《VRゲームでもかしたくない。》第4章7幕 手榴弾<grenade>

「別に怒ってないからー」

こちらを見ずにステイシーがそう返します。

「怒ってる!」

「怒ってないからー」

エルマの反論もズバリと切り捨てるステイシーに〔解除薬〕の効果はあったのかを聞きます。

「全然効果なかったー。やっぱり≪憑依≫なんじゃないかなー?」

「それもどうにかできる人が見つからないとどうもできないしね」

「そうだねー。ところであいつは<転生>してきたんだねー」

「そうだよ」

「レベルいくつになってたー?」

「あっ……。見てない」

「おっけー。僕が見るよー。んー? わーお」

ぴゅうと口笛を吹いたステイシーに貓姫がどれだけレベルアップしていたのか聞きます。

「Lv166」

「えっ」

蓄積経験値で66レベル上がるなんて……。

これならあの鉄扇持てますね。

「ちょっとマオのとこにいってくるね」

そうステイシーに斷りをれ、貓姫の方へ歩いていきます。

「マオ、これで鉄扇持てるね」

「あぁ。そうだった、わ」

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「はい」

インベントリから取り出した鉄扇を渡します。

「まって。まだ、ポイント振って、なかった、わ」

おっと。また地面に落としてしまうところでした。二ヶ所も凹ませちゃったらごまかせないですからね。

貓姫がSTRに30振ったというので鉄扇を渡します。

「ありが、と。いいわ」

扇子を開いたり閉じたりしていますね。

し試し打ちでもしに行く?」

「そう、ね。慣れて、おきたい、わ」

この辺で試し打ちにいい所は……。

あっ。街の外に出て、し南に行ったところに『ハワード窟』という初心者殺しがありましたね。そこに行きましょうか。

「ステイシー、エルマ。ちょっとマオの試し撃ちに付き合って『ハワード窟』に行ってくるね」

「おー。行ってらっしゃい」

「じゃぁあたしも行こうかなー。〔ユニークモンスター〕が出た時のために」

「心強い。じゃぁ準備を整えていこうか」

「準備、できてる、わ」

そう言って扇子をバッと開く貓姫を見てエルマも頷きます。

「じゃぁ行ってくる」

『商都 ディレミアン』の南門を出発し、目的地までのんびりと歩きます。

「スキルは大わかった?」

「わかった。中級風屬魔法は、よく、わからないの」

「そこは慣れだよ!」

エルマのありがたい助言を聞き流し、貓姫に他のスキルの確認をします。

貓姫は扇子技の他に、警棒に存在するスキルと基本武の剣のスキルは【稱號】で使えると言っていたので、近距離戦闘も大丈夫そうです。

目的地に著くまでの間にちらほらと出てくる敵は貓姫のスキルによってすぐ討伐されていきます。

「≪鎌鼬≫」

スパパッと小気味よい音を立て、初心者が狩れるレベルの獲を両斷していきます。

「使い、やすいわ」

慣れてると言っていただけはありますね。

お飾りの扇子だと思っていたのであとでちょっとおいしい串焼きでもごちそうしましょう。

「魔法、どうやるの?」

「うーんと。スキルの一覧を開いてみて」

エルマが解説を擔當してくれるようなので、私は周囲を警戒します。

「開いた、わ」

「そこの下の方に≪風屬魔法≫ってあるでしょ?」

「これね」

「うんうん。そこをタップして、そう、そこに≪中級風屬魔法≫ってあるじゃん」

「みつけたわ」

「もう一度タップすればいま使える風屬魔法が書いてあるよ」

「初級、の方も、見える」

「中級なら初級も使えるから」

「そうなの、ね。ちょっと、使うわ」

狙いを定めた貓姫が低レベルモンスターに向かって、スキルを発します。

「≪ゲイル・コンプレッション≫」

「あっ!」

「えっ!」

私とエルマの驚いた聲が重なります。

まさか最初に選ぶ魔法が、周囲の空気を集めて圧する魔法だとは思いませんでした。

この魔法は……弾と呼ばれています。

軽い魔法を指定するべきでしたね。

そのような思考を脳で瞬時に終え、貓姫を抱きかかえて飛びます。

背後で、パンッという可らしい音と、圧された空気が周辺に噴き出して臺風のような風を生み出し、地面の砂や石を周囲に撒き散らしています。

「イタタタタタ」

こつんこつんと小石が私のおや背中に當たっています。

「イテテテテ」

エルマも頭を抱えて地面に埋まるように隠れています。

風吹き終え、砂埃が立ち込める中で貓姫が言います。

「危なかった、わ」

「そう、なのね。それで、弾」

「そうそう。VRで初めて見たけどこれは場所を選ぶね。でもうまく活用すれば上級に匹敵する威力が出るよね」

「そうだね。マオならダメージ無効があるから……。そっか。ダメージ無効か……」

「チェリー?」

「いいこと思いついた」

「なに?」

貓姫が小首をかしげて聞いてきます。

「ちょっと試してみる?」

自分でも自覚できるほど悪い笑みを浮かべていたと思います。

「このへんでいいかな」

「ここなら地面は舗裝されてるし、中級魔法でも壊れないとは思う。チェリーが何を考えてるかわからないけど」

し嫌そうな顔でエルマがこっちを見ています。ではそんなエルマに標的役をやってもらいましょうか。

「≪アース・レジスト≫、≪ウィンド・レジスト≫」

「えっ?」

エルマに風魔法と土魔法の耐をあげる魔法をかけます。

「≪アース・シールド≫、≪ウィンド・シールド≫」

そしてエルマの前面に風魔法と土魔法の障壁を張ります。

「なになに? なにするの?」

「エルマはじっとしててね。≪サンド・クリエイション≫、≪ストーン・クリエイション≫準備おっけい。じゃぁマオ、手を出して」

「こう?」

「そうそう」

私は今作った砂と小石の盛り合わせを貓姫の手の上に置きます。

「それをエルマの方に投げて、またさっきのスキル使ってみて。そのあとすぐに防スキルをつかってね」

「よく、、わからない。でも、わかった、わ」

そう言った直後、貓姫は右手を振りかぶり投げました。

すぐ左手に持っていた、鉄扇を右手に持ち替え、スキルを発します。

「≪ゲイル・コンプレッション≫」

すると先ほど投げた砂と小石が空気に飲まれ、一か所に集まります。

「……」

最後に貓姫は念じるだけで発する≪壁は傷一つ付かない≫を発したようで、を失った目を隠すように目を閉じました。

「ちょっとまって! まって!」

エルマがじたばたし始めていますがもう手遅れですね。

でもまぁこの程度ならきっと私の障壁で防げますよ。貓姫のMP総量が増えてきたらわかりませんが。

パンッという音とともに、部にあった砂や小石、空気中に待っていた粒子などが飛び出し、障壁に刺さります。

手榴弾みたいですね。これ。

障壁で防げてよかったです。

「ちょっとチェリー! どういうこと! 壽命が2分はまったよ!」

「じゃぁあとでおいしいもので壽命を2分延ばそう。奢るよ」

「許そう」

「もう、いい?」

「いいよ」

貓姫が目を開けて周囲を見渡します。

「魔法って、怖い、のね」

その後『ハワード窟』に行き、貓姫の試し撃ちという名の狩りを見守り、1時間ほど経ったので、帰ることにしました。

「お疲れ様」

「おつかれー!」

「ありがと。久々に、ゲーム、らしかった」

「これからもっとファンタジーでゲームっぽいところに行くよ。って言ってもまだ數日先だけど」

「そう。楽しみ、だわ」

でも見とれてしまうような笑みをうかべ本當に楽しそうにしています。

「じゃぁご飯食べて帰ろっか!」

し気恥ずかしさをじたので無理やりに大聲をだし、それをごまかします。

食事を食べている途中でステイシーに連絡をれると、彼も合流し、「チェリーの新しい旅立ちに乾杯ー!」と言って浴びるようにお酒を飲んでいました。

これはまたみんなで二日酔いになりますね。

to be continued...

    人が読んでいる<VRゲームでも身體は動かしたくない。>
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