《VRゲームでもはかしたくない。》間章1幕 化粧<make up>
『まさかチェリーがすっぽんぽんでカーテン開けるとは思ってなかった』
『私だって……』
グスングスンと鼻を啜りながら電話の向こうのエルマに答えます。
『と、とりあえず待ってるから著替えて降りてきてよ!』
『外で待ってるの? あがってく?』
『えっ? いいの!?』
『いいよ』
『わーい!』
するとドタドタと階段を駆け上る音が聞こえ、インターホンが鳴ります。
「いまあけるねー」
バスタオルを改めてに巻き、扉を開けます。
「おじゃまします。ってまだ服著てないの!?」
「そんなすぐ著られるわけないでしょ」
そう言いながら扉を閉めます。
「思ったより綺麗な部屋だねー」
「思ったよりは余計だと思うよ」
「失敬失敬ー。キッチン借りていいかな?」
「もちこーす」
「だからそれ止めよ?」
「はい。とりあえず服著てくるね」
誰かを家に招くのは生まれて初めてです。ちょっとドキドキしますね。
日頃からちゃんと片づけててよかった。
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あっ。そもそもリアルにいる時間ないからゴミが散らばらないんだ。毎日回収してもらってるし。
エルマが結構可い系の服を著ていたので私はし落ち著いたじの服をチョイスします。
黒いロングスカートに白いブラウス、薄手の桃のカーディガンを羽織ります。
あれ? この格好、エルマと専用端末買いに行った時の恰好と一緒ですね。
服持ってないと思われたら嫌なので、違う服を取り出します。
あっ。これでいいかな……?
んー。こっちもいいな。
よしエルマに決めてもらおう。
「エルマー」
「なんじゃいー?」
「ちょっときてー」
「ほいほいー?」
そうしてエルマを部屋に招きれます。
「パソコンしかないお部屋だと!?」
「ベッドもあるから。ってそうじゃなくて、この組み合わせとこの組み合わせどっちがいいかな?」
淡いのジーンズに白いブラウス。
茶のスカートに黒のブラウス。
この二通りを見せます。
「おねぇさん。ファッション疎いからなー。こまっちゃうなー」
「噓おっしゃい。いまの恰好だってトレンド取りれてて決め決めなのがわかるよ」
「……マネキン買いだもん」
「あっ……」
數秒の沈黙の後、エルマが黒いブラウスのセットのほうを指さしたのでそちらを著ることにします。
服をにまとい、禮儀として化粧をします。エルマもきっちり化粧してきてますしね。どこ行くかわかりませんけど。
まずスキンケアとして、化粧水とを顔に馴染ませて行きます。綺麗な化粧を維持するためには、スキンケアをした後に5分ほどおくとよいと學生時代に雑誌で読みました。
5分間やることがないので部屋から顔だけだし、キッチンのエルマの様子を観察します。
カチャカチャと食を取り出していますね。なるほど。紅茶を淹れようとしてくれてるんですね。
最近ではそちらの作業も自化されており、機械にセットするだけで、コーヒーや紅茶などを淹れてもらうことができるのですが、エルマのこだわりなのか、自分でやっているみたいです。
「ポットは上の棚にあるよ」
「ひゃぅ! びっくりした!」
「ごめん。何してるんだろうっておもって」
「お、おう……。化粧は終わったの?」
「いや。いま化粧水とをに馴染ませてる」
「あー。昔雑誌で読んだ」
「PONPON?」
「それ!」
「やっぱり」
一つ違いとはいえ、同年代なので同じ雑誌を読んでいたという事もありますよね。
「茶葉はこれ使っていいのん?」
「それでお願い」
「あいさ」
數分エルマの行を観察し、化粧を続けるために、顔を引っ込めます。
部分用の化粧下地を薬指に量取り、テカりやすいところに馴染ませていきます。
続いてパフを取り出し、化粧水をしみこませます。こうしてパフに量の化粧水をしみこませることで、とのを減らし、下地の馴染みを良くすることができます。
これも雑誌で読みました。
おでこと頬、顎に下地をちょんちょんとおき、化粧水をしみこませたパフでばします。この時は顔の中心から外側に向かってばすのがコツです。これも雑誌で勉強しました。
続いてファンデーションですね。
私はあまり化粧が得意ではないので、リキッドタイプのファンデーションを使います。
手にコインと同じくらいの量を取って、先ほどのパフでしずつ顔に広げていきます。この時も、中心から外にばすことは忘れません。
目回りと、口角のあたりはヨレやすいのでパフの角などを用いて丁寧に塗り込んでいきます。
あとはパウダーを乗せて完、と言いたいところなのですが、日頃から運をしていないので私はがあまりよくありません。そこを補うために、クリームチークを頬に仕込みます。これで不健康から出できます。これは知り合いの容師さんから聞きました。
そして仕上げのパウダーを量のせていきます。これも雑誌の知恵ですが、顔全ではなく、テカりやすい部分とヨレやすい部分にしだけ乗せるのがよいそうです。
これでベースメイクが完ですね。
本格的に化粧をする前に、エルマのお茶でも飲んできましょうか。
そう思い、私は部屋からでてリビングに向かいます。
「化粧終わったー?」
ソファーに座り、紅茶を飲みつつ、畫サイトを眺めていたエルマがこちらを振り向き聞いてきます。
めちゃめちゃ我が家に馴染んでる。
「ベースメイクは終わった」
「んー。チェリーそのままでもいいと思うけどなー」
「ダメダメ。眉こんなんじゃ外出れない」
「え? でもこないだ端末買いに行ったときそこまでやってたっけ?」
「あの時は急いでたから」
「今も急いでよ! のんびりしてる時間ないよ!」
「えっ? どこいくの?」
「ふひ。緒」
「…………」
エルマが用意しておいてくれた紅茶をズズっとすすり部屋に戻って化粧の続きをします。
普段作っている眉の形からはみ出た部分のをピンセットで毟り、整えます。
そして長さを短くカットし、眉を描いていきます。
眉の位置は口角の延長線と決めているのでその位置まで眉を描き足していきます。
その上から、パウダーを軽めにのせてぼかします。このあとノーズシャドウをれるそうなのですが、私の顔には合わないのでやっていません。
最後に眉マスカラを塗ります。
の流れとは逆向きに塗っていき、眉頭はちょっとななめ上のマスカラをかして自然な立を生み出します。
これだけで隨分印象が変わります。
冴えない引き籠りから一端のキャリアウーマンに変完了です。
次はアイメイクですね。
私はアイメイクも苦手なので、簡単に済ませています。
アイホール全に一番の薄いベースカラーを塗り、その半分と目の下にミディアムカラーを塗っていきます。そして目の際と目にダークカラーを塗ります。
アイラインはトントントンと細かく刻むように描いていくといいと、これも容師さんから聞きました。そして目は下まぶたの延長線上に描き、上のラインとつなげます。これでアイラインも完です。
さらっと頬の高い位置にチークを丸くれ、ハイライトも鼻筋と頬骨の上、眉下にさらっと加えて完です。シェーディングもした方がいいと思うのですが、私そんなに用ではないので。面倒くさいですし。
最後に保効果の高いリップを塗り、化粧を完了させます。
結構時間かかっちゃいましたね。
學生時代は暇つぶしに結構化粧していたので、早かったのですが、近頃やっていませんでしたので。
私は部屋を出て、エルマの居るリビングに行きます。
「化粧終わったよ。いつでもでれる」
「おつかれー! おおう! 凄い!」
「ん?」
「チェリーやっぱり化粧上手いよね」
「そうかな? 雑誌に書いてあったことを真似してるだけだよ。しかも最近やってなかったから、時間かかっちゃった」
「なんていうか……うん。これは嫉妬だ」
「なんで?」
「なんでも」
「そ、そっか。じゃぁどこに行くのか吐いてもらおうか」
「えへへー。それはついてからのお楽しみー」
「変なとこじゃなきゃいいんだけど……」
わたしがそう言うとしエルマがビクッとなりますが、その原因がわからないので追及はしないでおきます。
「よっし。いこっか」
そう言ったエルマが殘った紅茶をゴクゴクと飲み干し、カップを食洗機にぽいっと放り込みます。
私もポシェットの中にサイフと攜帯端末、化粧道等を詰め、パンプスを履き、エルマの後に続いて家を出ます。
電子ロックがかかっていることを確認し、階段を下ります。
アパートの前に停めてある白い高級外車まで歩き、上がった息を整えます。
「久々にリアルでこんなにいた。疲れた」
「あの……まだ家でてから1分たってないですよ?」
「そうだっけ?」
そのような會話をわし、エルマがカバンから車のキーを取りだし、扉を開けます。
「んじゃぁチェリーは助手席ね」
「わかった」
開けてもらった助手席側の扉から乗り込み、扉をバンッと閉めます。
「そういえばこんな長い時間停めてたらお母様に見つかっちゃうんじゃないの?」
「のーぷろぶれむ! いまお母様はお父様と海外旅行中なのだー」
「そうなんだ」
エルマが車を発進させます。
「おいて行かれた腹いせにチェリー連れ出して旅行としゃれこもうかと」
「えっ? ちょっとまって!? 旅行?」
キョロキョロとあたりを見回すと、後部座席に大きめのボストンバッグが置いてありました。
「あれ? 言ってなかったっけ?」
「聞いてないよおお!」
止まって! という私の言葉を聞き流し、エルマは車を走らせています。
to be continued...
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