《VRゲームでもかしたくない。》第6章3幕 豪商<wealthy merchant>

「『私兵隊訓練指導』?」

ステイシーが言ったとあるクエストを私は復唱し、聞き返します。

「そうそうー。前、『ディレミアン』の豪商の娘さんを護衛したの覚えてるー?」

「あー。サツキと合流する前か。馬車代の節約になるしけたやつね」

エルマが答えたことで私も思い出します。

「サリアさんだったよね。えーと……アン……アンセ……」

「アンセリアンシアン」

「そう! それ! ていうかよく覚えてたね」

「まぁ依頼者がそのアン何某なにがしさんだからねー。それでこのクエストの容がぴったりはまるのが面白くてー」

「どんなだい?」

サツキが聞き返すと、ニヤッと笑ったステイシーが答え始めます。

「『霊魔法、闇魔法、雷魔法、風魔法を扱える者、及び銃、魔銃、剣に秀でたもの』」

「ほんとだ! って剣は?」

偶然の一致か分かりませんが、私達のパーティーでほとんどが賄えます。

しかし、剣はメインを使うのはエルマだけで、そのエルマは霊魔法を指導するはずですから剣を指導する人がいません。

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「よく見てー」

ステイシーが持ってきた寫しをよく見ます。

そこには『兼任可』と書いてありました。

「ねぇ。それってあたしだけ倍働かないといけなくない?」

「さー出発だー」

エルマの言葉を意識して無視したステイシーが依頼をけるために、案所へと歩き出したので、私達も続いていきます。

「この依頼ねー」

「かしこまりました」

ステイシーが付のNPCに張り紙を持って依頼をけてきます。

「私了承してないよっ!」

「そういうときもある。諦めが肝心かんじんだぞ」

サツキがエルマの方に手を置きながら言いました。

なくともチェリーにも多めに働いてもらうからね」

「えっ? なんで私も?」

「チェリーだって剣つかえるじゃん!」

「それは一応使えるよ。基本の武だもん」

チュートリアルは剣でやりましたし。VRじゃなかったですけど。

「お二人さんー。クエストけたよー」

「じゃ、いきましょ」

「そうだね。行こうか」

ステイシーが戻るとマオとサツキと共にも歩き出したので、私とエルマも後について行きます。

「チェリー」

「ん? なに?」

「確認なんだけどステイシーって一応近接武使えるよね?」

「そうだね。めったに使わないけど、大鎌とクロー使うね」

「ふーん」

そう言うとエルマが笑みを浮かべました。

「さて、依頼の場所はどこだい?」

サツキが案所をでてすぐにステイシーに問います。

「待ち合わせは、『ヨルデン』北門だねー」

「そうか。ん? 私兵隊の訓練なんだろう? なぜ『ヨルデン』で待ち合わす必要があるのだろうか」

「護衛、兼任ね」

「せいかーい」

マオの答えにステイシーが指をさしながら告げます。

「実際のところたくさん働かないといけないのはエルマだけじゃないんだよねー」

「えっ?」

突然名前を呼ばれたエルマが顔を正面に向け、疑問の聲を発します。

「このクエスト、結構やること多いよー」

「先に言ってよ!」

「それは先に言おう」

エルマとサツキの抗議はステイシーには屆かず、街の空気に飲まれていきました。

「ここだねー」

私達は『騎士國家 ヨルデン』の中央市街を抜け、待ち合わせの北門までやってきました。

そこにはまだ依頼主の姿はなく、見るのはこれからクエストに向かうプレイヤーと生活の為に狩りをしてきたNPCくらいでした。

「本當に待ち合わせはここなのかい? 豪商の娘さんなんだろ?」

「だからだよー。常に狙われているからねー。街中で襲う輩は多くないけど、正門前だと分からないからねー」

サツキの疑問にステイシーが返し、しばらく無言の時間が続きます。

しばらく各々裝備の確認や準備をしていると後ろから聲がかかります。

「貴殿らが、依頼をけてくれた冒険者か?」

「冒険者ではないけどー。そうだよー」

「あっ。お久しぶりでございます。またお會いできて嬉しいです」

サリアがそうペコリと挨拶します。

「いや。これはしいお嬢さんだ。ワタシとは初めまして、になるのかな? 依頼クエストはしっかりとこなすから安心してほしい。無論、道中も守るから安心してくれ」

あれ。サツキ、変なスイッチった?

「今回は護衛もつけているのー?」

「はい。念の為ですが」

「私、ベルダート・ナサリアン・アンセリアンシアンでございます。サリア、とお呼びください。そちらの方も初めましてでしょうか?」

サリアはマオの方をちらりと見ます。

「ええ。初めて、よ。前は、置いて、行かれちゃった、もの」

ごめんね……。

「腕の立つ冒険者だと聞いている。道中の護衛及び私兵の訓練よろしく頼むぞ」

「うんー。おまかせー」

ステイシーがそう答え、クエストが開始されました。

「ところで馬車が見當たらないが、どこかに止めてあるのか?」

サツキが辺りを見回しながら言います。

「今回馬車は使いません。さすがに目立ちすぎてしまいました」

サリアが答え、護衛のおっちゃんがしゃべり始めます。

「すまない自己紹介がまだだったな。俺はベルダート家に使える武人、アリエナだ。々しい名前だが許してくれ。ちなみにまだ19歳だ」

「はっ? ありえなっ!」

エルマならやると思ってました。

実際この見た目で19歳というのは信じられませんね。亜人族でしょうか。

私の視線をじ取ったのか、アリエナがこちらを向いて答えます。

「俺はちゃんと人間族だ。ベルダート様は人族だろうが亜人族だろうが差別しない素晴らしいお方だ。俺はただ老けているだけだ」

すこし自信ありそうな様子を見るとあまり気にしていない様に思えます。

「それはおいといてー。馬車無しでどうやってかえるのー?」

「歩き、になりますね」

「だよねー。チェリー、≪ワープ・ゲート≫使おうー」

そういうことか……。全員働かせられるわけね。

「分かった。ところでステイシーこのクエストの報酬は?」

「それはクリアしてからのお楽しみだよー」

ステイシーは何か裏がありそうな笑みを浮かべていました。

私とステイシーが協力して≪ワープ・ゲート≫を発し、『商都 ディレミアン』までやってきました。

「転移魔法……素晴らしいです」

「便利ですよ」

サリアにそう告げると、アリエナがベルダート家に向かって歩き出します。

「俺は先頭を歩く、後方を頼む」

「『ディレミアン』でも狙われてるの?」

「念のためだ。この街で狙われた事はない」

その言葉を聞いてし安心しながら、私達はサリアの後方を歩きます。

「ここだ」

「ようこそ、ベルダート家へ」

到著するや否や閉まっていた門が開き、大勢の給、黒服、私兵が迎えてくれました。

「厳重だな」

「そりゃー豪商だものー」

「ふっ。そう言うものか」

「まず私兵訓練を始めてもらう前に皆様のお部屋に案させていただきます」

えっ。

「ちょっとステイシー!」

恐らくは私と同じ疑問のじたエルマがステイシーを呼び止めます。

「なにかなー?」

「泊まりの依頼って聞いてないよ!」

「あれー? 言わなかったっけー?」

「「言ってない!」

「言ってないな」

「聞いて、ないわ」

「まぁそういうときも、あるよねー」

そう言って、ははは、と笑うステイシーの後頭部をエルマがスリッパで叩きました。

「こちらでございます。一室お使いくださいませ。後ほど、私兵隊の訓練準備が整いましたらお呼びに參ります。ではごゆっくりお過ごしください」

給に案され、私達は各々部屋に通されました。

私兵隊訓練が始まるまでは休憩みたいですね。

そう思っていると扉がノックされました。

「ん? どうぞ」

「私兵隊の訓練準備が整いました。訓練場までご案します」

えっ。ちっとも休めないんだけど。

to be continued...

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