謎の逃走からステイシーが戻ってきました。

「ステイシー、別に逃げなくてもいいんじゃない？」

「なんていうか、癖ー？」

「そっか」

「諸君！　おまたせ！　おや。始めましてのお嬢さんがいるようだね」

そう言って＜窓際の紫花＞のルームへログインしてきたサツキが、一本のバラを手品のように取り出し、貓姫に渡します。

「ふふ。ありがと」

「その笑顔の虜になってしまいそうだ。っとステイシーもいるみたいだね」

「いるよー。サツキー。おひさー」

「あぁ。久しぶりだね。向こうに比べてし男っぽいようだ。とはいってもＶＲ化前の記憶だからね。しい年として記憶に刻まれているよ」

「んー。相変わらずだねー」

「そうかい？　ところでみんなお揃いでどうしたのかな？」

「もうすぐ、第二陣のログインだからねー。打ち合わせがてらにＴＡＣで顔合わせ」

そのエルマの言葉に納得したサツキは手帳のようなものを取り出しスケジュールを確認するしぐさをします。

メニュー板を作するだけで見れるのに。

まぁ、サツキですし。

「おっ。日付変更と同時にアクセス解なのか。その1時間前からアバターの作り直しができると。なるほどね。ならその前に、仕事片づけておかないといけないね」

「なんの、仕事？」

「しがない小説家さ。お世辭にも売れているとは、言えないけれどね」

「すごい、わ」

「実際、サツキの作品は結構売れてる」

そうボソっっと言ったエルマの言葉に貓姫は目を輝かせています。

「あぁ。そうだね。自己紹介がてらこれを進呈するよ」

サツキのデビュー作、『君は私に傅くのよ』を取り出し、貓姫に渡します。

「後でけ取りの申請をしておいてくれるかな？　ご自宅にお屆けさせていただくよ」

ＴＡＣではこのようにを送ることもできます。ほんと便利ですね。もう外出る必要ないですよね。

さっそく読み始める貓姫をソファーまで案し、サツキをえて＜Imperial Of Egg＞の話をします。

「つまり、『エレスティア』にワタシの魔銃とチェリーの霊駆式二車を探しにいく、ということかな」

「そんなじ。後はエルマの魔法剣の素材集めとか、契約霊の捕獲とかかな？　ステイシーも杖の芯必要かな？」

「いやー？　僕はいい武があるからねー。そこまで考えてないかなー。でも【召喚士】の【稱號】を取って雷霊を使役したいから契約は取りに行きたいかもー」

というじでみな『エレスティアナ』に行くのは反対じゃなさそうですね。

「行きはレディンに送ってもらおうかなって思ってる」

「ＶＲ化前の金銭は殘っているのかい？」

そう聞くサツキに返事をします。

「もちろん」

「ならみんなで割り勘と行こうか。人3人には払わせたくないんだけれどね」

「と言っても一番お金持ってるのチェリーなんだよねー」

いや。絶対エルマがため込んでますよ。

「そんなことないと思うよ」

私は軽めの反論をしておきます。

その後本を読み続けたいと駄々をこねる貓姫を連れてみんなで食事にやってきました。

「もうし、読んでたい、わ」

「そう言ってもらえると作家冥利に盡きるよ。あんな駄作でも楽しんでもらえてるならそれほどうれしいことはない」

「とても、面白いわ。佳苗ちゃん、かわいい」

「ワタシとしても著がある娘だから、自分のことのように喜ばしいね。ではその新しい読者様の誕生を祝って今夜はワタシが持とう」

都で大人気の創作うどん店へやってきました。

「5人です」

「かしこまりました。奧のテーブル席へどうぞ」

店員に案された席へ著きました。

「さぁ好きなものを頼むといい、と言っても現実の胃袋は満たされないんだけれどね。純粋に食事を楽しもう」

私はぱっと目について、腹の蟲に逆らわず、明太クリームうどんを注文します。

ステイシーはかつカレーのうどんを注文しています。結構ワイルドですね。

エルマは悩みに悩んだ末、天ざるうどんを注文することにしたようです。

貓姫は現実で何度も來たことがあるお店だったようでメニューを見ずに天山かけのうどんを注文しました。

サツキも貓姫と同様で、メニューを見ずに鴨のうどんを注文していました。

十數分してみんなの注文した料理が出そろい、食べ始めます。

「「「「「いただきます」」」」」

お箸を手に取り、うどんを掬い、口に運びます。

おいしです。

博多直送の明太子を使っているようで、出に負けない強烈な個がじられます。

それでいてクリームのおかげで辛くはなく、辛いが苦手な人でも食べれる絶品といったじです。

なるほど。現実で人気が発している理由がわかりますね。

開店當初は創作メニューがＳＮＳに拡散することにより、超人気店となったそうですが、そこから何年もたっているのに衰えない人気のが垣間見えました。

時を忘れて食べ続け、ステイシーの次に食べ終わってしまいます。

で一番最初に食べ終わってしまいましたね。エルマは意識していたのかいないのか、すこしゆっくり目に食べ、こちらを見てニヤッとしていました。

私はエルマから視線を外し、笑顔を浮かべ食べ続ける貓姫とステイシーの空になったグラスへ水を持ってくるように店員に話しているサツキを見ます。

正直、意外なんですよね。

この5人て共通點があまりないんですよ。

ニートの私と資産家の娘のエルマ、リアル全て謎のステイシー、小説家のサツキ、退職したという貓姫。

それもオンラインゲームだからでしょうか。現実では出會うはずもなかった人と、こうして食事をできるというのは。

そのうち、何時かはリアルでもあってみたいですね……。

「サツキありがとう。ごちそうさま」

私がそう伝えると、他の3人も各々謝を述べています。

「そこまで謝されるとし照れ臭いね。そのうち現実でちゃんとごちそうするよ」

「これはリピート確定」

エルマのつぶやきが聞こえます。

「さて今日はもう遅いし、お開きにするー？」

ステイシーのその聲を聞いて時間を見ます。

食べに來た時間がそもそも遅かったですが、すでに10時を回っています。

ゲーマーとしてはこれからというじですが、疲労故かし眠くなってきたのでその意見に賛同します。

「あたしはもうちょっとお買いしてから落ちるよー」

「マオ、は読み終わったら、寢るわ」

「ワタシも落ちようかな。日付変更のし前からログインできるならあと24時間程度だからね。早めに寢て、時間までには仕事終わらせないといけないからね」

「じゃぁー、解散ー」

「またね」

「またね！」

「また、ね」

「また會おう。今度はもう一つの現実で」

そう言って今日はお開きになったので私は＜窓辺の紫花＞のホームへと帰り、ログアウトしました。

現実に戻ってきた私は、ＶＲゲームで食事をとったあとすぐに現実に戻ってくるとよくじることがある、お腹いっぱいなのに食べたいという謎の覚に見舞われ、自調理機を作し、食事を用意しました。

そして、大型のテレビに畫サイトを映し、好きな配信者の畫を見つつ、もぐもぐと食べます。ついでにお風呂にもろうと思い、音聲作でお湯を溜めます。

慣れてしまった自調理機の食事を食べきるころには、風呂のお湯がたまり、すぐにれるようになります。

パジャマというう裝甲をパージし、全になった私はお風呂にり、神的な疲労を風呂のお湯に溶かします。

明日の夜にはみんなで遊べますね。

今日はワクワクでなかなか寢付けないかもしれません。

お風呂から上がり、髪を乾かし、洗濯機に放り込んで乾燥まで済ませたパジャマを再び著て火照ったをベッドに寢ころびながら冷まします。

ワクワクで寢付けないだろうと頭のどこかで思ってはいても、抗えない睡魔がやって來て私はすぐに夢の中へと落ちていきました。

to be continued...