《VRゲームでもかしたくない。》第5章最終幕 上位<upward>

「いまはまだ、どうこうするつもりはないですよ」

「信用、できないわ」

「殺ろうと思えばいつでも殺れました。貓姫さん。それは貴にも言えます」

「どういうことなの?」

話がイマイチ分からない私はマオに向かってそう聞きます。

「チェリーさんにそう聞かれては答えなくてはいけませんね!」

マオの方を向いていた私に向かってアマガミの高いテンションの聲が飛んできます。

「アミは『ヨルデン』でも重罪判定されています! 罪狀は……『姫殺し』」

「えっ」

「覚えてないですか? 『ブラルタ』の」

『海上都市 ブラルタ』のお姫様が殺されたことがありました。あれは……。

「『貓姫王國』の一件の時です! その時、アミは水面下で強國の姫を暗殺する依頼をけ、達しました!」

褒めてください、と言わんばかりの笑みを浮かべるこのアマガミに私は背筋がゾクッとしました。

「アマガミさん。貴が直接手を下したんですか?」

「はい! そうです! でもまぁ、結局は失敗だったんですが」

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突然聲が低くなり、周囲の空気まで冷たくなったようにじます。

「うちお茶れてくるわ」

シドニーがお茶をれると言ってこの場を逃げ出したくなるのもわかります。私も逃げ出したいです。

あまり関わり合いにならないほうがいいかもしれないですね。

「それは無理ですよ。チェリーさん。貴が、貴達が私達よりも先に『ドラグニア』を手中に収めてしまいましたから」

えっ。それとこれとどこに関係が……。

「関係は作り出すものですよ」

ん? ナチュラルに心の聲に反応してない?

「もちろんです。私は【死神】の【稱號】を手にれましたので」

「っ!」

【死神】……。ポテトと同じ……。

「同じですが、恐らく過程が違います。私は<死を運ぶ者>です」

それを聞いた瞬間私は戦闘態勢を取りました。

しかし、直後背後に回られ、腕を押さえられます。

「チェリーさん。今の貴ではアミには勝てません。全ての、上位互換です」

上位互換……。

「【斬罪神】、【暗殺者】、【真魔導勇者】、【炎の偽王】。アミも獲得しました。正確には【炎の王】、【魔導勇者】ですけどね」

なるほど。勝てませんね。そしてレベルも……。

「Lv.406」

今のままでは勝てない完全な上位存在、ですか。結構きついものがありますね。

救いがあるとすれば……。

「そうです。私が【暗殺者】寄りであること」

全て心を読まれるのは、慣れませんね。

もし戦闘になったら心を読める速度型プレイヤーには勝てないでしょう。

「落ち著いて聞いてください。今回ここに來たのは、本當に挨拶です。そして、今後はチェリーさん、貓姫さん、そしてステイシーくんを見定めます。アミとアミの主人の為に」

アマガミはそう言って私を話し、最初の頃のような笑みを浮かべます。

「というわけで、またよろしくお願いしますね! あっ! これいいポーションですね! 10個ほどいただきます!」

「5000金です」

「市場価格の暴落は『セーラム』のせいですね!」

そう言って私の手に5000金置き、アミは店を出て行こうとしました。

扉を開けて、振り返ったアマガミは私に言い殘しました。

「これからはもっと手ごわいプレイヤーが來ますよ。アミ以上は、いないけどね」

本質は分かりませんでしたが、その言葉だけが、私の頭に深く刻み込まれました。

「チェリー?」

「あっごめん。なんだっけ?」

『セーラム ヨルデン支店』を出た私達は、セカンドホームへ帰ろうと中央市街を歩いていました。

しかし、先ほどのアマガミの言葉が耳に、頭に殘り、私は上の空になっていました。

「もう一度、言うわ。あまり、気にしない、で」

「う、うん。そうだね」

誰かに相談したいですね。

そしてセカンドホームへと帰ってきた私達は扉の前に仁王立ちするエルマに邪魔され、中にれませんでした。

「おこだよ」

「どうして?」

「どう、して?」

私とマオが同時に首を傾げます。

「な!ん!で! 起こしてくれなかったの!?」

「ぐっすりだったから」

「かわいそう、だった」

「酷いよぉ」

そう言ってしゃがむエルマの橫を素通りしようとすると足をガッと摑まれます。

「わっ! びっくりした」

「何分待ってたとおもってるんだよぉ。可い服きてずるいよぉ」

「わかったわかった。ごめんごめん」

そう言いながら足をプルプル小刻みに揺らし、エルマの手を振りほどきます。

「あっ。もう怒った。今日こそは決著付けてやる!」

「ほう? やるかい?」

久々にエルマと模擬戦でもしようという雰囲気になったので私は乗っかります。

「サツキ、呼んでくる、わ」

「簡易結界で待ってる。逃げずにくること!」

マオがため息を吐きながら階段を上り、エルマは指をさして、ぷりぷりおを振りながら簡易結界裝置のある場所へと歩いていきました。

「おまたせ」

準備というほどの準備もなかったので、私は。すぐに訓練場と呼んでいる場所までやってきました。

すると普段とは異なる重裝備でエルマが待っていました。

「本気で勝ちに行くから」

「私も、負ける気ないから」

そう言いながら簡易結界を作し、ポーション使用不可、クールタイム通常、デスペナルティーなし、即時復活に設定します。

「サツキが來たら開始だからね」

「ん? ワタシがなんだって?」

訓練場の扉の所にひょっこり顔を出したサツキがそう言いました。

「審判!」

「あぁ。マオから聞いたよ。やれやれ。これで何度目だろうか……」

そうため息を吐きながらもサツキは簡易結界の外で見やすい位置に移しました。

「準備はいいかい?」

サツキが右手を高く上げます。

「いいよ」

「もちろん」

「じゃぁはじめ!」

そう言ってサツキが高く上げた右手を振り下ろしました。

「ずるい。ずるいずるいずるい!」

「ずるくないよ」

「面白い武だね。その【換剣】というのは」

簡易結界の中でMPポーションが使えない様に設定していたので、私は五分ほどMPを使いながら逃げ回り、エルマのMPが枯渇した瞬間に【換剣 マスレニ】に持ち替え、回復したMPで発した魔法により、額を打ち抜き勝利しました。

「よく調べてみたら【置剣】っていう逆の剣もあるみたいだよ」

「そう言われても、ワタシは剣あまり得意じゃないからね。振れるのは鞭くらいだ」

「ところで、それはどこで買ったの?」

もうエルマの興味が剣に移り、先ほどの模擬戦のことはすっかり忘れたようでした。

「『セーラム』の支店でね」

そこで思い出したのでアマガミのことを話します。

「へぇ。そんなことがあったのか。話には聞いていたが」

「なんで僕もってるんだろー」

話し始めてすぐにステイシーとマオもやってきたので、食事を取りながら話を続けました。

「分からない。もしかして運営のメッセージに関係ある?」

エルマがそう聞いてきます。

「どうだろう。改めて持っている【稱號】でも並べてみようか」

私はそう提案し、自分の持つ【稱號】を全て羅列しました。

同様にステイシーとマオも開示し、見比べます。

しばらく眺めていると、サツキが「あっ」と聲を上げました。

「どうしたの? 何か気付いた?」

「これだ……。この【稱號】は私とエルマにはないはずだ……」

そう言ってサツキが自の【稱號】を書きだし、エルマも習って書き出しました。

やはりサツキとエルマにその【稱號】はありませんでした。

「言われてみればー」

「ちょっと納得かも」

「いつの、間に……」

「つまり、この【稱號】をワタシ達も何かして得ないといけないわけだ」

「でもどうすればいいの?」

「そういうときの報屋じゃない?」

私がそう言いニヤリと笑うと、エルマもニヤリと笑いました。

<第5章完>

    人が読んでいる<VRゲームでも身體は動かしたくない。>
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