私は気絶という狀態異常にかかり、いま何が起こっているのかを認識することができません。タイミングを見計らってステイシーやエルマが気絶を解除してくれることを祈るばかりです。

気絶という狀態異常は、ゲームで睡眠を取るときに近いです。目が開けられず、そして音も聞こえません。しかし、掲示板を見たり、インベントリは確認できます。この辺が睡眠との違いになるでしょうか。

起こしてもらえるまでの時間に私はインベントリに先ほど倒したであろう〔流金屬傀儡　Ｌ・Ｍ・Ｄ　ディージー〕のドロップ品を確認します。

するとインベントリには〔Ｌ・Ｍ・Ｄ　ディージーの核〕というものがっていました。〔ユニークモンスター〕からのドロップですと、そのモンスターの個をけ継いだ武や素材が落ちるので、先ほどのやつは〔ユニークモンスター〕に違いありません。〔核〕なので魔法系の武が作れそうですね。

インベントリを確認していると頭の中に聲が響きます。

「チェリー。おきてー。≪キュア≫」

ステイシーの聲ですね。

真っ暗だった視界が明るくなり、意識が戻ります。

「ありがとう。狀況は？」

「見ての通りさー」

辺り一帯にデコボコとしたが開いており、前衛のエルマがうまく球をわしています。

「〔流金屬者　Ｌ・Ｍ・Ｐ　エムティー〕……」

「二段構の〔ユニークモンスター〕だったみたいだね」

「そういうことか……」

〔流金屬傀儡　Ｌ・Ｍ・Ｄ　ディージー〕を倒すとそのり手である〔流金屬者　Ｌ・Ｍ・Ｐ　エムティー〕が出てくるわけですね。

「でもなんで今まで報がなかったんだろう」

「みんな倒してすぐ転移で帰っちゃってたからかなー？」

「かもしれないね。っと、戦闘に加わらないと」

「僕の雷魔法はほとんど効かなかった。エルマの火魔法もあいつの風魔法を効果薄だったよー」

「なら私の闇魔法は行けるかな？」

「試してみてー」

「わかった。エルマ！」

そう一聲掛け魔法を発します。

「≪シャドウ・スピア≫」

エルマの橫を抜けた魔法が、一直線に球を貫きます。

しかし、手ごたえはほとんどなく、驚きます。

「駄目。あまり効果がない」

「魔法には耐があるのかな」

「じゃぁちょっと斬ってくる」

私はそう言って腰にさしてある【神　チャンドラハース】を抜刀し、≪スライド移≫を発させます。

「≪アジリティー・アップ≫、≪アタック・ゲイン≫」

ステイシーの支援魔法をけた私は球目掛け飛びます。

「っはっ！」

球を一閃します。

スパッと真っ二つに斬ることはできましたが、すぐにくっつき、球の姿に戻ります。

「手ごたえ無し。か…・・個にするしかないね」

私のつぶやきが聞こえたからでしょうか、すぐさまステイシーが氷屬魔法を発します。

「≪フリーズ≫」

溫度を下げて個にしようとしますが、今までの攻撃は避けようともせずに當たっていたのに、この≪フリーズ≫だけは俊敏なきで回避しています。

ということは……。

「≪アイス・ドーム≫」

氷屬の魔法で球を閉じ込めます。

「ステイシー！」

「≪フリージング・バレッタ≫」

私が作り出した氷魔法の牢獄の中に複數の棘が生まれ、なんとか回避しようとしていた球をい付けます。

「「≪フリーズ≫」」

そして私とステイシーが同時に氷魔法を発し、氷のオブジェを作ります。

「よしー。うまくいったねー」

「でも倒せてないよ」

「そうだねー」

「なら砕いちゃえば？」

そうエルマが言います。

「でも砕いたあとの破片が合して復活されたら面倒だよー？」

「あっそっか」

「氷が、溶けない、ように砕い、たら？」

「なるほどー」

「じゃぁ凍らせ続けるね。≪フリーズ・サステイン≫」

「えい」

貓姫が持っていた鉄扇で氷を砕きます。

「えい、えい」

ＳＴＲのせいかなかなか壊れませんね。

見かねたエルマがパンチするようです。

「はっ！」

花瓶が落ちて割れるような音を立て、氷が砕けました。

「すごい、力」

「ふふーん。これでもＳＴＲは100以上あるからね！」

すいません。私はその4倍です。

ゴリラの汚名を著せられたくないので黙っていることにします。

「討伐アナウンスでた？」

エルマにそう聞かれ、ログを確認しますが、討伐のアナウンスは出ていないようです。

「でてないねー」

「でてない」

「でてない、わ」

「じゃぁまだ生きてるってことか！」

念のため≪フリーズ・サステイン≫は発しっぱなしでしたので、まだ活はできない見たいですね。

地面に落ちた欠片を、冬場凍った水溜まりを砕いて歩く年のようにエルマがぐしゃぐしゃと踏んでいきます。

いいなー。楽しそう。

『〔流金屬傀儡　Ｌ・Ｍ・Ｄ　ディージー〕及び〔流金屬者　Ｌ・Ｍ・Ｐ　エムティー〕の討伐を確認しました。ユニーク素材〔Ｌ・Ｍ・Ｄ　ディージーの核〕及びユニーク素材〔Ｌ・Ｍ・Ｐ　エムティーの核〕をインベントリに獲得しました。』

「どっちも〔核〕だった」

私がそう告げるとエルマが自慢げに獲得した裝備品を見せてくれました。

「【Ｌ・Ｍ・Ｐコート】をもらった！」

金屬の沢がほどほどに殘っているロングコートを手したようです。

「ＭＰを流すと形を変えられるらしい。ちょっとやってみよ」

むむむっとと目を閉じ、念じています。

そしてコートをマフラーのように変形させました。

「おお！」

「おー！」

「かわいい、わ」

「結構便利かも？」

そう言った次の瞬間、マフラーを剣狀に変化させていました。

「すごい！」

「チェリーちょっと斬ってみて！」

「いいよ」

そう言われたので握ったままだった剣で軽めに斬ります。

スパッと軽快な音を立て、エルマの持っている剣がきれいに斬れていました。

「ハリボテかよ！」

おとなしくマフラーの形狀に戻したエルマをめつつ、海を凍らせて『海上都市　ブラルタ』まで帰ってきます。

船を造ると言って何度も沈めてふてくされるエルマは放っておき、手にれた報を報屋に伝えます。

「……というじでした」

「なるほどネー。うンうン。助かったヨー。これでこの報が売れルー。気持ち程度だけどとっておいてヨー」

そう言って私に一枚の紙を渡してきます。

「これは？」

「君がしそうな報だヨ。本當なら10萬金は取るところだけどタダでいいヨ」

そう言われて紙を見ます。

『『霊都市　エレスティアナ』霊駆式二車手クエスト』

と書かれています。

「これは！」

「行くんでしョ？　なら持っていきナ！」

「ありがとうございます！」

「いいノいいノー。じゃぁまた何かあったらお願いするネー。バイバイー」

そう言ってマントをかぶり姿を消してしまいました。

「チェリー。何貰ったのー？」

「『エレスティアナ』の霊式二車の手クエストの説明」

「おー！　いいものもらったねー」

「うん。正直これは助かる」

「あたしに謝してよ！　それ取り付けたのあたし！」

「そうだったんだ！　エルマありがと！」

「ええやでー！」

報屋に報告を終えた後、『海上都市　ブラルタ』の刺がおいしいと評判のお店に行き、早めの晩飯を食べました。

サツキと合流して旅に出るのが楽しみです。

エルマはちょくちょくＴＡＣの方でサツキと遊んでいるらしく、今日この後待ち合わせをしていると言っていたので、貓姫とステイシーにもＴＡＣの導を勧め、一度ログアウトしました。

現実世界で処理しなければいけないものを処理し、ＴＡＣにログインします。

そして＜窓際の紫花＞のルームへと飛ぶと早くもステイシーがログインしていました。

「おー？　チェリーだねー？　あっちとそんなに大差ないからわかりやすかったー」

「うさ耳生えてるけどね。ステイシーはちょっと意外かも」

＜Imperial Of Egg＞のアバターは中的というかほぼのような見た目の男キャラを使用していましたが、ＴＡＣでは顔がより男っぽくなっており、長もしばしているようにじます。

「格は現実とあんまり変わらないようにしてるー。こっちでも買いできるみたいだしー」

「わかる」

「おまたせ！」

そう話しているとエルマも＜窓際の紫花＞のルームへやってきました。

「ごめんね。貓姫が見つけられなくて遅くなっちゃった」

そう言ったエルマの後ろからひょっこり貓姫が顔を出します。

「おまた、せ」

＜Imperial Of Egg＞に比べし背が低くはなっていますが、は二回りほど大きくなっています。顔はほとんど＜Imperial Of Egg＞とかわりありませんね。

「お……おお……」

私の視線がに行っていることに気が付いたのか、し頬を赤らめ、貓姫は答えます。

「型も、顔も、現実とほとんど、変わらない、ようにした、わ」

「えっ！」

つまり、貓姫はほとんど現実と変わらない顔で＜Imperial Of Egg＞を遊んでいるということですね。

なかなか勇気がありますね。

「あら？　あなたのこと、見たこと、あるわ」

そう言ってステイシーの方へ歩いていきます。

ステイシーは「じゃー」と言ってどこかへ走り去っていきました。

「あとはサツキが來たら貓姫と初顔合わせだねー」

「……。マオ、でいいわ」

「わかった。じゃぁ今度からそう呼ぶね」

し嫉妬のようなものをじつつ、サツキのログインを待ちます。

to be continued...