《VRゲームでもかしたくない。》第5章47幕 夢癒神<dream healing of God>

「おらっ!」

はサツキの前まで直進し、持ち上げた右手の斧を頭めがけて振り下ろします。

「おっと」

サツキが左手の魔銃を頭の上に掲げ、斧を止めます。

「なっ……」

直後サツキの左手から鮮が吹き出し、魔銃を地面に落としてしまいました。

「防ぐと思ったぜ。まずは武を持てねぇ様にしないとな!」

防ぐという行を選択した場合は次に防げない様に武を持てなくする。

防がないという行を選択した場合は一撃必殺。

どう転んでも手傷を負わせるスタイルのようですね。

「殘念だが、右手でもう一回防げるね。それに、こちらはチームなのでね」

「≪オーヴァー・キュ……くっそ!」

私がサツキの指を生やそうと聖屬魔法を発しようとすると、不が左手の斧をこちらに投げてきました。

とっさのことでスキル宣言を中斷し、回避してしまいました。

「一対多の戦いはまぁ慣れてるんだよ。本來なら、一番最初に潰すのは一番奧のだが、魔導師にしては、AGIがあるな。マルチか、コンバートか」

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聞いていた人像よりも冷靜に狀況を分析するようでした。

「どちらでも正解です。コンバートでもありますし、マルチでもあります」

「そうか。後回しだな。俺が自己紹介したんだ。お前らもしてくんねぇか?」

は投げたはずの斧を再び左手に握り、右手の斧をいつでもサツキに當てられる距離で立ち止まります。

「私は空蟬」

「チェリーです」

「ん? どっちも聞いたことある名前だな。あぁ。<紅翡翠べにびすい>と<超越師>か。んでお前は?」

「サツキだ」

「サツキ? すまねぇが知らねぇな。所屬はどこだ?」

「『科學都市 サイエンシア』」

「リストには……あるな。<後攻王こうこうじょおう>か。改めて俺も二つ名を告げようか」

そう言った不は息を吸い込み、ニタリと笑いました。

「<上食無雙かみじきむそう>、不彰。格上を狩りまくってたら呼ばれるようになった二つ名だ。たぶん悪人の中でも3番目には強えぜ」

誰かが唾を飲みこむ音がして、次の瞬間、不は私に向かって走り出しました。

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「≪マテリアル・シールド≫。私は後回しじゃなかったんですか?」

「わりいな。ありゃ噓だ。誰を殘したらまずいかはすぐわかる」

「本當に?」

私が理障壁を展開しながら言います。

「あ?」

「本當に、そうでしょうか。私を最後にした方が正解だったと思いますよ」

「うらっ! みえてんぞ!」

私の聲が屆いたかどうか分かりませんが、不は背後に向かって左手の斧を投擲していました。

斧は回転を増し、サツキに近寄っていた、空蟬の背中に突き刺さります。

「ほらな?」

し自慢そうな顔をした不でしたが、私はそんな不の顔を見る事ができませんでした。

に言うと、私の本は、見ることができませんでした。

「あん? いま何かしたか?」

「いえ。何もしていませんが」

「そうか。かてぇ障壁だな。スキルを使うしかねぇか。耐えろよ? ≪グラビアル・アックス≫」

がスキルを発すると數枚設置しておいた理障壁の大半が壊れ、その勢いのまま、私の頭に迫ります。

ですが、途中で斧の軌道が変わらないと予想していた私はを右にずらし、躱します。

「賭けか?」

「いえ。その威力は直線の攻撃でしか出ないでしょう」

「いい目だな。元【暗殺者】ってだけはあるな」

「そろそろ降參してくれませんか?」

私はそう言って指をサツキと空蟬の方へ向けます。

「なんだと?」

一瞬振り向いたことで不の視野から外れた事でやっと本が帰ってこれますね。

では分の私の役目はここまでです。

MPになって霧散しましょう。

「≪オーヴァー・キュア≫」

「助かる。どうやったんだ?」

「簡単。私を殺す夢を見せただけ。その思考の隙間でチェリーが抜け殻を置いて治療に來たってわけ」

サツキの質問に空蟬が答えます。

「そういうこと、いつまでも分でいたらいざという時の切り札が無くなるから戻るね。≪シフト≫」

そう言い殘し、私は分と場所を換し、理障壁の後ろに戻ります。

「どういうことだ?」

「何がですか?」

「なぜ死んでいない? なぜ治療されている?」

「さて? どこかに通りすがりの<超越師>でもいたんじゃないでしょうか」

私がそう挑発すると、不がふっ、と笑いました。

「そう言うことかよ。なるほどな。お前を最初に殺す方が厄介だな」

気付いたようですが、もうすでに遅いですね。

サツキの治療は終わりましたし、空蟬もサムズアップしていますし、チャージ時間が終わった様です。

「では第三ラウンドと行きましょうか」

「サツキ。準備はいい?」

「勿論だ。いつでも行ける」

「私が<紅翡翠>と呼ばれた意味を見せてあげる。≪忍・快傀儡の≫」

そう不の後方から聞こえ、サツキが背に糸のようなものを付け、不に迫ります。

「≪銃拳衝≫」

サツキがスキルを発しながら不の背に毆りかかります。

「あぶねぇ」

そう言って橫に飛んだ不に、サツキがき一つせずに方向転換し、スキルを直撃させます。

「がっ!」

が二度三度、地面を跳ね、転がって行きました。

「いてぇ……めちゃくちゃいてぇ……」

がぶつぶつ言いながら立ち上がります。

「これでも倒せないのか。VITとSTRの両極か?」

先ほどの不可解なきの理由は後で聞くとして、サツキの言っていることには私も同意です。

かなりHPが多いようですね。

「だが仕掛けは分かったぞ。お前、最初に倒すわ」

「次は幻覚じゃないといいね」

空蟬がそう言うと、不の斧が空蟬を二つの塊へと変させました。

しかし、空蟬はとことことこちらに歩いてきます。どこも損傷しておらず、HPも最大の様でした。

「どういうこと?」

「それは後で説明する。くるよ」

空蟬がそう言うと、すぐに振り返った不がこちらに走ってきます。

「どういうことだ!? デスペナの蘇生は外じゃねぇのか!?」

左手の斧を私に投擲し、右手の斧でサツキを両斷しようとします。

「≪衝回転≫」

「≪マテリアル・シールド≫」

サツキは逆手に持った魔銃で斧をいなし、私は理障壁で斧をけ止めます。

「≪忍・網針もうもうしん≫」

空蟬が髪のほどの針のようなものをたくさん巻から召喚し、そのすべての針が不に刺さり、不は地面に倒れこみました。

「勝ち」

空蟬はそう言ってこちらに両手でサムズアップしました。

≪気絶≫狀態の不の周りに集まってきた私達は、空蟬に聞きたいことがあったので聞こうとしますが、先に空蟬から話しだします。

「疑問に思うだろうけど、これが私の<紅翡翠>……<喰微睡ばみびすい>の所以」

「ん? <紅翡翠>ではないのか?」

「<喰微睡>誰かが聞き間違えて<紅翡翠>になった。かっこいいから好き」

「確かにかっこいいが、なぜ不は固≪気絶≫したのだ? デスペナではなく」

「それは簡単。私は、人型モンスターと人を倒せない。そういう【稱號】」

「それは難儀な【稱號】だな。差し支えなければ教えてもらえるか?」

「【夢dream癒healing of神God】」

「初めて聞いた【稱號】だ。系統としてはチェリーの【稱號】に似ているな」

「そうだね。たぶん同系統」

「チェリーも神系【稱號】もってるの?」

「一応【斬罪神】を」

「凄いね。とまぁ。この【稱號】は裝備中人を倒せない。そして倒されない」

「便利と言えるのかな?」

どうでしょうか。人を倒せないのは結構なデメリットになりますよ。

「私が一度倒されると、ダメージ量で敵に夢を見せる。そして私が倒した場合は眠りに落ちる。でもHPは回復する」

「えっ?」

私は驚き、≪気絶≫狀態の不のHPを確認します。

最大ですね。

「確認できた? 不便な【稱號】」

「実際に見てみると不便かもしれないね」

「とりあえずこいつを倒して」

「分かった」

私が答え、腰の【神 チャンドラハース】で不の首元をピトッとります。

するとデスペナルティー特有の演出に包まれ、不は消えていきました。

「本當にその武再生するんだね」

サツキには何度も言っていましたが、実際再生した瞬間を見たのは始めてだったのでそういう想が出たのだと思います。

サツキは先ほど壊された時の様子を見ているので。

「とりあえず、あと一人かな?」

「相的な問題で不はそんなに大変じゃなかったけど、もう一人はわからないからね」

「うん。とりあえずその前に、避難したNPCを追いたいんだけど、いいかな?」

私がそう言うと、二人とも頷いてくれました。

「そう言えばあのサツキの妙なきはなんだったの?」

私がそう空蟬に聞くと空蟬は、糸を取り出しながら答えました。

「糸で結んで橫に振っただけ」

原始的ですね。

to be continued...

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