《VRゲームでもはかしたくない。》第5章54幕 油斷<negligence>
『あれはもう何年前だろうか』
先ほどとは異なり、思念のようなもので語り始めます。
カタコトだと聞きづらいですからね。配慮でしょうか。
『我には友人、そうだな、友人と呼べる者がいた。名を、【天破真人】マルロマークと言った』
【天破真人】、聞いたことのない【稱號】ですね。
『顔を合わせれば戦い合う、そんな仲だった。ある時、あやつは我にこう言った。「俺は極みに至ったぞ。次はお前の番だ。先に行って待っている」と』
いいですね。ライバルっぽいです。
『我は焦った。同じ程度の力を持つ友人が遙か遠くへ行ってしまうとじてな。だからこそ、力をした。管理者オブザーバーになると決めたのだ』
よくわかりませんね。力がしいから管理者オブザーバーになる?
「どういうこと? 力を手にれるのに管理者オブザーバーって言うのになることがどう関係するの?」
エルマが私の、皆の疑問を代表して言葉を発します。
『それが要素になるからだ。我は知っている。我が〔ユニークモンスター〕であることを。我は知っている。その限界を』
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「〔ユニークモンスター〕には限界があるみたいな言い方だね」
『事実、あるのだ。確かにレベル的な制限はない。しかし、能力の制限はある。力を持つ、只人が倒せる範囲に制限される』
まぁそうですよね。倒せないモンスターなんて出したら荒れますよ。ゲーム。
あれ? でもこの言い方だと……。
『管理者オブザーバー……〔オブザーバーボスモンスター〕にはその制限はない』
〔オブザーバーボスモンスター〕……。
どんどん強いモンスターが増えて行きますね。全のレベルが上がってきているので仕方ありませんが。
『そして我は、管理者オブザーバーになり、ここではない別の世界で、再びあやつと相見えた。結果は我の全全霊の一撃を片手で防がれてしまったのだ』
さっきのあの≪ドラグレア・ブレイズ・カノン≫のことでしょうか。
『それ以來、防がれることはなかったが。懐かしい話をしてしまった』
『土産話ニハ、ナルダロウカ?』
【焔龍真神 ドラグジェル・バールドライド】が思念を解除したのか、先ほどまでのようにカタコトでしゃべり始めます。
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「ええ。貴方が冥土に持っていく最後に話した會話です」
一人全く話を聞いていなかったのかベルガが【焔龍真神 ドラグジェル・バールドライド】に巻き付いた鎖を引きます。
『ヌゥウウ』
何とか浮遊を続けようとしますが、徐々に高度を下げていきます。
『解ケヌゥ』
「解けませんよ。早く降りてきて調教させてください。もう々限界なんです」
恍惚とした表で、舌をチロチロかしているベルガに軽く引き気味なっていると、ベルガの右手に何か握られていることに気が付きます。
「気付きましたか? この通り、供を設置して祭壇を作ってください」
【焔龍真神 ドラグジェル・バールドライド】には聞こえないようにか、上空を見上げ、恍惚とした表を浮かべたまま小聲で伝えてきます。
「わかった」
「なるべく早くお願いしますね。僕のTPが切れたら、この鎖は持ちません」
「うん」
ベルガの右手に握られていた紙をこっそりけ取り、私はステイシー達の元へと走りました。
「みんな聞いて」
私は小走りでステイシー達の元へ到著し、そのメモを見せます。
「儀式系かー」
「複雑な手順」
ステイシーと空蟬が想を述べますが、各々インベントリをし始めます。
「油は私が持ってるよ」
私が紙に書いてあるの中で持っているは油でした。
その他には5つの材料が書かれていました。
「私はコップと粘著とネックレスある」
「マオは、ないわ」
「僕もちょっとないかなー」
「俺は、鉱石と革あるよ」
「あっ。全部そろった」
ベルガのメモに記された道がそろったので、いよいよ紙の手順に従って設置していきます。
「≪ブラインド・ベール≫」
鶏骨ちゅぱ太郎が短時間不可視狀態にする魔法を発してくれたので、落ち著いて作業ができそうです。
えっと、まずは……。
『僕の後ろにコップを置いてください』
なるほど。
私は指示に従いコップをコトリとベルガの足元に置きます。
『そこから対象を囲うように時計回りに、粘著、革、鉱石、ネックレスとおいてください。その後、油をコップに注ぎ、再び時計回りに回り、すべての供に油をコップからかけてください。』
結構手間がかかりますね。
私はそう思いながらも行し、油をかけるところまで終え、メモを再び見ます。
『コップを逆さまにし、コップの底に同種の生きの何かをおいてください』
同種の生きですか、これは〔ユニークモンスター〕ってことでしょうか? 〔オブザーバーボスモンスター〕とかですと今回が初めての対面なので何も持っていませんが……。
そう思ってメモを見ると、小さい文字で、『同種の生きとは、龍なら龍、カエルならカエルということです』と書いてありました。
もっとでかい字で書けよ。
心の中で文句を言いつつも、インベントリには〔水龍の鱗〕がっていたのでそれをコップの上に置きます。
そしてメモの最後の部分を読みます。
『最後に僕のを思い切り叩いてください。それで完です』
最後の絶対ちがうでしょ、と思いながらも無防備なベルガのおを思い切り、平手打ちします。
「おぁっふ!」
『ヌッ?』
何か違和をじたのか、【焔龍真神 ドラグジェル・バールドライド】が頭に疑問符をふよふよ浮かべ始めました。
「準備完了です。さすがチェリーさん。思っていたよりも數倍は強かったです。個々人的にはもうちょっと強くてもよかったのですが」
儀式の準備のことを褒めるのかと思いきや叩き合の想が聞こえてきました。
「いいから。早くやれ」
もう一度、先ほど叩いていない側をベシンと叩くと、「おうぁ!」と聲をあげたベルガのが一瞬緑に発しました。
「やはりさすがです。この儀式、≪フールダ・ン・リチュア≫ご存じだったんですね」
「いえ、知りませんでした」
「なんと、すばらしい。才能ですね。この儀式はおの左右を叩かれることで発するのです」
なにそのスキルヤダ。
「たしかに、叩いてくれる方がいないと立しないスキルですが、その効果は絶大です。見てください」
そうしてベルガが指さす上空を見上げると、先ほどまでしでも抵抗をしようとしていた【焔龍真神 ドラグジェル・バールドライド】がなすが儘、地上に引っ張られています。
「どういうこと?」
エルマの聲を聴いたのでまわりを見渡すと、いつの間にか私の不可視狀態が解けていたようで、他の周りに集まってきます。
「これで【焔龍真神 ドラグジェル・バールドライド】はマゾになりました」
「ちょっと待って! マゾになったら外れちゃうんじゃ!?」
エルマが軽くパニックを起こしそうになりながらも言いましたが、ベルガが首を振り、「解けません」と言いました。
「どうして?」
「僕よりマゾ度が高い相手しか解けません。そしてこのゲームで、僕よりマゾ度が高いのは二人しかいません」
なに? マゾ度? そんなステータスありましたっけ?
私はそう考え、ヘルプ畫面を開きました。
そしてそこには『【稱號】の効果により、基本ステータス以外に値を持つことがあります』と追加されていました。
つまり……このゲームは本當にマゾ度というのが存在するということですね。
「では調教、と行きたいのですが、TPがまずいので、倒してしまいましょうか」
「一斉攻撃か?」
ベルガにサツキが聞きます。
「ええ。でも安全策で二人ずつがいいかもしれません」
何が起こるか分かりませんからね。
「ではおねが……」
何かを言おうとした、ベルガの頭が突然ぜ、周囲に赤いをまき散らします。
『クッフッフフ。油斷シタナ凡人』
「いいや。していない」
飛び上がったサツキが両手の魔銃で右の翼に向けてスキルを発しました。
「≪絶縁衝≫」
いつものドンという音ではなく、サプレッサーにより、音が小さくなったような銃聲が聞こえました。
『何ヲ、クゥウウ』
突然、右の翼が完全に麻痺し、飛び立つことができなくなった事に困した【焔龍真神 ドラグジェル・バールドライド】が聲を上げます。
そしてその直後、私もスキルを発しました。
「≪【見えざる手】≫」
左の翼をから引きちぎります。
『グフヒャァア』
【焔龍真神 ドラグジェル・バールドライド】は飛行する能力を失い、悲鳴をあげていました。
to be continu
あとがき
ということでしばらくベルガくん出ないので、補足説明というか背景を説明しますね。
彼は自分のMを満たすために、NPCプレイヤー問わずに変態行為をするように強制していました。
まぁ、鞭を無理やり持たせて、「僕のおを叩いてください!」とでも言いまわっていたんでしょう。
結果【】の【稱號】を手にれましたが、あまりにも変態じみた行為により、所屬國だった『科學都市 サイエンシア』から罪人判定されてポーイされました。
その後、クーリの盜賊団に拾われますが、そこでもNPCに対して変態行為に明け暮れ、向度がどんどん減り、仲間にも結構嫌われています。
詳しいお話は今後でる……かな? わかりませんが、大こんなじで向度マイナスになってしまいました。
皆様お察しと思いまずが、マゾ度の高い二人はもうすでに登場済みです。
マゾ度は【下僕】、【奴隷】などなど、それっぽい【稱號】を手すると可視ステータスに追加されます。
本來、ベルガ君は別途用意しています『外伝』のほうのキャラクターだったのですが、本編でも登場しましたね。
『VRゲームでもはかしたくない。外伝:VRゲームでなら自由に生きてもいいですか?(仮)』については続報をお待ちください。
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