《VRゲームでもかしたくない。》第6章7幕 対価<consideration>

全てを奪っても手配されない……?

「どういうことでしょうか?」

「どうもこうもねぇよ。だから今ここにベルダートはいねぇんだろ?」

「すいません。あなたほど聡明ではないので私には理解できません。詳しく説明してくれませんか?」

「いくらだす?」

報がしければ金を払え、と。

「ちっ」

私は舌打ちをしながら10萬金程度がっている小さい袋を投げます。

NPCや報屋のプレイヤーなどに金銭を対価として支払う場合の相場はある程度決まっています。なのでその分の金額をれた小袋を常備しておくのは、報系プレイヤーではない人にとっては重要なことなのです。

「結構気前いいじゃねぇか。なにが知りてぇんだ?」

小袋を拾い上げた盜賊がそう言ってポケットにしまいながら聲を掛けてきます。

「この家を襲っても無罪放免となる理由です」

「まてまて勘違いしているぞ」

「ん?」

「無罪にはならねぇよ。罪は計上されていくぞ。手配されないってだけだ」

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「罪は計上されるのに、手配がされない?」

「あー。おいロンピル。説明しろ」

「はい。バクさん」

ロンピルと言われた男がローブのフードを後ろに避けながら前に歩いてきました。

「ロンピルと申します。すいません。バクさんはこういう話し合いが苦手な方ですので代わりに」

「ありがとうございます。チェリーです」

「チェリーさんですね。ではまず順を追って説明します。

そう言ってロンピルが説明を始めました。

まずベルダート家が極裏に販売、流通ルートを開拓し、それを國の商業組合に報告しなかったこと。

次にベルダート家が商業組合から追及された際、使者を殺害したということ。

最後に、國がベルダート家に出頭を命じたが、一向に姿を現さなかったということ。

この三段階を踏んで、手配されない狀況になったようです。

出頭を拒んだだけで盜賊が來てもおかしくない狀況まで追い込むんですね。さすが『商・都・ ディレミアン』ですね。

ただし、盜賊などがベルダート家で従業員を殺した場合は殺した事実は殘り、殺された従業員の家族などが報告した場合は罪に問われる様です。

それでも手配される事はないそうなので、この町から逃げる必要はない、ということでした。

「なるほど……」

「ちなみに盜賊以外も貧民などがこの屋敷にやって來て乞いをしていますが、門番が蹴散らしています。まぁ盜賊である私達が言ったところで説得力は薄いのですが」

どちらが正しいのか、私には判斷ができません。

「すいません。し仲間に連絡をしてもいいですか?」

「ええ。構いませんよ」

『ステイシー、ちょっと聞いて』

『なにかなー?』

『いまこの家を襲っても手配されないららしい』

『どういうことー?』

『説明がむずかしい』

難しい上に私も完全に理解できたわけではありませんから。

『裏側で戦闘はー?』

『まだ起こしてない』

『分かったー。僕もいくー』

『待ってる』

「私の仲間が來るそうです」

「わかりました」

そうロンピルが返事をするとスッとステイシーが現れました。

「おまたせー」

「私の仲間のステイシーです」

「よろしくー」

「ロンピルさん。もう一度先ほどの話をしてもらってもいいですか?」

「ええ」

そう言ってロンピルがもう一度説明をすると、ステイシーも理解ができない様で、「うーん」と首をコテンコテン倒しています。

「あー。だからかー」

「ん? どうしたの?」

「チェリーはこのクエストをけていないから気付いてないんだよー。なんで『商都 ディレミアン』で募集してなかったんだろうねー?」

「え? あっ! そう言うことか!」

私達がこの依頼をけたのは『騎士國家 ヨルデン』です。

なぜ、私兵の訓練という、誰・で・も・で・き・る・簡・単・な・依・頼・が、別の都市で出ていたのでしょうか。

最初は護衛も兼ねて、と思っていましたが、ここまでの話を聞くにそれも怪しくなってきます。

馬車で來ていなかったこと、魔法スキルに重點を置いた募集。

魔法スキルを重點的に習得しているプレイヤーなら転移魔法も勿論習得していますから。

「ロンピルさん。バクさん」

私は盜賊団に一つ提案をしようとします。

「なんでしょう?」

「なんだ?」

「表にいる戦力にも一時撤退を指示してくれませんか?」

「それは無理だ」

私の提案は即座に斷られてしまいました。

「どうしてです?」

「俺らとは別の盜賊団だからだよ。俺たちはあいつらをおとりに使ってこっそり頂戴するつもりだったんだよ」

「あー」

別口だったんですね。

「ステイシー……」

私は困り果ててステイシーの方を見ます。

するとステイシーは先ほどから考えていたようで、會話を始めました。

「僕たちはねー。ベルダート家から私兵の訓練を頼まれてきた外の人なんだけどー」

「やはり外の人達でしたか」

ステイシーの言葉にロンピルが合點が言ったとの様子で相槌を打ちます。

「そうそうー。それでこの依頼の報酬だった、〔ユニークモンスター〕の報がしかったんだー」

えっ。この依頼の報酬は〔ユニークモンスター〕の報だったんだ!

確かに面白い報酬です。

依頼をクリアすると出現する〔ユニークモンスター〕は結構多いのですが、NPCからの依頼で〔ユニークモンスター〕の報がもらえるというのはあまり聞いたことがありません。

「それで?」

バクが顎で続きを促します。

「いまの君たちの話を聞いて、正直この依頼報酬の報は信憑があんまりないって気付いたよー」

「ほう。つまり見逃してくれると?」

「いいやー。依頼は完遂するよー。だから一時的に撤退してくれないかなー? 僕たちがいなくなったあとなら何しても不干渉だからー」

依頼不達領者の信用度の低下に繋がります。ちゃんとした理由がない場合、今回はあるのですが、それでも上位の依頼がけられなくなる可能は避けたいのでしょう。

「だが、この機會はめったにないからな。おいそれと引き下がるわけにはいかない」

「ほいー」

ステイシーがインベントリから取り出した重そうな袋を地面に投げました。

「100萬……だと……?」

「それで次の襲撃の時、正面の彼らを雇ったらどうかなー?」

「今回は引くことにする。おめぇら! 帰るぞ」

そう言ってバクは踵を返し去っていきました。

去り際にロンピルがこちらをジッと眺め、深々とお辭儀をして去っていきました。

その様子がし引っかかりましたが、正面から攻めてくるもう一つの盜賊団を一応無力化しないといけませんので持ち場へ戻ります。

「サツキ」

「あぁ。チェリーか。裏はどうなったんだ?」

「ちょっと々あってね。とりあえず正面から攻めてくる盜賊団の無力化を……ってもう終わってたか」

「あぁ。MPポーションが空になってしまった。シューティングゲームみたいで楽しかったね」

「とりあえずエルマ達が戻ってきたら作戦會議だねー。その時詳しく話すよ」

「そうしてくれ。一度戻ろう」

そう言ってサツキが屋から飛び降り、私達も続いて屋から飛び降りて訓練場へと戻ります。

「たっだいまー」

「おかえり」

訓練場に戻ってからしばらくするとエルマが戻ってきました。

「どうしたの? なんか変な空気だよ?」

「あー。あのが戻ってきたら話すよー」

「マオが、どうか、した?」

「マオ! 何時からいたの?」

「結構、前よ。戻ったら、誰も、いないの、だもの。寂しかった、わ」

「そうだったんだ」

「よし、じゃぁ作戦會議だー」

ステイシーがそう言って小さい黒板を取り出しました。

to be continued...

    人が読んでいる<VRゲームでも身體は動かしたくない。>
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