《VRゲームでもはかしたくない。》第3章17幕 呪詛<curse>
たたたっと駆け、【天罰神】に加勢します。
「加勢するよ」
「ありがとう。僕が追い詰めるから魔法で殺しちゃって」
「わかりました」
彼はそう言って拳を握り地面に向かって振り下ろします。
「≪【天罰】≫」
ドガッと地面にクレーターが作られます。
えっ? 『天罰』ってそういうことなの?
とりあえず開斗のスキルについての言及は置いておいて、私も魔法を発します。
「≪シャドウ・ピアス≫」
相手の【召喚士】は意外とDEXが高く見えたのでまず足を潰します。
そうして発した≪シャドウ・ピアス≫が外れると、開斗が言います。
「うーん。もうしだけ範囲をあげようかな。≪程延長≫。≪【天罰】≫」
スキルを発し、空中に向かって正拳突きを放ちます。
すると拳が止まった位置から空気のようなものが飛ばされ、【召喚士】に直撃します。
「がっ!」
「ああら。今度は広くしすぎた」
聲的に壁に背を押し付けられた【召喚士】がずるずると地面に落ちてきます。
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「これでこっちも終わりかな?」
そう言って開斗がこちらを振り向いた瞬間、【召喚士】がスキルを発しました。
「≪喚起〔マシナリー・ウルフ〕≫」
「!?」
かつてここで戦った機械化モンスターですね。
あの時逃げた奴かもしれません。
「覚えていますか?」
私は〔マシナリー・ウルフ〕を機械的に処理しつつ、尋ねます。
「もちろんである。あの時はよくもやってくれたものだ。お前にもう〔ナイトワーム〕は使わん」
「覚えててくれてうれしいです。の再會ですが、おわりにしましょう≪サイレンス≫」
【召喚士】は基本的にINTが高い人が多いので、私の≪サイレンス≫でも封じられると考えていました。
しかし、それは違うようです。
「【召喚士】は基本的にサポートである。もちろんメインの【稱號】があるわけだが」
「ええ」
エルマがそうですからね。知っています。
「私は、【高位呪詛魔師】。つまり、デバフに対しては無敵、というわけであるな」
「うひゃー。僕が直接れてたら呪詛でデスペナだったのか」
「そうですね」
【呪詛魔師】の用いる闇屬呪詛魔法は非常に厄介で、対象にるなどの特定の條件を満たした場合に発する呪いを付與することができる効果があります。
しかし、直接的な攻撃力が皆無で……なるほど。それを【召喚士】で補っているわけですね。
「ここはチェリーに任せていいかい?」
「まってください。こいつの相手は私ひとりじゃ無理です」
「それもそっか。なら僕も全力で行こう! ≪【天罰を下すのは我なり】≫」
全をオーラのようなものが巡り、一気にステータスが上がったような気がします。
「一定時間、ステータスを倍化、スキル効果を3倍化するスキルだよ。デメリットも大きいけどね。こいつさえ倒しちゃえば、勝ちだ」
「はい。では私はサポートに移ります」
「オーラがある程度は防いでくれるけど、一応≪解呪≫をいつでもできるようにしておいて」
「もちろんです」
呪詛魔法を消せるのは聖屬魔法の≪解呪≫だけです。高位の聖屬魔法は武の変更をしないと使えませんが、≪解呪≫なら中級で事足ります。
「≪喚起〔マシナリー・ギガ・フロッグ〕≫」
「うん。これは厳しそうだ。やっぱり僕が機械化モンスターの相手をする。チェリーが倒して」
「それが一番みたいですね」
「≪呪い≫セット完了。どこからでも來るのである」
「では行きますね」
私がそう言って、魔法を準備し始めるのと同時に、開斗が機械化モンスターに拳を突きつけます。
「さぁポンコツ。僕がスクラップにしてあげよう。≪程延長≫≪【天罰】≫」
隣から聞こえてくるドカッという戦闘音に紛れるように、私は魔法を発します。
「≪ライトニング≫」
魔法が発しません。
ステイシーの広域支配で魔法が使えるんじゃ? いや。でも開斗も〔最速〕もスキルを使っていますね。
ということは……。
「雷魔法の≪アンチスペル≫を持っていますね」
「無論である。機械化モンスターに電気は危険だ」
「あの時も、そのスキルを?」
「そうである」
「そうですか」
「こちらからいせてもらうぞ。≪ダーク・ボール≫」
「≪ホーリー・シールド≫」
彼が放った魔法をけ止め、こちもお返しに魔法を発します。
「≪シャドウ・ピアス≫≪ダーク・アームズ≫」
「範囲が読めるのは悪手である」
そう言って彼は橫に移し、避けました。
「≪影渡り≫。そうでしょうか」
影を渡り、彼の後方に出ます。そして、首元を狙い、魔法で生した剣を振ります。
「≪ダーク・シールド≫姿が消えたら、即防。これは鉄則であるな」
「ええ。でもおかげで私の勝ちです≪【見えざる手】≫」
そう言い、私は見えない手を4本召喚し、彼を毆りつけます。
「ぐはっ!」
「それだと、屬の変化に対応しきれないんですよ。そもそも後手に回っているわけですし、ではこれでおしまいです。≪インシネレート≫」
「あぁああぁ!」
苦悶に満ちた聲が私に屆きますが、ここで手を弱めるほど私は優しくないのです。
「≪ダーク・ボール≫」
彼が最初に使った魔法で私は、息のを止めようとします。
そして、彼の聲を聴きました。
「勝利條件達確認。作戦完了。ボス、あとは頼みます」
「えっ?」
その言葉に返事はなく、彼はデスペナルティーの演出に包まれていきます。
今のは何だったのか、と考えようとすると、急に心臓が痛くなります。
「うっ!」
を押さえ、私は苦しみます。
痛覚を切っているのにこの痛みですか。
霞む目と思考速度の落ちた脳でステータスを確認します。
≪死へのい≫
その一言が目に付きます。
あぁ。あいつがセットした呪いの発條件は自のデスペナルティーでしたか。
その効果は、きっと、倒したプレイヤーを一定時間以にデスペナルティーにするというものでしょう。
狀態異常を詳しく見ると、『殘り時間60分』とあります。
あと60分でデスペナルティーですか。
でもあと60分あれば、新國王を倒すことはできますね。
これで都市ごと吹っ飛ばすという暴挙に出なくて済みそうです。
痛む心臓を意思の力で抑え、なんとか立ち上がります。
一応、このことをジュンヤとステイシーに告げます。
『ジュンヤ』
『おわったか?』
『ううん。≪死へのい≫って言う呪詛スキルであと60分もしないうちにデスペナになる』
『そうか。すまん』
『なんで謝るのさ』
『なんでもねぇ』
『ステイシー』
『大丈夫かいー?』
『ごめん』
『いいよー。時間までに終わらせよう』
私とHPを共有狀態にあったステイシーにも呪いは掛かっています。
「チェリー。大丈夫かい?」
「なんとか。死ぬほど心臓が痛いですが」
「えぐい呪いだ。確実に相手を倒せる……か」
「軍事力のある國がこれを悪用したらって思うと」
痛い。心臓が痛い。の痛みなのかわかりません。
「とりあえず、終わらせましょう」
服の上から心臓を握り、歯を食いしばり耐えます。
「そうだね。ごっちゃんに加勢しよう」
くそっ! せっかく歯を食いしばってたのに! ちょっと緩んじゃって痛みが増した!
「加勢するよ」
「こちらは、終わりました」
「すまぬ。一切ダメージが徹らぬ」
「あの手に持った赤い珠です。〔の誓い〕というんですけど」
「あー。あれがそうなのか」
「開斗殿、知っているのか?」
「名前だけはね。つまり國王に間違いないってことだよ」
「倒せないのではないか?」
「いや。倒せる。僕かチェリーが都市をなくせばいい」
「どういうことだ?」
あぁ。そういうことですか。
ハリリンは最終的にこうなることがわかっていたんですね。
「國を持っていることが條件なんだ。だから國を消滅させる。僕だと時間がかかりすぎるかな?」
「なら、私が、詠唱魔法で消します」
「お願いしてもいいかい?」
「はい。一度、外から範囲を指定します。できれば國王を拘束して、二人は離してください。あと30分したら発します」
「わかった」
「心得た」
「ではまた、どこかで會いましょう」
「うん、またね」
「うむ」
私はステイシーの座標を確認し≪テレポート≫します。
「やー。お疲れ様ー」
「そっちもね。痛くないの?」
「いやー。めっちゃ痛いね。これ」
「だよね。30分後に詠唱魔法でぶっ飛ばすことにしたよ」
「なるほどー。何を使うのー?」
そう聞かれ、私は事前に候補に挙げていたものの中で、最も兇悪なものを選択し、告げます。
「『顕現セシハ煉獄ノ山也』」
「あー。なるほどー」
「どうせデスペナ確定だもん。ならデスペナを対価にする詠唱魔法が一番いいかなってね」
「ついでに僕も使おうかなー?」
「合うにしてよ?」
「デスペナ対価は雷屬の詠唱に多いから大丈夫ー」
「そっか」
「『ファイサル』とはお別れなんだね」
「そうだねー」
『ヴァンヘイデン』の姫様を護衛したときのことを思い出します。
片道だけだと思ったら往復で、エルマと三人で酔っぱらって。
楽しかったですね。
もうこの都市の景を見ることは、ないんですね。
そう傷に浸り、ステイシーと約束の時間まで待ちます。
to be continued...
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