《VRゲームでもかしたくない。》間章12幕 かくれんぼ<hide-and-seek>

「いくよー!」

エルマがガラガラと新井式回転選機を回します。

コロンと軽快な音とともに金に輝く玉が出ました。

「大當たりー!」

手には何も持ってもいないですが、ベルを鳴らす作をしながらサツキが大聲を出します。

「わーい!」

「おめでとー。ってそうじゃないでしょ。金は何のゲームなの?」

私はそう聞きます。

「えっと……こういう時のために用意しておいた……あった! 金は……かくれんぼ」

「「えっ」」

サツキと同時に驚きの聲をあげます。

「くじ引きでまさかあたしの十八番のかくれんぼを引くとはね……手加減しないよ」

「うん」

「ワタシ負けでいいからかくれんぼやめない?」

「サツキぃー? 逃げるのー?」

ニヤニヤした顔を隠さずにエルマがサツキを挑発します。

「そこまで言われちゃ、このゲーマー、中瀬皐、逃げるわけにはいきますまい」

「いいのかにゃー? 絶対勝てないよー?」

「かまわんさ。だが一つハンデを貰ってやってもいい」

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「ほう?」

エルマがし不敵な笑みを浮かべます。

「エルマが鬼だ。ワタシとチェリーが隠れようではないか」

なるほど。いいですね。エルマはいつも突拍子のないところに隠れ、鬼を困らせていましたから。

「その程度でいいのかな?」

「いいともさ。これで負けたら次の機會にはもっと大きなハンデをもらうけどね」

「私もエルマが鬼でいいと思う」

「おーけーおーけー。制限時間は?」

「うーん。1時間でどうだい? 隠れるのに10分頂戴」

「いいでしょう、いいでしょう。なら公平を期すために、ランダムでステージ生と行きましょう。拡張インストールするからちょっとまってね」

そう言ったエルマがメニュー板を作し、拡張をれ始めます。

「チェリー。いつものローカルルールならどっちかが見つかっても大丈夫だよね。ワタシに策がある」

「なに?」

小聲でサツキと話します。

「ごにょごにょごにょ……」

「なるほど。ちょっと卑怯だけどそれなら行けるかもしれない」

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私達が<Imperial Of Egg>でVR化する前にやっていたルールは、鬼が子を見つけたら城と呼んでいる鬼が目を隠して子が隠れるのを待つ場所の看板に発見者のネームを書くことでリタイアになっていました。

子が鬼の目を掻い潛り城に記載された発見者の名前を消すことができれば復活するという缶蹴りに近いルールです。

缶蹴りと異なるのは鬼のれ替わりがないことでしょうか。缶蹴りでもよかったのですがVR化する前は缶を蹴る作などが存在しなかったせいですね。

「おっけー。拡張れ終わったよー。ステージ生するねー」

「おっ。よろしくー。あっ、看板だと消すのがし手間だから紙とペンでいいかな?」

「いいよー! 転送するねー」

私の目の前に転送を許可するかどうかの文章が出ます。

YESを押すと、視界がに包まれ、次の瞬間だだっ広い町中のような場所に立っていました。

「おっと。さすがにこれは予想外だね。めちゃくちゃ広い」

「って思うじゃん? サバイバルゲーム用のランダム生で500メートル×500メートルの正方形ステージだからそこまで広くないよ」

「これを広くないと申すか。流石エルマ。お手並み拝見と行こうか」

そう言ってくるっと振り向いたサツキが私の方を見て聲を出さずに、口のきだけで「まかせたよ」と言い、ウインクをしました。

こういう行もサツキがやると妙に格好いいんですよね。

私はコクリと頷き、打ち合わせ通りにくシュミレーションをしておきます。

「準備OKさ」

「私も準備おっけーだよ」

「よーし、じゃぁ10分スリープしてすぐ探し始めるからね」

エルマは手元のメニュー板を作し、10分間の遮斷狀態にするようです。

「よーい……バーン」

どこから持ち出したかわからない陸上競技に用いるスターターピストルをならし、エルマはコテンと地面に座り込みました。

「作戦……開始!」

ザッと音を立て、北側に走り出すサツキを見送った私は、エルマが現在座り込んでいる後ろにある発見者の名前を書くための紙とペンを回収します。

そしてそれを懐にしまい、東に走り出します。

東の方へ走っていくと、日本家屋が見えてきました。2階建てのようですね。

基本的にこのランダム生されたマップには建が東西南北に各一つずつあるようで、それ以外の場所には遮蔽になるようなものが多置いてある程度にじます。

サバイバルゲーム仕様と言われて納得ですね。

日本家屋の扉を開け、一通りぐるっと見回ります。

1階には玄関、お風呂場、臺所、居間、庭の隅の小さい蔵がありました。

2階には4部屋あり、一つは書斎のようなもので、殘りの3部屋は寢室と客間のようでした。

となると、隠れられるのは部屋の押しれ、書斎の隅、湯船の中、臺所の流し場の下、玄関の靴箱の中、くらいでしょうか。

蔵はこのままだと私の大きさでは隠れるのは厳しいですね。

隠れる場所を味していると、ポーンという音が鳴り、10分経過したことがわかりました。

鬼がきますね。

エルマの格と今までの行から推測するにまず正面の北側へ走り出すはずです。

本來なら自分の背後に置いてある紙とペンを確認せずに、です。

時間的な猶予はありますが、かくれんぼに関しては無敗を誇るエルマです。どんな行をとって來るかはわかりませんので萬全を喫して、蔵に隠れることにします。

はい。私が隠れられないはずの蔵にです。

蔵の扉を開け、蔵の中にある謎の品々を全てインスタントインベントリと呼ばれるこのステージの中でだけ使える倉庫のようなものに、片っ端からしまっていきます。

そうして作り出した空間に用に折りたたみ、しまい込みます。

念のため扉を開けてすぐ発見されないように扉側に先ほどしまった品の一部を配置していきます。

これで扉を開けて、中をし確認した程度なら、ただの蔵にしか見えない、基地が完しました。

それから20分ほど息を潛めていました。

こちらに向かってくる足音が聞こえます。

「んー? いるね。チェリーが居る気配がするよ」

そうエルマの聲が聞こえてきます。

くっ……エスパーか……!

「チェック! チェリー不用心だね。こんなフェイクをするタイプじゃないのは知ってるよん」

しまった……。玄関の扉が開けっぱなしでした……!

まずいですね。

わざと行を宣言して、揺をうエルマの手口に引っかからないように、気を引き締めます。

「建部にはいなそうだね。じゃぁお庭だね」

さらに近づいてくる音が聞こえます。

心臓がバクバクと音を立てているのがエルマに聞こえませんようにと願うしかありません。

「流石にこの小さい蔵に隠れられないと思うんだけどな。見ておこう」

扉の前まで來た気配がします。

キッという音とともにが差し込んできます。

口からは完全に見えない位置ですのでによって発見されることはありませんが、もしエルマが部にり、しでもキョロキョロしたら見つかってしまいます。

「いなそうだね。あっ」

エルマが聲をあげます。私は必死に呼吸を止めていますが、それもあとどのくらい持つのかわかりません。

「チェリーみーっけ」

ドキンと跳ねる心臓と私を覆い隠していた品ふガサガサとどかす音が聞こえます。

「いやー。あやうく騙されるところだったよー。一回ガラクタをしまってその角のスペースを作ったんだねー」

そうしゃべるエルマに足を摑まれます。

「普通は正面しか見ないもんねー。でもチェリーそれはかくれんぼ初心者の考えだよ。綺麗にガラクタで隠したつもりなんだろうけど……不自然さがあった」

「降參……。じゃぁ城まで連れて行って」

ガラクタを頭の上からもどかし、蔵から出ます。

詰まっていた息を吐き出し、新鮮な空気と換します。

「チェリーしかくれんぼ上手くなったねー。でもテクスチャの隙間に隠れてたVR前のほうが手ごわかったよ」

「參考までに蔵に隠れてるって確信をもったのはなんだったの?」

「簡単簡単。蔵にしては溫度が高かったからだよ」

なるほど……。私がこまって20分も隠れていたのですから、無理もないですね。

「完敗。あとはサツキかな?」

「サツキは北に居そうだったんだけどね。見つからなかった」

そうエルマから聞いていると、城のマークが見えてきました。

「よーし城だー。じゃぁチェリーそこに座っててねー、ってあれ!? 紙とペンがない!」

よし、予定通りですね。

「ないの?」

「始める前に後ろに置いたはずなんだけど……」

そうあたりをきょろきょろ見回しています。

「んー? あぁ。そういうことか。道理で北にいないわけだ」

あっ。都合よく誤解してくれてるかも。

「どういうこと?」

「始まったらあたしが正面に向かって走り出すと考えたサツキは一端近場にを潛めて、あたしが居なくなった隙に紙とペンを回収して殘りの三方角に逃げたんだよ」

ごめんなさい。紙とペンを持ち去ったのは私です。

「スタート前に紙とペンはあったの?」

「あったよ。あたしが10分間スリープする前と変わらない狀態で」

えっ。

私が持ち去ったのに? なんで?

もしかしたらエルマの言う通りかもしれませんね。サツキは私が先に見つかることを見越して、偽の紙とペンを最初から置いていたのかもしれないですね。

いや。でも私が取った時はエルマが設置してから誰もっていなかったはずです。

なら考えられるのは……サツキが偽の紙とペンでエルマの目をごまかした、ということですね。

その偽の紙とペンを回収して今はどこかに隠れているというわけですね。

やっぱりサツキはサツキですね。変わっていません。出會ったときから妙に知恵が回るんですよね、彼

「とりあえずこれじゃ名前書けないからチェリーは逃がすしかないかー」

「ルール的にはそうなっちゃうね」

「仕方ない! 行きな! 釈放だ!」

座っている私の背中をポンと叩き、エルマは目を閉じます。

「1分で再行だからねー。それまでにちゃんと隠れるんだよ」

「わかった」

鬼から解放された私は、特に深く考えず北に向かって走り出しました。

再びポーンと1分の経過を告げる音が鳴り、私は何とか北の建へとたどり著きました。

こちらも日本建築で2階建てですね。

扉が開いています。エルマが探した跡か、サツキが隠れた跡かわかりませんね。

部の構造も東と同じでしたので隠れる場所も同じでしょう。

流石に二度蔵に隠れるとは考えないと思うので再び蔵に隠れようと扉を開けます。

先ほどと同様に品をしまい、隙間を作ります。

「おいおい、その隠れ方はまずいんじゃないか?」

「そうかな?」

聞こえてきた聲に自然と返し、その異常事態に気付き、飛び上がります。

「わっ!」

「しー! エルマが気付くだろ! 落ち著け!」

「ごめん。なんで天井にくっついてるの?」

「エルマからは見えにくいからさ。流石に20分以上このままで腕がキツイんだけどね」

「20分も!? あっ紙のこと聞いてもいい?」

「聞きたいことはわかるよ。YESだ」

「ありがとう。それだけで十分。ちなみに理由は?」

私に持たせてるのは本かを聞こうとしましたが、聞く前に肯定の返事が來たのでその理由を聞くことにしました。

「簡単なことさ。チェリーを捕まえたエルマは紙がないことをワタシの仕業にしか思わないだろう?」

「そうだね。実際そうだった」

「それが狙いさ。だから次はワタシを探しに北以外にもう一度行くはず。次に北まで戻ってくる頃には殘り時間がもうししかないからね。ワタシを城まで連れて行って紙とペンを回収して、発見者リストに名前を書く時間はないと考えているよ」

サツキはさらにと付け足します。

「ワタシの紙とペンは偽。まぁ、この場合偽でも関係はないんだけどね。二人同時につかまる展開だけ避ければいい」

「なるほど」

「なるほどねー」

ここにいないはずの聲を聞いて、サツキは張り付いていた天井からり落ち、私はビクンと飛び跳ねてしまいました。

「ふたりともみーっけ。さてさて、ずっこいことをした二人には罰ゲームだよ!」

「エルマ! どこから聞いてたの?」

「「YESだ」のとこから」

「結構まえから聞いてたんだね」

「でもどうやってそんな早くこっちに來れたの?」

私はそう聞きます。

「そりゃもっかい正面に全力ダッシュしたからだよ」

「……。完敗」

「ワタシもおとなしく負けを認めよう。完敗だね」

「ふっふっふ。さて罰ゲームを<窓際の紫花>のルームに戻って決めよっか」

<窓際の紫花>のルームへと戻ってきた私とサツキの前に仁王立ちするエルマが、ニコニコ笑いながら、罰ゲームを言い渡します。

「今日一日、サツキはめちゃきゃわなの子になってもらおう! そして、チェリーには箱りのお嬢様を演じてもらおう!」

「ま、まって! ワタシはそれキツイって!」

「なーに。自分の小説にあんな可の子だしてるんだからできるでしょー?」

「あれは妄想だからさ! 現実じゃ無理だって!」

「安心しなさい! ここはVRだよ! さぁ観念してこいつを著るのだ!」

そう言ったエルマがゴシックでロリータな服をぽいと放り投げました。

「ほんとに言ってるのか……?」

あっ。サツキ泣きそう。

「お姉さん、噓、言わない、ヨ」

「うぅ……。ワタシのアイデンティティーが……」

「さぁ、中瀬皐! 腹をくくりなさい」

「わかったよ……今日一日だけね……」

の子っぽいことをしてるサツキはし見てみたいですね。

「チェリーも他人事じゃないよ。ほい」

そういってドレスを私に放り投げてきます。

「それを著て一日、お嬢様ね。慣れてるでしょ? うまく箱りお嬢様を演じてね」

今度は見逃してはもらえなかったか……。

to be continued...

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