《VRゲームでもかしたくない。》第6章8幕 敵か味方か<friend or foe>

ステイシーが小さい黒板に何かを書きなぐり始めます。

見たところこの周囲の地図のように見えます。

「地図ならマップだせばいいんじゃ?」

「こういうのは雰囲気だ。そうだろ? ステイシー」

「あー。地図はマップでよかったのかー。でも書いちゃったし使おー」

そして大まかな地図をかき上げたステイシーが別ので一點に丸を付けます。

「たぶんこの辺だよねー? 今當主さんがいるのはー」

ベルダート家の當主が外出したのは私達が休憩し始めたあとなので、馬車とはいえまだそんなに遠くまで行っていない、という予想に基づき、推測した場所の様です。

「チェリーが≪スキャン≫か何かでマークできてればよかったんだけどねー」

「ちょっとまってくれ。當主の居場所は関係あるのか?」

サツキがそうステイシーに聞きます。

「事実と依頼について確認したいー」

「そう言うことか。なら二手に分かれるしかないな」

「そういうことー」

ステイシーは頷きながら再び黒板に何かを書き始めます。

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「ならば……そうだな。私とチェリー、エルマで行こう」

「りょーかいだよー。僕はこっちで報屋に々確かめてみる」

「マオは、お留守番、ね」

「ちがうから。僕と一緒に報収集だから」

「あら。わかった、わ」

「一度整理するよー。まずベルダート家が裡の流通ルートを作ったー」

言いながらステイシーが自作の地図に別のでぐにゃぐにゃした線を書きれます。

「商業組合が詳しく聞く為に使者を派遣したけど、殺したー」

棒人間を書きれ、そこに赤でバツを記します。

「國からの出頭命令を斷ったー」

そして國に怒りマークを書き込みます。

「これでいいんだよねー?」

私の方をちらりと見て確認してきます。

「うん。私が聞いたのと齟齬はないよ」

間違いはない、とステイシーに伝えます。

となると、私達ベルダートに會いに行く組が必ず得ないといけない報は……。

「なぜ使者を抹殺したのか、なぜ國の出頭命令を拒んだのか、か」

「うん。そこを確かめてきてほしいー。僕たちは、裡の流通ルートが駄目な理由と過去に同様に事例で懲罰をけてる商家があるかとか調べておくねー」

「あぁ。そうしてくれ。チェリー、エルマ。すぐでるかい?」

「あんまり離れすぎても大変だし、すぐにでよう」

私がそう提案すると、コクリと頷いたエルマが裝備を確認し立ち上がります。

「チェリー、≪ワープ・ゲート≫お願い」

「うん。≪ワープ・ゲート≫」

「よっと」

≪ワープ・ゲート≫を抜け、周囲に何もない平原へとやってきます。

先ほどステイシーが自作の地図に書き込んだ丸の位置に転移してきたのですが、馬車の痕跡は見當たりません。

「≪追跡≫。ワタシに任せてくれ」

黒い靄を纏ったサツキが≪追跡≫を発しました。

「そうだな。まだ馬車は通ってないだろうね」

「ならし待ちだね。モンスターか何か出て進行が止まったのかも?」

エルマが『商都 ディレミアン』の方角を眺めながら言います。

「一応≪探知≫できる範囲は見ておくね。≪探知≫」

私は≪探知≫を発しましたが、周囲にはモンスターしかいませんでした。

「やばい。タゲられた」

「じゃぁあたしがやっておくよ。≪召喚〔ミラーリング・スライム〕≫」

懐かしい。最近ほとんど使っていませんでしたからね。

「フォームチェンジ〔Mマッハ・Mマーチング・Bバニー〕」

エルマは〔マッハ・マーチング・バニー〕というモンスターに〔ミラーリング・スライム〕を変させ、モンスターの方へ向かわせました。

「ありがと」

「かまわんよ。ところでここで待つの?」

「そのつもりだけど、來ないみたいだしここから『商都 ディレミアン』の方に霊駆の二車で戻ってみようか」

「うん。そうだね。サツキは?」

「あぁ。構わない。ワタシはエルマの後ろでいいか?」

「まだおびえてんの?」

昔、私の霊駆式二車【雙 ツインエモート】に乗った際、摑まるのが甘く、投げ出された経験を思い出しているのでしょう。

それに私も最近【雙 ツインエモート】に乗る機會が減っていましたので久々に乗りたいです。

「チェリー運転久々じゃないの?」

「うん。久々だね」

「運転の仕方覚えてる?」

「覚えてるよ」

「そっか。首折れたりしないようにね」

「うっ!」

私が最近乗れていなかったというのは、【雙 ツインエモート】に乗ってエルマとの待ち合わせ場所まで急いでいたら、突然飛び出して來た〔ステレオ・スクリーン〕という塗り壁のようなモンスターに激突し、首を骨折してデスペナルティーになっていたからです。それにそのあと『速度出しすぎ厳』という看板が立てられ、『騎士國家 ヨルデン』の近くでは運転できなくなってしまいました。

皆がそろうときは基本的に転移魔法か徒歩、馬車での移ですし。

ふぅ。嫌なことを思い出しました。

「エルマも安全運転で頼む」

「あたしはいつも安全運転だよ! 帰還〔MMB〕」

「信用ならん。ワタシもバイク買おう。『エレスティアナ』だったね?」

「うん」

私はサツキにそう返事をし、インベントリから【雙 ツインエモート】を取り出します。

私がハンドルに手を置くと、しだけ嬉しそうにブルンと揺れました。

「きもちいい」

私達は『商都 ディレミアン』へ向かう道を走っています。

ほどほどの速度をだしているのでこの周辺にいるモンスターには追い付かれず、心地よいツーリングを楽しんでる狀況です。

「このくらいの速度ならあまり怖くはないね」

サツキも心地よさそうに髪をかき上げ、あたりを見回します。

「とばそうか」

そういったエルマが一瞬だけ加速すると、ガバッとエルマに抱きつき、し涙目になっていたのは、黙っておいた方がいいですね。

「これはまずいね」

「予想外だ」

し減速した私がエルマ達の後ろを走っていると前からそう聲が聞こえてきました。

「なにかあった?」

「一度止まるよ」

そういったエルマが減速を始めたので、私も【雙 ツインエモート】を停止するためMPの供給を切ります。

「よっと」

【雙 ツインエモート】から降りた私はエルマ達が何を見たのか分かりました。

そこには30人程のプレイヤーがいました。

「ん? ここは通行止めだ。迂回しな」

私達が歩いて近づくと、一番最後尾辺りにいたプレイヤーが聲を掛けてきます。

「すいません。一つお聞きしたいことがあるのですが」

「なんだ?」

「ここを馬車が通りませんでしたか? 護衛をたくさん連れた」

「いや。通れてはないな」

「ん?」

「俺たちはそれを討伐するために、ここに來たしな」

「どういうことですか?」

「割のいいクエストだ。NPC殺しても手配されない、そして報酬がたんまりと手にる。ここにいる奴らは大方そんな奴らだろうな」

「口を挾んですまない。その対象というのはベルダートで間違いないだろうか?」

「あぁ」

「ふっ。≪サンダー・ショット≫」

バンという音が鳴り、私達に話しかけてきたプレイヤーの額にが開きました。

「て……てめ……」

はそれだけ言い殘し、デスペナルティーになりました。

「っちょ! サツキ!?」

エルマが驚いた聲を上げます。

「なぁに。どうせ罪人判定、重罪判定はけていないだろうから、ここでは即時復活はできないが、すぐもどってくるさ。それよりもワタシ達はここに集まったプレイヤーを倒さなければいけない。ベルダートを守るしか、ないのだから」

そう言ってサツキは再び銃を構えます。

「その必要はありませんよ!」

正面から聲が聞こえ、次々にプレイヤーの首からが噴き出していきます。

「まどろっこしいですね! まとめて死んで! ≪インフェルノ・ストーム≫」

≪絶級火屬魔法≫による火屬と風屬の複合魔法が発され、正面に炎の竜巻が出現します。

「巻き込まれるぞ!」

サツキがそう言って私とエルマの腕を摑んで飛びました。

炎の竜巻が消えた後、その場には私とエルマ、サツキ、そしてこの現象を引き起こした張本人のアマガミしか殘っていませんでした。

デスペナルティーになり戻ってきたプレイヤーもいますが、その瞬間アマガミに倒されているので、しばらくしたら誰も近寄ってこなくなるでしょう。

「どうしてあなたがここに?」

「クエストですよ。闇クエです!」

私が聞くとはきはきと答えてくれます。

「初めましてかな? それはそうとどんなクエストなんだい?」

「ベルダートを守ること。それがアミの主人とベルダートの間でわされたクエストです」

サツキが聞くと、嫌々とですが答えてくれます。

「どうしてだい?」

「悪魔を守るのは、悪の使命です」

そう答えたアマガミはし不気味な笑みを浮かべていました。

to be continued...

    人が読んでいる<VRゲームでも身體は動かしたくない。>
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