《VRゲームでもかしたくない。》第3章16幕 バンジージャンプ<bungee jump>

「敵は……3人か」

〔最速〕の本か、分かがそう言います。

「一人一殺だね」

「私はもう一人倒したから除外かな?」

「ないない」

「ないな」

「ですよねー」

そう會話をしながら殘りの敵を分析します。

一人は先ほど開斗が毆りつけた魔導士風のような人。

もう一人は小さな檻のようなものを手にしている人。

そして最後の一人は、王冠をかぶり、赤い珠を掲げている人。

おそらくあいつが新國王ですね。たぶんあの赤い珠が〔の誓い〕でしょう。

スキルが封印されている狀態なので、素のステータスで考えるしかありません。

AGI特化の〔最速〕、DEX特化の【天罰神】、そしてこの中では比較的バランスがとれている私、ですか。

そしてスキル無しで一番ダメージを與えられるのは〔最速〕で間違いないですね。

「ござる丸さん。あの赤い珠を持っている人を狙ってください。開斗さん、あの小さい檻を持っている人をお願いします。私はその魔導士とやります」

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「「心得た」」

「おっけ」

そう言って二人の〔最速〕と開斗は走り出しました。

「相手が変わって安堵しましたか?」

私はそう、魔導士風の人に語り掛けます。

「いや。むしろ最悪だ。【天罰神】のほうが勝ち目があった」

プレイヤーでしょうか。

「スキルを封じられているのは私も同じですよ」

「【天罰神】はスキルさえ封じれば無力なことを知っていた。だが君は違う」

「というと?」

「君はスキル無しでも十分に強い。ましてや、魔法発速度と継続時間にサービス開始から全力だった俺とは違う」

やはり、プレイヤーでしたか。

「そうですか。最後に一ついいですか?」

「なんだ?」

「なんで加擔したのですか?」

「それは……言えない」

「でしょうね。では終わりにしましょう」

私はそう言った後、距離を詰めます。

そして接近して気付きます。

彼の口がもごもごといていたことに。

すぐに足を止め、橫に避けます。

「≪ハイフレイム・レイ≫」

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私の左側を炎屬を纏った線が駆け抜けます。

「スキル発ができるんですか」

「見ての通りだ」

こっそり、≪サイレンス≫を使ってみますが、発はしません。ということは彼はこの〔の誓い〕の適応外になっているということです。

なるほど。なるほど。

こちらが≪サイレンス≫にかけられている狀態ということですね。

ステイシーが支配領域を上書きするまで、耐えるしかない。

そう思った私はあまりやりたくはなかったですが、AGI型の基礎中の基礎、き続けるを実踐します。

「≪レイ≫」

相手のプレイヤーは魔法を連発しています。

MP量にも自信があるみたいですね。

ジグザグに走りつつ、隙を窺い、見つけたので攻めます。

「ふっ!」

懐にもぐりこむように【ナイトファング】を振るいます。

「≪カウンター≫」

「!?」

その一言を聞いた私は背筋がゾッとし、振るう【ナイトファング】を止めようとしますが、止まりません。

短刀が彼を傷をつける瞬間何かを通り抜け、そのまま私の右手を斬り落としました。

「溫いな」

そう彼の聲が耳に屆きます。

殘った左手で、右腕を押さえます。

スキルが発できないので、部位欠損もHPの回復もできません。

一度、右腕から手を放し、ポーションを取り出し、飲みます。

しかし、部位欠損のダメージがポーションの回復量を上回っており、あと數分でデスペナルティーになるでしょう。

もう祈るしかありません。

ステイシーが広域支配を完させるのを。

深呼吸し、再び攻めます。

しかし、接近戦は危険なので、今度は中距離です。

腰に刺さっている【神 チャンドラハース】はエルマのサブキャラに預けたままですが、インベントリには投げれるものが多あったのでそちらを≪投擲≫します。

スキルが発できないので、ぽいぽいなげるだけなんですけどね。

を取り出し投げる、という作を慣れない左手でやっていると、彼は先ほどのように≪カウンター≫は使わずに、手に持った杖で叩き落しています。

ここから考えられることは3パターンあります。

まず一つ。

≪カウンター≫の回數に制限がある。

二つ。

≪カウンター≫のクールタイムが長い。

三つ。

≪カウンター≫で弾き返せるものに制限がある。

このどれかですね。

推測は立てましたが結論は出ません。

…………。し、賭けに出ましょうか。

ポイポイポイと武を投げ、私も駆け出します。

ふわふわと飛んでいく武じり、私が距離を詰めると彼は≪カウンター≫と言いました。

その瞬間、私は左手の【ペインボルト】を彼に向かって投げつけます。

し驚愕した顔を見せた彼と≪カウンター≫を貫通する私の【ペインボルト】が見えました。

そして彼に【ペインボルト】が刺さり、私の左足を何かが貫きます。

は素通りするようですね。しかし、そのが保有するエネルギーなどはすべて跳ね返すと。完全な魔導士殺しですね。右手を失った謎が解けました。

「くっ……」

彼は脇腹に刺さった【ペインボルト】を引き抜き、そこらの床に投げ捨てました。

私の殘りHPが9600です。あと1分半もしたらデスペナルティーになってしまいますね。

落ちている武を拾った私と同じく落ちた武を拾った彼が向かい合います。

「もう終わりだ」

「ええ」

彼はこちらに向かって歩いてきます。

お願いステイシー……。間に合って……。

「お前が戻ってくるまでには事が済んでいると俺は思う。さらばだ」

振り下ろされている剣の軌道に悪あがきとして私も拾っていた剣を置きます。

「申し訳ないのですが、私諦めが悪いんですよ」

剣と剣をぶつけたことで確信しました。

STRでは勝っていると。

「諦めの悪いは嫌いじゃない」

「別にあなたに好かれたいわけではありませんので」

殘りのHPが6000を切りました。

殘り……1分……。

心の焦りは顔に出さず、まだ戦えることをアピールします。

「ふ。俺も馬鹿じゃない。もう接近しないさ。≪レイ≫」

狙うのは腹部のはず……!

に魔法が直撃する瞬間左手の剣を橫に一閃し、魔法をはじきます。

うお、功しちゃった。

「【曲蕓師】をもっているのか」

へぇ。曲蕓師にそんなスキルがあるんですね。あっでも、上位の武に対応する【稱號】だと武のスキルがあるみたいですよ。防げない攻撃が防げるらしいです。今のは、線系の魔法で金屬武なら跳ね返せるからできた蕓當です。まぐれですけど。

「次はない」

そうですね。次はないです。

永遠にも等しい殘り45秒をどう過ごそうかと考えていると、救いの手が差しべられます。

『結界設置完了ー。広域支配始めるねー』

神よ……!

『ありがとう。あと30秒くらいで死ぬところだった』

『ならついでにプレゼントだー』

そうステイシーからチャットが屆いた瞬間私の首にアクセサリーが転送されました。

『≪ライフリンク≫してー』

「≪ライフリンク≫」

『おっけ。チェリーが死んだら僕も死んじゃうからねー。しなないでよー』

『ありがとう。勝つよ。絶対』

『30秒で発するー』

『わかった』

救いの神から與えられたチャンスを無駄にするわけにはいきませんね。

いまの私はステイシーとHPを共有した狀態になっています。

ステイシーのHPは10000ちょっとだったのでもう1分くらいなら耐えられる狀態というわけです。

ステイシーが広域支配を完させた後のことを考える余裕ができました。

まず彼の≪カウンター≫の完封方法ですね。最善は≪サイレンス≫でスキル発を封じることですが、向こうも魔法系です。そう簡単に封じられないでしょう。

次善は≪カウンター≫ごと閉じ込めて、全から攻撃を放つ。こちらが堅実でしょうか。

やってみなければわかりませんけどね。

とりあえず彼がいることで大規模な魔法を封じるという『ファイサル』の新國王派の戦略は見事なものです。

本當にこうなることを見越してたかもしれないですね。

ステイシーが広域支配を発するまであと20秒。

私は悟られないように裝備を取り替えます。

あと10秒。

2つの魔法を準備します。

一つは≪オーヴァー・ヒール≫

もう一つは≪ワープ・ゲート≫

そして約束の30秒が過ぎた時、私は、先ほども考えていなかった手段に出ました。

大聲で宣言します。

「≪オーヴァー・ヒール≫」

相手方3名の揺を確認します。その直後〔最速〕と【天罰神】が全力になったのを橫目に確認しつつ、私は自分の敵に接近します。

「≪ワープ・ゲート≫」

そして一緒に転移しました。

上空4000メートルほどの場所に。

「なっ……」

驚きの聲をあげる彼を無視し、私は、もう一つ魔法を発します。

「≪グラビティコントロール≫」

そして落下していく彼の髪を摑みます。

「この高さから叩きつけたら……≪カウンター≫の意味はあるでしょうか?」

「まじかよ……おい……」

「マジです。安心してください。地面まではご一緒できませんが、その近くまで行きますので」

そう言った私は≪グラビティコントロール≫で落下速度を跳ね上げます。

「ひああああああああ」

「わゃあああああ」

私も悲鳴をあげてしまいます。

これは怖い。ほんとに怖い。

ジェットコースターは好きですけど、この高さはやばいです。

數秒落下すると王城のてっぺんが見えてきました。

さらに落下を続け、王城に激突する寸前で私は彼を叩きつけ、自分がばらまいた武へと≪シフト≫します。

ヒモ無しバンジージャンプを満喫し、息が上がっている私は、上の方から聞こえる何かを突き破る音を無視し、殘りの戦闘を確認します。

〔最速〕は危なげなく攻めてはいますがダメージが通っていないみたいですね。

【天罰神】はあちこちにクレーターを作し、小さな檻を持った人を追い詰めています。

あの人はおそらく機械化したモンスターを召喚する、【召喚士】のはずです。

なぜ召喚しないのか多、疑問に思いつつも、私は【天罰神】に加勢することにしました。

to be continued...

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