《VRゲームでもかしたくない。》第6章14幕 個<individuality>

「必要なのはあれやな。≪隠蔽≫を使える裝備やな」

そう言ってもこちねるが武屋へと歩いていきます。

「私は持ってる。【黒竜外皮 レオノーブ】」

「上等やな。他の二人はどや?」

「僕は持ってないー」

「ボクは持っているよ。対して効果の高いじゃないけど」

「そんならステイシーの分だけでええんやね。こっちや」

もこちねるについて歩いていくとすぐに『アームズ&アームズ』という名前のお店へ到著しました。

「個がすごい」

私が小聲でポツリとらした想は誰に聞こえるわけでもありませんでした。

しかし、扉がバンッと開かれ、一人の男が出てきます。

「誰かな? 今個がどうこういったのはぁ?」

そう言いながらこちらに向かって歩いてきます。

「おひさー。チルチル。ここにいるステイシーに≪隠蔽≫系の武はあるかー?」

「勿論だよ。ところで個がなんたらって言ったのは誰かなぁ?」

そう言って私の前に立ち、目をじっと見つめてきます。

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「あっ……私です。ごめんなさ……」

「すばらしいっ!」

私の謝罪の途中でチルチルと呼ばれた男が両手を広げくるくる回ります。

「私のような! 個あふれる人間に対して、「個がすごい」と! これは素晴らしいっ!」

彼はそう言った後、「んーっ!」と言いながら回り続けていました。

私が言ったのは、お店の名前のことなんですけどね。この際、言わないほうがいいですね。

「はっ! 改めていらっしゃい。店主のチルチルです」

突然回転を止め、私達に背を向けながらそう挨拶をしています。

るで」

そのチルチルの橫を素通りしたもこちねるがお店の扉を開けっていきます。

私達ももこちねるに続いてお店にりました。

すると正面にチルチルが立っていました。

「いらっしゃい。待ってたよ」

≪テレポート≫か? と思った私は後ろを見ると未だお辭儀をしたままのチルチルがいました。

そういうことだろうと思い、正面に立つチルチルを見るとニヤリと笑いました。

「私はタルタルです。外にいるのはコンビのチルチルですよ」

あぁ。見た目をよく似せて遊んでいるんですね。一時期雙子ちゃんロールが流行ったので、その時からやっているのでしょうか。

「さてチャットではそちらのステイシーさんに≪隠蔽≫の裝備をということですが」

タルタルがもこちねるの方をみて言います。

「勘定なら大丈夫や。『叡智會』が出すで」

「なら一番高いのでも大丈夫でしょうね」

そう言ってタルタルは何か箱を取り出します。

「そこには私達が集めてきた≪隠蔽≫系〔ユニークモンスター〕のドロップがっています。その中からお選びください」

ざっとその箱の中を確認すると30個以上は〔ユニークモンスター〕のドロップが存在しました。

「これはすごい量ですね」

「それは序の口ですけどね」

「えっ」

「ここに置いてある品は全部〔ユニークモンスター〕のドロップやで」

もこちねるの一言を聞いて、唖然とします。

「チェリーの言いたいことはわかるで。でもその疑問はこいつらには無意味や」

「そのとおーりっ! 私達は『個ユニーク』に囚われたか弱き小鳥なのだから」

外からいつの間にか戻ってきたチルチルがそう言いますが、誰も返事をしないのでその姿勢のまま固まり、反応を待っているようです。

「ふぅー。これにするよー」

私達が話をしている間にステイシーがどれを貰うのか決めたようです。

「【メルカ・ブーツ】? そんなのでいいんですか?」

タルタルがそうステイシーに話しかけます。

「うんー。たぶんこれが一番いいかなー」

「わかりました。では移譲書類だしますね」

そう言ってタルタルが【メルカ・ブーツ】から移譲書類を取り出し、書き込みを始めましたので私はお店の品を見に行くことにしました。

あっ。結構私に會いそうな裝備ですね。【バルジャン・クナイ】ですか。最近、近接をやることも増えてきましたし、スキルの數を増やすのは悪くないですもんね。

そう考えながら眺めていると、後ろから「その裝備はっ!」とか聞こえてきたので、とりあえず場所を変えましょう。

おっ。これもいいですね。

【風竜杖 ゲイル・グエル】ですか。

風屬魔法はあまり高いレベルで扱えないので、一つくらい持っていてもいいですね。

そう思い値段を見て、私はその場を去りました。

をうろうろしていると、突然何かにぶつかります。

「あいてっ」

私が後ろによろめくと、ドシンと音が聞こえ、目の前に見慣れたステイシーが倒れていました。

「ねー。言ったとおりでしょー?」

「すごいですね。こういう使い方もあるんですか」

何やらステイシーがタルタルと話していますが、最初の方の會話を聞いていなかったので私にはわかりません。

「ほんならこれでええな。もういくでー」

もこちねるが扉の前で両の手を打ち合わせ、私達に知らせます。

「わかった」

私はそう返事をして、ステイシーを起こし、一緒に扉を出ました。

「どうやって完璧な≪隠蔽≫を?」

「いやー? あれは≪隠蔽≫じゃなくて≪隠形≫のほうだねー。MPの総量で効果が変わる系のー」

「なるほど」

それならステイシーにはぴったりですね。

最近私のMPもかなり増えましたが、序盤からMNDばかりあげていたステイシーに比べたら雀の涙程度しかありません。

「僕よりMPが多い人はそういないからねー」

「だね」

「ところでどうして≪隠蔽≫系が必要だったの?」

私がもこちねるに聞くと、もこちねるは何を今更と言いたげな表で答えました。

「そらー潛するからやろ?」

「どこに?」

「『ヨルデン』の案所にや」

「えっ」

「そこであの寫真のプレイヤーが依頼だしてんなら、その書類見れば一発やろ?」

なぜそんなことを聞くのか不思議そうな顔で答えるもこちねるに、報屋に私は顔がヒクヒクしてしまいました。

私が出した≪ワープ・ゲート≫で『騎士國家 ヨルデン』のセカンドホームまで戻ってきます。

「ほんならすぐいくでー」

「まって」

そう言って歩き出す、こち寢るを私は制します。

「なんやー。おやつは一人300金までやぞ」

「違うよ。警告でてるから一回リアルに戻りたい」

「あー。そう言うことか。わかった。5秒ですましてきー」

「無理だから」

私はそう言い放ち、自室に戻りログアウトします。

そしてトイレや食事を済ませ再びログインすると誰もいない狀態になっていました。

それからリビングへと行き、數十分待つとリーリが戻ってきました。

「まだチェリーだけ?」

「うん。そうみたい」

「あのあとみんなリアルにもどったんだよ」

「そうだったんだ」

リーリと二人きりで々話していると、ステイシーが戻ってきました。

「あれー? もこちねるはー?」

「まだ戻ってきてない」

「うん」

リーリと私がステイシーに教えます。

「じゃぁ準備だけ整えて待ってようか」

私がそう言うと二人ともコクリと頷きました。

しかし2時間ほど待ってももこちねるは現れませんでした。

「なにかあったのかなー?」

「どうだろう。急にリアルで予定がっちゃったとか?」

「あるかもね。もしくは寢ちゃったかだよ」

たしかにその可能もありますね。

私達はそれから數時間、居酒屋巡りや料理や巡り、武屋巡りをして遊んでいましたあ一向にもどってくる気配がないので、一度解散することになりました。

「まぁ明日には事がわかるでしょー」

「そうだね」

ステイシーの言葉にそう返事をしました。

リーリに空き部屋を貸し、私とステイシーは自室に帰り、ログアウトしました。

そして次の日も、もこちねるは現れませんでした。

to be continued...

    人が読んでいる<VRゲームでも身體は動かしたくない。>
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