《VRゲームでもはかしたくない。》第3章最終幕 デスペナルティー<death penalty>
約束の時間まであと10分ほどになりました。
大きく聞こえた戦闘音がいまは聞こえず、とても靜かになっています。
「終わったのかな?」
「どうだろうねー?」
「國王を拘束しておいてもらう約束しておいたんだよ」
「ふむー。なら見てみよっかー。≪クレヤボヤンス≫」
そう言ってステイシーは視魔法を発しました。
「うーん。≪範囲増大≫」
「どう?」
「あー。戦闘は終わったみたいー。でも【天罰神】と〔最速〕が新國王を囲んで何かしゃべってるー」
「なんだろう」
「さー? んー? 〔最速〕が≪分≫をつかったねー」
「拘束した後なのになんでだろう」
「さー? あれー? 片方がこっちに來るー」
「なんだろう」
「さー? 何か伝えることがあったらチャットしてくればいいのにー」
「だよね」
そう向こうの様子を覗き見るステイシーと會話をします。
「お二方!」
そう言って想像通り〔最速〕がやってきました。
「何かあったんですか?」
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「うむ。開斗殿が口を割らせた」
「おお!」
「れ知恵したのは『レイグ』とかいう組織だそうだ」
「『レイグ』!?」
私はそれを、その組織の名を知っていました。
「チェリー殿?」
「あっ。し前にハリリンから聞いていました」
なぜそのことを忘れていたのでしょう。
「そうだったのか」
「そうなのかー」
「結構エグイ事する組織らしくて、自分のシマを管理するために邪魔者を排除したり、人売買や危ないクスリとか売ってるらしいです」
「許せぬ」
「チェリー」
「ん? なに?」
「『貓姫王國』の一件に『ファイサル』の新國王派が関わってたんだよねー?」
「そうだね」
「つまり、その『レイグ』って組織があの事件を引き起こしたともいえるのかなー?」
「そうなるね」
私も頭の中で、一つの線でつながりました。早くこのことを伝えなきゃ……。ってジュンヤ以外デスペナルティー中でした。
「ふむ。考えていても仕方がない。とりあえずは目先のことだ。新國王を拘束はした」
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「ありがとうございます」
「そこでなんだが、彼の柄を我らに預ける気はないか?」
「? といいますと?」
「我の所屬は『隠れ里 天平』。諜報に強く、報戦で負けはない。お主のとこの忍者も元は『天平』出だ」
ハリリンは『天平』出だったのか!
「何か手掛かりがあるかもしれぬ。故にどうだろうか」
そうですね。報を集めるのであればそれが最善かもしれません。
ですがこれだけの事件に関わりつつ、名前という尾の先端しか摑ませないような組織が、この程度の輩に重要な報を教えているとも思えません。
「私の一存では決めかねる問題です。すこしチャットしてもいいですか?」
「無論だ」
『ジュンヤ』
『どうした?』
『〔最速〕が新國王を捕らえて、自國で尋問するのはどうかっていってるんだけど』
『なるほど。そうだな。閣下にすぐ連絡が付くメンバーがいる。し待ってくれ』
流石、ジュンヤのコネクションはすごいですね。そう簡単にジロー閣下に連絡は取れませんよ。
『待たせたな。閣下は是非にとおっしゃっているそうだ。しかし、都市はなくした方がいいとも言っているらしい』
『新國王が領土から離れればいいんじゃ?』
『俺にも真意はわからん。人がなるべく近寄れないようにしてほしいそうだ』
『ちょっと思うところはあるけど……わかった。結局は詠唱魔法で吹っ飛ばすんだね』
『そういう指令だ。國に屬しているから仕方ない』
々なことがあり、最初はもちろん都市を消滅させるつもりでいましたけど、この狀況でそこまでする価値があるのか私は疑問に思います。
『わかった。新國王の回収が済んだら、すぐに発するね』
『頼む。デスペナ明けにまた會おう』
『うん』
「一応連絡をしておきました。『ヴァンヘイデン』の軍事総帥が是非『天平』で尋問してくれと言ったそうです。しかし、『ファイサル』は消滅させろとのことです」
「何故。奴さえ捕獲してしまえばいいのではないのか?」
「わかりません。私も疑問に思っています」
「チェリー。ちょっと嫌な予がするねー」
「奇遇だね。私もだよ」
ジロー閣下のこと、ハリリンのデスペナルティーが明けたら調べてもらおうと決めました。
「ではござる丸さん。新國王を持って帰ってください」
「うむ。すでに我の分が連れて出立した。開斗殿も離を確認している」
「わかりました。じゃぁステイシーやろっか」
「うんー」
私はすぅっと息を吸い、詠唱を開始します。
『呼バレ 出デヨ 煉獄ヨ 生マレ 留マレ 火ノ山ヨ 我ガ魂ヲ供トシ 猛キ山ヲ顕現ス』
続いてステイシーも詠唱を開始します。
『集マレ 集マレ 黒雲ヨ 纏エ 纏エ 迅雷ヲ 我ガ魂ヲ供トシ 全テノ力ヲ飲ミ込マン』
『≪顕現セシハ煉獄ノ山也≫』
『≪空ヲ覆ウ黒イ雲≫』
発的なエネルギーが私のから発生し、詠唱魔法が発します。
同様に隣のステイシーからも、計り知れないエネルギーが放出され始めます。
デスペナルティーが代償の詠唱魔法ですからね。正直どんな規模なのか見當もつきません。
詠唱中に見えた景とスキルの詳細から火山を召喚する魔法なのはわかりましたし、詠唱中に範囲を指定するようなイメージが湧いたので、そこまでひどいことにはならないと思います。
私のからエネルギーがすべて放出され、地面に座り込みます。
大きな地響きをじ、上空から響く雷鳴が耳に屆きます。
地面の揺れが最大に達し、地面を割って赤く燃える山がせり上がってきます。
ゴポゴポとここまで聞こえる音と、ここまで離れているのに、息苦しくなるほどの熱気をじ、改めて詠唱魔法の規格外さに恐怖を覚えます。
罪人や重罪人になっても良ければ、このゲームを火山で満たしたり、海に沈めることすらできてしまうわけですからね。
第二陣のログインが始まってからが怖いですね。そういうことを率先してやるような人がいたら嫌です。あっ。人のこと言えませんね。
『【國絶やし】、【創造主】、【王】、の【稱號】を獲得しました。』
『発條件:デスペナルティーを検出。』
『デスペナルティー実行。』
『期間は5日間です。』
出現した火山と上空を覆う雷を纏った黒雲が視界を埋め盡くす景と獲得した【稱號】のアナウンス、デスペナルティーの通知を見ながら、私はデスペナルティーによる強制切斷で現実世界へと戻ります。
ベッドの上で覚醒した私は、頭についている専用端末を外し、し呼吸を落ち著かせます。
深呼吸をし、いつもの呼吸ペースに戻した後立ち上がり、攜帯端末を手に取ります。
チャットツールを立ち上げ、エルマにチャットを送ります。
『ごめん。デスペナになった。事件は一応解決した……のかな。気を付けて戻ってきてね』
そう送っておきます。
敵の≪死へのい≫でデスペナルティーになっていれば1日ですんだ……はずですけどね。私が罪人判定だったのか重罪判定だったのかがわからないので言いきれませんけど。
さすがにあのレベルの詠唱魔法は1日のデスペナルティーでは済まないようですね。
手持ちのアイテムとか結構ドロップしちゃたかもしれません。
とりあえず5日間はログインできないので、ゲームのことは忘れて現実の生活を満喫しましょうか。
そう思っていると攜帯端末が著信を知らせてきます。
発信者はエルマと書いてあります。
『もしもし』
『チェリー! 何があったの?』
『それは後で話すよ。ラビと貓姫は無事?』
『無事だよ。レディンを呼び出して、『ヴァンヘイデン』まで帰ってきた』
『よかった』
『急にチェリーの名前がパーティーから消えたから何かあったのかと思ってすぐに戻ってきたよ』
『えっとね。敵の呪詛魔師に呪いをかけられてね。それで死ぬくらいならデスペナ代償の詠唱魔法をぶっ放そうとおもってぶっ放したらデスペナ期間5日だった』
『うわー。とりあえずお疲れ様!』
『ありがとう』
『チェリーがゲームにいないならあたしもサブキャラでいる意味ないかなー?』
『どうして?』
『チェリーが寂しがってるのに、おねぇさん一人で遊ぶのは申し訳ないんだよ!』
『別にいいのに』
『というわけであたしもログアウトしてきた! ちなみに貓姫もログアウトしたよ』
『そっか』
『ちなみにチェリーさん、このあとご予定はあるかしらん?』
『ないよ。寢ようかなって思ってたけど』
『ふっふっふ。1時間後に窓の外を覗くのだー』
『ん? わかった』
『じゃぁまた後で連絡するね!』
『うん』
エルマが電話を切ります。
1時間後? よくわかりませんが覚えておきましょう。
「ボンジュー・ゲーゲロ! 一時間後に窓を見る。アラーム設定!」
攜帯端末に話しかけ、アラームを設定しました。
1時間ですからご飯を食べて、お風呂にでもはいっていればすぐですね。
そう考えた私は、攜帯端末に話しかけ、湯船にお湯を溜めてもらいます。
自調理機で完した食事をとりながら掲示板をチェックします。
『【速報】『ファイサル』消滅!?』
『【速報】『ファイサル』新國王派完全敗北』
『第二陣ログイン開始日決定』
<Imperial Of Egg>の掲示板なので『ファイサル』のことが多く書かれています。
その中で第二陣についての掲示板があったので覗くことにします。
『先ほど[Multi Game Corporation] 白河華夏が第二陣のログイン日程について公表した。』
『來月1日に解となるそうだ。』
『それに伴い、來週から専用端末の再販売が行われる。』
そのあとには買えなかった廃人達の悲痛な書き込みと、期待に満ちた書き込みが続いていました。
なるほど。來週発売ですか。
また人が増えたら々起きそうでちょっと怖いですね。でも私の數ないフレンドでも初期生産の専用端末が買えなかった人がいましたのでその子と遊ぶのはし楽しみです。
『~~♪』
あっ。お風呂が沸いたようですね。
お風呂が溜まったという通知が攜帯端末にったので、殘りの食事を食べきり、所へ向かいます。
スルスルとパジャマをぎ、それを洗濯機に放り込んでかします。
お風呂出て牛を飲み終えるくらいには乾燥も終わってホカホカのパシャマが著られるのでこのタイミングでいれるのがベストです。
浴室にり、シャワーを出しつつ椅子に座って頭をシャカシャカ洗います。
最近、ゲームで結構いていたので、今まで面倒くさがっていたこともし抵抗なく行えるようにはなりました。
ですが、やはりかないに越したことはないですね。現実のは疲労していないのですが、神的には結構疲れてしまいます。
あっ!
そこで私は気付きます。
『気になる脂肪を一網打盡!』を二の腕に裝備したままでした。
シャンプーで泡まみれの手を一度洗い流し、ぺりぺりとはがします。
危なかったですね。これがもし電する系の商品だったら今頃、脂肪ごと一網打盡にされていました。
そうして頭を洗い終え、湯船につかります。
湯船にりながら見れるように、モニターが設置してあるのでそれを音聲で作し、畫サイトを開きます。
最近気にっているのは<Imperial Of Egg>の旅行畫です。
どれを見ようかと探していると、私の目が気になるものを捕らえました。
【あいおえ旅行】
『『霊都市 エレスティアナ』編』
というタイトルでした。
『霊都市 エレスティアナ』には霊駆式の自車のようなものがあると聞き、いつか行ってみたいと思っていました。
見ると楽しみがなくなってしまうので見ないことにしましたが、次<Imperial Of Egg>にログインしたら真っ先に『エレスティアナ』に行こうと決めました。
々な畫を見つつ、の芯まで溫まったのでよいしょっと湯船から出ます。
ふーと一息つきつつ、バスタオルを巻き付け、牛を冷蔵庫から取り出し、ゴクゴクと飲みます。
やはりお風呂上りには牛ですよね。
ぷはーっと息を吐き、するっと床に落ちたバスタオルを拾い上げ、を拭きます。
を拭き終え、頭にバスタオルを巻きつけた姿のまま、パジャマを取り出そうとすると、攜帯端末がアラーム音を鳴らします。
『窓の外を見る。』
あっそうでしたそうでした。エルマが窓の外を見てと言っていたんでしたね。
そして攜帯端末に著信がります。
『もしもし』
『チェリー! 窓の外をみてー』
『わかった』
そう言いながら、部屋に行き、カーテンをシャッと開けます。
何もないよ? と思いつつ、下に目をやると、白い車の橫に立ったエルマが居ました。
『えっ? エルマ何でここに?』
『チェリーいいい! 服ううううう!』
『へ?』
そう言って私は自分の姿を改めて確認します。
頭にバスタオルを裝備していますが、それ以外何もに著けていませんでした。
うん。
『いやあああああああああああ』
私の悲鳴がエルマの端末から聞こえてくるのではないかという大きさで響きました。
<第3章完>
【書籍化】ループ中の虐げられ令嬢だった私、今世は最強聖女なうえに溺愛モードみたいです(WEB版)
◆角川ビーンズ文庫様より発売中◆ 「マーティン様。私たちの婚約を解消いたしましょう」「ま、まままま待て。僕がしているのはそういう話ではない」「そのセリフは握ったままの妹の手を放してからお願いします」 異母妹と継母に虐げられて暮らすセレスティア。ある日、今回の人生が5回目で、しかも毎回好きになった人に殺されてきたことを思い出す。いつも通りの婚約破棄にはもううんざり。今回こそは絶対に死なないし、縋ってくる家族や元婚約者にも関わらず幸せになります! ループを重ねたせいで比類なき聖女の力を授かったセレスティアの前に現れたのは、1回目の人生でも會った眉目秀麗な王弟殿下。「一方的に想うだけならいいだろう。君は好きにならなければいい」ってそんなの無理です!好きになりたくないのに、彼のペースに巻き込まれていく。 すっかり吹っ切れたセレスティアに好感を持つのは、周囲も同じだったようで…!?
8 67【WEB版】王都の外れの錬金術師 ~ハズレ職業だったので、のんびりお店経営します~【書籍化、コミカライズ】
【カドカワBOOKS様から4巻まで発売中。コミックスは2巻まで発売中です】 私はデイジー・フォン・プレスラリア。優秀な魔導師を輩出する子爵家生まれなのに、家族の中で唯一、不遇職とされる「錬金術師」の職業を與えられてしまった。 こうなったら、コツコツ勉強して立派に錬金術師として獨り立ちしてみせましょう! そう決心した五歳の少女が、試行錯誤して作りはじめたポーションは、密かに持っていた【鑑定】スキルのおかげで、不遇どころか、他にはない高品質なものに仕上がるのだった……! 薬草栽培したり、研究に耽ったり、採取をしに行ったり、お店を開いたり。 色んな人(人以外も)に助けられながら、ひとりの錬金術師がのんびりたまに激しく生きていく物語です。 【追記】タイトル通り、アトリエも開店しました!広い世界にも飛び出します!新たな仲間も加わって、ますます盛り上がっていきます!応援よろしくお願いします! ✳︎本編完結済み✳︎ © 2020 yocco ※無斷転載・無斷翻訳を禁止します。 The author, yocco, reserves all rights, both national and international. The translation, publication or distribution of any work or partial work is expressly prohibited without the written consent of the author.
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【ジャンル】ライトノベル:日常系 「第三回エリュシオンライトノベルコンテスト(なろうコン)」一次通過作品(通過率6%) --------------------------------------------------- 高校に入學して最初のイベント「自己紹介」―― 「ごめんなさいっ、ごめんなさいっ。生まれてきてごめんなさいーっ! もう、誰かあたしを殺してくださいーっ!」 そこで教室を凍りつかせたのは、そう叫んだ彼女――無敵睦美(むてきむつみ)だった。 自己紹介で自分自身を完全否定するという奇行に走った無敵さん。 ここから、豆腐のように崩れやすいメンタルの所持者、無敵さんと、俺、八月一日於菟(ほずみおと)との強制対話生活が始まるのだった―― 出口ナシ! 無敵さんの心迷宮に囚われた八月一日於菟くんは、今日も苦脳のトークバトルを繰り広げる! --------------------------------------------------- イラスト作成:瑞音様 備考:本作品に登場する名字は、全て実在のものです。
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