《VRゲームでもはかしたくない。》第4章12幕 巫<shrine maiden>
私は午前9時という、私にとっては、早朝に等しい時間に目を覚まします。
なんか面白い夢を見ていた気がするんですが、どうも思い出せません。よくありますよね。こういうこと。
サツキはよく、「夢で見た容は全てワタシの小説の糧になっているからね。忘れないうちに絶対メモをしているよ。慣れてくると寢たままでもメモをかけるようになるさ」と言っていますが、起きた瞬間忘れてしまうのでどうしようも無いと思います。
自調理機の食事にも飽きていたのでたまには食パンもいいですね。
そう思い、冷凍庫にっていた食パンをオーブントースターで焼き始めます。
パンにどっさりバターを塗って食べるのが私は好きです。
両面を軽く焼き、片面にバターをドサッと載せます。そして再びオーブントースターの扉を閉め、バターが溶けて、パンにしみていく様子を眺めます。
うーん。おいしそう。
こんがりと焼き上がったパンをお皿に乗せ、バターを塗るように出しておいたスプーンで塗り広げます。
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そして溫まったスプーンでさらにバターを取り、追加で乗せます。
技二度塗りです。
こうすることで溶けたバターとまだ溶け切っていないバターをダブルで味わうことができ、二倍おいしいと私は考えています。
數分かけ、バターたっぶりの食パンを胃に収め、満足したところで<Imperial Of Egg>にログインしようと思い、部屋へ戻ると攜帯端末に著信がっていることに気が付きました。
エルマからの電話のようなので折り返し電話をします。
『もしもし? どうしたの?』
『チェリー。おはよーん。意外と早いお目覚めだね』
『うん。早く起きれたから』
『そっか。<Imperial Of Egg>の中でもよかったんだけどちょっとこのファイル見てー。パソコンの方に転送するねー』
『わかった』
エルマが何かしらのファイルをパソコンに送ってきました。
私はそれを開き容を読みます。
『これどういうこと?』
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『『ファイサル』消滅事件の主犯プレイヤーに対し、國家間での捜査協力を申請ってかいてあるじゃん』
『ごめん。怒る相手を間違えた。私しばらく『ヴァンヘイデン』に近寄らないほうがいいかな?』
『だろうね。でもよく容を見てみて』
そう言われて再び容を味します。
そこに書かれていたのは正不明のプレイヤーとあり、『ヴァンヘイデン』の重役達がばらしたとは思えない容でした。
『ヴァンヘイデン』からリークされたのだとしたら私の名前や、お店が乗っているはずですもんね。
『なるほどね。ってことは『ヴァンヘイデン』から報がれたわけじゃないんだ』
『たぶんねー』
『んー。とりあえずステイシーとも話したいしログインするね』
『あたしもログインしよーっと』
『じゃぁ中で』
『あいよー』
そう言ってエルマとの通話を切り、ベッドにピョーンと飛び乗り、専用端末を裝著します。
『海上都市 ブラルタ』の食事処からほど近い宿にログインしました。
同じ宿にステイシーもエルマも貓姫も泊まっているので、一階の酒場にいれば誰かには會えそうですね。
そう考えた私は、一階まで下り、酒場のカウンターの端に陣取ります。
「ビールください」
まぁこの後多の話し合いはすると言ってもこのくらいなら大丈夫でしょう。と出てきたビールをグビグビ飲みます。
「あー! 晝間からお酒飲んでる!」
そう後ろから聞こえてきた聲の主であるエルマにも一杯勧めます。
「エルマも一杯どう?」
「あたしは遠慮しておこうかな。酔ったら大変」
「そっか。とりあえず座りなよ」
「そだねー」
隣の椅子を引き、エルマに座らせます。
「あの事件の責任はチェリーに無いと思うよ」
「そりゃそうだよ。こっちだってめんどくさいのに國の依頼だからって引きけてあげたのに」
「ねー。もうちょっとしたらステイシーのお店いこ。≪憑依≫を解けるプレイヤーが見つかったから先にお店に行っててもらってる」
「わかった」
殘ったビールを胃に流し込み、お會計を機の上に置き立ち上がります。
「あたしなにも飲んでないんだけど」
「マスター。ミルク、持ち帰りで」
追加で料金を支払い牛瓶にったミルクをけ取り、それをエルマに渡します。
「ジュースがよかったんだけど」
そのエルマのつぶやきは聞かなかったことにして、お互い≪テレポート≫でステイシーの見せに向かいます。
「おまたせ」
「おまたせー!」
「おはよー。で≪憑依≫を解けるプレイヤーさんはー?」
「案所にいるらしいから迎えに行ってくる」
そう言ってエルマは再びテレポートしていきました。
「ステイシーさっき、エルマから聞いたんだけど」
「あぁー。調査何とかの件でしょー?」
「そうそう」
「僕がログインしてすぐにハリリンから連絡がきたんだよー」
「なんて?」
「『國としてはチェリーに狙われる事態は防ぎたいはずっす。確実にかばってくれるっすから大丈夫っす』だってー」
「そうかなー? 信用できない」
「僕も信用できないさー。でも確かに一理あるとは思うよー」
「そっか。それよりも≪憑依≫が解けるプレイヤーが見つかったのは良かったね」
「うんー。それでしは進展するといいんだけどー」
「だねー」
十分ほど経つとエルマが一人のプレイヤーを連れてやってきました。
「おまたせー。こちら【巫】の凜りんどう楓かえでさん」
「お初にございます。楓と申します」
「初めまして」
「初めましてー」
「では≪祓い≫をけたい方はどこに居りますか?」
「こっちだよー。ついてきてー」
ステイシーが先頭に立ち楓を案します。
「この人だけどー」
「拝見します」
そう言ってダーロンに近寄り、々とみているようですね。
「どなたか【醫師】の【稱號】を持っていませんか?」
「あっ!」
そうでした。【醫師】の【稱號】で報を覗けばよかったんです。そこに気付かないとは迂闊でした。
「私一応【醫師】の【稱號】を持っているのでし診てみますね」
「お願い致します」
「≪スキャン≫」
スキルを発しダーロンの報を読み取っていきます。
「!?」
【醫師】系のスキルで覗くと≪憑依≫の他に何種類も投薬がされていたことがわかりました。
理を奪う薬、筋力を増強させる薬など様々です。
「……複數の投薬の痕跡がある」
「そうでしたか。私の目で視えるに々絡みついていましたので」
「≪憑依≫の解除はできそうですか?」
「ええ。そちらは問題なく行えます。それで元通りかどうかはわかりません」
「おねがいできるかなー?」
「かしこまりました。では……」
そう言って楓はインベントリから幣と神楽鈴を取り出します。
「失禮します」
神楽鈴を手に持ち、踴り始めます。
ここが地下にあるダンジョンだということを忘れさせるほど幻想的な舞で、鈴の音に私達の意識は支配されます。
「≪神楽舞〔神楽殿〕≫」
そう唱える楓の聲が辺りの空気を一変させます。
私達は呼吸を忘れ彼の事だけを見続けていました。
すると神楽鈴を置き、幣を手にもち、大祓詞を唱え始めます。
「≪祓い≫」
カッと空間全がり、ダーロンのから何かが飛び出します。
「出ました。あちらが彼に≪憑依≫していたものです」
その言葉を聞き、私は、報を見ようとします。
「〔猛虎猿 バーグバンダー〕」
そう楓がいうと、突然いた〔猛虎猿 バーグバンダー〕によって吹き飛ばされました。
エルマが彼をけ止め、私とステイシーは戦闘態勢を取ります。
「うっ……」
「しっかりして!」
後ろからエルマの聲が聞こえてきます。
とりあえずこの霊モンスターを倒さないといけないようですね。
「ごめんチェリー。聖屬魔法は中級どまりだー」
「私も上級どまり、どこまでできるかわからないけどやるしかない! ≪セイクリッド・スピア≫」
「≪セイクリッド・スピア≫」
2人の≪セイクリッド・スピア≫が〔猛虎猿 バーグバンダー〕に刺さります。
音はしないですが苦悶の聲をあげているんだろうなということは理解できたので追撃します。
「≪セイクリッド……」
「≪セイクリッド・スピア≫」
私は拳銃のような形に握った拳の指先へ魔力を集中させます。
「……エクステンド・ライン≫」
ステイシーによる二度目の≪セイクリッド・スピア≫で完全にきを止めた〔猛虎猿 バーグバンダー〕に対して、私の魔法が直撃します。
青白くる一本の線が、〔猛虎猿 バーグバンダー〕の霊を包み込み消滅させます。
「よし。倒せたみたいだね」
「そうだねー。≪エクステンド≫が使えるようになったんだー」
「この前、スキル一覧を見たら追加されてた。でも消耗がひどい」
≪エクステンド≫は魔法の威力や範囲、屬値を上昇させますが、その分消費するMPが多くなっています。
「一度≪エクステンド≫使うとしばらくその屬全部使えなくなっちゃうからよく考えてつかってねー」
「えっ? そうなの?」
「説明にもかいてあるよー」
「知らなかった……」
「知らないことはやらないほうがいいとおもうけどなー」
「だって……一発で消したらかっこいいじゃん」
「その前に三発魔法當ててるんだけどね」
「ぐぅ……」
〔猛虎猿 バーグバンダー〕を倒したのでエルマとその橫に座っている楓のところに來ます。
「≪ヒール≫」
発しませんね……。
「≪ヒール≫。これも聖屬なんだからあたりまえでしょー」
なるほど。使いどころ選ばないと死にますね。しばらく≪エクステンド≫は封印しておきましょう。
「倒せたのですね。では私は、これで失禮します」
「ありがとう。ごめんね怪我させちゃって」
「治していただいたので大丈夫です。では報酬もいただいていますし、失禮します」
そう言って階段を上っていきました。
「さて、ダーロンが目を覚まさないのはなんでだろうー?」
「それは私の≪スリープ≫が意外と長持ちしてるからだよ」
「そっかー。≪キュア≫」
何かが≪憑依≫している狀態では使えなかった回復魔法をステイシーが発します。
「≪スキャン≫」
そして再び、報を確認すると、投薬の効果であろうものはほとんど消え、殘っているのは≪理喪失≫と≪呪印≫だけになっていました。
「うっ……うっ……」
あっ目を冷ましたようですね。
「ダーロン。私を覚えていますか?」
「……チェリー嬢、か?」
「そうです。どうしてここにいるのか覚えていますか?」
「……ここ? どこに……いるんだ?」
なるほど。≪憑依≫中は記憶なくなってしまうんですかね。プレイヤーは忘れないはずですけど。
「思い出せる記憶で一番新しいものは何ですか?」
「……先日、悪漢共が、城に侵してきた時のことだ」
し水を飲ませると、落ち著いたようで、呼吸も穏やかになってきます。
「そのあとはどうしたんですか?」
「侵された事を咎められ、獨房に數日ることになった。覚えているのはそこまでだ」
ということはあの出來事が終息した後に獨房にいるダーロンを変化させたというわけですね。恐らく食事に薬を持って抵抗させないようにしたんでしょう。
一だれがそんな非道なことを。
「ところで今何日だ?」
「いま30日ですが」
「なに! 俺の懲罰期間が終わるではないか、すぐに帰らねば!」
そう言って立ち上がるダーロンをエルマが『ヴァンヘイデン』まで送ってくれるそうです。
私もステイシーもし行きたくないところだったので安心しま……せん!
エルマ獄してるじゃないですか!
そんな人が行っていいわけないです!
そう気づいた私がエルマを引き留め、姿を変化させるアクセサリーを裝備し発します。
「≪発≫」
姿形をジュンヤに似せます。
これならうろついてても多は大丈夫でしょう。
そして≪ワープ・ゲート≫を発し、ダーロンとともに『ヴァンヘイデン』へ降り立ちます。
「ということでほとぼりが冷めるまで國外逃亡することにしました」
「そうだったのか。すまん」
「いいですよ。じゃぁもうしでお城なので失禮します」
「ちょっとまってくれ。俺がその化けみたいになってたのは本當なのか?」
「もちろんです。大暴れしているあなたを止めたのも、治療できる人間を探したのも私達です」
売れる恩は売っておきましょう。
「そうか。迷をかけたな」
「いえ。では」
≪テレポート≫でステイシーの店へ戻り、変裝を解きます。
「おつかれー」
「おつかれ!」
「ただいま……今夜せっかくサツキと遊べるのに、疲れちゃった……」
「わかるー」
「わかる」
「ちょっと飲みいこ。お晝のついでに」
「いこっか」
「いこー」
同意が取れたので一番近場でお酒が飲める食事処へ向かって歩きだしました。
to be continued...
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