやらなくなったんですよね。

そんなことを思いつつもマオの音に全神経を研ぎ澄まし、合わせます。

私がしうろ覚えな部分をマオがフォローし、マオが姿を変えたせいで指が屆かない部分を私が上手くフォローします。

楽しい。音が弾んでいる気がします。

いえ。気のせいではないですね。

久々にるピアノの鍵盤の

絡み合う旋律。

全てが私の中にスッとってきます。

二人でワルツを弾き終え、し上がった息と額ににじむ汗が心地よいですね。

マオの演奏レベルは私の素人にが生えたレベルを超えており、これだけで食べていけるのではないかというほどでした。

「久々にピアノ弾けて楽しかった!」

「あ、あぁ。俺もだ。また機會があったらやろう」

「何かと思えば、チェリッシュとアイミだったんだ、うまいね。よし私も弾こうかな」

そう言って私達を押しのけ、ピアノの前に座ります。

「ショパン エチュードハ長調Op.10-1 すごく思いれがある曲」

そう言って弾き始めたエルマのピアノは、私の心を揺さぶり、今の狀況を忘れさせるほどに素晴らしいものでした。

to be continued...

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