《VRゲームでもはかしたくない。》第5章52幕 半<half the body>
「こちらは満創痍です。ちゃんとしたお話がされると思っても良いのですか?」
私はこちらの被害も大きかったことを暗に伝えます。
「労働には対価を払うものです。では何が聞きたいのですか」
「ちょっとまってよ。一回ここを出ない?」
マンチカンがそう言い、出口らしき方を指さします。
不彰はちゃんと出口作っていたんですね。最も自分が逃げるための道だったのだと思いますが。
「そうだね。區長さんもそれでいいですか?」
「はい」
サツキとエルマの容も気になっていたので、宿屋に區長を連れて來ました。
「サツキ、エルマ、るね」
「どうぞ」
サツキとエルマの聲ではなく、看病役として殘してきたマオからの応えがあります。
扉を開け部屋にると、先ほどよりも顔が回復し、呼吸も落ち著いたのか、あやとりで遊ぶ二人の姿が目にり、安堵します。
「やぁ。かなり良くなったよ。もうけそうだ」
「あたしも」
ベッドからを起こし、二人が上半をこちらに向けます。
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「サツキ、區長さんがなんでも答えてくれるって」
「そうか。ではご老人、話の続きをさせてもらおう」
「はい」
「なぜ〔龍の恵〕が使えない?」
「〔龍の恵〕は今はまだ使える狀態にない、ということです」
「どういう狀態になったら使えるんだ?」
「それを聞いてどうするおつもりで?」
「奴らはまた來るが?」
「その前に使えるかもしれない人にわたせ、そう言うことですか?」
「概ね間違っていない」
「お斷りします」
「なぜだ?」
「それは私が、私たる所以。私こそが【龍神 ドラグジェル】の言葉を告げる使者にあり、半であるからです」
「えっ?」
私の口かられ出た息か聲かわからない音は、この場にいた全員の心を表していたと思います。
「この都市を、この『龍恵都市 ドラグニア』を外敵から守護するためです。そのためなら私は……」
「守護するためにすら使おうとしていなかったではないか。それに都市の民を守る気が無いと言っていた。ワタシはそう聞いていたが?」
「そう……ですね。もう、私は疲れました」
區長はそう言って、手に持つ杖をり始めます。
『【龍神 ドラグジェル】 我ガ半ヨ 呼ビカケニ応ジ 我ガ元ヘト 顕現セヨ』
突然白くり出した區長は持っていた杖を砕きながら、祝詞を唱えました。
「久々に、一つと相りましょう」
そう言った區長の手に握られた、不気味にな瞳が、クルリとあたりを見回し、浮き上がります。
そして、その目が區長の開いていなかった右目に収まります。
次の瞬間、宿屋が壊れるのではないかと思うほどの地震が起こり、椅子に座っていたマオとベッドに座っていたエルマとステイシーを除いた全員がもちを搗きました。
『久シイナ 我ガ半ヨ』
「お久しぶりにございます。たる、私のを供に」
『久々ニ宿ルカ』
座ったまま、區長と【龍神 ドラグジェル】の會話を聞いていると、【龍神 ドラグジェル】が急にの粒になり、區長の右目部分に収まった〔龍の恵〕へと吸い込まれていきます。
ピカッと反的に目を覆ってしまうほどのが発生し、その直後、私達の前に鈍で沢を帯びた翼を持ち、頭部から二本の角を生やす、若返った區長が立っていました。
『この姿も久しぶりだな』
得のしれない恐怖をじ、私の背中では汗が一筋流れていきました。
『場所を変えよう。ここでは満足に話もできぬ』
そう言って宿屋の窓をぶち破り、外に飛び出した若返り區長を追いかけるため、ける人で、宿を出ます。
エルマやサツキもなんとかけるようで、し辛そうでしたが追って出てきました。
全員來たみたいですね。
『よいよい。ここなら十分か。して、貴様ら』
「なんだ?」
サツキが最後尾ですが、堂々と答えます。
『我が都市に、我が玩に用か?』
「この都市にも、貴様が玩と呼ぶものに用はないんだがね。〔龍の恵〕を狙っている奴がいる」
『無論知っている。が、それがなんだ?』
「なんだとは?」
『理解が及ばぬか。よいよい。只人に理解できるものではない。我の眼はこの都市の全てである。故にこの都市は安泰である』
またみんなの頭に疑問符が飛びいます。
『……我がいる限り、我が眼、何人たりともれさせん』
疑問符をじ取ったのか、徐々に分かりやすくなっていく様子はし面白かったですが、さすがにこの狀況で笑えるのはエルマくらいでしょう。
「自分が強いから、平気ってこと?」
し笑いを噛みしめたような聲でエルマが言います。
『無論である。して、貴様らを始末するのだが、よいか』
「えっ。お斷りなんだけど」
エルマが素で返しました。
『選択の余地はない。我が縄張りから消え去れ。≪ドラグナード・ハイフレイム・レイン≫』
上空から降り注ぐ、無數の火の雨が目にります。
【龍神 ドラグジェル】は≪神話級火屬魔法≫を容易く発した様です。
すぐさま、回避方法を探しますが、パッと思いつかない、と私が周りを見回すと、ステイシーが障壁を張ろうとしています。
減ったMPで、軽くないデメリットを払ったで、すり減った神で耐えようとします。
ここで私が何もしなかったら仲間じゃない、ですよね。
「「≪ハイドロ・エクステンド・シールド≫」」
私のMPを吸い上げ、ステイシーのMPを吸い上げ、≪エクステンド≫を用いた二人の水屬魔法の數十枚に及ぶこの障壁、≪神話級魔法≫とは言え、抜けると思うなよ!
上空で私とステイシーの障壁が、辛うじて、【龍神 ドラグジェル】の≪神話級火屬魔法≫を防いでいます。
しかし、完全な防戦で全く攻撃を與える隙もないようで、誰一人くことができません。
そしてけない理由がもう一つ。
【龍神 ドラグジェル】が別の≪神話級火屬魔法≫を準備しているのが見え見えだからです。
現在右手を上空にかざしながら、極悪な火の雨を降らしていますが、開いた左手て、こちらを狙っています。
そしておそらくは、貫通力に特化したものでしょう。
「ここは私がなんとかするよ」
マンチカンが予備ではない、本來の裝備に戻し、そう言いました。
「たしかに、ステイシーの、あの魔法を、弾けたなら、いけるかも!」
吸いつくされそうになるMPと疲弊していく神をの二文字でねじ伏せながらマンチカンに返します。
「死んだら骨は拾ってね。行ってくる」
そう言ってマンチカンは一人走り出しました。
『≪ドラグナード・ハイフレイム・スピンピアス≫』
やはり貫通力に優れた≪神話級火屬魔法≫だった様で、あれだけの火の雨を防いでいた私とステイシーの障壁が一瞬で破壊されます。
「借りるよ」
飛び上がった、マンチカンは、自分に迫る≪ドラグナード・ハイフレイム・スピンピアス≫を右腳で、未だ降り注ぐ火の雨に向かって弾きました。
ガクンと減るマンチカンのHP、そして減り続けるHPから無事ではなかったのだろうと思い、MPポーションを飲んだ直後に聖屬魔法で回復をします。
「≪オーヴァー・キュア≫≪オーヴァー・ヒール≫」
「助かったよ。でも負けだね」
完全に回復させたと思ったマンチカンのは発し、パーティーメンバーの欄から消えたことでデスペナルティーを確信します。
「ごめん、なさい。間に、あわなかった」
マオが完全防スキルで防ごうとしていましたが、最後の一撃の速度が早すぎて、落ち込み始めてしまいました。
「マオのせいじゃない。それよりももう、8人しかいない。そしてこれは……」
「〔ユニークモンスター〕それも複隊討伐型の」
私のセリフに続き空蟬が言います。
「それを超えてると思うけどね」
エルマの聲に、多の震えがじられました。
to be continued...
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