《VRゲームでもかしたくない。》第3章10幕 怒り<anger>

エルマの渾の演奏を聞き終え、詰まっていた息を吐き出します。

「凄かった」

演技を続けることも忘れ、素直に驚愕の聲をあげます。

「ありがとう。本當はピアニストになりたかったんだ」

「そうだったんだね」

「あと口調戻ってる」

「あっ。そうだった……な」

もう演技とかどうでもいいや。

久々の音楽にれ、心がそわそわする中、大事なことを思い出します。

「ところでいくら変裝してても向こうが高レベルの≪看破≫持ってたら意味ないよな?」

「今更気付いたの?」

すいません。最初は変裝すれば大丈夫だと思ったんです。

お遊戯會改め、仮裝パーティーと化した現在の様子を見れば、NPCの一家族に見えなくもありません。2人外見が特殊な人がいますけど。

「とりあえず戦力的には私は足しにならないから、しでも戦闘の可能は減らした方がいいよ」

エルマがそういい、私をフォローしてくれます。

「そうだな」

実際イケメン演技に疲れ、素の口調に戻りそうで怖いです。そういうときに限って敵に見つかったりするんですよね。

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「當面はここで避難生活するのは確定事項だな。あとはNPCの演奏一家っていうのはなかなか面白いから、どこかで演奏會でもやって印象付けておくのはいいかもね」

「それはもう十分だと思うよ」

「どうして?」

「外見てごらん」

エルマにそう言われ、し首をかしげながらカーテンを開けます。

すると窓の外にたくさんの人が集まり、こちらに向かって拍手をしています。

これだけの人を集める演奏をするエルマにしのあこがれを抱きつつも窓際から離れます。

「こんなに人が集まってるとは思わなかったな」

「そうだね」

「みんないい演奏だったもん!」

「すごかったのぉ」

「とりあえず食事にしないか?」

「賛

「お腹空いた!」

「腹ペコじゃ」

そう全員が食事をとることに異議を唱えなかったので食事を注文します。

ホテルの従業員を呼び、人數分の食事を部屋に運んでもらうように手配しました。

食堂的なところに行かなくていいのは好都合ですね。

30分ほどするとこれまた豪華な食事が運ばれてきます。

みな思い思いに舌鼓を打ち、お腹をさすります。

「高いだけあって、味も量も悪くないな」

「そうだね」

「ところで、エリン。その口調ってもしかして、俺を真似てるのか?」

ちょっと聞いてみます。

「ばれちゃった。真似っこしてみた」

「そんなしゃべり方してるかな?」

「よく似てると思う!」

「似ておる。似ておる」

「まじかー」

みんなでおいしい食事を取り、笑い、し心が落ち著きます。

本當は、こんなことしてる暇があったら、何かしたいんですけどね。『ヴァンヘイデン』のお姫様の方の確認も忘れずにしておきます。

『チェリー。いまいいか?』

そうジュンヤからチャットがきます。

『大丈夫だよ。どうしたの?』

『ハリリンから聞いてな。厄介なことに巻き込まれてるな』

『ほんとだよ』

くなってか?』

『うん』

『なら俺が代わりにいてやるよ』

『いいの?』

『あぁ。ファンダンも纏花もエルマもいないしな。俺しかいねぇだろ』

エルマはいま隣にいますけどね。サブキャラクターですが。

『チェリーはどうくつもりだったんだ?』

『単獨で『ファイサル』に乗り込んで國ごと更地にしてこようと思ったんだけど』

騒だな。俺にもできなくはないが流石にまずいんだろうな』

『ハリリンにもまだだめだって言われた』

『そうか。それでくな、か。わかった。俺なりに考えてちょっといてみるわ。なにかあったら連絡する』

『ジュンヤ。ありがとう』

『気にすんな。そういう時は仲間を頼れ』

『うん』

『じゃぁ行くわ』

仲間の優しさにれ、し心があたたまります。

「どうしたの? 顔がしにやけてるよ」

「ううん。なんでもない」

待ちましょう。私の仲間を、ハリリンとジュンヤを。そして彼らの仲間を。

それから私は焦りが無くなり、ハリリン達の定期連絡や、ジュンヤからの報告を聞きながら時間を過ごしました。

みんなで曲を奏でたり、外食も平気そうだったので外食にも行きました。

正直VR化された後の<Imperial Of Egg>で一番ゆったりとした時を過ごしたかもしれません。

しかし、そんな時間は長く続かないものなのです。

數日後、その知らせを持ってきたのはハリリンでした。

『チェリー。取りさずに聞いてほしいっす』

『どうしたの?』

『『ブラルタ』のお姫様が……』

『まさか……』

『『ファイサル』に対して戦爭告知があったっす。出番っすよ』

『……わかった。すぐに、行く』

私の部に沸き上がる、制しきれない、何かが、荒れ狂っています。

でもまだ、発させるときじゃない。

それは『ファイサル』に著いてからでいいですから。

「みんな。聞いてほしい」

そう話しかけ、仮裝を解きます。

「戦爭が、始まる」

「ついに……始まるんだね……」

みんな仮裝を解き、こちらを見てくれます。

「正直、マオの一件の時はさ。すでに終わったことに対して戦爭というか小競り合いがあったわけじゃん。だからさ。今回が本當の戦爭なんだね。出遅れ……ちゃったな」

そう言いながら私は拳を強く握ります。

「チェリー……」

「チェリー、怒って、いるのね」

あぁ。確かにこれは怒りですね。

何もできなかった自分に。

そしてそれだけの力を持ちながら、非道に走るプレイヤーに。

「本當だったらラビは置いていきたいの。でも……多分、私の近くにいるのが一番安全だから」

そう自分に言い聞かせます。

「チェリーに私の命を預けるよ」

重たいですね。命を守るということは。

ですが、仲間の力さえあれば、できます。

いえ。必ずやらないといけないんです。

そして私はチャットをジュンヤに送ります。

『ジュンヤ。『ヴァンヘイデン』のお姫様をお願い』

『お前はどうするんだ? 俺無しでもやれるのか?』

『ほんとならジュンヤにラビを守ってもらいたいよ。でもそしたら『ヴァンヘイデン』のお姫様は間違いなく殺される』

『あぁ。そういうことなら任せろよ。その代わり、絶対にラビちゃんを守れよ』

『うん。絶対に』

「ふぅ……≪ワープ・ゲート≫、気を付けてついてきて」

私は振り返らずにゲートをくぐり、ハリリンとの待ち合わせ場所まで飛びます。

「チェリー。【傾國人】の、スキルについて、ね、教えておきたい、ことが、あるの」

「わかった」

「【傾國人】には、二つのスキルがある、わ。一つは、≪全ては私の虜≫、っていう、スキル。これは、対象に指定した、NPCを思い通りに、かせる、傀儡の。もう一つは、≪璧は傷一つ付かない≫。これは、覚を、何か一つ失う、ことで発する、の。このスキルは、視覚を失う、わ。その、代わり、発中は、ダメージを、けない、の」

なるほど。先日ラビを守るように立った際、目を閉じていたのはそういうことだったんですか。思い起こせば、かつてステイシーが攻撃した際も目を閉じていたようでした。

「教えてくれてありがとう」

「いいの。チェリーは、マオを信用、してくれた、から」

貓姫がしゃべり終えたタイミングでエルマもしゃべり始めます。

「チェリー。あたしは、防系の魔法をたくさん積むね」

「エルマもありがとう」

「うん。ラビちゃんはあたしと貓姫で絶対に守る」

「マオも、守る」

「……。一応マオも守られる対象なんだけどね」

「そうだった、かしら?」

「何でもない」

待ち合わせ場所にハリリンが到著し、聲をかけてきます。

「そろってるっすね」

「うん。気合もたっぷりってるよ」

「いいっすね。すでに舊國王派は國外にでてるっす。戦爭が始まったということで関與しない一般NPCやプレイヤーも全避難完了したそうっす」

VR化前は全く戦爭のことなんて書いていなかったのに、VR後からとても戦爭関係の容が詳しくなっていたんですよね。運営側がまるでこ・う・な・る・こ・と・が・分・か・っ・て・い・た・みたいです。

そうですね。運営がどんな思を持っていたとしても私のやることは変わりませんでしたね。

新國王派のプレイヤーをデスペナルティーにすること。

『ファイサル』の新國王派を壊滅させること。

やって見せましょう。

to be continued...

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