《VRゲームでもかしたくない。》第6章5幕 侵者<invader>

「すいません。私の連れが……。いくら直ると言ってもやりすぎですよね……」

ビクビクしながら一応の謝罪をサリアにします。

「大丈夫ですよ。それにしても皆さん強い魔法を発するのですね」

「えっと……壁が帯電しているのはステイシーの≪ライトニング・ネット≫ですね。オリジナルの≪シェイプ≫を使ったものです。壁のはサツキが魔銃で開けましたね。サラサラになっているのはマオの≪風化≫ですね」

見て取れる狀況からスキルを推測し、簡潔に伝えます。

「≪シェイプ≫って自作できるんですか?」

「はい。一応。【魔法制作】などで保存できます。【魔法制作】などは何度か自分で≪シェイプ≫を作っていれば取得できますよ。さて、あちらは置いておいて私達も次のステップに進みましょうか」

私はそう言って自を拘束していた≪ダーク・バインド≫をSTRで解除します。

「いっ……」

「あっ! ごめんなさい! 強制的に解除されるとフィードバックで頭痛がする時があるんです!」

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解除した後にそのことに気付き、慌てて説明します。

「大丈夫です。思ったほど痛くはないですね」

「すいません。次のステップは闇魔法の特に関するものです。先ほど屬の相について話しましたよね?」

先ほど火屬は水に弱く、水屬は土屬に弱い、などの基本屬の相と、複合屬の相を説明していましたので、その話を思い出してもらいます。

「闇屬魔法は種類によってと聖屬のどちらかに強く、どちらかに弱いのですよね?」

「はい。例外が多くありますが、細分化して覚えるのであれば、影と闇と考えると分かりやすいです。闇屬魔法は≪シャドウ≫と≪ダーク≫が多いので」

「難しいですが、なんとなく理解でしました」

「流石です。サリアさん。レルカレンさんはどうですか?」

「お手上げです。意味が分かりません」

「応用屬は奧が深いみたいですから。正直私も雷屬とかとか氷屬とかは概要しか知りません」

実際、自分が使っていない屬に関してはほとんど無知と言って差し支えないと思います。

「では二屬から嫌われている闇屬魔法ですが、そのメリットを実踐します」

私がそう言うと、ゴクリ、と唾を飲みこむ音が聞こえました。

「ステイシー」

そして私はステイシーを呼びます。

「どうしたのー?」

「≪ダーク・ボルテックス≫」

「……っ! ≪アース・シールド≫、≪ホーリー・シ……ぎゃー」

ステイシーの障壁が間に合わず半分ほど直撃しますが、威力は押さえていたのでそこまでのダメージではないでしょう。

「ありがとう」

「手加減してくれてうれしいよー」

ステイシーにお禮をいい、サリアとレルカレンに向き直ります。

「いまのは≪上級闇屬魔法≫で扱える複合屬の魔法です。このように闇魔法は程に優れていますし、任意の地點から魔法を発できます」

「じゃぁさきほどの≪ダーク・バインド≫も遠距離の相手に直接掛けられるのですか?」

「そうですね……≪ダーク≫は無理かもしれません。でも≪シャドウ≫なら行けます。≪シャドウ・バインド≫」

私はそう言って最も離れた位置にいるエルマに≪シャドウ・バインド≫を発します。普段の私なら≪ダーク・ネクロフィア≫という武固有スキルを用いますが、今回はデモンストレーションのようなものなのでごっそりMPを使い≪シャドウ・バインド≫を発します。

聲は聞こえませんでしたが、「ふんっ!」と言ったであろうエルマの両手を広げる作で、すぐに解かれてしまいましたが。

「理論上はどこまででも出せますが、距離に比例して消費するMPが尋常じゃなく増えます」

そう言いながら私はMPポーションをパクッと咥えます。

「ナサリアン様が習得すれば、道中護衛も楽できますね」

「がんばります!」

そういったサリアもレルカレンも闇魔法の訓練を本格的に開始しました。

「皆様お晝は如何いたしますか?」

訓練場にってきた給がそう聲を上げます。

「ではし休憩にしてお晝にしましょう」

サリアがそう言ったことで訓練場の空気がし緩み、皆談笑を始めます。

「皆様はこちらへ」

私達も集まり、お互いの狀況を報告し合っていたのですが、サリアに聲を掛けられ、ついて行きました。

そして私達は食堂に通されます。

「おもてなしができなくて申し訳ありません。私兵の半數は晝過ぎにはお父様の護衛に行ってしまいますので、あまり時間がなかったのです」

だからあんなに急だったのか、と考えながら出てきたスープをちびっと飲みます。

「ところでサリア。進捗はどうだい?」

サツキがそうサリアに聞くと、サリアはニッコリと笑って、≪シャドウ・ボール≫をサツキの頭上に浮かべます。

「これはすごい。なんという呑み込みの早さだ」

「正直おどろいたー」

ステイシーも驚いているようで、目をまんまるにしています。

「思ったよりも呑み込みが早くて、私もびっくりした」

「なお、私はまだできません」

何故か自信たっぷりにサリアの後ろに控えるレルカレンが言い放ちました。

豪商ということもあってか、かなり豪華な晝食を食べ終えた私達は1時間ほど休憩することになったので一度部屋に帰りました。

リアルの方で食事もとらないといけませんからね。

ベッドにするっとった私はすぐにログアウトし、リアルへと帰ってすぐに専用端末を頭から外し、一息つきます。

調理機から食事を取り出し、掲示板を覗きながら食べていると、運営から送られてきたメッセージや電子データパックについての書き込みが多くみられました。

サツキやエルマのように、メッセージは來ていないが電子データパックは送られてきたという人もちらほらいるようです。

基準はなんでしょうか。あのメッセージには規定に達したとかなんとかありましたけど。

特にそのことについて書かれている書き込みは見つからなかったのでまだ報がないのでしょう。それは仕方ありません。

掲示板の観覧と食事を終えた私は、畫配信サイトで有名な配信者の畫を見ながらまったりとお風呂に浸かっています。

VRゲームの利點はもしかして私みたいなぐーたらでもかせることにあるのかもしれませんね。現実でも昔ほど抵抗なくかせます。

を新品に磨き上げた後、私は再び専用端末をかぶり、ログインします。

「おん?」

私がログインして意識が覚醒し、目を開けた瞬間目の前に見知らぬ顔があったのでつい聲を出してしまいました。

「なんでこんなところに外の人が……っ! おいしでも聲をあげてみろ! その首かき切るぞ!」

突然私の首元にナイフを突きつけてきます。

「あの……」

「なんだっ!」

「ここには何の用できたんですか?」

HPは増えたとはいえ、首を切られたらまずいので刺激しない様に聞きます。

「いうわけないだろっ!」

ですよね。

…………。もうし攻めてみましょうか。

「盜みですか?」

「うるせぇな! 言うわけないだろ!?」

あっ。ビンゴですね。

「止めておいた方がいいかもしれませんよ?」

「それはおやじが決める」

「おやじ? お父さんと盜みですか?」

「盜みじゃねぇ! 俺らの盜賊団のボスだよ。外の人は面倒みてくれてる年上の男をおやじって言わないのか?」

「そうですね……。金銭的なやり取りがあればパパですね。のつながりがあればお父さんですね。無ければおっちゃんかその他有象無象ですね。面倒見てくれてもあまりおやじとは言わないかもしれません」

「そうなのか……。なんというか冷たいんだな」

盜賊NPCに心配されるのか。

「とりあえず抵抗はしないので、ナイフどかしてもらっていいですか? 起き上がれないので」

「あぁ。すまない」

そういって彼は私の首元からナイフをどかします。

「『眠レ 我ガ歌ニテ』≪スリープ≫ 」

私はすぐに≪スリープ≫を発します。

バタリと倒れた男を「よいしょ」と持ち上げ、お米様抱っこして私は部屋を出ました。

部屋を出て訓練場のほうへと歩いていると廊下にいたステイシーに遭遇します。

「おやー? それはー?」

「ん? 賊っぽい。部屋に侵してきたから≪スリープ≫で無力化して運ぼうと思って」

「なるほどー。構はー?」

「分からないけど、おやじがなんだとか言ってたからまだ何人か居るかもしれないね」

「おっけー。それ持ったままじゃ大変でしょー? 置きに行くまで一緒行くよー」

「ありがとう」

私と私に擔がれた盜賊、そしてステイシーで訓練場へと向かっていきます。

to be continued...

    人が読んでいる<VRゲームでも身體は動かしたくない。>
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