《VRゲームでもはかしたくない。》第4章21幕 謎果<mystery fruits>
「『アクアンティア』行きの馬車に乗りたいんだが」
サツキが馬車乗り場で人に尋ねます。
私は本を読みながら歩く、貓姫の肩を摑み、人にぶつからないように導していたのでサツキが渉役になっています。まぁそうでなくてもサツキがいるときはたいてい全部任せちゃうんですけどね。
「あぁ。そこの一番端に看板があるだろう? あそこから日に數本程度だが出ている。今日は……あと數分もしたらくるんじゃないか?」
「教えてくれてありがとう。では君もよい旅路を」
そう會話していたサツキが戻ってきます。
「聞こえていたと思うがもう一度言っておこう。あの向こう側の看板のところに停まるそうだよ。さぁいこう」
「ふぁーい」
どこで買ったのかわからない謎の果をマズイマズイ言いながら食べているエルマが代表して返事をし、そちらに向かいます。
「うん。時刻的にはもう來る頃合だね」
「そうだね」
すると馬が地を蹴る音が響いてきます。
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「あっ。あれかな?」
「たぶん、そうだろうね」
私達の目の前に停まった馬車の者臺から者が降りてきます。
「『水の湖 アクアンティア』行き」
「すまない。5人は乗れるだろうか?」
「もちろん。ほかに乗る人はいない?」
辺りをきょろきょろ見回しながらそう聲を張ります。
「いない。じゃぁ行こう。乗って」
そう言って者は者臺にぴょんと飛び乗ります。
言われたように私達も馬車に乗り込みます。
こちらを振り向いた者が全員のったのを確認すると馬を走らせました。
「『アクアンティア』までの間いくつか小さい集落を通る。荷を回収したり降ろしたりする。でも今日はない。私はレタス」
あっ野菜の名前。
「私達は観にやってきた外の者だよ。普段から荷は多いのかい?」
「うん。人よりも荷を運ぶ場所だから」
「そうなんだね」
馬車が『霊都市 エレスティアナ』を出てから十數分経つと、看板が見えてきました。
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「乗る人はいないけど荷降ろすから」
そう言ってレタスは用に馬車を手繰り、看板のし前で停まらせます。
「ちょっとまってて」
ぴょんと者臺から降りたレタスは馬車の部にあった荷を引き摺り出します。
「よ……っしょ。おいてくるね」
「待ってくれ。君一人でその量は大変だろう。ワタシにも手伝わせてくれないか?」
「いいの?」
「構わないさ。よっ……じゃぁ行こうか。どこに運ぶんだい?」
「その林を超えたところにある集落。小さいから必需品は馬車がついでに運ぶ」
「そうだったんだね。毎日……」
そう會話しながら見えなくなっていくサツキが戻って來るまで暇なので殘ったみんなの方を見てみます。
ステイシーは鼻から提燈を作ってスピスピ寢ていますね。エルマは謎果を分析しているようです。貓姫は変わらず読書ですね。うーん。やることがない。し霊の勉強でもしておきましょうか。
「エルマ」
「ふぉん?」
口に突っ込んでいた謎果をきゅぽんと音を立て取り出します。
「霊魔法と通常の魔法の違いがイマイチ理解できないんだけど」
「これなんでなくならないんだろう? それは簡単な用で難しいけど、聞く?」
「聞いておく」
「魔法は魔法。MPを消費して形どった魔法を放つ」
「うん」
「魔法のには神話級、絶級、上級、中級、初級魔法屬のスキルが付いたが必要だよね」
「そうだね」
「霊魔法は発される魔法にランクがないよ。でも霊にランクがある」
「ん?」
「あー。魔法で言う杖とかブックとかのが霊魔法の霊なんだよ」
「なるほど」
「より高位の霊を出しておけばより威力、持続力に優れる魔法が使えるってわけ。んじゃぁし実演してあげよう」
すこし得意げなエルマの実演を見ましょう。
「≪召喚〔アクア・エレメント〕≫」
水霊を召喚したようですね。
「まず初級魔法の≪アクア・ボール≫を使うね。≪アクア・ボール≫」
馬車の窓からエルマは腕を突き出して、手のひらから水の珠を地面に向かって放ちます。
バシャァという音を立て、魔法が崩壊します。地面にはった痕が殘る程度でした。
「じゃぁ次は霊魔法で同じことやるよ。≪アクア・ボール≫」
パンという軽い破裂音の後、地面がしへこんでいました。
「なるほどね。普通の魔法みたいな初級とかのくくりがないから、高位の霊になればなるほど同じ魔法でも威力が出るわけか」
「そういうこと」
「敵ー?」
鼻提燈を割ったステイシーが起きてきょろきょろしだします。
「んにゃ。チェリーに魔法と霊魔法の違いをレクチャーしてただけ」
「そっかー。僕はもうひと眠りするよー」
「おやすみ」
「どっちにもメリット、デメリットがあるんだけどね。魔法のメリットは消費が軽いこと、デメリットはの數に制限があること、っていっても【稱號】で使える魔法もあるから微妙なところ。霊魔法のデメリットは霊と契約して、召喚、維持をしなきゃいけないから手間と消費が多い。メリットは威力が出るっていうのと両手に武を裝備できる。だから私は霊魔法派なのだ!」
「よくわかった」
「実はもう一つ霊魔法にはメリットがあってね」
「なになに?」
私がし食いつくと、ニンマリと顔を笑顔に変化させ、エルマは言いました。
「魔法でできない細かいことができる。例えば……」
エルマが召喚した水霊がステイシーの鼻提燈にピトっとれます。そして、鼻提燈を二回りほど大きくしました。
「なるほど。魔法にはないものでも霊に指示すればできるのか」
「そゆことー。チェリーも霊魔法覚えるといいよ」
「そうだね。近接戦闘しなきゃいけない時も出てくるだろうし、覚えておいて損はないかな。折角『エレスティアナ』に來たんだし、ちゃんとした霊と契約しておくものいいかな」
なんちゃって霊魔法なら仕えるのですが、ちゃんと契約しておかないとここまで細かい扱いはできないでしょう。いまの私にできることはせいぜいブラフ程度の偽霊を浮かばせておくくらいです。
エルマとその後暇すぎたので無くならない謎果の話をしていると、サツキとレタスが帰ってきました。
「いや。すまない。またせたね」
「大丈夫!」
「今日の荷は屆け終わった。いま回収してきた荷を『アクアンティア』に屆けるだけ。あと1時間もしないうちにつく」
そういったレタスがぴょんと者臺に乗り、馬を再び走らせました。
「ワタシがいない間何をしてたんだい?」
「エルマに霊魔法を聞いてた。あといまエルマがしゃぶってる謎果について考察してたよ」
「霊魔法は興味ないから後回しでいいかな。【霊王】があるしね。ところでその果さっきから微塵も減ってないようにみえるけれど?」
「なんか無くならないらしい」
「……どういうことなんだろうね。一口いいかい?」
「たべてみ」
シャクっと音を立て、サツキがその果を食べます。
「ん? ワタシはいま、間違いなくその果を食べた。どういうことだろう。歯形すら付かないとは」
「ね。不思議でしょ?」
「確かに食べた。飲みこんだもある。なかなか脳が理解できないね」
「それは〔ミラージュ・フルーツ〕。食べても食べてもなくならない不思議な果。でも切ってから2時間くらいで溶けてなくなる」
者臺の上からこちらを振り向かずにレタスが教えてくれます。
「へー」
そう言ってまたエルマがしゃくしゃく食べます。時間で無くなる食べとか面白いですね。
「決めた!」
ごくんと飲みこみ、エルマが宣言します。
「あたしこれをバイキングバーと名付ける!」
「はっ?」
「ん?」
「時間で終わりならバイキングだし、これ棒だから」
「……まぁ、好きなように呼んでいいんじゃないかな?」
1時間ほど経つと、『水の湖 アクアンティア』が見えてきました。
「もうすぐ、著く」
「わかりました。ステイシー起きて。マオも降りる間危険だからしだけ本閉じて」
「おはよー」
「……しかた、ない、わ」
「では5名様で5000金」
「釣りは取っておいてくれ」
そう言ってサツキが1萬金を渡しました」
「いいの?」
「無論だ。頑張ったものには正當な報酬があって然るべきだ」
そう言ってウインクしていました。
「『アクアンティア』なかなかきれいな場所だね。ジュネーブを思い出すよ」
まぁそうでしょうね。多分ここはレマン湖をモチーフに作った場所だと思われますし。
「サツキ行ったことあるの?」
「ん? ないよ。VRの旅行ゲームで満喫したのさ」
「お、おう」
VRの旅行ゲームですか。今度大型メンテナンスとか長期間のペナルティーとかで數日ログインできないときにでもやってみますか。
「さて、早速お目當てのお店が見えてきたようだよ」
確かに看板がでかでかとネオンでっていますね。
景観ぶち壊しだよ。
そうして目が痛くなるほどのを撒き散らす建に歩いて行った私達は、扉を開けます。
「うぇるかむ」
「お邪魔します」
皆口々にそう言い、店へとります。
「このふろあにおいてあるのはぜんぶおかざりのごみあーむずね。にかいはけっこういいものあるよ。くわしくはりっすんとぅーみー?」
なんで疑問形。
「すまない魔銃を探しているんだが、何かいいものがあれば教えてくれないか。なければオーダーでもいいのだが」
「まじゅうね。んとんと、さんふろあにちょっとあるけど、ゆーがつかうにはちょーっとすぺっくぶそくね」
「ワタシの能力が足りないということかな?」
「のーのー。あーむずのすぺっくよ。ゆーはおーだーするべしね」
「では一度見させてもらってからオーダーするとしよう。ということだ皆、ワタシは上の階に向かうよ」
「うん」
返事をしたのは私だけで他の三人はすでに自分の使っている武の棚を食いるように見ていました。
「おー。そのすてっきは、いいすてっきよ。えれめんとがいんしてるね」
「芯に霊がってるの?」
「いえすいえす。うぉーたーえれめんとね」
「そのあーむずは、とくしゅなあーむずよ。でもゆーはもっと、いいものもってるね。おーだーでうぃんどえれめんとをえんちゃんとできるよ」
「ほん、と!?」
「いえすいえす。いちじかんもかからず、ふぃにっしゅよ。にたこんせぷとで、もうひとつめいくするよ」
そういった後、こちらに視線を移してきます。
「そこにたってるゆーは、おーだーじゃないとだめね。つくりおきのあーむずじゃいみがのーよ」
「そうですか。ではオーダーします」
獨特なしゃべり方ですが、武職人としては超一流でしょうね。
相手の力を見抜くことも自然にできていますし、何より、霊を芯にしたり、一度制作された武に霊を付與できるという実力があるのはすごいです。これは面白い武ができるかもしれませんね。
「どんなのがらいく?」
「私は近接と遠距離で基本的に武を変更しているので、近接武で使えるように闇屬辺りで付與されてるなにかあれば」
「そーね。うぇすとにつけてるそのそーどに、えれめんとをえんちゃんとしたいね。でも、ぱーふぇくとだからもうのーね。きゃないはぶゆあくろーすれんじあーむず」
最後だけ本當に英語っぽい。
「これです」
「いえすいえす。このふたつにさんだーとだーくのえれめんとをえんちゃんとするね」
「ではそれでおねがいします」
「いちじかんかからずに、ふぃにっしゅよ」
そして最後にエルマの方を見て言います。
「ゆー、えれめんとにらぶされてるね。さっきあっぷしたゆーより、もあ」
「サツキより?」
「ゆーにまっちなあーむずはのーだけど、ひとことあどばいすね」
そしてエルマに耳打ちしていました。
「えっ?」
「おそれずにとらいとらいよ。それでいいことぱっぷん」
降りてきたサツキは赤いブーツと赤いベルトを持っていました。
「いや。防としても一級品だが、なにせデザインがいい。ワタシの心をくすぐるね」
まぁ。14歳くらいの年が好きそうなデザインですもんね。
エルマも気にった防が上の階で見つかったらしく、持ってきていました。
ステイシーも霊が芯に使われた杖が面白かったようで購することにしたそうです。
「じゃふぁーすとおかいけいね」
各々自分が買ったもの、注文したものの代金を支払います。
「ねくすと、ゆーと、ゆー。れんどみーあーむず」
私と貓姫は武を渡します。
「いえすいえす。そちらのゆーはまじゅうね。すぐめいくするよ」
「お願いしよう。屬は何でも構わない。スキル數が多ければいい」
「あんだすたん。じゃあぜんぶあわせてさんじかんうぇいとねー」
そう言って裏へ消えていきました。
お店を一度出た私達は辺りを探検しつつ3時間後を待つことにします。
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